JP2734601B2 - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

二軸配向ポリエステルフィルム

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムに関し、と
くに磁気テープ用ベースフィルムとして好適な、耐スク
ラッチ性や磁性層塗布後の磁性面の傷付き防止性能等に
優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
[従来の技術] 先に本出願人により、包装用、コンデンサ用あるいは
磁気テープ用ベースフィルムとして、平均粒径0.05〜2.
0μm、モース硬度7以上の粒子を含有させた二軸配向
ポリエステルフィルムが提案されている(特開昭63−23
0741号公報)。このフィルムにおいては、硬い粒子を含
有させることにより、フィルム表面の耐摩耗性を向上し
つつ、該粒子の粒径を比較的大きなものとすることによ
り、フィルム加工時や製品としたときの良好な滑り性、
走行性を確保するようにしている。
[発明が解決しようとする課題] ところが、ポリエステルフィルム、とくに磁気テープ
用ベースフィルムとしての二軸配向ポリエステルフィル
ムへの要求品質は、近年益々厳しくなってきており、上
記特開昭63−230741号公報提案のフィルムでは、とく
に、表面の耐スクラッチ性、および、ベースフィルムに
磁性層を塗布した後の磁性面の傷つき防止性について未
だ十分とはいえなかった。
すなわち、磁性層塗布工程等の速度増大に伴い、工程
中にある各種ロールと接触してもフィルム表面に傷が付
かないだけの高い耐スクラッチ性が要求されつつある
が、上記提案フィルムの如く単に比較的粒径の大きな硬
い粒子を含有させるだけでは、該粒子によりフィルム表
面上に突起状に突出する部分については硬度が高められ
耐摩耗性は向上されるものの、フィルムの地肌(上記突
出部以外の表面部)自身については補強されないため、
この地肌部分にかき傷が入るおそれがある。また、地肌
部分が補強されない結果、フィルム表面部にある粒子の
保持力が十分とはいえず、接触するロール等から受ける
外力によって粒子部が脱落するおそれがあり、脱落する
と、それがロール表面等に付着し該付着物によってさら
にフィルム表面が傷付けられるおそれがある。
また、ベースフィルムに磁性層を塗布した後には、そ
のフィルムは通常ロール状に巻き取られる。したがって
巻取時には、磁性面とベースフィルムの磁性層塗布と反
対側の面とが接触することになる。このとき、ベースフ
ィルムの面に形成されている、前記含有粒子による突起
が硬すぎると、磁性面を傷付けるおそれがある。とく
に、両面間に相対ずれ速度が生じたり、あるいは含有粒
子がフィルム粉としてフィルム表面から脱落し、該脱落
粉がベースフィルム面と磁性面との間に巻き込まれた場
合に、傷が生じやすい。
本発明は、上記のような問題点に着目し、二軸配向ポ
リエステルフィルムの表面の耐スクラッチ性を向上する
とともに、該フィルムに磁性層を塗布した後の磁性面の
傷付きを防止することを目的とする。
[課題を解決するための手段] この目的に沿う本発明な二軸配向ポリステルフィルム
は、二種の不活性粒子A、Bを含有し、粒子Aが、平均
粒径d1が10〜500nm、モース硬度が6以上、含有量が0.2
〜2.0重量%、粒子Bが平均粒径d2が300〜1500nmでかつ
前記粒子Aの平均粒径d1よりも大、モース硬度が6未
満、含有量が0.005〜0.15重量%であり、かつ、前記粒
子Aのモース硬度と前記粒子Bのモース硬度との差が2
以上であるものから成る。
本発明におけるポリエステルは、エチレンテレフタレ
ート、エチレンα・β−ビス(2−クロルフェノキシ)
エタン−4、4′−ジカルボキシレート、エチレン2,6
−ナフタレート単位から選ばれた少なくとも一種の構造
単位を主要構成成分とする。ただし、本発明を阻害しな
い範囲内、好ましくは15モル%以内であれば他成分が共
重合されていてもよい。
また、エチレンテレフタレートを主要構成成分とする
ポリエステルの場合に耐スクラッチ性がより良好となる
ので特に望ましい。
本発明のフィルムには、二種の不活性粒子A、Bが含
有される。
粒子Aは、平均粒径d1が10〜500nmの比較的小さな粒
子である。平均粒径がこの範囲よりも小さいと耐スクラ
ッチ性が不良となり好ましくない。また、粒子Aはモー
ス硬度が高いので粒子Aにより形成されるフィルム表面
の突起も硬くなるが、粒子Aの平均粒径が上記範囲より
も大きくなると、粒子Aによって形成されたフィルム表
面突起により磁性面が傷付けられやすくなるので、好ま
しくない。また一般に、含有粒子の粒径が大きくなりす
ぎると、該粒子によるフィルム地肌補強効果が低下す
る。後述の如く粒子Aは、主としてフィルム地肌の補強
を担うので、この点からも平均粒径範囲の上限は上記の
如く抑えられている。
粒子Aは、モース硬度が6以上である。これよりも小
さいと、フィルム地肌補強効果が小さくなり、望ましい
耐スクラッチ性が得られない。
また粒子Aの含有量は0.2〜2.0重量%の範囲に調製さ
れる。この範囲よりも少ないと、粒子A含有によるフィ
ルム地肌補強効果が薄れ、望ましい耐スクラッチ性が得
られない。この範囲よりも多いと、含有物が多くなりす
ぎるので、構造的にフィルム自身が削り取られやすくな
ったり、含有粒子が脱落しやすくなったり、フィルム粉
や脱落粒子によって磁性面、フィルム面が傷付けられや
すくなるので好ましくない。
粒子Bは、平均粒径d2が300〜1500nmの比較的大きな
粒子であり、かつ、その平均粒径d2は粒子Aの平均粒径
d1よりも大きく設定される(d2>d1)。この粒子Bは、
比較的大きな粒子であるため、該粒子によって形成され
るフィルム表面突起の高さを、粒子Aによるものよりは
高くでき、その部分の表面粗さを粗くできる。粗くなる
と、摩擦係数を低減できるので、結果的にフィルム表面
の耐スクラッチ性が良くなるが、平均粒径d2が上記範囲
よりも小さいと、フィルム表面を粗くする効果が小さく
なり、その分耐スクラッチ性が悪くなるので、好ましく
ない。逆に上記範囲よりも大きいと、粒子B自身あるい
は粒子Bにより形成された表面突起部分が脱落しやすく
なり、脱落したものが磁性面、フィルム面を傷付ける機
会が増えるので、好ましくない。
粒子Bのモース硬度は6未満とされる。粒子Bは、主
に、フルム表面を粗くしてその摩擦係数を下げることに
寄与するが、モース硬度が6以上であると、粒子Bによ
り形成されたフィルム表面の突起が硬くなりすぎるた
め、該突起により磁性面に傷を付けるおそれがある。逆
に粒子Bのモース硬度が低くなり過ぎると、フィルム表
面に有効な突起を形成しにくくなったり、突起が形成さ
れても該突起が接触面圧等に対し十分なポリエステルと
の親和性を有しないため、摩擦係数低減効果が小さくな
り、望ましい耐スクラッチ性を得にくくなる。モース硬
度下限値は、好ましくは2である。またこの値は、フィ
ルムを補強したり摩擦係数を低減させたりするために含
有される粒子の、実質的な製造上の限界でもある。
粒子Bの含有量は0.005〜0.15重量%の範囲に調製さ
れる。この範囲よりも少ないと、粒子B含有による摩擦
係数低減効果が薄れるので、望ましい耐スクラッチ性が
得られないとともに、粒子Bによる高いフィルム表面突
起の数が少なくなり、磁性面が粒子Aによる硬い突起に
接触する機会が急増するので、磁性面の傷付き防止性能
が低下する。逆に上記範囲よりも多いと、粒子Bあるい
は粒子Bによるフィルム表面突起部分が脱落しやすくな
り、脱落したものによって磁性面、フィルム面が傷付け
られやすくなるので、好ましくない。
粒子Aと粒子Bとの関係において、平均粒径d1とd2
の大小関係については前述の如くd2>d1とされる。d1
d2であると、ベースフィルム面と磁性面とが巻き取り時
等に接触する場合、粒子Aによる硬いフィルム表面突起
が直接磁性面に接触することになり、該突起が磁性面に
傷を付けるため好ましくない。つまり、本発明において
は、d1およびd2の採り得る範囲は重複しているものの、
d1<d2とすることが必要である。
また、本発明においては、粒子Aのモース硬度と粒子
Bのモース硬度との差を2以上と、特定値以上に大きく
とる。この差をこのように大きくとることにより、粒子
Aはより硬くなる傾向となってフィルム地肌補強効果が
構造され、粒子Bはより柔かくなる傾向になって粒子B
による表面突起が磁性面を傷付けにくくなるので、本発
明で目的とする、耐スクラッチ性向上と磁性面の傷付き
防止とを両立させることができ、目標とする優れた表面
特性が得られる。
不活性粒子A、Bの具体的な材質としては、上述の要
件を満たす限り特に限定されないが、ポリエステルとの
親和性の良いものが好ましい。親和性が良いと、含有さ
れる粒子が凝集しにくいため容易に均一分散され、ま
た、フィルム母材との結合力を高く保持できるため粒子
あるいは粒子により形成されたフィルム表面突起が脱落
しにくくなる。そのような不活性粒子として、粒子Aの
材質については、たとえばジルコニア、窒化チタン、α
−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナが挙げられ、
粒子Bの材質については、たとえば燐酸カルシウム、炭
酸カルシウムが挙げられる。
本発明は上記組成物を主成分とするが、本発明の目的
を阻害しない範囲内で他種ポリマをブレンドしても良い
し、また酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤な
どの無機または有機添加剤が通常添加される程度添加さ
れていてもよい。
本発明フィルムは上記組成物を二軸配向せしめたフィ
ルムである。未延伸フィルム、一軸配向フィルムでは、
耐スクラッチ性が不良となり、粒子あるいは粒子により
形成されたフィルム表面突起が脱落しやすくなるので好
ましくない。
また、その二軸配向の程度を表わす面配向指数は特に
限定されないが、0.935〜0.975、特に0.940〜0.970の範
囲である場合に耐スクラッチ性、耐脱落性がより一層良
好となるので望ましい。また、本発明フィルムの密度指
数は、0.02〜0.05の範囲である場合に耐スクラッチ性、
耐脱落性がより一層良好となるので特に望ましい。
また、本発明フィルムは、幅方向の表面平均粗さRaが
0.005〜0.030μm、特に、0.007〜0.025μmの範囲にあ
る場合に耐スクラッチ性がより一層良好となるので特に
望ましい。
本発明におけるフィルムの摩擦係数μKが0.20〜0.35
の範囲にある場合に、耐スクラッチ性がより一層良好と
なるので特に望ましい。
また本発明フィルムの表面固有抵抗が1×1015Ω・cm
よりも小さい場合に耐スクラッチ性、耐脱落性が一層良
好となるので特に望ましい。この値以上になると、脱落
したフィルム粉が静電気等により塊状になりやすくな
り、塊状になったフィルム粉はベースフィルムの面や磁
性面を傷付けることがあるので、望ましくない。
次に本発明フィルムの製造方法について説明する。
まず、所定のポリエステルに不活性粒子A、Bを含有
せしめる方法としては、重合前、重合中、重合後のいず
れに添加してもよいが、ポリエステルのジオール成分で
あるエチレングリコールに、スラリーの形で混合、分散
せしめて添加する方法が有効である。また、粒子の含有
量を調節する方法としては、高濃度のマスターペレット
を製膜時に稀釈する方法が有効である。粒子A、Bを用
いて、高濃度、好ましくは1〜5重量%のマスターペレ
ットの溶融粘度、共重合成分を調整して、ガラス転移点
Tgと冷結晶化温度Tccとの差(Tcc−Tg)を、65〜110
℃、とくに75〜100℃にしておくことが、きわめて有効
である。
また、不活性粒子A、Bは、エチレングリコールに分
散させたスラリーを重合反応前、または重合反応中に添
加するのが本発明範囲の平均粒径を得るのに有効であ
る。
なお、本発明においては、不活性粒子A、Bをそれぞ
れ別に含有する高濃度マスターのポリエステルを製造し
てもよいが、重合時あるいはマスターペレット製造時に
予め所定の混合比で粒子A、Bを高濃度で入れておき、
作成されたマスターペレットをフィルム製造段階で他の
チップ、ペレットにより稀釈して所定の濃度にする方法
が最も好ましい。
かくして、所定量の不活性粒子A、Bを含有するポリ
エステルペレットを十分乾燥させた後、公知の溶融押出
機に供給し、270℃〜330℃でスリット状のダイからシー
ト状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せし
めて未延伸フィルムを作る。この未延伸フィルムを作る
場合、キャスト時のドラフト比(口金のスリット幅/未
延伸フィルムの厚み)は、16倍以上の高い値であること
が好ましい。高ドラフトキャストを行なうと粒子が表層
部へ集中するという特異な現象が起こり、粒子A、Bに
それぞれねらった機能を発揮させやすくなるため、この
ような高ドラフトキャストを行なうことが本発明におい
て特に有効である。
次にこの未延伸フィルムを二軸延伸し二軸配向せしめ
る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法、または同時二
軸延伸法を用いることができる。逐次二軸延伸法の場合
は長手方向、幅方向の順に延伸するのが一般的であるの
が、この順を逆にして延伸してもよい。二軸延伸の条件
は延伸方法、ポリマの種類などによって必ずしも一定で
はないが、通常長手方向、幅方向ともに80〜160℃、好
ましくは90〜150℃の範囲で、延伸倍率はそれぞれ3.0〜
5.0倍、好ましくは3.2〜4.5倍の範囲が、また延伸速度
は1000〜70,000%/分の範囲が好適である。
次にこの延伸フィルムを熱処理する。熱処理条件は定
長下、および幅方向に1〜15%、好ましくは2〜10%の
弛緩下で、また、幅方向に1.01〜1.2倍、好ましくは1.0
5〜1.15倍微延伸下で、150〜230℃、好ましくは170〜22
0℃の範囲で0.5〜60秒間が好適である。
[作用] 上記の如き本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに
おいては、平均粒径d1が小さく、モース硬度が高く、か
つ含有量の多い粒子Aによって、フィルム地肌部が十分
に補強され、耐スクラッチ性が大幅に向上されつつ、平
均粒径d2が大きく、モース硬度が低く、かつ含有量の少
ない粒子Bによってフィルムの表面が粗くされ、摩擦係
数が下げられて一層スクラッチ性が向上されるととも
に、フィルム表面に形成された粒子Bによる突起が柔か
く保たれることにより、ベースフィルム面が磁性面に接
触する場合の磁性面の傷付きが防止される。そして、粒
子Aのモース硬度と粒子Bのモース硬度との差を2以上
とすることにより、耐スクラッチ性向上と磁性面の傷付
き防止とが両立され、ともに優れた効果が得られる。ま
た、粒子Aによりフィルム地肌が補強される結果、粒子
Bあるいは粒子Bにより形成されるフィルム表面突起の
保持力も増大されるので、それらが脱落しにくくなり、
脱落物によるベースフィルム面や磁性面の傷付きが一層
確実に防止される。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法] 本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は
次の通りである。
(1)粒子の含有量(%) ポリエステル1gをプラズマ装置で灰化させ、原子吸光
分析装置(たとえば島津製作所製AA−680型)を用いて
ポリエステル中の各元素の量を定量し、その元素からな
る粒子の量を粒子の分子量から換算して、重量%として
求める。尚、粒子の化学組成はX線回折などの方法で知
ることができる。
また、必要に応じて、螢光X線分析法や、熱分解ガス
クロマトグラフィー、赤外線吸収、ラマン散乱などを用
いて定量することもできる。
(2)粒子の平均粒径(nm) 粒子を含有したフィルムを、フィルム平面に垂直に厚
さ1000Åの超薄切片とし、透過型電子顕微鏡(例えば日
本電子製JEM−1200EXなど)を用いて粒子を観察し、100
視野について平均した値を平均粒径とした。但し、ここ
で、平均粒径とは一次粒子の平均粒径であり、粒子が凝
集状態にある場合でも個々の一次粒子の実効径から求め
たものをいう。
(3)モース硬度 フィルムに添加する粒子と同じ組成、構造をもった試
験片を測定し、または粒子に粉砕する前の鉱物を試験片
とし、モース硬度測定用の標準鉱物と互いに引っかい
て、引っかきが行われるかどうかで硬さ数を0.1の単位
まで測定する。
(4)面配向指数 ナトリウムD線(波長589nm)を光源としてアッベ屈
折率計を用いて、二軸配向フィルムの厚さ方向の屈折率
(Aとする)および溶融プレス後10℃の水中へ急冷して
作った無配向(アモルファス)フィルムの厚さ方向の屈
折率(Bとする)を測定し、A/Bをもって面配向指数と
した。マウント液にはヨウ化メチレンを用い、25℃、65
%RHにて測定した。
(5)ガラス転移点Tg、冷結晶化温度Tcc パーキンエルマー社製のDSC(示差走査熱量計)II型
を用いて測定した。DSCの条件ほ次の通りである。すな
わち、試料10mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5
分間溶融した後、液体窒素中で冷却する。この急冷試料
を10℃/分で昇温し、ガラス転移点Tgを検知する。さら
に昇温を続け、ガラス状態からの結晶化発熱ピーク温度
をもって冷結晶化温度Tccとした。ここで、TccとTgの差
(Tcc−Tg)をΔTc gと定義する。
(6)密度指数 n−ヘプタン/四塩化炭素からなる密度勾配管を用い
て測定したフィルムの密度をρ(g/cm3)とし、この
フィルムを溶融プレス後、10℃の水中へ急冷して作った
無配向(アモルファス)フィルムの密度ρとの差(ρ
−ρ)をもって密度指数とした。
(7)摩擦係数μk テープ走行性試験機TBT−300型[株式会社横浜システ
ム研究所製]を使用し、20℃、60%RH雰囲気で走行さ
せ、初期のμK(摩擦係数)を下記の式より求めた。
μK=0.733log(T1/T0) ここで、T0は入側張力、T1は出側張力である。ガイド
径は6mmΦであり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.2
S)、巻き付け角は180゜、走行速度は3.3cm/秒である。
(8)表面固有抵抗 超絶縁計[川口電機製作所株式会社製]VE−40型を使
用して測定した。
(9)耐スクラッチ性 テープ走行試験機TBT300D/H型[株式会社横浜システ
ム研究所]を使用し、フィルムを幅1/2インチのテープ
状にスリットし、張力30g、走行速度250m/分で、ビデオ
カセットのテープガイドピン(表面粗さがRtで2500nm程
度の表面を持ったステンレス製ガイドピン)上を巻付角
60゜で60m走行させ、その時につく傷の量を次の基準に
したがい目視で判定した。
まったく傷のないもの………5点 浅い傷のあるもの……………3点 深い傷のあるもの……………1点 また、5点と3点の中間を4点、3点と1点の中間を
2点とした。この時、3点以上を耐スクラッチ性良好、
3点未満を耐スクラッチ性不良とした。
この時の判定で3点未満のフィルムは、フィルムの加
工時や製品としたときの走行時にフィルム表面が摩耗し
て深い傷が発生するため、製品の品質が著しく悪くな
る。
(10)磁性面の傷 市販のビデオテープ(TDK製HS−120)を磁性面に表に
して張力100gで直径7mmのピンの円周方向にテープの長
手方向を巻き付ける。さらに1/2インチ幅にスリットし
た評価フィルムを巻き付け角60度、張力50gでビデオテ
ープの長手方向に評価フィルムの長手方向を合わせて巻
き付け、評価フィルムを走行速度20cm/分で5cmを10往復
させる。この時磁性面に発生した傷を観察し、ほとんど
傷がない場合を磁性面傷:良好、テープ幅あたり傷が10
本以上入った場合を磁性面傷:不良と判定した。
[実施例] 本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1〜14 不活性粒子Aとして、平均粒径d1がそれぞれ異なるが
本発明範囲内であり、モース硬度が本発明範囲内に入
る、ジルコニア、窒化チタン、α−アルミナ、γ−アル
ミナ、δ−アルミナ粒子を選び、粒子Bとして、平均粒
径d2がそれぞれ異なるが本発明範囲内であり、モース硬
度が本発明範囲内に入る、燐酸カルシウム、炭酸カルシ
ウム粒子を選び、それぞれ、エチレングリコール中に均
一に分散させ、195℃で2時間熱処理したのち、テレフ
タル酸ジメチルとエステル交換反応後重縮合し、各粒子
を本発明で規定した範囲よりは相当高い濃度で含有する
ポリエステルを作成し、それをマスターペレットにし
た。
各マスターペレットと、粒子を含有していないポリエ
ステルペレットとを、粒子Aおよび粒子Bが本発明の含
有率の範囲となるように混合し、混合したペレットを18
0℃で3時間減圧乾燥(3Torr)した。このペレットを押
出機に供給し、290℃で溶融押出し、静電印加キャスト
法を用いて表面温度30℃入のキャスティング・ドラムに
巻き付けて冷却固化し厚さ約180μmの未延伸フィルム
を作った。このときのドラフト比は22であった。
この未延伸フィルムを90℃にて長手方向に3.4倍延伸
した。この延伸は2組のロール周速差で行なわれ、延伸
速度は10000%/分であった。この一軸フィルムをステ
ンターを用いて延伸速度3000%/分100℃で幅方向に3.6
倍延伸し、幅方向に1.05倍微延伸させつつ、210℃にて
5秒間熱処理し、厚さ15μmの二軸配向ポリエステルフ
ィルムを得た。これらのフィルムの性能は第1表に示し
た通り、不活性粒子A、Bの平均粒径、モース硬度、含
有量が本発明範囲であるので、耐スクラッチ性、磁性面
の傷防止性ともに優れたフィルムが得られた。
比較例1〜10 不活性粒子A、Bの平均粒径が本発明の範囲から外れ
るもの、含有量が本発明の範囲から外れるもの、およ
び、前述の使用粒子の組合せを変えてモース硬度に関し
本発明の範囲から外れるものについて、それぞれ前記実
施例と同一の製造方法にて厚さ15μmの二軸配向ポリエ
ステルフィルムを得た。これらのフィルムの性能は第2
表に示した通り、粒子A、Bの平均粒径、モース硬度、
含有量のいずれが本発明の範囲から外れても、耐スクラ
ッチ性、磁性面の傷防止性を両立させることのできるフ
ィルムは得られなかった。なあ、実施例、比較例ととも
にポリエステルはポリエチレンテレフタレートであっ
た。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明によれば、特定の範囲の
平均粒径、モース硬度、含有量およびモース硬度の差を
有する二種の不活性粒子A、Bを含有する二軸配向ポリ
エステルフィルムとしたので、最近の苛酷な使用条件に
も耐え得る、優れた耐スクラッチ性、磁性面の傷付き防
止性能を備えたフィルムが得られる。
なお本明細書においては、本発明のフィルムにより優
れた磁性面の傷付き防止性能が得られることから磁気テ
ープ用ベースフィルムに的を絞って説明したが、本発明
のフィルムは同時に優れた耐スクラッチ性を有するの
で、本発明フィルムを他の用途にも適用できることはい
うまでもない。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29L 7:00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二種の不活性粒子A、Bを含有し、粒子A
    は、平均粒径d1が10〜500nm、モース硬度が6以上、含
    有量が0.2〜2.0重量%、粒子Bは、平均粒径d2が300〜1
    500nmでかつ前記粒子Aの平均粒径d1よりも大、モース
    硬度が6未満、含有量が0.005〜0.15重量%であり、か
    つ、前記粒子Aのモース硬度と前記粒子Bのモース硬度
    との差が2以上であることを特徴とする二軸配向ポリエ
    ステルフィルム。
  2. 【請求項2】表面固有抵抗が1×1015Ω・cmよりも小さ
    い請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
JP1035118A 1989-01-11 1989-02-16 二軸配向ポリエステルフィルム Expired - Fee Related JP2734601B2 (ja)

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