JP2719667B2 - エステル交換脂の製造法 - Google Patents

エステル交換脂の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、油脂と脂肪酸、油脂と油脂、油脂と脂肪酸
エステルとの間の連続エステル交換反応を生起せしめる
ことにより、付加価値の高いエステル交換脂を効率的、
且つ、安価に製造するエステル交換脂の製造方法に関す
る。
更に詳しくは、従来不可能であった極めて微量水分領
域での油脂と脂肪酸、油脂と油脂、油脂と脂肪酸エステ
ルとの間の連続エステル交換反応を強く生起することの
出来るアルカリ性高分子量リパーゼを連続反応槽に充填
し、エステル交換反応を何等の脱水を行なうことなく連
続的に行なうことにより効率良くエステル交換脂を製造
する方法に関する。
〔従来の技術〕
油脂のエステル交換反応は油脂の化学的組成、物理的
性質の転換を通じて油脂の改質に有効な手段である。
エステル交換反応には化学的方法と酵素的方法が知ら
れている。化学的エステル交換反応は、金属ナトリウ
ム、ナトリウムメチラート等の無機触媒を用いて高温下
に反応し、マーガリン、ショートニング等の加工油脂製
造に応用されている。
しかし化学的エステル交換反応は酵素反応に比べ反応
条件が苛酷な上、脂肪酸の結合位置に選択性がなくラン
ダムな交換反応しか起こさないため、製造出来るエステ
ル交換脂の品質、付加価値の向上には限界がある。これ
に対して酵素法においてはマイルドな条件下での反応が
可能であり、位置選択性のあるリパーゼを用いることで
位置選択性を伴ったエステル交換反応を行なうことがで
き、高付加価値油脂へと変換することが期待できる。そ
のためこの方面の研究が数多く成されている。
特開昭52−104506号(Unilever)を初め従来報告に見
られる多くの方法はリゾープス属、アスペルギルス属、
ムコール属などの低分子量の酸性乃至中性リパーゼを用
いた回分式反応であって、しかもこれら提案の多くはリ
パーゼ水溶液をセライト、活性炭のごとき多くの複雑な
小孔を持つ支持体に溶液として集中保持させる限りにお
いてのみ活性化可能な方法が示されている。又、これら
の提案においては実質的に関与する反応系水分はそこに
規定された基質溶液水分に止まらず酵素支持体から水が
もれ出て、実質的には大量の水が反応系に供給されてい
ると考えられ、しかもこのことが反応バッヂごとに新た
に使用される大量の支持体に伴った形で供給が繰返さ
れ、このことによって初めて反応が生起しうることを示
したものであり、本発明の方法はこれら提案とは本質的
に異なるものである。一方、酵素による連続的エステル
交換反応に関する提案も、EPO 0140542,特開昭61−2026
88号(NOVO社)、EPO 0170431,EPO 0069599(UNILEVER
社)においてなされている。そして、これ等提案におい
ては、ムコール属、アスペルギルス属、リゾープス属等
の生産する酸性乃至中性の低分子量リパーゼをセライト
等の支持体に酵素水溶液として保持させたり、或いは、
吸着樹脂やイオン交換樹脂に吸着固定化し、規定の含水
率を持たせたリパーゼを用い、本発明規定の基質水分領
域とは異なる多量の水分下に連続的にエステル交換を行
なうことを特徴とする方法が示されている。上記公知例
の内、基質水分に関して特開昭61−202688号にのみ具体
的な記載があり、ここでは、基質出口含有水分のみが記
載されているが、反応初期出口水分3600ppm乃至5000pp
m,400時間反応を継続した後には基質出口水分が2800ppm
乃至3100ppmであることが示されている。したがって本
発明と上記公知例とは次の点で明確に異なる。即ち、本
発明規定の微量水分領域でアルカリ性高分子量リバーゼ
は強いエステル交換作用を発揮し、エステル交換を長期
間連続して行なうことが出来るが、上記公知例に示され
る低分子量リパーゼはこの様な微水領域においてはほと
んどエステル交換作用を示し得ない。一方、上記公知例
に規定された連続反応の水分領域では低分子量リパーゼ
はエステル交換作用を十分に発揮出来ても、アルカリ性
高分子量リパーゼを用いた場合は水量が多すぎて効率的
な満足すべき連続エステル交換反応を行なうことが出来
ない。
〔発明が解決しようとする問題点〕
本発明者らは、先に、アルカリゲネス属、アクロモバ
クター属、シュードモナス属等の生産するアルカリ性高
分子量リパーゼを用いて、含水有機溶媒の存在下に反応
を開始し規定量のジグリセリドの蓄積後より徐々に脱水
して油脂と脂肪酸、若しくは脂肪酸エステルの間の効率
的なエステル交換反応を行なう方法を見出した(特願昭
62−45302号).しかし、この方法は回分式によるエス
テル交換方法について示した物であって、連続的エステ
ル交換法を示した物ではない。
即ち、先願の特願昭62−45302号で提案の回分式エス
テル交換反応を進めるためには、前記特願昭62−45302
号明細書に記載した如く、反応初期に加えた水を反応の
途中から脱水して除去する必要があるが、そのために
は、例えば乾燥窒素を反応系に吹込む等の方法が必要で
ある。このような操作を工業規模で行なうには機械的に
解決しなければならない問題も多々あり、脱水のための
経済的な負担も大きい。何よりも装置の複雑化と大規模
化は避けられず、連続反応に比べ反応槽だけでも約100
倍以上の大きさの設備を必要とすることが予想され、余
り経済的な方法ではなく、大量生産には必ずしも向かな
い方法である。
又、回分式エステル交換反応は相対的に反応速度が遅
い欠点がある。この主な原因は、脱水を必要とする回分
式方法において反応で要求される水分量が比較的多い
上、機械的脱水速度がエステル交換反応の律速になるこ
とが避けられず反応時間は長くなる。更に、回分式反応
では反応速度を高めるには単に酵素量だけでなく、攪拌
量によって酵素と基質の接触密度を上げる必要が有るが
機械的攪拌は一定の限界があって余り反応速度を上げる
ことは出来ない。その上、攪拌力によって固定化担体が
徐々に破壊され、担体自体の寿命にも問題がある。
そこで、本発明者等は、大量生産のエステル交換脂に
適した連続方式のエステル交換反応によるエステル交換
脂の製造方法を開発すべく鋭意研究を行った結果、驚く
べきことに、先の回分式エステル交換反応に使用したと
同じアルカリ性高分子量リパーゼが連続式エステル交換
反応に非常に適する酵素であることを見出した。すなわ
ち、反応槽にアルカリ性高分子量リパーゼを充填し、そ
こに基質を連続的に流した場合、反応に必要な極微量の
水を基質と共に常時供給することで何らの脱水操作を必
要とせずに迅速なエステル交換反応を長時間連続的に生
起せしめ得ることを見出した。この連続的エステル交換
反応は先の回分式エステル交換反応に比較して反応速度
がはるかに速く、必要とする水分量が極めて少なく、か
つ、脱水操作の必要がなく、さらに撹拌の必要がないの
で固定化担体の破壊を生起しない等、種々の利点を有す
るものである。
以上のような新規な知見に基づき、本発明者等は、エ
ステル交換の酵素として従来にない優れた特性を有する
上記アルカリ性高分子量リパーゼを固定化して用いるこ
とによって、これまでより更に微水領域において連続的
にエステル交換を極めて効率的に行なう方法を開発し、
本発明を完成するに至った。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、アルカリ性高分子量リパーゼを用いた炭素
数4〜22の脂肪酸又はそのエステルと油脂との間、又は
油脂間の連続エステル交換反応により、エステル交換脂
を製造する方法において、前記アルカリ性高分子量リパ
ーゼとして、分子量10万以上、至適pH8以上であって、
1,3位置特異性がありかつ含水率0%以上、5%以下の
アルカリ性高分子量リパーゼを使用し、このアルカリ性
高分子量リパーゼを前記脂肪酸又はそのエステル及び油
脂、又は油脂からなる基質と共に連続反応槽に充填し、
この際、前記連続反応槽の入口側に基質水分調整用プレ
カラムを連続し、前記基質の一部分を分流させて前記基
質水分調整用プレカラムに通した後に前記基質の他の部
分と混合することにより、前記連続反応槽の入口より供
給する前記基質の含有水分を100ppm以上、1800ppm以下
に調整し、かつ前記連続反応槽の出口での反応後基質含
有水分を50ppm以上、80ppm以下とすることを特徴とす
る、エステル交換脂の製造方法に係るものである。ここ
で、上記の高分子量リパーゼの含水率は理論的には0%
以上であるが、実際には0.1%程度又は0.1%以上は存在
しているので、「0%」とはそのような含水率を実質的
には意味する。
そして、アルカリ性高分子量リパーゼとしては、1,3
位置特異性で分子量10万以上、至適pH8.0%以上であっ
て微生物由来のものが好適に用いられる。アルカリ性高
分子量リパーゼはそのままの形又はイオン交換体に結合
した固定化酵素として或いは蛋白質、糖類、粘土鉱物で
固定化した形で用い、イオン交換体としては、メタクリ
レート系弱塩基性イオン交換樹脂が好適に用いられる。
アルカリ性高分子量リパーゼの含水率を0〜5%に調整
する手段としては、凍結乾燥法が好適に用いられ、ま
た、エステル交換反応は通常、80以下で行われる。
また、反応生成物の分離精製は、好ましくは以下のよ
うにして行われる。
連続エステル交換反応で得られるエステル交換脂は反
応液より冷却沈澱法、蒸溜法、中和法、膜透過法、溶媒
分画法等の手段方法を組合わせる事で分離回収される。
一般的な方法としては反応槽より取出した反応液はその
まま若しくは中和した後冷却して高融点の成分を沈澱
し、簡単な分別を行なう事ができる。この操作は必要に
応じて予め反応液に含まれる溶媒を蒸溜や膜透過により
除去し、脱溶媒油脂、もしくは、新たな溶媒に置換して
から行なっても差支えない。すなわち、エステル交換油
脂反応溶液を冷却し、高融点成分を沈澱して反応液より
分離したり、エステル交換油脂反応溶液を減圧蒸溜また
は膜濾過法により反応溶媒を除去し、脱溶媒反応油分を
回収する。この脱溶媒油分を有機溶媒に再溶解してから
冷却して油脂を分離精製することができる。又不純物と
して脂肪酸を含む場合においては、エステル交換油脂反
応溶液にアルカリ剤を加えて脂肪酸を石鹸として除去し
たり、上記脱溶媒油分を蒸溜し、脂肪酸と脱脂肪酸油脂
に分離することが出来る。さらに、脱脂肪酸油脂を有機
溶媒に溶解し、冷却、沈澱、分画して精製することがで
きる。こうして、沈澱側もしくは溶液側のいずれかに分
別したエステル交換脂は必要に応じ蒸溜もしくは溶媒分
画により不純油脂成分を除き好ましい目的油脂として精
製回収する事ができる。
このエステル交換脂の製造方法は、特願昭62−45302
号の回分式に比べて、反応系で要求される水分量が更に
少なく、反応進行中の脱水調整の必要がないため、反応
装置として脱水制御機構を必要としないばかりか、反応
速度が速く、加水分解反応、ジグリセリドの副生等が起
り難い利点がある。又、酵素は一般に水分量に比例して
活性を低下するが、この連続反応法では酵素は極めて微
量の水の存在下に終始反応を進めることが出来るため、
酵素の寿命は長く安定に保つことが出来る。
そして、この方法は反応速度が速く、大型の装置が不
必要であり、経済的に極めて有利な方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明でエステル交換反応に用いる原料油脂グリセリ
ドとしては、植物性、動物性の油脂もしくは加工油脂、
あるいはこれらの分別油、又は混合油があげられる。
その具体例として、例えば大豆油、綿実油、ナタネ
油、オリーブ油、コーン油、ヤシ油、サフラワー油、ヒ
マワリ油、椿油、山茶花油、パーム軟部油、パーム油、
サル脂、イリッペ脂、コクム脂、シア脂、マウア脂、フ
ルワラ脂、ボルネオタロー、牛脂、ラード、乳脂、魚
油、又は、これらの分別脂及び硬化油脂などの他、ジラ
ウリン、ジパルミチン、ジオレイン、ジステアリン、ト
リラウリン、トリパルミチン、トリオレイン、トリステ
アリンなどを挙げることができる。そして対称型のエス
テル交換脂を目的とする反応においては2位置の脂肪酸
が同種脂肪酸である油脂を多く含む油脂原料ほど好まし
い。
又、本発明でエステル交換反応に用いる脂肪酸として
は、炭素数がC4〜C22の飽和もしくは不飽和の脂肪酸で
あって、この様な脂肪酸の具体例としては、例えば酪
酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン
酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレ
イン酸、リノール酸、リシノレイン酸、アラキドン酸、
エイコサペンタエン酸などが挙げられる。又、これら脂
肪酸の代わりに、脂肪酸エステルを使用する場合にはそ
のエステルを形成するアルコールの炭素数はC1〜C20、
好ましくはC1〜C4のアルコールであって、その好ましい
具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパ
ノール、1−ブタノールなどが挙げられる。
これらの原料は必要に応じて予め精製して使用しても
良いし、又、リアクターの前に原料精製のためのプレカ
ラムを置き、これにイオン交換樹脂、活性炭、活性白
土、酸性白土、アルミナのごとき油脂精製剤を詰め、こ
のプレカラムを通過した油をリアクターに流すことで酵
素の寿命や反応率を向上させることができる。
上記のごとき原料油脂と脂肪酸又はそのエステル類が
例示できるが、本発明においては、その組合わせは自由
であり、選択にも制限はない。
つぎに本発明で使用する酵素はアルカリ性高分子量リ
パーゼのみが有効であって、従来の低分子量の酸性乃至
中性のリパーゼはほとんど有効に使用することができな
い。因みに、上記従来のリパーゼでは極微量の水分量の
下で行う本発明の連続エステル交換反応はほとんど進行
しない。本発明におけるアルカリ性高分子量リパーゼと
しては、1,3位置特異性のあるアリカリ性高分子量リパ
ーゼであって微生物が生産する任意の酵素が好適に用い
られる。そして、上記微生物としては、アルカリゲネス
属、アクロモバクター属及びシュードモナス属が挙げら
れる。
上記の様なリパーゼの具体例としては、例えばアルカ
リゲネス(Alcaligenes)属に属する名糖PL−266号(Al
caligenes sp.PL−266)(微工研菌寄第3187号)の生産
するリパーゼ(特公昭58−36953号公報)(以下、リパ
ーゼPL−266という)、同じくアルカリゲネス属に属す
る名糖PL−679号(Alcaligenes sp.PL−679)(微工研
菌寄第3783号)の生産するリパーゼ(特公昭60−15312
号公報)(以下、リパーゼPL−679という)、更に、ア
クロモバクター(Achromobacter)属に属する名糖AL−8
65号(Achromobacter sp.AL−865)(微工研菌寄第1213
号)の生産するリパーゼ(特公昭49−32080号公報)
(以下、リパーゼALという)、更にシュードモナス・ニ
トロレデューセンス・バラエティ・サーモトレランス
(Pseudomonas nitroreducensvar.thermotolerans)
(微工研菌寄第1338号)の生産するリパーゼ(特公昭56
−28516号公報)(以下、リパーゼPSという)等が特に
従来提案のリパーゼではエステル交換反応を生起しえな
かった微量水分領域において位置選択性を持ってエステ
ル交換に優れた有効なリパーゼとして挙げることができ
る。尚、これらのリパーゼはいずれも菌体外リパーゼで
ある。
第1表は、公知方法において例示されたリパーゼ、及
び本発明において用いるアルカリ性リパーゼの具体例に
ついて、その分子量及び至適pHを比較したもので、第1
表に示すリパーゼPL−266、リパーゼPL−679、リパーゼ
AL、リパーゼPSは、いずれも至適pH8.0以上で分子量が1
0万以上のアルカリ性高分子量リパーゼである。
通常、酵素蛋白は単一酵素蛋白であれば、その分子量
は1万〜5万程度、大きくても10万未満であり、10万を
越える場合は数個のサブユニットを伴うか、サブユニッ
ト以外に糖蛋白、脂質蛋白を結合していると考えられ、
このようなリパーゼは細菌のリパーゼにしばしば見受け
られる。このような10万以上の分子量からなるリパーゼ
を本発明では高分子量リパーゼと呼び、エステル交換反
応での性質の違いから10万未満のリパーゼを低分子量リ
パーゼと呼び区別した。分子量による区別の結果、第1
表に示した如く、高分子量リパーゼの至適pHは8.0より
上にあり、低分子量リパーゼのそれはそれより下にある
ことが判る。
ここで高分子量リパーゼとは、標準蛋白として分子量6
8,000の牛血清アルブミン,分子量158,000のウサギ筋肉
アルドラーゼ,分子量240,000の牛肝臓カタラーゼを検
量線に用い, セファデックスG200(ファルマシア株式会社)による分
子量分画により求められるリパーゼ分子量が10万以上で
あるリパーゼを特に高分子量リパーゼとて区別した。
本発明において使用するアルカリ性高分子量リパーゼ
が従来提案のリパーゼに比べ特に微水領域において優れ
たエステル交換能を示す理由としては、恐らくこれらの
アルカリ性高分子量リパーゼが上記した如く、サブユニ
ット、その他の附随蛋白が活性基を保護するだけでな
く、分子内結合水を多く持ち活性中心に対して微水系で
の活性発現になんらかの触媒的役割を果たしているもの
と推測される。
次の実験例1において、高分子量、低分子量両リパー
ゼの微水系でのエステル生成能を示してその違いの一端
を示した。
実験例1 微量含水溶媒中でのリパーゼのエステル生成活性発現
能の比較 リパーゼPL−679(名糖産業、比活性8.7万U/g)、リ
パーゼPL−266(名糖産業、比活性1.1万U/g)、リパー
ゼAL(名糖産業、比活性1.5万U/g)、リパーゼPS(サッ
ポロビール、比活性1.6万U/g)、タリパーゼ(Rhizopus
delemar)(田辺製薬、比活性1.0万U/g)、リパーゼAP
(Aspergillus niger)(天野製薬、比活性3.7万U/
g)、ムコールリパーゼNovo sp 225(Mucor miehei)
(NOVO社、公称21万U/g)のリパーゼ粉末100mgを凍結乾
燥し、各種溶媒5mlの存在下に、グリセリン0.163gとオ
レイン酸0.5gを加え、脱水剤としてモレキュラシーブス
3A〔和光純薬販売〕0.5gを加えて脱水しつつ37℃で48hr
振盪して反応させた。
尚、リパーゼ活性の測定は、リパーゼPL−266とPL−6
79については国生等の方法〔Agric.Biol.Chem.45
(5),1159,(1982)〕、リパーゼALについては国生等
の方法〔油化学23(2),第98頁,(1974)〕、リパー
ゼPSについては渡辺等の方法〔Agric.Biol.Chem.41,135
3(1977)〕、NOVO社のMucor Mieheiリパーゼに就いて
はNOVO社公称単位を、その他リパーゼに就いては福本等
の方法〔J.Gen.Appl.Microbiol.9,353(1963)〕で測定
した。
添加脂肪酸の内、エステル合成に消費された量を、ア
ルカリ溶液で滴定することにより求め、反応前の脂肪酸
に対する脂肪酸の減少率の百分率を測定した。又、反応
液中含水率はカールフィッシャー(電量滴定法)による
水分測定装置(三菱化成工業社製CA−05)を用いて調べ
た。その結果を第2表に示す。
第2表から、アルカリ性高分子量リパーゼは微水領域
において明らかに優れた活性発現を示すのに対して低分
子量リパーゼは全くもしくは、ほとんど活性を発現しな
い。
従って、本発明において例示した以外のアルカリ性高
分子量微生物リパーゼであっても、上記例示したごと
く、強いエステル生成能を示す分子量が10万以上のアル
カリ性高分子量リパーゼである限り、任意のものが使用
でき、その起源や種類に制限はない。
本発明において、エステル交換反応に用いるアルカリ
性高分子量リパーゼは、精製酵素でも粗酵素であっても
よく、その使用形態としては、酵素を固定化し、又は固
定し乾燥して利用できる。固定化担体として用いるイオ
ン交換樹脂としては基本構造がメタクリルレート系樹脂
より構成される弱酸性イオン交換樹脂であり、その様な
ものとしては例えば、DEAE−トヨパール(Toyopearl)
(東洋曹達社製)、セパビーズ(Sepabeads)(三菱化
成工業社製)等を挙げることができるが、その中でも特
に好ましい樹脂としてはDEAE−トヨパール650(粒径:50
〜150μm)を挙げることができる。
固定化の方法としては、酵素培養液、粗酵素水溶液、
又は、溶媒分画、硫安塩析等による部分精製した酵素、
さらにイオン交換処理、ゲル濾過、限外濾過(UF)等の
精製手段を用いて精製した酵素液に上記した担体を添加
し、酵素が吸着するのに十分な時間、攪拌してから遠
心、濾過操作を行ない酵素固定化担体を回収すればよ
い。
イオン吸着担体に固定化する場合には酵素液は必要に
応じてUF等で脱塩し、用いる酵素の等電点に応じてpHを
調整してから吸着固定すればよい。ちなみに前記例示し
たアルカリ性高分子量リパーゼは例えばpH6〜11で10〜6
0分程度攪拌すれば、1gの樹脂に最大100,000〜300,000U
/g(加水分解力単位)を吸着し、少なくとも80%〜90%
のリパーゼ活性が樹脂に吸着しリパーゼ溶液から除かれ
る。
又、上記固定化以外に酵素自体、あるいは酵素以外の
適当な希釈剤や結着剤とともに固定した固定化リパーゼ
も用いることができる。その様な希釈剤や結着剤として
は、例えば乳アルブミン、大豆蛋白、小麦蛋白の様な蛋
白質、乳糖、蔗糖、澱粉、キトーサン、酢酸セルロース
の様な糖類、ベントナイト、セライトの様な粘土鉱物等
を挙げることができる。固定化の方法としては、酵素粉
末または希釈剤、結着剤の混合物に少量の水、又は有機
溶媒を加え混和し、整形すればよい。
上記の如く、分離した固定化酵素、または固定した酵
素は好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下、最
も好ましくは約1%以下に乾燥して用いる。乾燥方法と
しては、加熱風乾、乾燥有機溶媒による洗浄脱水、凍結
乾燥のいずれか又は組合わせにより行なうことができる
が、凍結乾燥法で行なうのが望ましい。
本発明において、酵素の含有水分を5%以下に規定し
たからといって5%を越えるとエステル交換反応を生起
しなくなることを意味しない。実際に連続反応槽にリパ
ーゼを充填し基質を流し出すには、数kg〜十数kg/cm2
圧力を必要とする。この様な加圧条件下では例え多くの
水分をリパーゼに含有させたとしても物理的に水分は押
出され直ぐに約10%程度に低下する。更に、本発明規定
の微量水分の基質油脂を流し始めると酵素作用により酵
素中の余分な水は油脂の加水分解反応によって消費され
時間とともに酵素含有水分は5%以下に低下し更に長期
間基質を流し続けると、ついには約1〜2%附近で酵素
は安定した平衡水分に達する。含水率が特に0.1〜5.0%
のDEAE−トヨパール固定化リパーゼを充填したカラムに
n−ヘキサン溶解基質を連続的に流した時のカラム圧は
1kg/cm2以下に保たれた。
また、酵素の初発水分が5%を越えた状態から反応を
開始すると平衡水分に到達するまでに時間が掛かり過
ぎ、この期間に起こる必要以上の加水分解反応により多
量の好ましくないジグリセリドの生成を招きエステル交
換脂の収率の低下を招くので好ましくない。この点に就
いて実験例2を示して説明する。
又、酵素含有水分が多いと反応槽での基質の流体抵抗
が大きくなり効率的な反応流速を取ることは難しいと言
った問題もある。
実験例2 凍結真空乾燥したDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL
−679(1.5万U/g担体)2.5gに蒸留水25mg(固定化酵素
の1%に相当)を吸収させ、n−ヘキサン50mlに懸濁
し、内径10mm、長さ150mmのジャケット付カラムに充填
した。
次に上記固定化酵素2.5gに蒸留水50mg(固定化酵素の
2%に相当)あるいは蒸留水100mg(固定化酵素の4%
に相当)、蒸留水138mg(固定化酵素の5.5%に相当)、
蒸留水250mg(固定化酵素の10%に相当)を各々吸収さ
せた上、50mlのn−ヘキサンに懸濁し、内径10mm、長さ
150mmのジャケット付カラムに充填した。更に蒸留水を
吸収させない固定化酵素2.5gも同様にカラムに充填し
た。
バーム軟部油354.4g、ステアリン酸283.6gをn−ヘキ
サン1600gに溶解し、更に蒸留水0.4mlを溶解させた後、
2gの蒸留水を吸収した粒状珪藻土6gを充填した内径10m
m、長さ150mmのジャケット付カラムに通液し、含有水分
700ppmの基質溶液を得た。
この基質溶液を上記の異なる水分を含む固定化酵素の
カラムに流速5.5ml/hrでカラム下端から通液した。反応
系は45℃に保った。各固定化酵素カラム出口において、
反応溶液の含有水分及びトリグリセリドの脂肪酸組成、
グリセリド組成を後記実施例1の分析方法に従って分析
した。その結果を第3表に示した。
第3表の結果から固定化酵素へ添加する水分が5%を
越えるとトリグリセリドの割合が低下し、目的とする油
脂の収率が低くなることがわかる。又、添加水分が10%
では固定化酵素が水分を保持できず、反応溶液中へ過剰
の水分が排出されることがわかる。
本発明で使用する酵素は、微水領域での反応であるこ
ともあって、特に有機溶媒に対して強い耐性を持ち、必
要に応じて反応系に有機溶媒を加えて行なうことが出来
る。
その様な溶媒としては、反応温度において液状をな
し、基質を良く溶解し、エステル交換反応を阻害しない
限り何でも良いが、例えば、n−ヘキサン、イソオクタ
ン、n−ヘプタン、n−ペンタン、石油エーテル等の脂
肪族炭化水素類、第3級ブチルアルコール、アセトンな
どを例示出来るが、特に好ましい有機溶媒としてはn−
ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類が有効な溶媒となる。
又、溶媒は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
本発明において、エステル交換反応を生起させるための
態様は次の通りである。
即ち、本発明において基質となる油脂1モルに対する
油脂、脂肪酸又はそのエステルの混合モル比はそのエス
テル交換目的に応じ任意のモル比を選ぶことができ、特
に制限はない。又、必要に応じて油脂、脂肪酸やそのエ
ステル類は数種混合して反応してもよい。
次に、固定化したアルカリ性高分子量リパーゼの比活
性は高い方が効率的な反応を行なう上で望ましいが、1g
当り3,000〜300,000U/g、好ましくは10,000〜100,000U/
g程度の固定化リパーゼを用いるのが好ましい。
酵素の反応塔への充填方法としては反応溶媒や油脂に
分散させ気泡の入らない様に充填すればよい。連続エス
テル交換反応においては充填酵素量に見合った基質量を
流せば良く充填量に特に制限はない。又、有機溶媒を使
用する場合の反応系への添加量としては10%〜90%(W/
W)、好ましくは20%〜80%(W/W)程度加えて反応させ
ればよい。
次に連続反応槽の入口より供給する基質溶液の含水量
は100ppm以上,1800ppm以下に、調整して連続的に供給し
て反応を行なう必要があり、好ましくは100ppm以上,150
0ppm以下、更に好ましくは、200ppm以上,1000ppm以下の
範囲を示すことができる。
基質含有水分の調整方法としては、基質溶液に必要な
水を加水するか、若しくは余分な水量を除湿することで
調整することができる。
加水方法としては例えば計算量の水を直接加えてもよ
いが、添加量が極めて少ないので、水蒸気、加湿空気等
を基質に吹き込んだり、あるいは、予め水を保持させた
吸水性固体のプレカラムを通過させる等により容易に調
整することができる。
又、除湿方法としては、例えば基質溶液に窒素等の乾
燥不活性ガスを吹込むとか、基質溶液の一部をモレキュ
ラーシーブスなどの脱水剤を充填したプレカラムを通過
させることでも調節できる。又、基質溶液中に飽和しう
る水量が低く過ぎて任意の含水量が確保出来ない場合に
は、基質濃度を変化させたり、アセトン、メタノール,
エタノール,t−ブタノールの様な親水性溶媒などを加え
溶媒の組成を変化させることで解決できる。いずれにせ
よ、本発明において用いる基質や溶媒にもともと含まれ
る水分は普通は10ppm order〜100ppm orderであり、特
許請求の範囲の含水量に納まるようにすればよい。
次に、連続反応槽よりの出口基質含有水分はエステル
交換反応によって微量の水分が消費され入口水分よりは
必ず低下するが、出口基質含有水分は少なくとも50ppm
以上、多くとも800ppm以下の範囲で取りだせば良い。流
速によってもやや異なるが、求められるエステル交換脂
に合せて入口水分を決めれば、ほぼ自動的に出口水分は
上記規定の水分範囲に納まり、エステル交換反応を達成
できる。これらのことを次の実験例3で示す。
実験例3 凍結乾燥したDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−67
9(10万U/g担体)2.5gを50mlのn−ヘキサンに懸濁し、
内径10mm、長さ150mmのカラムに充填した。
バーム軟部油354.4g、ステアリン酸283.6gをn−ヘキ
サン1440g及びアセトン193gの混合液に溶解した。本基
質溶液は90ppmの水分を含有した。本基質溶液を流速27.
5ml/hrで上記固定化酵素カラムの下端から通液した。固
定化酵素カラム出口において反応溶液の含有水分及びグ
リセリド組成、トリグリセリドの脂肪酸組成を各々カー
ルフィッシャー水分測定装置(三菱化成CA05型)、イア
トロスキャン、ガスクロマトグラフィー(後記実施例1
の分析方法に準拠)により分析した。反応系は45℃に保
った。
次に上記と同様の基質溶液に、 蒸溜0.14ml、0.36ml、1.04ml、1.50ml、1.95ml、2.75m
l、3.32ml、3.66ml及び4.79mlを加え、基質含有水分と
して150ppm、250ppm、550ppm、750ppm、950ppm、1300pp
m、1550ppm、1700ppm及び2240ppmの基質を調整した。更
に、パーム軟部油354.4g、ステアリン酸283.6gをn−ヘ
キサン1589gに溶解し、エタノール16.8ml及び蒸溜水0.4
3gを加え、基質含有水分として280ppmの基質溶液を調整
した。
これらの基質溶液を上記と同様に固定化酵素カラムに
通液した。
全ての場合に反応溶液の含有水分、グリセリド組成及
びトリグリセリドの脂肪酸組成を分析した。その結果を
第4表に示した。
Rhizopus delemar由来のリパーゼの懸濁液(ベーリン
ガー社製,5万U/ml)2mlを蒸留水に対して透析して塩分
を除去し、蒸留水で10mlに希釈した後珪藻土10gに吸収
させた。この珪藻土を凍結真空乾燥することにより水分
を除去し、固定化酵素を調製した。本固定化酵素10gを
n−ヘキサン50mlに懸濁し、内径10mm、長さ150mmのカ
ラムに充填した。上記と同様に調製した含有水分750ppm
あるいは2800ppmの基質溶液を流速27.5ml/hrでカラム下
端より送液し、カラム出口において反応溶液の水分、グ
リセリド組成、トリグリセリド脂肪酸組成を後記実施例
の方法に従い分析し、その結果を第5表に示した。
又、リパーゼ3A(NOVO社製、デュオライトS761に固定
化したMucor miehei sp 225由来リパーゼ)2.5gを真空
乾燥した後n−ヘキサン50mlに懸濁し、上記と同様にカ
ラムに充填し基質溶液(含有水分750ppmあるいは2800pp
m)をカラム下端より流速27.5ml/hrで送液した。カラム
出口において反応溶液の水分、グリセリド組成、トリグ
リセリド脂肪酸組成を上記と同様に分析し、その結果を
第5表に示した。
第4表の結果から、DEAE−トヨパール固定化リパーゼ
PL−679の場合、基質溶液の含有水分が約100ppm以下、
カラム出口の水分が50ppm以下ではトリグリセリド中の
ステアリン酸の割合が小さいことからわかる様にエステ
ル交換反応は起こりにくかった。又、基質溶液の含有水
分が100ppm以上、1800ppm以下の程度で、出口での含有
水分が50ppm以上、800ppm以下程度であれば、エステル
交換反応は円滑に進行し、しかもトリグリセリドの収率
も高かった。基質溶液の含有水分が1800ppmを超え、カ
ラム出口水分も800ppmを超えるとトリグリセリドの収率
が低下した。一方、第5表の結果からRhizopusやMucor
に由来するリパーゼは2800ppm以下の水分を含む基質溶
液ですら十分なエステル交換変換反応を起こさず、更に
基質溶液の水分を多くしなければならないことがわか
る。
次に反応温度としては、基質の種類、使用溶媒の沸
点、酵素の種類などを考慮し、適当な温度を選んで行な
うことが望ましいが、その様な温度としては、普通は80
℃以下、特に好ましくは30〜70℃の範囲で反応を行なう
ことができる。あまり高い反応温度は、反応途中で生成
される1,2−ジグリセリドの2−位置の脂肪酸の転移を
誘発するのでむしろ好ましくない。
次に、反応に必要な基質滞留時間はエステル交換率を
どこに求めるかによって異なるので特に限定することは
出来ないが、例えば、後記実施例5に示した様に、パー
ム軟部油にステアリン酸を導入する場合、交換率67%で
は約7分、94%では約26分の滞留時間で十分である。本
発明で用いられるアルカリ性高分子量リパーゼは、長期
間安定して効率のよいエステル交換反応を行なうことが
出来ので一旦反応塔に充填した酵素は長期間そのまま使
用することが出来る。例えば、後記実施例5に示した様
に、基質水分700ppm、反応温度45℃、DEAE−トルパール
固定化酵素を用いパーム軟部油とステアリン酸とのエス
テル交換反応を行なった時の半減期は約190日であり、
その間に処理出来る原料油脂の量は反応率67%として計
算すると、約20トン/1kg固定化酵素である。
次に、本発明の連続式エステル交換反応と特願昭62−
45302号のバッチ式エステル交換反応の反応効率を比較
すると、実験例4の通りである。
実験例4 凍結真空乾燥したDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL
−679(20,000U/g)2.5gを50mlのn−ヘキサンに懸濁
し、内径10mm、長さ150mmのジャケット付カラムに充填
した。粒状珪藻土6gに蒸留水2mlを吸収させ、内径10m
m、長さ150mmのジャッケット付カラムに充填し、基質含
有水分調整用プレカラムとして使用した。
パーム軟部油354.4g、ステアリン酸283.6gをn−ヘキ
サン1600gに溶解した上で蒸留水5mlを加えて攪拌し、30
分間静置した後、上清液を基質溶液として用いた。この
時の基質溶液の水分は200ppmであった。
次に、プレカラム下端より基質溶液をマイクロポンプ
により流速170ml/hr以下で送液し、プレカラム通過後の
基質溶液の水分を700ppmとし、固定化酵素カラムの下端
より、流速24.0ml/hr(37℃)で10日間連続して送液し
た。この間にカラムを通過した反応液を後記実施例1と
同様の方法で分析した。この時のエステル交換率は95%
であり、この間に生成したエステル交換油脂は約6.4kg
であった。
これに対して、先に回分式エステル交換反応を提案し
た特願昭62−45302の実施例3において実施したエステ
ル交換反応(エステル交換率95%)では、10日間にエス
テル交換でできた油脂量は約0.66kgであり、連続反応は
回分式反応に比べて酵素単位当り、約1.8倍高い反応効
率を示した。
本発明において、連続反応槽を通過した反応液に含ま
れるエステル交換脂を回収する方法としては、反応液を
そのまま、若しくはヘキサン、アセトン、エタノール等
の溶媒を添加した後、回収しようとする油脂の融点以下
に冷却してそれらを沈澱し、これを遠心、濾過操作によ
り反応液より回収することができる。この方法は反応液
中の除去してしまいたい油脂や脂肪酸に就いても同様に
応用できる。又、反応液にアンモニア、苛性ソーダー、
水酸化カルシウム等のアルコール又は水溶液を添加し、
脂肪酸を石鹸として除去することも出来る。
又、上記方法は必要に応じて反応液を予め蒸留、若し
くは膜濾過して反応溶媒を除去し、脱溶媒油脂を一旦回
収し、改めてn−ヘキサン、アセトン、エタノール、プ
ロパノール、t−ブタノール等の単独あるいは混合溶媒
を加えて溶解し上記したと同様の方法で目的油脂を精製
回収できる。又、単に脱溶媒油脂を蒸留して脂肪酸と脱
脂肪酸油脂に分離した後、油脂に改めて、アセトン、n
−ヘキサン、エタノール等の溶媒を添加し上記と同様に
溶媒分画、沈澱するなどして更に精製する方法が利用で
きる。
こうして製造したエステル交換脂は食品、化粧品、医
薬品、農薬、塗料、印刷等の分野における用途がある。
〔発明の効果〕
本発明の効果は、アルカリ性高分子量リパーゼを直接
上記した原料油脂と脂肪酸、脂肪酸エステル又は油脂と
を含有する微量含水溶液に連続的に作用させることによ
って、迅速に高収率でエステル交換脂が得られることに
ある。そして、この連続的なエステル交換法は反応系で
要求される水分量が極めて少なく、反応進行中の脱水調
整の必要がないため水分量の制御機構を必要としないば
かりか、反応において、加水分解反応が抑えられエステ
ル交換脂の収率を低下せしめるジグリセリドの副生等が
ほとんど起らない利点がある。又、反応において、脱水
調整の必要がないことから加水−脱水に伴う酵素の失活
が避けられ酵素の寿命が長く維持できる。更に、この方
法は反応速度が速く、大型の装置を必要としないため経
済的に有利であって工業的規模の生産に適した方法であ
る。
そして、本発明のアルカリ性高分子量リパーゼを用い
る連続エステル交換反応においては、反応槽入口側に設
けた基質水分調整用プレカラムで基質水分を適正な範囲
(即ち、反応槽入口で100〜1800ppm、反応槽出口で50〜
800ppm)に設定しているので、反応率を非常に高く維持
できる。
かくして、本発明では、簡単な反応条件によって安価
な油脂より付加価値の高い各種エステル交換脂を連続的
に容易にかつ経済的に製造することができる。例えば、
安価なパーム軟部油から高価なカカオバター代用脂や、
各種食用油脂の改良に利用できる。
次に、参考例として、本発明に使用する固定化リパー
ゼの調製法の例を示す。
参考例1(固定化リパーゼの調製法−I) アルカリゲスネ属に属する名糖PL−679号を特公昭60
−15312号公報に示した方法に従い培養を行い培養液15l
を得た。この培養液15lを10,000×g10分間遠心分離し、
その上清にベントナイト450gを添加し、冷却下1時間攪
拌した後遠心分離し、リパーゼPL−679を吸着したベン
トナイトを回収した。回収したベントナイトに1%ポリ
エチレングリコール4000溶液10lを加え、ベントナイト
よりリパーゼPL−679を溶出し、遠心分離を行いベント
ナイトを除去しベントナイト溶出リパーゼPL−679溶液1
0lを得た。
DEAE−トヨパール(東洋ソーダ社製)100g(乾燥重量
相当)を1N NaOH水溶液5lに4時間浸漬した後、No.1濾
紙上で吸引濾過によりDEAE−トヨパールを回収し、濾紙
上でDEAE−トヨパールを蒸留水で濾液のpHが8.0になる
まで洗浄し、活性化DEAE−トヨパールを得た。
上記ベントナイト溶出リパーゼPL−679溶液10lに活性
化DEAE−トヨパールを加え、4℃で1時間攪拌しリパー
ゼPL−679をDEAE−トヨパールに吸着させ、水で洗浄し
ポリエチレングリコール4000を除去し、No.1濾紙上で吸
引濾過によりDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−679
を回収し、凍結乾燥機で48時間乾燥し、乾燥DEAE−トヨ
パール固定化リパーゼPL−679を得た。これを以下の実
施例で使用した。
尚、DEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−679の活性
は100,000U/g担体であった。又、DEAE−トヨパール500g
を用いる以外は上記と同様に行い乾燥DEAE−トヨパール
固定化リパーゼPL−679(20,000U/g担体)を調製した。
又、アルカリゲネス属に属する名糖PL−266号を特公
昭58−36953号公報に示した方法に従い培養を行い培養
液15lを得た。この培養液から上記した同様な方法によ
りDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−266を得た。こ
のDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−266の活性は10,
000U/g担体であった。これを以下の実施例で使用した。
次にアクロモバクター属に属する名糖AL−865号を特
公昭49−32080号公報に示した方法に従い培養を行い培
養液15lを得た。この培養液から上記したと同様な方法
によりDEAE−トヨパール固定化リパーゼALを得た。この
DEAE−トヨパール固定化リパーゼALの活性は10,000U/g
担体であった。これを以下の実施例で使用した。
更に、リパーゼPS粉末(サッポリビール社製16,000U/
g)5gを500mlの水に溶解し、遠心分離し上清を得た。こ
の上清にベントナイト15gを加え、以下上記した方法と
同様な操作を1/30スケールで行い、DEAE−トヨパール固
定化リパーゼPSを得た。DEAE−トヨパール固定化リパー
ゼPSの活性は10,000U/g担体であった。これを以下の実
施例で使用した。
参考例2(固定化リパーゼの調製法−II) アルカリゲネス属に属する名糖PL−679号を特公昭60
−15312号公報に示した方法に従い培養を行ない培養液1
5lを得た。この培養液15lを参考例1に示したと同様に
行い、ベントナイト溶出リパーゼPL−679溶液10lを得
た。このベントナイト溶出リパーゼPL−679溶液10lに0.
01M pH9.0リン酸緩衝液で十分平衡化したDEAE−セルロ
ース3lを加え、リパーゼPL−679を吸着させ、同緩衝液
で洗浄し、ポリエチレングリコール4000を除いた後、0.
2MのNaCl溶液5lを加えリパーゼPL−679を溶出した。限
外濾過膜により10倍に濃縮した後、加水しつつ塩濃度が
1%以下なるまで脱塩とし、精製リパーゼPL−679溶液5
00mlを得た。
精製リパーゼPL−679溶液50mlにプロラクト(乳アル
ブミン、東洋醸造社製)50gを加え、4℃で1時間攪拌
した後、凍結乾燥機で48時間乾燥し、乾燥プロラクト固
定化リパーゼPL−679 50gを得た。このプロラクト固定
化リパーゼPL−679の活性は10,000U/gであった。これを
以下の実施例で使用した。
又、精製リパーゼPL−679溶液50mlにキトーサン50gを
加え4℃で1時間攪拌した後、凍結乾燥機で48時間乾燥
し、乾燥キトーサン固定化リパーゼPL−679 50gを得
た。このキトーサン固定化リパーゼPL−679の活性は10,
000U/gであった。これを以下の実施例で使用した。
さらに、酢酸セルロース9gを100mlのアセトンに溶解
し、リパーゼPL−679粉末1gを加え攪拌した後、減圧下
でアセトンを除去し、酢酸セルロース固定化リパーゼPL
−679を調製した。この酢酸セルロース固定化リパーゼP
L−679を1mm角に切って以下の実施例で使用した。尚、
活性は10,000U/gであった。
〔実施例〕
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこの実施例
に限定されるものではないことは言うまでもない。
実施例1 乾燥したDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−679(1
0万U/g担体、水分0.1%含有)2.5gを50mlのn−ヘキサ
ンに懸濁し、内径10mm、長さ150mmのジャケット付カラ
ムに充填した。
粒状珪藻土6gに蒸留水2mlを吸収させた上内径10mm、
長さ150mmのジャケット付カラムに充填し、基質含有水
分調整用プレカラムとして使用した。
パーム軟部油354.4g、ステアリン酸283.6gをn−ヘキ
サン1,600gに溶解した上で蒸留水5mlを加えて攪拌し、3
0分間静置した後上清液を基質溶液として用いた。基質
溶液の水分は200ppmであった。
プレカラム下端より基質溶液をマイクロポンプにより
流速170ml/hr以下で送液すると、プレカラム通過後の基
質溶液の水分は700ppmとなった。
プレカラムを通過した基質溶液をDEAE−トヨパール固
定化リパーゼPL−679カラムの下端より流速27.5ml/hr
(SV=2.3hr-1)で送液した。尚反応系の温度は45℃に
保った。35日間継続してカラムに送液し、24時間毎に反
応溶液を採取してトリグリセリド(TG)中のステアリン
酸(C18:0)の割合、TGの2位置のオレイン酸(C18:1
の割合、グリセリド中のTGの割合、エステル交換率及び
カラム出口水分を求め第6表と第1図に示した。
尚、TG中のC18:0の割合は以下の方法により求めた。
反応溶液を同容の塩化メチレンで希釈した上で50μlを
1mm厚螢光剤入シリカゲルプレート(メルク社製)に帯
状に塗布し、石油エーテル・エーテル・酢酸(70:30:1,
V/V)混液で10cm展開し、波長254nmUV照射下にTGのスポ
ットを検出し、本スポットを共栓付試験管にかき取っ
た。TGの脂肪酸組成は基準油脂分析法(日本油化学協会
編)2.4.20.2−77脂肪酸メチルエステル調製方法(三フ
ッ化ホウ素・メタノール法)、2.4.21−71脂肪酸組成
(ガスクロマトグラフ法)に準拠して分析した。又TGの
2位置脂肪酸組成は以下の通りに分析した。前記TGの分
離方法を5倍のスケールで行ない、TGスポットをかき取
り、50mlのクロロホルム−メタノール混液(2:1,V/V)
でかき取ったシリカゲルよりTGを抽出乾固し、0.1%コ
ール酸ナトリウム水溶液1.5ml、2.2%塩化カルシウム水
溶液0.6ml、リパーゼPL−679 50単位を含む1Mトリス塩
酸緩衝液(pH8.0)6mlを加え40℃にて3分間振トウ反応
をし、6N塩酸2mlで反応を停止した後2mlエタノール及び
10ml石油エーテルで油分を抽出した。抽出した油分を前
記シリカゲルプレートによりモノグリセリド(MG)を分
離し、共栓付試験管にかき取った。MGの脂肪酸組成は前
記TGの脂肪酸組成の分析と同様に行った。更に反応溶液
のグリセリド組成は、イアトロスキャンにより求めた。
即ち2倍容の塩化メチレンで希釈した反応溶液をクロマ
ロッドSIIに0.2μl塗布し、ベンゼン・クロロホルム・
酢酸(50:20:1,V/V)混液により10cm展開し、イアトロ
スキャンTH10により各ピークの面積比を求めた。基質溶
液及びカラム出口反応溶液の水分はカールフィッシャー
水分測定装置により測定した。
リパーゼによるエステル交換率は次の様に算出した。
パーム軟部油のTGの脂肪酸組成と2位置脂肪酸組成から
式−1に従ってTGの1.3位置の脂肪酸組成を算出した。
パーム軟部油TGの平均分子量をその脂肪酸組成から約
840として1,3位置の脂肪酸のモル組成を算出し、パーム
軟部油に混合したC18:0とのモル比から反応平衡時のTG
の1,3位置の脂肪酸組成を算出した。尚リパーゼPL−679
は1,3位置特異性が高く、エステル交換反応はTGの1,3位
置のみに起っている。
パーム軟部油TGの1,3位置脂肪酸組成はパルミチン酸
(C16:0)オレイン酸(C18:1)リノール酸(C18:2)の
和が94.6重量%であり、反応平衡時には42.7%に減少す
る。エステル交換率を式−2により算出した。
第6表及び第1図の結果からDEAE−トヨパール固定化
リパーゼPL−679はエステル交換脂を得るため連続して
反応できる。又DEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−67
9の半減期は式−3により算出すると約190日となった。
更に固定化酵素の活性が半減する迄の2倍の期間に処
理できるパーム軟部油は、エステル交換率94%の場合、
固定化酵素1kg当り約5.7tと計算される。
実施例2 実施例1によりDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−
679カラムより溶出した反応液(0〜80時間通液)2.5l
を20℃に12時間静置し、5,000×gの遠心分離により上
清液2.2lを得た。沈澱を0.5lのn−ヘキサンに懸濁し上
記遠心分離により上清液0.4lを得た。両上清液を合せ5
℃に12時間静置し上記遠心分離操作により上清液2.4lを
得た。本上清液に25%アンモニア水0.5l及びエタノール
2lを分液ロート中で十分に混和した後1時間静置し、下
層のエタノール層を排出し、上層へ蒸溜水0.5l及びエタ
ノール2lを十分に混和し1時間静置後上層のn−ヘキサ
ン層を回収した。本n−ヘキサン層をロータリーエバポ
レーターで20mmHg減圧下に40℃で濃縮し、次いで60℃で
1時間5mmHg減圧下にn−ヘキサンを溜去し、油分249g
を得た。本油分をアセトン560mlに溶解した後5℃に24
時間静置し、生成した沈澱をG4ガラスフィルター上で吸
引濾過により回収した。本沈澱194gをアセトン480mlに
溶解した後5℃に24時間静置し生成した沈澱をG4ガラス
フィルター上で吸引濾過により回収した。本沈澱127gを
アセトン300mlに溶解後5℃に24時間静置し生成した沈
澱をG4ガラスフィルター上で吸引濾過により回収した。
本沈澱を5mmHgに24時間減圧してアセトンを溜去し、106
gの油脂を得た。本油脂100mgを塩化メチレン0.1mlに溶
解し、高速液体クロマトグラフィーにより分析した。カ
ラムはODSカラム(YMCパックA312,6×150mm,山村化学研
究所製)を使用し、溶出液にアセトニトリル・テトラヒ
ドロフラン・塩化メチレン(20:8:1,V/V) 混液を使い流速2ml/minでRI検出器(ウォーターズ社R
401)により各油脂成分ピークを検出した。同様にして
市販カカオ脂の分析を行なった。その結果を第7表に示
した。
第7表の結果からエステル交換処理し、冷却アンモニ
ア脱酸処理後分別して得られる油脂はカカオ脂に非常に
よく似たTG分子種組成であった。尚、DGはジグリセリ
ド、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸、Sはステアリ
ン酸を示す。
実施例3 実施例1によりDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−
679カラムから溶出した反応液50mlをロータリーエバポ
レーターにより50mmHg減圧下に60℃で1時間n−ヘキサ
ンを溜去し、油分9gを得た。本油分8.5gを20ml蒸留用フ
ラスコに採取し減圧蒸留装置により遊離脂肪酸を溜去し
た。蒸留は240℃の油浴により油分を加熱し、微量のN2
ガスを油分に吹き込みつつ3mmHgに真空ポンプで減圧し
つつ20分間行なった。直ちに残留物を水冷し油分4.2gを
得た。本油分のグリセリド組成及びTGの脂肪酸組成、TG
の2位置脂肪酸組成を実施例1に示したと同様の方法に
より分析した。その結果を第8表に示した。
第8表の結果から脂肪酸の入れ替えが殆んど無く蒸留
による脱酸が可能であった。尚FFAは遊離脂肪酸を示
す。
次に前記と同様に蒸留して得られた油分40gをアセト
ン90mlに溶解した後5℃に24時間静置し、生成した沈澱
をG4ガラスフィルターで回収し再びアセトン90mlに溶解
した。同様の操作を計3回繰り返した後得られた沈澱を
5mmHg減圧下に室温でアセトンを溜去し、油脂15.5gを得
た。本油脂を実施例2に示したと同様にして高速流体ク
ロマトグラフィーにより分析した。その結果を第9表に
示した。
第9表の結果から蒸留脱酸したエステル交換脂を分別
することによりカカオ脂と非常に似た分子種組成の油脂
が得られた。
実施例4 実施例1と同様に連続反応を3日間行ない得られた反
応溶液2lに水酸化カルシウム14.8g及び蒸留水400mlを加
え、40℃で12時間攪拌した。1,000×gの遠心分離によ
り生成した固型物を除去した上清液を同様に9回処理し
脂肪酸を除去した。上清液をロータリーエバポレーター
で濃縮し、更に5mmHg減圧下に24時間乾固し、油分178g
を得た。本油分を40℃に加温したアセトン400mlに溶解
した後30℃に24時間保ち生成した沈澱をG4ガラスフィル
ターで除去した。濾液を5℃に24時間保ち生成した沈澱
をG4ガラスフィルターで回収し、再びアセトン400mlに
溶解した後、5℃に24時間保ち生成した沈澱をG4ガラス
フィルターで回収し、更に同フィルター上でアセトン10
0mlで洗浄した。回収した沈澱を5mmHg減圧下にアセトン
を溜去し精製エステル交換脂54gを得た。実施例2と同
様に、高速液体クロマトグラフィーにより精製エステル
交換脂を分析し、その結果を第10表に示した。
比較例1 リパーゼ3A(Mucor miehei由来のリパーゼsp225をデ
ュオライトS761に固定化、ノボ社製)2.5gを50mlのn−
ヘキサンに懸濁し、内径10mm、長さ150mmのジャケット
付カラムに充填した。
粒状珪藻土6gに蒸留水2mlを吸収させ、内径10mm、長
さ150mmのジャケット付カラムに充填し基質含有水分調
整用プレカラムとして使用した。以後実施例1と同様の
基質溶液を流速49.5ml/hrでカラム下端より送液した。
尚反応系温度を45℃に保った。反応溶液は実施例1の方
法と同様にTGの脂肪酸組成及びグリセリド組成を分析し
た。その結果を第11表に示した。
第11表の結果から、DEAE−トヨパール固定化リパーゼ
PL−679を用いる条件で、リパーゼ3Aの連続反応を行な
うと、TG中のC18:0の増加で示される活性は急速に失わ
れ、連続的にエステル交換脂を得られなかった。
実施例5 基質溶液の流速を40.9ml/hr(SV=3.5hr-1),55.2ml/
hr(SV=4.7hr-1),97.2ml/hr(SV=8.3hr-1),150.5ml
/hr(SV=12.8hr-1)に変える以外は実施例1と同様に
行なった。その結果を第12表に示した。なお、固定化酵
素カラム出口に於ける反応溶液の含有水分はいずれの流
速でも200ppmであった。
第12表の結果から、流速を変えることによりエステル
交換率を任意に選択できることがわかる。又、各流速に
於けるエステル交換活性の半減期はいずれも約190日で
あった。目的とするエステル交換率を90,84,67,57%及
び実施例1に示した94%に設定した場合に固定化酵素の
活性の2半減期の間(380日)に固定化酵素1kgで処理さ
れるパーム軟部油を計算し、第13表に示した。
実施例6 反応系の温度を50℃に保つ以外は実施例1と同様に行
なった。その結果を第14表に示した。
尚、カラム出口の水分は310ppmで一定であった。
第14表の結果から、反応系の温度は実施例1で行なっ
た45℃と同様50℃でも良好なエステル交換反応が起こっ
た。
実施例7 乾燥したDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−679(1
0万U/g担体)2.5gを50mlのn−ヘキサンに懸濁し、内径
10mm、長さ150mmのジャケット付カラムに充填した。ト
リオレイン272.2g、トリラウリン200gをn−ヘキサン66
0gに溶解した上で蒸留水1.59gを加え攪拌した。基質溶
液の水分は1400ppmであった。基質溶液をDEAE−トヨパ
ール固定化リパーゼPL−679カラムの下端より流速17.5m
l/hrで送液した。尚反応系の温度は45℃に保った。9日
間継続してカラムへ送液し、24時間毎に反応溶液を採取
し、実施例2に示したと同様の方法によりTGの分子種を
高速液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果
を第15表に示した。
尚、カラム出口水分は450ppmで一定であった。
但し、Lはラウリン酸、Oはオレイン酸を、その他は
ジグリセリド,遊離脂肪酸等を表わす。
第15表の結果から、トリオレインとトリラウリンの様
なトリグリセリド間のエステル交換も連続的に非常に良
く起きた。
実施例8 実施例1と同様な方法により調製したDEAE−トヨパー
ル固定化リパーゼPL−679カラムと基質含有水分調整用
プレカラムを用いた。
パーム軟部油177.2g(5.6w/v%)、ステアリン酸141.
8g(ステアリン酸/パーム軟部油=0.8w/w)をn−ヘキ
サン1,850gに溶解した上で蒸留水5mlを加えて攪拌し、3
0分間静置した後上清液を基質溶液として用いた。プレ
カラムを通過し水分を約700ppmに調整した基質溶液を固
定化酵素カラムの下端より流速27.5ml/hrで9日間継続
して送液し、以後実施例1と同様に行い、エステル交換
率を求めた。反応温度は45℃とした。その結果を第16表
に示した(Run No.1)。
次にパーム軟部油265.8g(8.4w/v%)、ステアリン酸
212.7gをn−ヘキサン1,735gに溶解して上記と同様に反
応を行ないエステル交換率を求めた。その結果を第16表
に示した(Run No.2)。
更にパーム軟部油443g(14.0w/v%)、ステアリン酸3
54.5gをn−ヘキサン1,500gに溶解して上記と同様に反
応を行ないエステル交換率を求めた。その結果を第16表
に示した(Run No.4)。
又パーム軟部油354.4g、ステアリン酸212.7g(ステア
リン酸/パーム軟部油=0.6W/W)、n−ヘキサン1,670g
を用いて上記と同様に行ないエステル交換率を求めた。
その結果を第16表に示した(Run No.5)。
更に又パーム軟部油354.4g、ステアリン酸141.8g(ス
テアリン酸/パーム軟部油=0.4W/W)、n−ヘキサン1,
720gを用いて上記と同様に行ないエステル交換率を求め
た。その結果を第16表に示した(Run No.6)。尚、カラ
ム出口の水分はすべて200ppmで一定であった。
第16表の結果からパーム軟部油の濃度と、ステアリン
酸とパーム軟部油との比を変化させてもエステル交換率
は殆んど変わらず連続してエステル交換が非常に良く起
こることがわかる。
実施例9 セパビーズFP−DA05(三菱化成工業社製)50gを0.1N
−NaOH水溶液500mlに6時間浸漬した後No.1濾紙上で吸
引しつつ蒸留水2lで洗浄し活性化セパビーズFP−DA05を
得た。
リパーゼPL−679粉末の5%水溶液1に上記活性化
セパビーズ50gを加え4℃にて4時間攪拌した後No.1濾
紙上で吸引しつつ蒸留水2lで洗浄し、更に凍結真空乾燥
により水分を除去し、乾燥セパビーズFP−DA05固定化リ
パーゼPL−679 40gを得た。本固定化酵素の活性は14,00
0U/g担体であった。
乾燥したセパビーズFP−DA05固定化リパーゼPL−679
(14,000U/g担体)10gをn−ヘキサン100mlに懸濁し、
内径20mm、長さ150mmのカラムに充填した。
粒状珪藻土7gに蒸留水2.5mlを吸収させ内径10mm、長
さ150mmのカラムに充填し、基質溶液含有水分調整用の
プレカラムとした。実施例1と同様の基質溶液を流速2
7.5mlでプレカラムに通液した後、同じ流速で固定化酵
素カラム下端より送液した。固定化酵素カラム入口で基
質溶液の含有水分は70ppm、出口では200ppmであった。
反応系は45℃に保ち9日間継続して反応を行なった。1
日目、4日目、7日目、9日目に反応液のグリセリド組
成とトリグリセリドの脂肪酸組成を実施例1の方法に従
い分析した。その結果を第17表に示した。
第17表の結果から、セパビーズFP−DA05固定化リパー
ゼPL−679によるエステル交換が可能なことがわかる。
実施例10 デュオライトS761 15gを1N−NaOH水溶液500mlに4時
間浸漬した後No.1濾紙上で吸引濾過により樹脂を回収し
た。同濾紙上で樹脂を1の蒸留水で濾液のpHが6.0に
なる迄洗浄し、吸引濾過により樹脂の余剰の水分を除い
た。本樹脂にリパーゼPL−679粉末1%水溶液300ml(30
万Uの活性を含む)を加え4℃で1時間攪拌し更に12時
間静置した。上清液中のリパーゼ活性の減少から樹脂に
固定化されたリパーゼ活性を求めたところ乾燥樹脂1g当
り1,940Uであった。
デュオライトA587について上記方法に従いリパーゼPL
−679を固定化すると乾燥樹脂1g当り1,710Uが固定化さ
れた。
リパーゼPL−679を固定化したデュオライトS761ある
いはデュオライトA587を各々2.5gを実施例1のDEAE−ト
ヨパール固定化リパーゼPL−679に替えて使用する以外
は実施例1と同様に反応を行ない、エステル交換率を求
めた。この結果を第18表に示した。
又、リパーゼPL−679粉末240mgとセライト2gを均一に
混合固定し、実施例1のDEAE−トヨパール固定化リパー
ゼPL−679に替えて使用し、流速を3.0ml/hr(SV=0.52h
r-1)とする以外は実施例1と同様に反応を行ない、エ
ステル交換率を求めた。又参考例2の方法により調製し
たキトーサン固定化リパーゼPL−679、プロラクト固定
化リパーゼPL−679、又は酢酸セルロース固定化リパー
ゼPL−679 2.5gを実施例1のDEAE−トヨパール固定化リ
パーゼPL−679に替えて使用し、流速を3.0ml/hr(SV=
0.52hr-1)とする以外は実施例1と同様に反応を行ない
エステル交換率を求めた。更にリパーゼPL−679粉末を
そのまま1g使用し上記と同様に反応を行ないエステル交
換率を求めた。これらの結果を第18表に示した。
第18表の結果からセライト、キトーサン、プロラク
ト、酢酸セルロースに固定化したリパーゼPL−679とリ
パーゼPL−679粉末も良好なエステル交換反応が起こる
ことがわかる。
実施例11 実施例1で用いたDEAE−トヨパール固定化リパーゼPL
−679の代わりに各々DEAE−トヨパール固定化リパーゼP
L−266(1万U/g担体)、DEAE−トヨパール固定化リパ
ーゼAL(1万U/g担体)、DEAE−トヨパール固定化リパ
ーゼPS(1万U/g担体)を用いて実施例1と同様に行な
い、エステル交換率を求めた。DEAE−トヨパール固定化
リパーゼPL−679(10万U/g担体)も実施例1と同様に行
ない、エステル交換率を求めた。これらの結果を第19表
に示した。尚、4種類の固定化酵素について、全て流速
を3.0ml/hrとした。尚カラム出口の水分は全て210ppmで
一定であった。
第19表の結果から、DEAE−トヨパールに固定化したリ
パーゼPL−266、リパーゼAL及びリパーゼPSはいずれも
連続してエステル交換を行なうために使用できる。
実施例12 DEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−679(10万U/g担
体)2.5gを50mlのオリーブ油に懸濁し内径10mm、長さ15
0mmのジャケット付カラムに充填した。オリーブ油250g
とカプリン酸100gを45℃に加温して均一な溶液とし、更
に蒸留水0.29mlを溶解させ基質溶液(1,040ppmの水分を
含む)として用いた。反応系を40℃に保ち、マイクロポ
ンプにより流速4.1ml/hrで固定化酵素カラム下端より基
質溶液を送液した。24時間毎に反応液を採取し、実施例
2の高速液体クロマトグラフィーと同様の方法によりTG
分子種の分析を行なった。その結果を第20表に示した。
尚カラム出口の水分は470ppmで一定であった。
尚Oはオレイン酸を、Cはカプリン酸を、基質はオリ
ーブ油を示す。
第20表の結果から、DEAE−トヨパール固定化リパーゼ
PL−679は有機溶媒を使用しなくてもエステル交換反応
に使用できる。
実施例13 実施例1と同様な方法により調製したDEAE−トヨパー
ル固定化リパーゼPL−679カラムと基質含有水分調整用
プレカラムを用いた。
パーム軟部油354.4g、ステアリン酸メチル297.6gをn
−ヘキサン1600gに溶解した上で蒸留水5mlを加えて攪拌
し、30分間静置した後上清液を基質溶液として用いた。
プレカラムを通過し水分を約700ppmに調整した基質溶液
を固定化酵素カラムの下端より流速27.5ml/hrで9日間
継続して送液し、以後実施例1と同様に行い、エステル
交換率を求めた。反応温度は45℃とした。その結果を第
21表に示した。
又、ステアリン酸メチル297.6gの代りにステアリン酸
エチル311.5gを用いて上記と同様に行い、エステル交換
率を求めた。その結果を第21表に示した。
さらにステアリン酸メチル297.6gの代りにステアリン
酸ブチル339.6gを用いて上記と同様に行いエステル交換
率を求めた。その結果を第21表に示した。尚カラム出口
の水分はすべて260ppmで一定であった。
第21表の結果から、DEAE−トヨパール固定化リパーゼ
PL−679はステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、
ステアリン酸ブチルのような脂肪酸エステルとパーム軟
部油で連続して良好なエステル交換反応が起こることが
わかる。
実施例14 実施例1と同様な方法により調製したDEAE−トヨパー
ル固定化リパーゼPL−679カラムと基質水分調整用プレ
カラムを用いた。
オリーブ油350g、ヤシ油350gをn−ヘキサン1600gに
溶解した上で蒸留水5mlを加えて攪拌し、30分間静置し
た後上清液を基質溶液として用いた。基質溶液の水分は
200ppmであった。プレカラムを通過後の基質溶液の水分
は550ppmとなった。
プレカラムを通過した基質溶液をDEAE−トヨパール固
定化リパーゼPL−679カラムの下端より流速27.5ml/hr
(SV=2.3hr-1)で送液した。尚、反応系の温度は45℃
に保った。7日間継続してカラムに送液し、反応液4.6l
を得た。
この反応液のTGの分子種を実施例2の高速液体クロマ
トグラフィーと同様な方法により分析した。その結果を
第22表に示した。尚カラム出口の水分は130ppmで一定で
あった。
第22表の結果から、DEAE−トヨパール固定化リパーゼ
PL−679は、オリーブ油とヤシ油のエステル交換脂を得
るため連続して反応できる。
実施例15 実施例1と同様な方法により調製したDEAE−トヨパー
ル固定化リパーゼPL−679カラムと基質水分調整用プレ
カラムを用いた。
パーム油560g、大豆油840gをn−ヘキサン3200gに溶
解した上で蒸留水10mlを加えて攪拌し、30分間静置した
後上清液を基質溶液として用いた。基質溶液をプレカラ
ムに通液した後の水分は500ppmであった。
以後、実施例14と同様に7日間継続して送液し反応液
4.6lを得た。この時の反応液の水分は150ppmであった。
この反応液をロータリーエバポレーターで20mmHg減圧下
にn−ヘキサンを溜去し、エステル交換脂1000gを得
た。このエステル交換脂を5℃まで48時間かけて徐々に
冷却し、析出した結晶を同温度で濾別した。液体油歩留
は85%で液体油を0℃氷水中で冷却試験をしたところ24
時間後までくもりを生じず耐冷却性を備えたエステル交
換脂を製造できた。
又、パーム油560gと菜種油840gをn−ヘキサン3200g
に溶解し、蒸留水10mlを加えた上清液を基質溶液として
用いる以外は上記したと同様に行いエステル交換脂1000
gを得た。尚、カラム入口での水分は500ppmであり、又
出口での水分は150ppmであった。このエステル交換脂を
5℃まで48時間かけて徐々に冷却し、析出した結晶を同
温度で濾別した。液体油歩留は88%で液体油の耐冷却性
は24時間であって、耐冷却性を十分備えたエステル交換
脂を製造できた。
さらに、牛脂700gとオリーブ油700gをn−ヘキサン32
00gに溶解し、蒸留水10mlを加えた上清液を基質溶液と
して用いる以外は上記したと同様に行いエステル交換脂
1000gを得た。尚、この場合も入口水分は500ppm、出口
水分は150ppmであった。このエステル交換脂の融点を示
差走査熱量計(メトラー社製)で測定したところ23〜27
℃となり、牛脂(融点40〜50℃)とオリーブ油(融点−
6℃)から新しいエステル交換脂を製造することができ
た。
次にシアオレイン(シア脂分別油)1400gをn−ヘキ
サン3200gに溶解し、蒸留水10mlを加えた上清液を基質
溶液として用いる以外は上記したと同様に行い、エステ
ル交換脂1000gを得た。尚、この場合も入口水分は500pp
m、出口水分は150ppmであった。このエステル交換脂のT
Gの分子種を実施例2の高速液体クロマトグラフィーと
同様な方法により分析した。その結果を第23表に示し
た。
尚Sはステアリン酸、Oはオレイン酸、Lnはリノール
酸を示す。第23表の結果から、シアオレインの分子内エ
ステル交換反応が連続的に起きた。
実施例16 実施例1と同様な方法により調製したDEAE−トヨパー
ル固定化リパーゼPL−679カラムと基質含有水分調整用
プレカラムを用いた。
オリーブ油354.4g、パルミチン酸204.8gをn−ヘキサ
ン1600gに溶解した上で蒸留水5mlを加えて攪拌し、30分
間静置した後、上清液を基質溶液として用いた。プレカ
ラムを通過し水分を700ppmに調整した基質溶液を固定化
酵素カラムの下端より流速27.5ml/hrで送液した。24時
間毎に反応液を採取し、実施例2の高速液体クロマトグ
ラフィーと同様な方法によりTG分子種の分析を行った。
その結果を第24表に示した。尚カラム出口の水分は200p
pmで一定であった。
又、パルミチン酸204.8gの代りにラウリン酸160gを用
いて上記と同様に行いTG分子種の分析を行った。その結
果を第25表に示した。尚カラム出口の水分は200ppmで一
定であった。
尚、Oはオレイン酸、Pはパルミチン酸を、基質はオ
リーブ油を示す。
尚、Oはオレイン酸、Lはラウリン酸を、基質はオリ
ーブ油を示す。
第24,25表の結果からDEAE−トヨパール固定化リパー
ゼPL−679は、オリーブ油とパルミチン酸、オリーブ油
とラウリン酸で連続して、良好なエステル交換反応を示
す。
実施例17 ヤシ油30.2g、オレイン酸14.9gを144gのn−ヘキサン
に溶解し、蒸溜水0.11mlを加え良く攪拌し、600ppmの水
分を含む基質溶液を調製した。
実施例1と同様な固定化酵素カラムの下端より上記基
質溶液を流速20ml/hrで送液した。反応は40℃で5日間
連続して行なった。反応液全体から0.1mlを採取したN2
気流下に乾固した後、TMS1−H(ガスクロ工業製)0.2m
lを加え60℃に15分間加熱してトリメチルシリル化しガ
スクロマトグラフィーにより分析を行なった。即ち、JX
R−シリコーン3%の充填剤(担体クロモゾルブWAW.DMC
S,ガスクロ工業製)を充填した内径3mm長さ1mのカラム
を使用し、カラム温度350℃、キャリアーガス(N2)40m
l/minで各成分を分離し、各成分を水素炎イオン化検出
器で検出した。第26表にその結果を示した。
実施例18 牛脂42.2g、アラキドン酸6.4gをn−ヘキサン211gに
溶解し基質溶液として使用した。
上記基質溶液を実施例1と同様にプレカラムを通過さ
せた後、実施例1と同様な固定化酵素カラムの下端より
流速15ml/hrで送液した。反応は40℃で3日間行なっ
た。反応液1mlを24時間毎に採取し、実施例1と同様に
ガスクロマトグラフィーによりトリグリセリドの脂肪酸
組成を分析した。その結果を第27表に示した。
第27表から油脂へ高度不飽和酸を導入することが可能
なことがわかる。
実施例19 ヤシ油302.4g、カプリル酸144.2g及びカプロン酸86.1
gを407gのn−ヘキサンに溶解し、更に蒸溜水0.55mlを
溶解し、含有水分600ppmの基質溶液を調製した。
実施例1と同様な固定化酵素カラムの下端より上記基
質溶液を10ml/hrの流速で送液した。反応は40℃で3日
間行なった。反応液全体から0.1mlを採取し、実施例17
と同様に分析を行なった。この結果を第28表に示した。
実施例20 DEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−679(10万u/g担
体、水分0.5%含有)40gをn−ヘキサンに懸濁し、内径
15mm、長さ500mmのジャケット付きカラムに実施例1と
同様の方法により充填した。
粒状珪藻土38gに蒸溜水30gを吸収させ、内径15mm、長さ
500mmのジャケット付きカラムに充填し、基質含有水分
調整用プレカラムとして使用した。
パーム軟部油1140g、ステアリン酸911gをn−ヘキサン
7,800mlに溶解し、基質溶液とした。尚、本基質溶液は1
20ppmの水分を含んでいた。基質溶液の一部をプレカラ
ム下端よりマイクロポンプを使用して155ml/hrの流速で
送液し、750ppmの水分を含む基質溶液とし、120ppmの水
分を含む基質溶液とをそれぞれマイクロポンプにより流
速155ml/hrと135ml/hrで、直径1mmガラスビーズを充填
した内径10mm、長さ50mmのカラムに送り込み、混合して
水分400ppmを含む基質溶液とした後、固定化リパーゼ充
填カラム上端から流速290ml/hr、50℃で3日間流した。
反応液を24時間毎に採取し、実施例1と同様の方法でエ
ステル交換率を求めた。最初の3日間は基質溶液の流速
を290ml/hrとして反応しこの間のエステル交換率の平均
は98%であった。3日目以降は流速を290ml/hrから206m
l/hrに向けてゆっくりと減速して90日間反応し、この間
のエステル交換率を97.5〜98.5%の範囲に保った。4日
目以降は3日毎に反応液を採取し、実施例1と同様に分
析し、その結果を第29表に示した。
又、第2図に本実施例でのフローチャートを示した。
なお、Aは基質溶液タンク、B、Cは送液用ポンプ、D
は基質溶液水分調整用プレカラム、Eはラインミキサ、
Fは固定化リパーゼを充填した連続反応槽カラム、Gは
製品タンクを示す。又、送液ポンプBは、含水量の異な
る基質溶液を混合して任意の水分の基質溶液を調整する
際に使用する。
実施例21 DEAE−トヨパール固定化リパーゼPL−679(10万u/g担
体)10gを100mlのオリーブ油に懸濁し,内径15mm長さ20
0mmのカラムに充填した。オリーブ油150gにステアリン
酸120g及び蒸溜水0.18gを75℃で溶解し、970ppmの水分
を含む基質溶液を得た。基質を12g/hrの流速で固定化酵
素カラム上端より送液し、反応系全体を75℃に保った。
24時間毎に反応液を採取し、実施例2の高速液体クロマ
トグラフィーと同様の方法によりトリグリセリド分子種
の分析を行ない,その結果を第30表に示した。尚,カラ
ム出口の水分は180ppmで一定であった。
以上に述べた説明から、本発明の実施態様をまとめる
と、以下の通りである。
実施態様1.アルカリ性高分子量リパーゼを用いた炭素数
4〜22の脂肪酸又はそのエステルと油脂との間、又は油
脂間の連続エステル交換反応により、エステル交換脂を
製造する方法において、前記アルカリ性高分子量リパー
ゼとして、分子量10万以上、至適pH8以上であって、1,3
位置特異性がありかつ含水率0%以上、5%以下のアル
カリ性高分子量リパーゼを使用し、このアルカリ性高分
子量リパーゼを前記脂肪酸又はそのエステル及び油脂、
又は油脂からなる基質と共に連続反応槽に充填し、この
連続反応槽の入口より供給する前記基質の含有水分を10
0ppm以上、1800ppm以下とし、前記連続反応槽の出口で
の反応後基質含有水分を50ppm以上、800ppm以下とする
ことを特徴とする、エステル交換脂の製造方法。
実施態様2.連続反応槽の入口側で基質に水分を添加する
ことによって、前記連続反応槽の入口での基質の含有水
分を100ppm以上、1800ppm以下に、かつ前記連続反応層
の出口での基質の含有水分を50ppm以上、800ppm以下と
する、実施態様1に記載した製造方法。
実施態様3.脱水操作なしに反応を行う、実施態様1に記
載した製造方法。
実施態様4.アルカリ性高分子量リパーゼが、イオン交換
体に結合させた固定化アルカリ性高分子量リパーゼであ
るか、添加物として蛋白質や、糖類や、粘土鉱物を混和
した後に乾燥して固定した固定化アルカリ性高分子量リ
パーゼであるか、又はアルカリ性高分子量リパーゼ自体
である、実施態様1に記載した製造方法。
実施態様5.アルカリ性高分子量リパーゼを固定化するイ
オン交換体の基本構造が、メタクリレート系樹脂により
構成される弱塩基性イオン交換樹脂である、実施態様4
に記載した製造方法。
実施態様6.アルカリ性高分子量リパーゼが、アルカリゲ
ネス属、アクロモバクター属、シュードモナス属に属す
る微生物の生産するアルカリ性高分子量リパーゼであ
る、実施態様1に記載した製造方法。
実施態様7.連続エステル交換反応を80℃以下の温度で行
う、実施態様1に記載した製造方法。
実施態様8.アルカリ性高分子量リパーゼの含水率の調整
を凍結乾燥法により行う、実施態様1〜4のいずれか1
項に記載した製造方法。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例1における、エステル交換率
を示す図である。 第2図は、本発明の実施に好適な連続反応槽のフローシ
ートの例である。 尚、Aは基質溶液タンク、B、Cは送液用ポンプ、Dは
基質溶液水分調整用プレカラム、Eはラインミキサ、F
は固定化リパーゼを充填した連続反応槽カラム、Gは製
品タンクを示す。又、送液ポンプBは、含水量の異なる
基質溶液を混合して任意の水分の基質溶液を調整する際
に使用する。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルカリ性高分子量リパーゼを用いた炭素
    数4〜22の脂肪酸又はそのエステルと油脂との間、又は
    油脂間の連続エステル交換反応により、エステル交換脂
    を製造する方法において、前記アルカリ性高分子量リパ
    ーゼとして、分子量10万以上、至適pH8以上であって、
    1,3位置特異性がありかつ含水率0%以上、5%以下の
    アルカリ性高分子量リパーゼを使用し、このアルカリ性
    高分子量リパーゼを前記脂肪酸又はそのエステル及び油
    脂、又は油脂からなる基質と共に連続反応槽に充填し、
    この際、前記連続反応槽の入口側に基質水分調整用プレ
    カラムを接続し、前記基質の一部分を分流させて前記基
    質水分調整用プレカラムに通した後に前記基質の他の部
    分と混合することにより、前記連続反応槽の入口より供
    給する前記基質の含有水分を100ppm以上、1800ppm以下
    に調整し、かつ前記連続反応槽の出口での反応後基質含
    有水分を50ppm以上、800ppm以下とすることを特徴とす
    る、エステル交換脂の製造方法。
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