JP2749034B2 - 高分子量リパーゼによる対称型トリグリセリドの製造法 - Google Patents

高分子量リパーゼによる対称型トリグリセリドの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、対称型トリグリセリド〔ここで対称型トリ
グリセリドとは、S−U−S型グリセリドとU−S−U
型グリセリド(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)の如く
トリグリセリドの2位置の脂肪酸に対して1位置と3位
置の脂肪酸が共に飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸のいずれか
において2位置の脂肪酸と必らず対称をなす脂肪酸を結
合するトリグリセリドを意味する。但し、1位置と3位
置の脂肪酸の長さは必ずしも同一である必要はない。以
下、この様なドリグリセリドを総称して対称型トリグリ
セリドと言う〕の製造法に関する。 更に詳しくは、本発明は油脂と脂肪酸又はそのエステ
ルとから、1,3−位置特異性のある高分子量微生物リパ
ーゼを用いてカカオ脂を代表とする高付加価値の対称型
トリグリセリドを高いエステル交換率で容易にかつ安価
に製造する方法に関する。 〔従来の技術〕 油脂のエステル交換反応は主に油脂の改質目的におい
て有効な手段である。従来、化学的エステル交換反応
は、金属ナトリウム、ナトリウムメチラート等の無機触
媒を用いて高温下に行なわれており、マーガリン、ショ
ートニング等の加工油脂製造に応用されている。しかし
化学的エステル交換反応はランダムな反応のために脂肪
酸の結合位置選択性が低く、特に厳密な結合位置の選択
を必要とする対称型トリグリセリドの製造には適さな
い。 このため、対称型トリグリセリドの代表的油脂である
カカオ脂様ハードバターは、現在天然脂に依存してお
り、主に熱帯地域において自主する木の実より採取され
るシヤ脂、サル脂などに含まれる対称型トリグリセリド
を結晶法や溶剤法により分別して製造している。しかし
このような限られた天然依存型の稀少油脂の生産は気候
や異変によって左右されやすく、今後の需要の拡大もあ
って将来の枯渇が心配されている。 そこで安価にかつ豊富にある油脂よりリパーゼの作用
によって希少油脂を製造しようとする研究がなされてい
る。特に、リパーゼの中でもグリセリドの1位と3位に
特異的に作用するリパーゼ(以下、このような性質をも
つリパーゼを1,3−位置特異性のあるリパーゼと言う)
を用いることによって化学的エステル交換反応では作り
にくい対称型トリグリセリドを選択的に作り出すことが
期待できるため、この方面の研究が多くなされている。
そして対称型トリグリセリドの製造を目的とするエステ
ル交換反応に関する従来公知の文献としては、例えば特
開昭52−104506号公報、特開昭55−71797号公報、特開
昭58−116689号公報、特開昭60−34189号公報、特開昭6
0−203196号公報などが見られる。 これ等の文献には、n−ヘキサン、石油エーテル等の
非極性溶媒中においてリゾープス属、アスペルギルス
属、ムコール属、ジオトリカム属などの生産する1,3−
位置特異性のある低分子量の酸性リパーゼを用い、反応
系の水の存在量を一定範囲内に限定することなどを特徴
とする方法が開示されている。 さらに、糖、界面活性剤、キトサン及びその誘導体、
高吸水性樹脂などを反応系に添加した場合の効果につい
て開示したものも見られる(特開昭58−116688号公報、
特開昭58−116689号公報、特開昭58−187195号公報)。 なお、従来提案の方法では、用いられるリパーゼは反
応溶媒中に分散させ活性を発現させるため、いったん水
や緩衝液に溶解するか、又はセライトのような含水担体
に吸着固定化し、近傍に水を存在させることによって活
性を発現させるなどの方法で行なわれている。 〔発明が解決しようとする問題点〕 対称型トリグリセリドを目的とするエステル交換反応
においては、少なくとも2位置の脂肪酸のエステル結合
を加水分解することなく、原料油脂グリセリドから1,2
−ジグリセリドや2−モノグリセリドまでの部分的加水
分解反応と2−モノグリセリドや1,2−ジグリセリドか
ら目的とする対称型トリグリセリドへの再合成と言った
一定の指向性をもたせた一連の選択的、可逆的反応がバ
ランスよく行なわれることが問題解決にとって必要であ
る。 一定の水量における加水分解と合成の反応平衡はリパ
ーゼの起源や反応条件によって異なっており、必らずし
も一定ではない。したがって単に1,3−位置特異性のあ
るリパーゼを用い、制限された水の存在量においてエス
テル交換反応を行なう方法に不遍性を持たせようとする
ことは、あまり意味をもたないし、何等問題解決の決め
手にはならない。むしろ、対称型トリグリセリドを収率
よく製造するためには、いかに少ない水の存在下に迅速
なエステル交換反応を効果的に行なうことができるかが
問題解決にとって重要である。そして効果的なエステル
交換反応を行なう上でリパーゼに求められる重要な要件
は、微量含水有機溶媒溶液中でのエステル交換反応を可
能とする強い活性発現と活性の長期保持である。 したがって、対称型トリグリセリドの収率のよい製造
に対しては、微量含水有機溶媒中での反応であっても活
性を強く発現し、酵素活性を長期維持し、かつ繰返し使
用にも耐えられるリパーゼが合目的リパーゼということ
になるが、この点で従来法で用いられているリパーゼに
は問題があった。 かくして、上記のような合目的なリパーゼを用いた対
称型トリグリセリドの製造方法が望まれていたのであ
り、この問題を解決したのが本発明である。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明者等は、上記した事情に鑑み、水に溶解するか
又はセライト等の含水担体に吸着固定しないかぎり有機
溶媒中においてはほとんど活性を発現しないか又は急速
に失活してしまう従来公知方法で用いられるリゾープス
・デレマーのリパーゼの如き低分子量酸性リパーゼを用
いるかぎり効率的なエステル交換反応、更には酵素活性
の長期的維持は望めないとの判断に立ち、多数の水分子
を分子内に保有すると推定される高分子酵素蛋白に着目
し、有機溶媒中においてもその水分子を強固に保持して
失うことのない高分子量微生物菌体外リパーゼを用いた
エステル交換反応について鋭意研究した。 その結果、アルカリゲネス属、アクロモバクター属、
シュードモナス属等の高分子量リパーゼを含む高分子量
微生物リパーゼ粉末を微量含水有機溶媒の存在下に徐々
に脱水しつつ作用させると、広範な油脂原料グリセリド
と脂肪酸との間ですばやくエステル交換が起り、高い収
率で対称型トリグリセリドに変換するという驚くべき現
象のあることを見出した。本発明はこの発見に基づいて
完成されたものである。 即ち、本発明は、2位置の脂肪酸が不飽和又は飽和の
いずれか1つである原料油脂グリセリドと、該グリセリ
ドの2位置の脂肪酸とは不飽和又は飽和において対称を
なすC4〜C22の飽和もしくは不飽和の脂肪酸(但し、こ
の脂肪酸は炭素数C1〜C20のアルカノールの脂肪酸エス
テルであってもよい)とを、有機溶媒(但し、1価以上
の第1級及び第2級アルコール溶媒を除く)の存在下
に、1,3−位置特異性のある分子量10万以上の高分子量
微生物リパーゼを作用させることにより、エステル交換
反応させて対称型トリグリセリドを得ることを特徴とす
る対称型トリグリセリドの製造法であり、その目的とす
るところは、従来提案の酵素法とは異なり、微量含水有
機溶媒中において強いエステル合成能と長期有機溶媒耐
性を持つ高分子量微生物リパーゼを直接反応系に加える
ことによって原料油脂グリセリドから高収率で対称型ト
リグリセリドを得ると共に、酵素の再利用を大幅に伸ば
すことができることによって安価にして高品位の対称型
トリグリセリドを得る方法を提供するものである。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明でエステル交換反応に用いる原料油脂グリセリ
ドとしては、植物性、動物性の油脂もしくは加工油脂、
あるいはこれらの分別油、又は混合油があげられる。そ
の具体例として、例えば大豆油、綿実油、ナタネ油、オ
リーブ油、コーン油、ヤシ油、サフラワー油、椿油、山
茶花油、パーム軟部油、パーム油、サル油、イリッペ
脂、コクム脂、シア脂、マウア脂、フルワラ脂、ボルネ
オタロー、牛脂、ラード、乳脂、魚油、更にジラウリ
ン、ジパルミチン、ジオレイン、ジステアリン、トリラ
ウリン、トリパルミチン、トリオレイン、トリステアリ
ン、又はこれ等の硬化油脂などを挙げることができる
が、2位置の脂肪酸が飽和酸もしくは不飽和酸のいずれ
かであるグリセリドをより多く含む油脂ほど本発明の目
的にとって好ましい。 又、本発明でエステル交換反応に用いる脂肪酸は、上
記グリセリドの2位置の脂肪酸と不飽和又は飽和におい
て対称をなすC4〜C22の飽和もしくは不飽和の脂肪酸
(但し、この脂肪酸は炭素数C1〜C20のアルカノールの
脂肪酸エステルであってもよい)である。この様な脂肪
酸の具体例としては、例えば酪酸、カプロン酸、カプリ
ル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミ
チン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシ
ノレイン酸、エイコサペンタエン酸などが挙げられる。
又、これ等脂肪酸のアルカノールエステルを形成するア
ルカノールの具体例としては、例えばメタノール、エタ
ノール、1−プロパノール、1−ブタノール、イソプロ
パノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−
ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1
−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデ
カノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙
げられる。 上記の如き原料油脂グリセリドと脂肪酸及びそのエス
テルが例示できるが、本発明においては、その組合せは
自由であり、選択にも制限はない。 つぎに本発明で使用する高分子量微生物リパーゼとし
ては、1,3−位置特異性のある高分子量微生物リパーゼ
であれば任意のものを使用することが出来るが、その様
なリパーゼの具体例としては、例えばアルカリゲネス
(Alcaligenes)属に属する名糖PL−266号(Alcaligene
s sp.PL−266)(微工研菌寄第3187号)の生産するリパ
ーゼ(特公昭58−36953号公報)(以下、リパーゼPL−2
66という)、同じくアルカリゲネス属に属する名糖PL−
679号(Alcaligenes sp.PL−679)(微工研菌寄第3783
号)の生産するリパーゼ(特公昭60−15312号公報)
(以下、リパーゼPL−679という)、更にアクロモバク
ター(Achromobacter)属に属する名糖AL−865号(Achr
omobacter sp.AL−865)(微工研菌寄第1213号)の生産
するリパーゼ(特公昭49−32080号公報)(以下、リパ
ーゼALという)、更にシュードモナス(Pseudomonas)
属に属するシュードモナス・ニトロレデューセンス・バ
ラエティ・サーモトレランス(Pseudomonas nitroreduc
ens var.thermotolerans)(微工研菌寄第1338号)の生
産するリパーゼ(特公昭56−28516号公報)(以下、リ
パーゼPSという)などが、特に溶剤耐性、位置選択性、
エステル合成能にすぐれた有効なリパーゼの具体例とし
て挙げることができる。なお、これらリパーゼは菌体外
リパーゼである。 第1表は、従来の公知方法において例示されたリパー
ゼと、本発明において用いる高分子量微生物リパーゼの
具体例について、その分子量及び至適pHを比較したもの
である。 第1表に示すリパーゼPL−266、リパーゼPL−679、リ
パーゼAL、リパーゼPSは、いずれも分子量が10万以上の
高分子量アルカリ性リパーゼである。このような高分子
量リパーゼは多くのサブユニットによって活性基が保護
されるだけでなく、その分子内に多くの分子内水を保有
していると考えられる。このような性質が低分量、酸性
リパーゼにはない微量含水有機溶媒中での特に高い安定
性や強いエステル合成能に何等かの関連を有しているも
のと推定される。 この点に関し実験例を示して説明する。 実験例1 リパーゼの分子内保有水保持能の比較 各リパーゼ含有培養濾液1に99.5%アセトン(−20
℃)4.0lを添加、攪拌後、遠心分離して沈澱を回収し
た。次にこれを新しい冷アセトン300mlにて3回脱水洗
浄後、回転式真空乾燥機にて30℃、約10時間乾燥したア
セトン粉末の105℃、4時間での乾燥減量はRhizopus de
lemar(ATCC34612)のリパーゼの場合に10.5%、Alcali
genes sp.PL−679のリパーゼ(リパーゼPL−679)の場
合に26.0%であった。 このアセトン粉末に60℃、4時間真空下に乾燥を続け
た後の105℃、4時間での乾燥減量はRhizopus delemar
(ATCC34612)のリパーゼでは5.0%、Alcaligenes sp.P
L−679のリパーゼ(リパーゼPL−679)では16.0%であ
った。 又、このアセトン粉末を更に高温の80℃で1時間乾燥
し続けた後の105℃、4時間における乾燥減量はRhizopu
s delemar(ATCC34612)のリパーゼでは約2.3%、Alcal
igenes sp.PL−679のリパーゼ(リパーゼPL−679)では
15.0%であった。 実験例2 溶媒中での安定性 リパーゼPL−679(名糖産業)、リパーゼPL−266(名
糖産業)、リパーゼAL(名糖産業)、リパーゼPS(サッ
ポロビール株式会社)、タリパーゼ(Rhizopus delemar
のリパーゼ)(田辺製薬)、リパーゼMAP−20(Mucor j
avanicusのリパーゼ)(天野製薬)、リパーゼAP(Aspe
rgillus nigerのリパーゼ)(天野製薬)の粉末25mgず
つを各7ml栓付遠沈管に取り、これに各種溶媒、即ちn
−ヘキサン、石油エーテル、アセトン、t−ブタノー
ル、水を各2ml加え、充分攪拌し、37℃で24時間振盪
し、残存活性をリパーゼ力価測定法で測定した。リパー
ゼの測定は、リパーゼPL−679とPL−266については国生
等の方法〔Agric.Biol.Chem.46(5),第1259頁,198
2〕、リパーゼALについては国生等の方法〔油化学23
(2),第98頁,1974〕、リパーゼPSについては渡辺等
の方法〔Agric.Biol.Chem.41,1353(1977)〕、その他
のリパーゼについては福本等の方法〔J.Gen.Appl.Micro
biol.,353(1963)〕で行った。 その結果を第2表に示す。 実験例3 微量含水溶媒中でのリパーゼのエステル合成能 リパーゼPL−679(名糖産業,比活性8.7万μ/g)、リ
パーゼPL−266(名糖産業,比活性1.1μ/g)、リパーゼ
AL(名糖産業,比活性1.5万μ/g)、リパーゼPS(サッ
ポロビール株式会社,比活性1.6万μ/g)、タリパーゼ
(田辺製薬,比活性1.0万μ/g)、リパーゼAP(天野製
薬,比活性3.7万μ/g)のリパーゼ粉末各100mgを、各種
溶媒5mlの存在下に、グリセリン0.163gとオレイン酸0.5
gに加え、脱水剤としてモレキュラーシーブス3A〔和光
純薬(株)販売〕0.5gを加えて脱水しつつ37℃で48時間
振盪して反応させた。 添加した脂肪酸のうち、エステル合成に消費された量
を、アルカリ溶液で滴定することにより求め、反応前の
脂肪酸に対する脂肪酸の減少率の百分率をもってエステ
ル合成率を測定した。又、反応液中含水率はカールフィ
シャー(電量滴定法)による水分測定装置(三菱化成工
業社製CA−05)を用いて調べた。その結果を第3表に示
す。 第2表及び第3表から、高分子量アルカリ性リパーゼ
は明らかに低分子量酸性リパーゼよりも溶媒耐性及びエ
ステル合成能において優れていることがわかる。 従って本発明において例示した以外の高分子量微生物
リパーゼであっても、有機溶媒中で安定的に活性を維持
し、且つ強いエステル合成能を示す分子量が10万以上の
高分子量微生物リパーゼであるかぎり、いかなる高分子
量微生物リパーゼでも使用でき、その起源や種類に制限
はない。 又、本発明において、エステル交換反応に用いる高分
子量微生物リパーゼは、精製品でも粗製品でもよく、そ
の使用形態としては、酵素粉末単独でも、適当な結着剤
により整形した顆粒状酵素でもよい。 又、必要があれば酵素以外の適当な濾剤等を希釈剤と
して加えて固めてもよく、更に又は、各種担体に酵素を
固定化することによって反応の効率化や、酵素の利用性
がより高まるのであれば、担持固定化して使用すること
もできる。この様な固定化担体として、例えばポリプロ
ピレン膜、DEAE−Toyo pearl、CM−セルロース、DEAE−
セルロース、アンバーライトIRA68、IRA938、IRA93、IR
A94等のイオン交換樹脂や吸着樹脂のごとき各種重合
体、ベントナイト等を用いることが出来、これらに担持
固定化した後、これを乾燥して利用することが出来る。
そしてこれらの乾燥としては、凍結乾燥、アセトン等の
乾燥溶媒による浸漬、洗浄等の方法によって行うことが
出来る。 本発明で用いる有機溶媒(但し、1価以上の第1級及
び第2級アルコール溶媒を除く)としては、反応温度に
おいて液状をなし、1,3−位置特異性のある高分子量微
生物リパーゼの活性を安定的に維持し、エステル交換反
応によって収率よく対称型トリグリセリドを生成しうる
かぎり、なんでもよいが、上記条件を満足する限りにお
いて用いる基質をよく溶解し、更に溶媒中より水を除き
易い溶媒が望ましい。 本発明で用いる有機溶媒の例としては、例えばn−ヘ
プタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、石油エーテル、
イソオクタンなどの如き脂肪族炭化水素類;シクロペン
タン、シクロヘキサン、シクロブタンなどのごとき脂環
式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどのご
とき芳香族炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケ
トンなどのごときケトン類;アセトニトリル、2−ニト
ロプロパン、ピリジン、キノリン、ジメチルホルムアミ
ドなどのごとき含窒素溶媒類;ジメチルエーテル、ジエ
チルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンな
どのごときエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム、塩
化メチレンなどのごときハロゲン化炭化水素類;ジメチ
ルスルホキシドのごときスルホキシド溶媒類;3級ブチル
アルコール、第3級アミルアルコール、ジアセトンアル
コール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−
3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノールのご
とき第3級アルコール類などを例示することができる。 これ等の中でも特に好ましいのは、脂肪族炭化水素
類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル
類、ハロゲン化炭化水素類、第3級アルコール類であ
り、反応を行う上で極めて有効な反応溶媒となる。又、
反応溶媒は単独でも使用出来るが、2種以上の溶媒を自
由に混ぜ合せて使用することも出来る。 原料油脂グリセリドと脂肪酸又はそのエステル類と
を、有機溶媒の存在下で、高分子量微生物リパーゼを接
触せしめ、エステル交換反応を生起させうるための態様
は適宜に選択できる。即ち、回分式、連続式のいずれの
反応態様においても、粉末状、顆粒状又は必要に応じて
固定化したリパーゼを反応容器に直接又は通液性の袋等
に詰めて添加し、又は反応塔に充填し、反応液を攪拌、
循環、通過などの方法によって酵素と接触せしめること
によって行うことができる。 又、本発明において、原料油脂グリセリドと脂肪酸又
はそのエステル類との混合モル比や、リパーゼの使用
量、有機溶媒の使用量、含水量、反応温度、反応時間な
どは適宜に選択でき、最もよく反応を促進し、高いエス
テル交換収率が得られ、かつ反応操作のしやすい条件を
採用すればよい。 原料油脂グリセリド1モルに対する脂肪酸又はそのエ
ステルの添加モル比としては、0.1〜100モル、好ましく
は1〜10モル、最も好ましくは1〜5モルの反応比を例
示することができる。 又、必要に応じて脂肪酸やそのエステル類は数種類混
合して反応してもさしつかえない。 つぎに高分子量微生物リパーゼの使用量についても特
に制限はないが、原料油脂グリセリド1g当り100〜10000
0単位、好ましくは1000〜10000単位の使用量を例示する
ことができ、反応条件や用いるリパーゼの種類や形態、
更には溶媒の種類によっても左右されることを考慮して
使用量を決めればよい。 担体に酵素を固定化して使用する場合には、その比活
性は高いものほど好ましく、担体1g当り1000〜300000単
位程度の高分子量微生物リパーゼを担持した乾燥リパー
ゼ担体が好ましい。 又、有機容易の使用量は、用いる溶媒と基質の種類及
び濃度によっても異なるが、要は基質を溶解した有機溶
媒が自由に反応容器内を移動し酵素と充分接触し、反応
が促進される程度に有機溶媒を転化するのが望ましく、
特に制限はないが、例えば反応系全体の10〜90%(W/
W)、好ましくは20〜80(W/W)程度加えて反応させれば
よい。 次に反応系の含水率であるが、本発明で言う含水率と
は、高分子量微生物リパーゼを用い有機溶媒の存在下に
安定的に適度な加水分解能と強いエステル合成能を発
揮、維持するに必要な反応溶液中の水量を意味する。 そして反応溶液中の含水量としては、水とは自由に混
り合わないn−ヘキサン、イソオクタンの如き非極性溶
媒においては、酵素反応を開始し又は促進するに際し
て、0.02%以上2.0以下の含水率が好ましく、特に好ま
しくは0.02%以上1.0%以下の含水量で反応を行うこと
が望ましい。又、t−ブタノール、アセトンの如き水と
自由に混る極性溶媒においては、酵素反応を開始し又は
促進するに際して、0.02%以上4.0%以下、好ましくは
0.02%以上2.0%以下、特に好ましくは0.02%以上1.0%
以下の含水率で反応を行うことが望ましい。 本発明では、反応開始後より徐々に脱水しながら反応
を進めるが、上記した如き含水量における高分子量微生
物リパーゼの作用はその反応初期においても加水分解の
みが一方的に起ることはなく、同時平衡に合成反応も起
っている。この点に関し、反応系の含水率(%)に対す
るエステル合成率を調べた実験例を示して説明する。 実験例4 オレイン酸5g(17.7ミリモル)、グリセリン1.63g(1
7.7ミリモル)、第3級ブチルアルコール50ml、リパー
ゼPL−679粉末1g、モレキュラシーブス3A〔和光純薬
(株)販売の脱水剤〕5gを500ml容三角フラスコに取
り、水を0〜20%(反応系全体に対する%)になるよう
に加え、40℃で48時間振盪して反応させ、反応系に添加
した脂肪酸のうちエステル合成に消費された量を、アル
カリ溶液で滴定することにより求め、反応前の脂肪酸量
に対する脂肪酸の減少率の百分率をもってエステル合成
率を測定した。また、反応後、反応液0.5gをとり、カー
ルフィッシャー試薬による水分測定装置(三菱化成工業
社製)を用いて反応液の含水量を調べた。その結果を第
4表に示す。 実験例4に示す如く、本発明で用いられる高分子量微
生物リパーゼの合成作用は、0.02%微量含水率から20%
の高含水率にかけて連続して起っており、或る含水率の
ところから合成反応が停止し分解反応のみが行なわれる
ものでないことを示している。しかし、反応系の含水率
を下げることはリパーゼの合成能をより助長する上から
は有効であり、本発明においても加水分解反応と合成反
応とをバランスさせつつ徐々に含水率を下げ分解よりも
合成を強める方向へと移動することによって効率的なエ
ステル交換反応を行うことができる。 かくして本発明においては、反応のバランスの目安と
して反応によって蓄積される1,2−ジグリセリドの量が
最大でも全グリセリド中の15%以下、好ましくは9〜10
%以下にとどめるように反応溶媒含水率を徐々に低下さ
せ、加水分解反応を弱め、合成反応を強めることによっ
て1,2−ジグリセリドの量を過剰にならないように調整
して行うことができる。 そして脱水する最終含水率としては、0.02%以下、好
ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.0056%以下に脱
水することが収率の向上や再分解の防止の上から望まし
い。 反応系の含水率を低下させる手段としては、例えば反
応系内に乾燥した不活性ガスを通気し、排気と共に反応
系内水分を同伴除去することができる。この様な不活性
ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス
などが望ましく、排気ガス中に同伴する溶媒は冷却、凝
縮によって回収し再利用することができる。 上記不活性ガスの通気によって充分に除去できない場
合は、ゼオライト(モレキュラーシーブス)、シリカゲ
ル、焼せっこう、芒硝などの脱水剤を用いて行うことも
できる。又、必要に応じて脱水剤と不活ガスとを同時に
併用することもできる。 本発明におけるエステル交換反応は室温程度でも進行
するので、特に加熱の必要はないが、一般的には用いる
有機溶媒の沸点や酵素の作用温度を考慮し、適当な温度
を選んで行うことが望ましい。その様な温度範囲として
は、10〜80℃のごとき温度を例示することができるが、
通常は20〜60℃、特に好ましくは20〜50℃の範囲で反応
を行うことができる。あまり高い反応温度は、部分加水
分解によって生成される1,2−ジグリセリドや2−モノ
グリセリドの2位置の脂肪酸の転移を誘発するので必要
以上に高い反応温度はむしろ好ましくない。 つぎに本発明における反応時間としては、数時間から
数日の間で適宜選択することができるが、例えば6時間
〜4日、好ましくは6時間〜24時間のごとき反応時間を
例示することができる。 本発明で用いられる高分子量微生物リパーゼは微量含
水有機溶媒中において酵素粉末そのものにおいても極め
て高い安定性とエステル交換能を示すだけでなく、前記
した如き担体ち固定化した乾燥リパーゼにおいても長期
間安定してエステル交換反応を行うことができる。した
がって、一旦反応塔に充填した酵素はそのまま連続して
長期間反応を継続できる他、回分式においても遠心分離
や濾過などの方法によって反応液を分離し、再度繰返し
利用することができる。 本発明では、S−U−S型グリセリドとU−S−U型
グリセリド(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)の両対称
型油脂が得られ、これらの油脂は食品、化粧品、医薬品
などの分野における用途が考えられる。 〔発明の効果〕 本発明の効果は、乾燥状態の1,3−位置特異性のある
分子量10万以上の高分子量微生物リパーゼを直接上記し
た原料油脂グリセリドと脂肪酸とを含有する微量含水有
機溶媒溶液に作用させることによって強いエステル交換
能を発揮し、迅速に高収率で対称型トリグリセリドが得
られることにあり、従来提案の酵素法の如く水に溶解し
たり、含水セライトに吸着して作用させることを必要と
しない。又、本発明で用いられる高分子量微生物リパー
ゼは各種の微量含水有機溶媒中において従来提案の低分
子量リパーゼでは得られない強い耐性と強いエステル合
成能を維持しつづけることができるため、繰返し長期間
使用することができる。更に又、本発明で用いる高分子
量微生物リパーゼは極めて僅かの反応水によってもエス
テル交換反応を生起する優れた性質を有するために、従
来法に比べて脱水量もごく僅かですますことができ、脱
水操作が容易であると言った特徴を有する。 かくして、本発明では、簡単な反応条件によって安価
な油脂より付加価値の高い各種対称型交換油脂を容易に
かつ経済的に製造することができる。 以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。 〔実施例〕 以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれにより
制限されるものではない。 実施例1 パーム軟部油6.55%(7.5ミリモル)、ステアリン酸
7.8g(27.4ミリモル)、n−ヘキサン20g、リパーゼPL
−679粉末0.2g、蒸留水0.2gを100ml容密閉容器に取り、
37℃で3時間攪拌反応した後、モレキュラーシーブス3A
〔和光純薬(株)販売の脱水剤〕4gを加え、最終的に水
分が50ppm以下になるように徐々に脱水しつつさらに21
時間反応を行った。 反応終了後、10000gで10分間遠心分離し、上清を得
た。さらに不溶物(リパーゼPL−679粉末、モレキュラ
ーシーブス3A)に加温したn−ヘキサン500mlを加え、
不溶物を洗った後、遠心分離して上清を得た。これらの
上清を合わせ、エバポレーターにて濃縮し、溶媒を除去
して油分全体を回収した。 回収した油分の成分組成比はイアトロスキヤン(ヤト
ロン社製イアトロスキヤンTH10)を用いて求めた。即
ち、クロマロッドSII(ヤトロン社製シリカゲルロッ
ド)に上記油分の1%クロロホルム溶液1μlをスポッ
トし、ベンゼン−クロロホルム−酢酸(50:20:0.5V/V)
を展開溶媒として薬10cm展開し、イアトロスキヤンにか
け、ピーク面積比から成分の重量比を求めた。上記の油
分の成分組成比はトリグリセリド53.3%、1,2−ジグリ
セリド0.3%、1,3−ジグリセリド1.8%、モノグリセリ
ド0.1%、脂肪酸44.5%であった。 また、上記油分中のトリグリセリドの脂肪酸分析はガ
スクロマトグラフィーを用いて求めた。即ち、上記油分
の2%クロロホルム溶液200μlをシリカゲル薄層(メ
ルク社製シリカゲルTLCプレートNo.13894 1mm、20×20c
m)にライン状にスポットし、石油エーテル−エーテル
−酢酸(70:30:0.5V/V)を展開溶媒として展開した。展
開後、UVライト(254nm)でモニターしながら、トリグ
リセリド部分をTLCプレート上からかき取った。得られ
たトリグリセリドの脂肪酸組成は、基準油脂分析法(日
本油脂化学協会編)の2.4.20.2−77脂肪酸メチルエステ
ルの調製方法(三フッ化ホウ素−メタノール法)、2.4.
21−71脂肪酸組成(ガスクロマトグラフ法)に準拠して
求めた。その結果を第5表に示す(Run No.1)。 次に、リパーゼPL−679粉末200mgの代わりにリパーゼ
PL−266粉末1gを用いる以外は、上記と同様に行った。
そのトリグリセリドの脂肪酸組成を第5表に示す(Run
No.2)。 さらに、リパーゼPL−679粉末200mgの代わりにリパー
ゼAL粉末又はリパーゼPS粉末、各1.5gを用いる以外は、
上記と同様に行った。そのトリグリセリドの脂肪酸組成
を第5表に示す(Run No.3,4)。 なお、第5表中、Run No.5はパーム軟部油(原料油)
の脂肪酸組成を示す。 また第5表中、16:0はパルミチン酸、18:0はステアリ
ン酸、18:1はオレイン酸、18:2はリノール酸を示す。以
下に記載する表においても同じである。 第5表に示す結果から、リパーゼPL−679、リパーゼP
L−266、リパーゼAL、リパーゼPSはいずれもカカオ脂様
ハードバターとして適するS−U−S型トリグリセリド
のエステル交換脂を作るために使用できることがわか
る。 比較例1 パーム軟部油6.55g(7.5ミリモル)、ステアリン酸7.
8g(27.4ミリモル)、n−ヘキサン20g、タリパーゼ
(田辺製薬社製、比活性7000U/g)2.0g、蒸留水0.2gを1
00ml容密閉容器に取り、37℃で3時間攪拌した後、モレ
キュラーシーブス3A4gを加え、徐々に脱水しつつさらに
21時間反応を行った。以後、実施例1に記載したと同様
に実施した。そのトリグリセリドの脂肪酸組成を、第6
表に示す(Run No.1)。 次にタリパーゼの代わりにムコール・ミーヘイのリパ
ーゼ(ノボ社製)1gを用いて上記と同様に実施した。そ
のトリグリセリドの脂肪酸組成を第6表に示す(Run N
o.2)。 なお、第6表中、Run No.3はパーム軟部油の脂肪酸組
成を示す。 第6表の結果から、タリパーゼ、ムコール・ミーヘイ
のリパーゼのような低分子量酸性リパーゼは、リパーゼ
PL−679、リパーゼPL−266、リパーゼAL、リパーゼPSに
比べエステル交換能が悪いことがわかる。 実施例2 パーム軟部油6.55g(7.5ミリモル)、ステアリン酸7.
8g(27.4ミリモル)、n−ヘキサン20g、リパーゼPL−6
79粉末0.2g、蒸留水0.2gを100ml容密閉容器に取り、37
℃で3時間攪拌した後、モレキュラーシーブス3A4gを加
え、徐々に脱水しつつさらに20時間反応を行った。以
後、実施例1に記載したと同様に実施した。そのトリグ
リセリドの脂肪酸組成を第7表に示す(Run No.1)。 さらに、上記反応後得られた、不溶物(リパーゼPL−
679粉末、モレキュラーシーブス3A)を100mlのn−ヘキ
サンで洗浄後、モレキュラーシーブス3Aを除去し、リパ
ーゼPL−679粉末を回収し、これを上記したと同様の新
たな反応系に加え、以後上記したと同様に実施した。そ
のトリグリセリドの脂肪組成を第7表に示す(Run No.
2)。 次に上記と同様にして回収したリパーゼPL−679粉末
を用いて同様の操作を10回繰返した。その5回目と10回
目の反応のトリグリセリドの脂肪酸組成を第7表に示す
(Run No.3および4)。 なお、第7表中、Run No.5はパーム軟部油(原料油)
の脂肪酸組成である。 第7表の結果から、リパーゼPL−679粉末は、カカオ
脂様ハードバターとして適するS−U−S型トリグリセ
リドのエステル交換油を作るために繰返して使用できる
ことがわかる。 実施例3 リパーゼPL−679粉末1gを200ml容三角フラスコに取
り、蒸留水100mlを加え溶解した後、DEAEトヨパール(6
50M(東洋曹達工業社製)13ml(ゲル膨潤体積)を加
え、4℃にて一夜攪拌してDEAEトヨパールにリパーゼPL
−679を吸着固定した。1000×gで5分間遠心分離してD
EAEトヨパールを回収し、このDEAEトヨパールを2lの水
で洗浄後、凍結真空乾燥により水分を除去し、乾燥DEAE
トヨパール固定化リパーゼPL−679 5gを得た。このDAE
トヨパール固定化リパーゼPL−679の活性は、リパーゼP
L−679水溶液中の活性の減少から求めたところ、4700U/
gDEAEトヨパールであった。なお、DEAEトヨパールは0.1
N NaOH 500mlで活性化し、2lの水で洗浄した後に用い
た。 この乾燥DEAEトヨパール固定化リパーゼPL−679 2g、
パーム軟部油6.55g(7.5ミリモル)、ステアリン酸7.8g
(27.4ミリモル)、n−ヘキサン20g、蒸留水0.2gを100
ml容密閉容器に取り、37℃で3時間攪拌した後、モレキ
ュラーシーブス3A4gを加え、徐々に脱水しつつさらに20
時間反応を行った。以後、実施例1に記載したと同様に
実施した。そのトリグリセリドの脂肪酸組成を第8表−
1に示す(Run No.1)。 さらに反応後、DEAEトヨパール固定化リパーゼPL−67
9を反応液から回収し、n−ヘキサンで洗浄した後、こ
れを上記したと同様の新たな反応系に加えて反応を行っ
た。この操作を10回繰返し、それぞれの反応で得られた
トリグリセリドの脂肪酸組成を第8表−1に示す(Run
No.2〜4)。なお、表中Run No.5はパーム軟部油(原料
油)の脂肪酸組成を示す。 次に上記反応で得られたトリグリセリドの分子種の分
析を行った。すなわち、上記反応で得られた油分1gを塩
化メチレン10mlに溶解し、試料とした。この試料10μl
を高速液体クロマトグラフィーによって分析した。即
ち、カラムはODSカラム(YMC−Pack A−312、6×150m
m、山村化学研究所製)、溶出液はアセトニトリル−テ
トラヒドロフラン−塩化メチレン(20:8:1V/V)、6000A
型ポンプ(ウォーターズ社製)を用い、流速4.0ml/分
で、ピークの検出にはR401型示差屈折計(ウォーターズ
社製)を用いて行った。なお標準試料としては、カカオ
脂を用いた。その結果を第8表−2に示す。 また、エステル交換油トリグリセリドの2位置の脂肪
酸組成の測定は、上記高速液体クロマトグラフィーによ
り分取したトリグリセリドを用いて行った。即ち、トリ
グリセリド10mg、1%膵臓リパーゼ(シーベルヘグナー
社製)、1Mトリス−HC1緩衝液(pH8.0)6mlに0.1%コー
ル酸ナトリウム1.5ml、22%、CaCl2・2H2O 0.6mlを加
え、40℃にて3分間振盪反応後、6W−HC12ml及びエタノ
ール2ml、石油エーテル15mlを加え、振盪した後、石油
エーテル層を分取した。これをエバポレーターで濃縮乾
固し、1mlのクロロホルムにとかし、シリカゲル薄層で
2−モノグリセリドを分離した。シリカゲル薄層はシリ
カゲルプレート(メルク社製No.5715、20×20cm)を3
%ホウ酸溶液に浸漬後、110℃で3時間活性化し、クロ
ロホルム−アセトン(96:4V/V)により展開し、UVラン
プ(254nm)でモニターしながら2−モノグリセリド部
分をシリカゲルプレートからかき取る方法により行っ
た。 このようにして得られた2−モノグリセリドの脂肪酸
組成を上記したと同様に基準油脂分析試験法により求め
た。その結果を第8表−3に示す。 第8表−1、第8表−2、第8表−3の結果から、DE
AEトヨパール固定化リパーゼPL−679は、対称型(S−
U−S)トリグリセリドのエステル交換油を作るために
繰返して使用できることがわかる。 実施例4 トリオレイン6.6g(7.5ミリモル)、ステアリン酸7.8
g(27.4ミリモル)、n−ヘキサン20g、DEAEトヨパール
固定化リパーゼPL−679 2g、蒸留水0.2gを100ml容密閉
容器に取り、37℃で4時間攪拌した後、モレキュラーシ
ーブス3A4gを加え、徐々に脱水しつつさらに15時間反応
を行った。以後、実施例1及び実施例3に記載したと同
様に実施し、そのトリグリセリドの脂肪酸組成とトリグ
リセリド中の分子種を求めた。その結果を第9表に示
す。 第9表によって明らかな如く、理論値に近い対称型ト
リグリセリド(S−U−S型)が生成した。 実施例5 硬化牛脂6.55g(7.5ミリモル)、オレイン酸7.8g(2
7.6ミリモル)、n−ヘキサン20g、DEAEトヨパール固定
化リパーゼPL−679 2g、蒸留水0.15gを100ml容密閉容器
に取り、37℃で3時間攪拌反応した後、モレキュラーシ
ーブス3A4gを加え、徐々に脱水しつつさらに21時間反応
を行った。以後、実施例1に記載したと同様に実施し、
そのトリグリセリドの脂肪酸組成を求めた。その結果を
第10表に示す。 第10表に示す如く、DEAEトヨパール固定リパーゼPL−
679はU−S−U型のエステル交換油トリグリセリドを
生成させるために使用できることがわかる。 実施例6 トリオレイン9.8g(11.1ミリモル)、カプリン酸5.16
g(30ミリモル)、n−ヘキサン30g、リパーゼPL−679
粉末0.20g、蒸留水0.10g、モレキュラーシーブス3A3gを
100ml容密閉容器に取り、徐々に脱水しつつ37℃で18時
間反応を行った。以後、実施例1及び3に記載したと同
様に実施し、そのトリグリセリドの脂肪酸組成とトリグ
リセリド中の分子種を求めた。その結果を第11表に示
す。 第11表によって明らかな如く、対称型トリグリセリド
(S−U−S型)が生成した。 実施例7 オリーブ油6.55g(7.5ミリモル)、パルチミン酸3.9g
(15ミリモル)、n−ヘキサン20g、DEAEトヨパール固
定化リパーゼPL−679 2g、蒸留水0.2gを100ml容密閉容
器に取り、37℃で3時間反応した後、モレキュラーシー
ブス3A4gを加え、徐々に脱水しつつさらに21時間反応を
行った。以後、実施例1に記載したと同様に実施し、そ
のトリグリセリドの脂肪酸組成を求め、その結果を第12
表に示す(Run No.1)。 次に、パルミチン酸3.9gの代わりにメチルパルミテー
ト7.4g(27.4ミリモル)、又はn−ヘキシルパルミテー
ト9.7g(27.4ミリモル)を用いる以外は、上記と同様に
実施した。そのトリグリセリドの脂肪酸組成を第12表に
示す(Run No.2およびNo.3)。なお、第12表中、Run N
o.4はオリーブ油(原料油)の脂肪酸組成を示す。 第12表に示す如く、DEAEトヨパール固定化リパーゼPL
−679は、オリーブ油とパルミチン酸だけでなく、オリ
ーブ油とパルミチン酸エステルについてもS−U−S型
エステル交換油トリグリセリドを作るために使用できる
ことがわかる。 実施例8 パーム軟部油6.55g(7.5ミリモル)、ステアリン酸7.
8g(27.4ミリモル)、第3級ブチルアルコール30ml、リ
パーゼPL−679粉末0.5g、蒸留水0.2gを100ml容密閉容器
に取り、40℃で3時間攪拌反応した後、モレキュラーシ
ーブス3A4gを加え、徐々に脱水しつつさらに21時間反応
を行った。以後、実施例1に記載したと同様に実施し、
そのトリグリセリドの脂肪酸組成を求め、第13表に示
す。 第13表に示す如く、リパーゼPL−679は、極性溶媒で
ある第3級アルコール中においてもS−U−S型交換油
トリグリセリドを作るために使用できることがわかる。 実施例9 パーム軟部油6.55g(7.5ミリモル)、ステアリン酸7.
8g(27.4ミリモル)、n−ヘキサン20g、DEAEトヨパー
ル固定化リパーゼPL−679 2g、蒸留水0.2gを100ml容密
閉容器に取り、37℃で3時間攪拌反応した後、モレキュ
ラーシーブス3A4gを加え、徐々に脱水しつつさらに21時
間反応を行った。以後、実施例1及び3に記載したと同
様に実施し、イアトロスキヤンにより反応経時変化にと
もなう1,2−ジグリセリドの量の変化と24時間反応後の
トリグリセリドの脂肪酸組成、及びトリグリセリド中の
2位置脂肪酸の脂肪酸組成を調べた。その結果を第14表
−1及び第14表−2に示す(Run No.2)。 次に、蒸留水0.2gの代わりに蒸留水0.15g又は蒸留水
0.6gを加え、上記したと同様に実施した。その結果を第
14表−1及び第14表−2に示す(Run No.1及びNo.3)。
なお、第14表−2中、Run No.4はパーム軟部油の脂肪酸
組成及び2位置脂肪酸の脂肪酸組成を示す。 第14表−1及び第14表−2の結果から、水添加量を多
くし反応途中での1,2−ジグリセリドの生成割合を多く
すると、トリグリセリドの2位置の脂肪酸にステアリン
酸が多く取り込まれ、対称型トリグリセリドが少なくな
ることがわかる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:025) (C12N 9/20 C12R 1:38)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.2位置の脂肪酸が不飽和又は飽和のいずれか1つで
    ある原料油脂グリセリドと、該グリセリドの2位置の脂
    肪酸とは不飽和又は飽和において対称をなすC4〜C22
    飽和もしくは不飽和の脂肪酸(但し、この脂肪酸は炭素
    数C1〜C20のアルカノールの脂肪酸エステルであっても
    よい)とを、有機溶媒(但し、1価以上の第1級及び第
    2級アルコール溶媒を除く)の存在下に、1,3−位置特
    異性のある分子量10万以上の高分子量微生物リパーゼを
    作用させることにより、エステル交換反応させて対称型
    トリグリセリドを得ることを特徴とする対称型トリグリ
    セリドの製造法。 2.エステル交換反応中に蓄積する1,2−ジグリセリド
    の量が全グリセリドの最大15%を超えないように反応系
    水分を制御しつつ徐々に脱水してエステル交換反応を行
    うことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。 3.高分子量微生物リパーゼがアルカリゲネス属、アク
    ロモバクター属またはシュードモナス属の細菌によって
    生産されるアルカリ性リパーゼであることを特徴とする
    特許請求の範囲第1項または第2項記載の方法。 4.高分子量微生物リパーゼが、至適pHが8.0よりアル
    カリ側にあるリパーゼであることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項〜第3項のいずれか1項記載の方法。
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