JP2722795B2 - 楽音合成装置 - Google Patents

楽音合成装置

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、遅延手段とフィルタ手段を含む閉ループ
に駆動波形信号を入力して該閉ループ内にて循環処理し
楽音を合成する楽音合成装置、いわゆる遅延フィードバ
ック形楽音合成アルゴリズムを用いた楽音合成装置に関
し、特に、電子楽器用として自然楽器に近い楽音制御が
可能な楽音合成装置に関する。
[従来技術] 特公昭58−58679号には、フィルタと遅延回路とをル
ープ状に接続し、そこに駆動波形信号を入力することに
よって楽音を合成する技術が示されている。この技術に
よれば、それ以前の波形読み出し方式のものに比べて、
振幅、高周波含有率、高周波位相関係等が時間とともに
大きく変化する、自然楽器により近似した楽音を形成す
ることができる。
一方、近年の電子楽器においては、タッチによって各
種の特性を可変する技術が一般的になってきている。こ
の技術によれば、自然楽器に見られるタッチによるピッ
チのゆらぎや非調和的倍音の発生という現象を再現する
ことができる。
しかしながら、前記特公昭58−58679号に開示された
ような遅延フィードバック形楽音合成アルゴリズム系に
おいては、タッチに基づいて各種の特性を可変するため
の具体的な手段は未だ開示されていない。
[発明が解決しようとする課題] この発明は、遅延フィードバック形楽音合成アルゴリ
ズムを用いた楽音合成装置において、タッチによって楽
音を制御する一つの方式を示すとともに、特に、タッチ
によって各種の特性を可変でき、自然楽器に見られるタ
ッチによるピッチのゆらぎや非調和的倍音の発生という
現象を再現することが可能な楽音合成装置を提供するこ
とを目的とする。
[課題を解決するための手段] 前記の目的を達成するため、この発明の楽音合成装置
は、入力される信号を遅延する第1の遅延手段(23)
と、第2の遅延手段(33)と演算手段(31,32)とを有
し所定のパラメータ(n,α)に従って動作するオールパ
スフィルタ(25)と、前記第1の遅延手段と前記オール
パスフィルタを閉ループ状に接続する閉ループ手段(遅
延フィードバックループ)と、外部から供給されたタッ
チ情報(IT)が所定値以上であるか否かを判定する比較
手段(27)と、時間的に変化する1つの制御信号を発生
するとともに、前記タッチ情報に応じて、前記制御信号
の時間変化特性を制御する制御信号発生手段(28)と、
前記比較手段で前記タッチ情報が所定値以上でないと判
定された場合には、前記オールパスフィルタの特性を設
定するためのパラメータ(n,α)を時間変化させず、前
記比較手段で前記タッチ情報が前記所定値以上であると
判定された場合には、前記1つの制御信号に基づいて、
前記オールパスフィルタの特性を設定するためのパラメ
ータである前記第2の遅延手段の遅延時間(n)と前記
演算手段における演算に用いる係数(α)との両者を制
御し時間変化させる制御手段(26,29)と、前記比較手
段における判定で用いられる所定値を設定する設定手段
(16,11)とを具備し、駆動信号を前記閉ループ手段に
入力するとともに、前記閉ループ手段を循環する信号を
外部へ出力するようにしたことを特徴とする。ここで、
括弧内の符号は、実施例において対応する要素を示す。
[作用および効果] オールパスフィルタは、所定の使用帯域において、振
幅特性が平坦で、位相のみが周波数に依存するフィルタ
である。一方、前記遅延フィードバックループの遅延総
量は、出力すべき楽音のピッチ(音高)に対応する。位
相遅れも遅延の一種であるから、前記オールパスフィル
タの特性を制御することにより、前記遅延総量を制御す
ることができ、出力すべき楽音のピッチを制御すること
ができる。
この発明においては、フィルタの特性をタッチによっ
て制御するようにしたので、タッチによって楽音を制御
することができる。特に、フィルタ手段にオールパスフ
ィルタ特性を付与し、このオールパスフィルタ特性をタ
ッチによって制御するとともに、タッチが所定値以上で
あるときのみ、オールパスフィルタの特性を設定するた
めのパラメータを時間変化させるようにしたため、例え
ば、ギター等の弦楽器においては、弦を普通に弾いた場
合には弦の材質等により決定される所定の音色の楽音を
発生するが、弦を非常に強く弾いたり弦をひっかけるよ
うに弾く場合、すなわち弦の機械的変形を大きくして弦
を励振する場合は、生じる倍音の非調和性やピッチずれ
が強まり(特に弦の変形の大きい期間での発音時、すな
わち楽音の立ち上がり時)、より金属的なイメージの音
色の楽音が発生される、という現象を模倣することがで
きる。すなわち、自然楽器に見られるタッチによるピッ
チのゆらぎや、非調和的倍音の発生という現象を忠実に
再現することができる。
また、制御信号によりオールパスフィルタの演算係数
(α)のみならず遅延時間(n)も制御するようにした
ので、演算係数(α)のみを変更する場合に比してオー
ルパスフィルタの位相特性を大きく変化させることがで
きる。さらに、1つの制御信号により遅延時間(n)と
演算係数(α)の両者を制御するようにしたので、オー
ルパスフィルタの位相特性の制御を木目細かく行なうこ
とができ、最適な位相特性制御が可能になる。
第4図は、特公昭58−58679号に開示されたと同様の
音源回路(楽音合成装置)を示す。同図において、アド
レス発生器21は、図示しないCPU等からの発音指令等に
基づいてアドレス信号を発生する。駆動波形メモリ22は
このアドレス信号に基づいて駆動波形信号を発生し、遅
延回路23とフィルタ24とからなる閉ループに注入する。
これにより、前記駆動波形信号が前記閉ループ内で回帰
演算処理され、楽音信号が合成される。従来、フィルタ
24は通常、ローパスフィルタであり、ここにオールパス
フィルタを用いた例も知られているが、その特性をタッ
チに基づいて制御する例は知られていない。
[実施例] 以下、図面を用いてこの発明の実施例を説明する。
第1図は、この発明の一実施例に係る電子鍵盤楽器の
全体構成を示す全体ブロック図である。
この電子鍵盤楽器は、中央処理装置(CPU)10を用い
てその全体動作を制御するように構成されたもので、CP
U10には双方向バスラインBUSを介して、リードオンリメ
モリ(ROM)11、ランダムアクセスメモリ(RAM)12、鍵
盤回路13、タッチ情報検出回路14、操作パネル16および
音源回路17が接続されている。さらに、音源回路17に
は、サウンドシステム18が接続され、サウンドシステム
18にはスピーカ19が接続されている。
第1図において、ROM11には、CPU10の制御プログラム
や、各種楽音発生のために必要なデータが格納されてい
る。
RAM12は、楽音発生時の一時記憶や、各種楽音発生の
ために必要なレジスタに用いられる。
鍵盤回路13は、タッチ検出可能な鍵盤(図示せず)を
備えるとともに、前記鍵盤における鍵操作を検出し、操
作された鍵を表わすキーコードKCおよびその操作状態を
表わすキーオンKONまたはキーオフKOFF信号を発生す
る。
タッチ情報検出回路14は、前記鍵盤において操作され
た鍵の押鍵および離鍵速度を検出し、押鍵速度を表わす
イニシャルタッチ情報ITおよび離鍵速度を表わすリリー
スタッチ情報RTを発生する。
操作パネル16は、音色切換や、その他電子楽器に必要
なパラメータの設定を行なうためのものである。
音源回路17は、CPU10から与えられるパラメータに基
づいて楽音信号を合成する。
サウンドシステム18は音源回路17の出力するディジタ
ルデータを、スピーカ19を駆動するためのアナログデー
タに変換し、必要に応じて増幅する。
第2図は、第1図における音源回路17の詳細を示す。
この音源回路17は、タッチによってフィルタ係数を可変
とするようにしたもので、第4図に示す従来例に対し、
フィルタ24と直列にオールパスフィルタ25を接続し、か
つフィルタ25にフィルタ係数を与えるためのフィルタ係
数発生回路を付加したものである。
第2図において、遅延回路23、ローパスフィルタ24お
よびオールパスフィルタ25は、遅延フィードバックルー
プを構成し、変換テーブル26、比較器27およびピッチエ
ンベロープジェネレータ28はフィルタ係数発生回路を構
成する。
アドレス発生器21は、CPU10(第1図)から、メモリ
読み出しスタート信号ST、ならびにメモリ読み出し開始
点(スタートポイント)SPおよび読み出しデータのサイ
ズ(データサイズ)DSの各情報を与えられ、これらの信
号および情報に基づいて駆動波形メモリ22読み出し用の
アドレス情報を発生する。
駆動波形メモリ22は、このアドレス情報によりアドレ
スされて駆動波形を出力し、この駆動波形を前記遅延回
路23とフィルタ24,25とからなるループに注入する。
遅延回路23は、入力を単に遅延するのもので、シフト
レジスタまたはRAM等により構成することができる。DL
は遅延回路23の遅延段数を示し、遅延回路23がシフトレ
ジスタにより構成されている場合には、そのシフトレジ
スタの段(ステージ)数である。
フィルタ24は、前記従来技術として挙げた第4図の音
源に用いられているフィルタ24と同様の意味を持つフィ
ルタである。すなわち、フィルタ24は、出力楽音の周波
数特性と、減衰特性を実現するために用いられる。フィ
ルタ24は、通常、ローパスフィルタであるが、バンドパ
スフィルタ等を用いてもよい。フィルタ24に供給される
制御信号(フィルタパラメータ)FPSとしては、フィル
タのカットオフ周波数または減衰率等がCPU10より与え
られる。あるいは、FIRやIIRのようにアナログ的な扱い
の困難な通常のディジタルフィルタを用いた場合におい
ては、フィルタ係数の組を与える。
オールパスフィルタ25は、この発明の特徴とするもの
である。
変換テーブル26、比較器27およびピッチエンベロープ
ジェネレータ28からなるフィルタ係数発生回路は、オー
ルパスフィルタ25のフィルタ係数αおよびnを設定する
ためのものである。
フィルタ係数αを決定するためには、まず、比較器27
において、CPU10から供給されるイニシャルタッチ情報I
Tとスレッショルド情報TOが比較される。これは、ピッ
チ変化の効果をあるスレッショルド以上のときに限って
実現するためである。スレッショルド情報TOは、演奏者
によって操作パネル16から与えられてもよいし、音色に
対応して予めROM11にプリセットされた情報を用いるよ
うにしてもよい。タッチによるピッチ変化をつけたくな
いときは、操作パネル16において設定されるスレッショ
ルド情報TOを最大にすることによってそれを実現するこ
とができる。また、スレッショルド情報がROM11にプリ
セットされている場合は、別にスイッチを設けてピッチ
変化をさせるか否かを選択できるようにしてもよい。
ピッチエンベロープジェネレータ28は、CPU10から与
えられるイニシャルタッチITとキーコードKCをもとに、
ピッチエンベロープカーブを出力する。このピッチエン
ベロープカーブをイニシャルタッチITに依存させる理由
は、タッチがきついほどピッチのずれが大きい方が自然
楽器演奏時の実際の感覚に良く対応しているからであ
る。また、キーコードKCに依存させる理由、すなわちキ
ースケーリングする理由は、高音は一般に減衰が急激で
あるので、それに対応してピッチエンベロープも急激に
変化させなければならないからである。
ピッチエンベロープジェネレータ28の後段の乗算器29
は、ピッチエンベロープジェネレータ28の出力と比較器
27の出力とを乗算することによって、フィルタ25に対し
てピッチ変化を付けるかつけないかを実現する。すなわ
ち、比較器27の出力が0のときは、ピッチエンベロープ
ジェネレータ28の出力にかかわらず乗算器29の出力が0
となり、ピッチ変化しない。比較器27の出力が1のとき
は、ピッチエンベロープジェネレータ28の出力がそのま
ま乗算器29の出力となって、変換テーブル26に与えられ
る。
変換テーブル26は、ピッチエンベロープジェネレータ
28の出力を、実際のピッチ変化に対応したオールパスフ
ィルタ25のフィルタ係数αに変換するテーブルである。
また、変換テーブル26は、前記キーコードKCをもう1つ
のフィルタ係数であるディレイ段数nに変換するテーブ
ルでもある。このテーブルによって得られた係数αおよ
びnがフィルタ25に与えられる。
第3図は、一般的な1次オールパスフィルタの構成例
を示す。途中の乗算器31,32の乗算係数αを変化させる
ことによって位相をさまざまに変化させることができ
る。例えば、乗算係数αが0であったときは、このオー
ルパスフィルタは単なる1段のディレイとなり、すべて
の周波数にわたって等しい遅延時間をもつ。一般に、こ
の構成のオールパスフィルタでは、乗算係数αが1に近
づくにつれて周波数による位相のずれが大きくなってい
く。
第3図のオールパスフィルタには、キーコードKCに応
じたディレイ段数nがディレイ回路(例えばシフトレジ
スタ)33の段数nとして、また、キーコードKCおよびイ
ニシャルタッチITに依存してピッチエンベロープジェネ
レータ28(第2図)から出力される時間的に変化する係
数αが乗算器31,32の乗算係数αとして、第2図の変換
テーブル26から供給される。これにより、第2図の音源
回路17では、これらの係数αおよびnに応じてピッチが
変化する楽音が合成される。
以上のように、遅延フィードバックループ中にオール
パスフィルタを設け、特に、非調和倍音成分の制御をタ
ッチ情報に基づいて行なうことにより、自然楽器に近い
楽音制御を行なうことができる。
[実施例の変形例] なお、この発明は上述の実施例に限定されることな
く、適宜変形して実施することができる。
例えば、上述の実施例においては、タッチによってオ
ールパスフィルタの係数を操作してピッチを変調してい
るが、併せてタッチによって遅延回路の遅延時間を変化
させることによって、さらに大きな範囲までの周波数の
変化を得ることができる。
また、この発明は、ソフトウエアによる実現に限ら
ず、ハードウエアを用いて実現するようにしてもよい。
上述の実施例においては、第2図に示すように、フィ
ルタ手段をローパスフィルタとオールパスフィルタとに
分割した例を示したが、全部をオールパスフィルタで構
成しても良い。
上述においては、1次のオールパスフィルタを用いた
が、複数次のオールパスフィルタを用いるようにしても
よい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の一実施例に係る電子楽器の全体構
成を示すブロック図、 第2図は、第1図における音源回路の具体例を示すブロ
ック図、 第3図は、第2図におけるオールパスフィルタの具体例
を示すブロック図、 そして 第4図は、従来の音源回路の具体例を示すブロック図で
ある。 10:中央処理装置(CPU) 13:鍵盤回路 14:タッチ情報検出回路 16:操作パネル 17:音源回路 21:アドレス発生器 22:駆動波形メモリ 23:遅延回路 24:フィルタ 25:オールパスフィルタ 26:変換テーブル 28:ピッチエンベロープジェネレータ 31,32:乗算器 33:遅延回路

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】入力される信号を遅延する第1の遅延手段
    と、 第2の遅延手段と演算手段とを有し所定のパラメータに
    従って動作するオールパスフィルタと、 前記第1の遅延手段と前記オールパスフィルタを閉ルー
    プ状に接続する閉ループ手段と、 外部から供給されたタッチ情報が所定値以上であるか否
    かを判定する比較手段と、 時間的に変化する1つの制御信号を発生するとともに、
    前記タッチ情報に応じて、前記制御信号の時間変化特性
    を制御する制御信号発生手段と、 前記比較手段で前記タッチ情報が所定値以上でないと判
    定された場合には、前記オールパスフィルタの特性を設
    定するためのパラメータを時間変化させず、前記比較手
    段で前記タッチ情報が前記所定値以上であると判定され
    た場合には、前記1つの制御信号に基づいて、前記オー
    ルパスフィルタの特性を設定するためのパラメータであ
    る前記第2の遅延手段の遅延時間と前記演算手段におけ
    る演算に用いる係数との両者を制御し時間変化させる制
    御手段と、 前記比較手段における判定で用いられる所定値を設定す
    る設定手段とを具備し、 駆動信号を前記閉ループ手段に入力するとともに、前記
    閉ループ手段を循環する信号を外部へ出力するようにし
    たことを特徴とする楽音合成装置。
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