JP2716728B2 - 新規微生物並びに9−ケト型16員環マクロライド抗生物質の製法 - Google Patents

新規微生物並びに9−ケト型16員環マクロライド抗生物質の製法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、新規微生物並びに該微生物によって生産す
る医薬、動物飼料添加剤、動物用治療薬、水産用抗生物
質として有用である9−ケト型16員環マクロライド抗生
物質の製法に関するものである。
〔従来の技術〕
一般式(1) で表される9−ケト型16員環マクロライド抗生物質のR1
がアセチル基、R2がイソバレリル基であるカルボマイシ
ンBはタンナー(Tanner)ら〔F.W.Tanner,A.R.Englis
h:Antibiot.and Chemother.,,441(1952)〕によって
見出されたカルボマイシンAを生産する菌株ストレプト
ミセス ハルステジイ(Streptomyces halstedii)の培
養液からホッホシュタイン(Hochstein)ら〔F.A.Hochs
tein,P.P.Regna:J.A.C.S.,77,3353(1955)〕によって
見出された。また、上記式(1)のR1が水素原子、R2
イソバレリル基であるニダマイシン(Niddamycin)はナ
カザワ〔K.Nakazawa.J.Agr.Chem.Soc.Japan,29,647,(1
955)〕によりストレプトミセス ジャカルタエンシス
(Streptomyces djakartaensis)の生産物から見出され
ている。
しかし、これらの菌株による培養液中の生産量は僅か
であり、生物活性の評価をするための場合でも、充分な
量を確保することは困難であった。従って、これらの抗
生物質は、その誘導体とすることによってより高い効果
を期待できる原料として有望視されているが、その生産
に多大の労力を必要としこの種の抗生物質の開発、研究
の障害になっていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は9−ケト型16員環マクロライド抗生物質の生
産量の高い新規微生物並びにその微生物を使用して高収
量で9−ケト型16員環マクロライド抗生物質を製造する
方法を提供することを目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
16員環マクロライド抗生物質の生合成経路はフルマイ
ら〔T.Furumai,K.Takeda,M.Suzuki:J.Antibiotics,28,7
89(1975)〕によって提唱されている如く、16員環マク
ロライド抗生物質のアグリコン部は9位ケト体を出発物
質として還元が起こり9位ヒドロキシ体となる。かくし
て、生物学的活性な最終生産物は9位ヒドロキシ体の16
員環マクロライド系抗生物質である。
本発明者らは、16員環マクロライド抗生物質の9位が
ケト型の物質を生産する生産菌で、この抗生物質の生産
量の高い微生物を得べく鋭意研究し、9位がヒドロキシ
体の物質を高収量で生産する菌株を洗濯し、次に人工変
異処理により9位還元酵素欠失株を創成することにより
9位ケト型の16員環マクロライド抗生物質を高収量で生
産する微生物を得ることに成功し、この微生物を栄養培
地に培養し9−ケト型16員環マクロライド抗生物質を高
収量で得る方法を見出し本発明を完成した。
本発明はストレプトミセス属に属する16員環マクロラ
イド抗生物質生産菌であって、9位還元酵素を欠失した
新規微生物並びに、同微生物を栄養培地に培養して培養
物から式(1) (式中R1は水素原子又はアセチル基、R2は水素原子又は
炭素数2〜6個を有するアルカノイル基を示す)で表さ
れる9−ケト型16員環マクロライド抗生物質を高収量で
得る方法である。
本発明のストレプトミセス属に属する16員環マクロラ
イド抗生物質生産菌であって、9位還元酵素の欠失した
微生物は次のようにして検索することができる。
天然界より採取した土壌を生理食塩水を加え、撹拌後
濾過し、濾液をISP−2培地で培養生育させ、生育した
放射菌を栄養培地に接種培養し、培養液中の活性成分を
分離し9位ヒドロキシ型16員環マクロライド抗生物質を
生産した菌株を検索し、この菌株を培養し、生育した菌
体にN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジ
ン処理等の変異処理を施し、この変異処理を施した菌体
を集め培養し、培養液中の活性成分を分離しクロマトス
キャナーにより280nmに吸収を持つ物質を検出した菌株
を選び出したものが本発明の微生物である。
この方法により検索された代表的な微生物はストレプ
トミセスNo.7659株(本菌株は微生物工業技術研究所にF
ERM P−9985として寄託されている)である。この菌株
はカルボマイシンBの生産株として極めて優れたもので
ある。
以下ストレプトミセスNo.7659株について、本発明の
微生物を検索する具体的方法を示す。
検索法 (マクロライド生産菌の検索) 自然界より採取した土壌1gに生理食塩水10ml(界面活
性剤ツイーン80 0.01%添加)を加え、激しく撹拌した
後、東洋濾紙No.2で濾過し濾液を10倍宛段階的に滅菌生
理食塩水で希釈する。この液0.1mlをISP−2培地(酵母
エキス0.4%,麦芽エキス1.0%,グルコース0.4%,寒
天1.5%,pH7.3)上に塗り拡げ28℃で7日間培養する。
生育した放線菌をP22M培地(脱脂大豆粉2%,グルコー
ス2%,肉エキス0.2%,K2HPO40.1%,MgSO4・7H2O 0.05
%)30mlを入れた250ml容三角フラスコに接種し、2日
間28℃で振盪培養する。この培養液0.2mlをML−19培地
(グリセリン4.0%,ペプトン0.5%,グルコース0.2
%,可溶性澱粉0.2%,脱脂大豆粉0.5%,ドライイース
ト0.5%,NaCl 0.5%,CaCO3 0.2%,pH6.4)30mlを入れた
250ml容三角フラスコに接種し、28℃、4日間振盪培養
する。培養液を遠心分離(1,500×g,15min)し、上澄液
1mlを小遠心管にとり、K2HPO4 100mg,酢酸エチル1mlを
加え、ゴム栓をして激しく撹拌後、1000×g,10minで遠
心分離した。2層に別れた上層の液をシリカゲル薄層プ
レート(メルク社製No.5715)に10μ宛スポットし展
開溶媒(酢酸エチル:アセトン=9:1)にて60分間展開
する。
このプレートをドラフト内で乾燥後10%(W/W)H2SO4
を噴霧し105℃オーブン内で5分間加熱する。マクロラ
イド抗生物質は茶褐色に発色し、標準品のロイコマイシ
ンと比較した。かくしてロイコマイシン生産菌株を検索
しその一株としてP4259株が得られた。
(変異処理) ISP−2培地上で28℃、14日間培養したP4259株の表面
から菌糸をかきとり、ジオクチルスルホサクシネート0.
005%を含むpH8.5の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液10mlに
懸濁し、ミリポアフィルター(孔径10μm,LCWP)で濾過
し、濾液0.5mlをP22M培地(30ml/250ml三角フラスコ)
に接種し30℃,48時間振盪培養する。この培養液0.2mlを
S培地〔グルコース1%,ペプトン0.4%,酵母エキス
0.4%,MgSO4・7H2O 0.05%,KH2PO4 0.2%,K2HPO40.4%
(25ml/250ml容三角フラスコ)〕に接種し24時間振盪培
養する。これを3,000r.p.m 10分間遠心分離して菌体を
集め、20mlの0.05Mトリスーマレイン酸バッファー(pH
8.5)に懸濁し、ワーリングブレンダーにて菌糸を切断
する。これに1mg/mlのN−メチル−N′−ニトロ−N−
ニトロソグアニジンを0.2ml添加し30℃で60分間緩やか
に振盪する。
後3,000r.p.m,10分間遠心分離し菌体を集めS培地(2
5ml/250ml容三角フラスコ)に懸濁し30℃、48時間振盪
培養する。この菌体を3,000r.p.mで10分間遠心分離して
菌体を集め、岡西らの方法〔M.Okanishi,K.Suzuki and
H.Umezawa:J.Gen.Microbiol.,80,389(1974)〕によっ
てプロトプラスト化し、再生を行った。再生したコロニ
ーをP22M培地に接種し30℃,48時間培養後、その0.2mlを
NZ培地(グリセリン 2%,NZアミンA 1%,酵母エキス
0.1%,MgSO4・7H2O 0.05%,K2HPO4 0.05%,pH 7.0,25ml
/250ml容三角フラスコ)に接種し30℃,72時間振盪培養
する。培養液1mlを小遠心管にとり、K2HPO4 50mg,酢酸
エチル1mlを加え撹拌抽出する。遠心分離(3,000r.p.m,
10min)後上層の酢酸エチル層10μを薄層クロマトプ
レートにスポットし、酢酸エチル:アセトン=9:1の溶
媒で展開する。展開後プレートをクロマトスキャナー
(島津製作所CS930型)により280nmに吸収を持つ物質を
生産するNo.7659株をを選び出した。
次にこのNo.7659株の菌学的性状を述べる。
(菌学的性状) i)形態 気菌糸は貧弱で直鎖乃至分岐が認められ、らせんは認
められない。輪生枝も認められない。胞子鎖は普通3〜
10個の胞子を着生するが胞子着生は貧弱である。
胞子表面は平滑である。
ii)各種培地における生育状態を第1表に示す。
iii)生理学的性質 (1)生育温度:15〜35℃で生育する。37℃以上では生
育できない。
(2)ゼラチンの液化:陽性 (3)スターチの加水分解:陽性 (4)ミルクの凝固:陰性 (5)メラニン様色素の生成:チロシン寒天培地で陽性 iv)炭素源の利用性(プリーダム・ゴトリーブ寒天培地
で試験) グルコース,フラクトース,イノシトール:陽性 アラビノース,キシロース,シュークロース,ラムノ
ース,ラフィノース,マンノース,セルロース:陰性 次に本発明のストレプトミセス属に属し16員環マクロ
ライド抗生物質生産菌であって、9位還元酵素の欠失し
た微生物を培養し、9−ケト型16員環マクロライド抗生
物質を得る方法について説明する。
本製造法は、上記の菌株を通常の微生物が利用し得る
公知の栄養源を含有する培地で公知の方法で培養する。
例えば炭素源としては、例えばグルコース,グリセリ
ン,澱粉,マルトース,油脂類などが使用できる。窒素
源としては、例えば大豆粉,肉エキス,酵母エキス,ペ
プトン,コーンステイープリカー,綿実粕などの有機物
並びに硫酸アンモニウム,硝酸アンモニウム,塩化アン
モニウム,硝酸ナトリウムなどの無機物を使用できる。
また必要に応じて食塩,塩化カリウム,リン酸塩その他
重金属塩などの無機塩類を添加する他、醗酵中の発泡を
抑制するために例えばシリコン等の消泡剤を適宜添加す
ることができる。
培養法は一般に行われている抗生物質の生産の方法と
同じく、好気的深部培養法が適しており、20〜35℃で培
養を行い、生産は2〜6日位が好適である。
培養後、培養液より9−ケト型16員環マクロライド抗
生物質例えばカルボマイシンB,ニダマイシンなど採取す
るには、微生物の生産する代謝産物を採取するに通常に
用いられている手段を適宜に利用すればよい。例えば、
不純物との溶解度の差を利用する手段、イオン交換樹脂
や各種吸着剤に対する吸着親和性の差を利用する手段、
水と混ざらない溶媒による抽出などの単独或いは組合せ
で利用できる。例えば、培養液をpH4前後にし、これか
ら菌体を分離して濾液を得、この濾液のpHを8.0以上に
してからトルエン等の有機溶媒で抽出する手段等で9−
ケト型16員環マクロライド抗生物質を抽出することがで
きる。
この抗生物質を更に精製するためには、シリカゲル,
セファデックス,カーボキシメチルセルロース,アルミ
ナ,活性炭などの吸着剤、ゲル濾過剤を用いたカラムク
ロマトグラフ法等により行うことができる。
次に本発明の9−ケト型16員環マクロライド抗生物質
を製造する方法の実施例を挙げる。
〔実施例〕
例 1 ストレプトミセスNo.7659株のスラント培養よりP22M
培地に接種し、30℃,48時間振盪培養する。この培養液
0.2mlをCS−3培地(脱脂大豆粉3%,綿実粕3%,コ
ーンスターチ5%,大豆油5%,30ml/500ml容三角フラ
スコ)100本に接種し、30℃,4日間培養した。培養液を
集め、HClでpH3.5に調整し、濾過助剤セライト(和光純
薬)を培養液重量の5%宛加えて吸引濾過を行った。濾
液を6N NaOHにてpH 8.5に調整し、トルエン5を加え
て撹拌抽出を行いトルエン層をとり0.01N HCl水を加え
て撹拌抽出を行った。水層を分取し、pHを6N NaOHにて
8.5に調整し、トルエン2を加え撹拌抽出を行った。
トルエン層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、
カルボマイシンBとニダマイシンの混合粉末10gが得ら
れた。
例 2 例1で得たカルボマイシンBとニダマイシンの混合粉
末を少量のベンゼンに溶解し、シリカゲルカラムクロマ
トグラフィー(ワコーゲルC−200,3cm×80cmカラム)
を行った。
展開はベンゼン:アセトン=4:1で行い、各分画を薄
層クロマトグラフィー(メルクシリカゲルプレート
F254,展開はベンゼン:アセトン=4:1で分析しクロマト
スキャナー(島津CS−930)によりスポットを検出し
た。Rf=0.6を示す物質f1(カルボマイシンB)とRf=
0.45を示す物質f2(ニダマイシン)をそれぞれ最も純度
の高い分画を集め濃縮乾固した。カルボマイシンBの収
量は2.0g、ニダマイシンの収量は0.4gであった。
Rf=0.6を示す物質f1とRf=0.45を示す物質f2の理化
学的性質は次の通りである。
1)紫外部吸収 両物質とも278nmに極大吸収を示した。
f1の紫外部吸収スペクトルを第1図に示す。
2)1H−NMR f1の400MHz 1H−NMRを第2図に示す。
f2の400MHz 1H−NMRを第3図に示す。
3)13C−NMR f1,f213C−NMRによる各炭素原子の化学シフト値を
第2表に示す。
4)質量分析 ケミカルインパクト法によるf1,f2の質量分析の結果 f1:M++1=826 f2:M++1=784 これらの結果を文献値〔A.Kinumakiら:J.Antibiotic
s,27,117(1974)、S.Omuraら:J.Am.Chem.Soc.,97:14,4
001(1971)、M.Suzuki:J.Antibiotics,24,904(197
1)、F.A.Hochstein and K.Murai:J.Am.Chem.Soc.,76,5
080(1954)〕と比較してf1物質はカルボマイシンB、f
2物質はニダマイシンであると同定された。
〔発明の効果〕 本発明は9−ケト型16員環マクロライド抗生物質を高
収量で得る新規微生物並びにこの微生物を用いて9−ケ
ト型16員環マクロライド抗生物質を製造する方法を提供
するもので極めて有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明で得られたf1物質の紫外部吸収スペクト
ルである。 第2図は本発明で得られたf1物質の400MHz1H−NMR(CDC
l3)を示す。 第3図は本発明で得られたf2物質の400MHz1H−NMR(CDC
l3)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:465)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】9−ケト型16員環マクロライド抗生物質生
    産性を有するストレプトミセス(streptomyces)No.765
    9(FERM P−9985)。
  2. 【請求項2】ストレプトミセス(streptomyces)No.765
    9(FERM P−9985)を栄養培地に培養し、培養物から
    採取することを特徴とする式 (式中R1は水素原子又はアセチル基、R2は水素原子又は
    炭素数2〜6個を有するアルカノイル基を示す)で表さ
    れる9−ケト型16員環マクロライド抗生物質の製法。
  3. 【請求項3】ストレプトミセス(Streptomyces)No.765
    9株(FERM P−9985)を栄養培地に培養し、培養物か
    ら採取することを特徴とする式 (式中R1は水素原子又はアセチル基、R2は水素原子又は
    炭素数2〜6個を有するアルカノイル基を示す)で表さ
    れる9−ケト型16員環マクロライド抗生物質の製法。
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