JP2700520B2 - 自転車用リム材 - Google Patents

自転車用リム材

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JP2700520B2
JP2700520B2 JP5165208A JP16520893A JP2700520B2 JP 2700520 B2 JP2700520 B2 JP 2700520B2 JP 5165208 A JP5165208 A JP 5165208A JP 16520893 A JP16520893 A JP 16520893A JP 2700520 B2 JP2700520 B2 JP 2700520B2
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昭雄 菊地
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自転車用リム材、とく
にマウンテンバイク用自転車リム材として好適な自転車
用リム材に関する。
【0002】
【従来の技術】高比強度、高比剛性などの要求に応える
ため、自転車のリム材にはアルミニウム合金製リムが普
及している。従来、自転車用リム材としては、A6063-T
5、A6N01-T5など押出性のよいAl−Mg−Si系アル
ミニウム合金が使用されており、これらのアルミニウム
合金は、通常ポートホール押出形材として押出加工を行
い、円形に曲成し突合せ溶接することによりリムに成形
し、耐摩耗性を向上させ、外観性を与えるために陽極酸
化処理を行ってアルマイト皮膜を形成する。
【0003】しかしながら、Al−Mg−Si系アルミ
ニウム合金は、剛性、耐摩耗性が十分でなく、とくに、
主として山野で使用するマウンテンバイクの場合には、
より高い剛性が要求されるためAl−Mg−Si系アル
ミニウム合金製リムの使用には無理があり、また砂利や
砂によりアルマイト皮膜が摩耗し、アルミニウム合金の
生地が露出し易いため耐久性に問題がある。さらに、ア
ルミニウム合金に形成されるアルマイト皮膜は高級感に
欠け商品価値が必ずしも高くない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、自転車用リ
ム材における上記の問題点を解消するためになされたも
のであり、その目的は、押出形材を円形に曲成し端部を
突合せ溶接するリム材において、剛性、耐摩耗性が改良
され、押出性、溶接性に優れ、高級感のあるアルマイト
外観を呈するアルミニウム合金製自転車用リム材、とく
にマウンテンバイク用自転車リム材として適した自転車
用リム材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による自転車リム材は、Mg0.40〜1.
2%、Si0.40〜0.9%、Fe0.35%以下、
Cu0.35%以下、Mn0.50%以下、Cr0.3
0%以下、Zn0.25%以下、Ti0.1%以下を含
有し、残部Alと不可避的不純物よりなるアルミニウム
合金粉末の押出成形材を円形に曲成し、端部を突き合わ
せ溶接してなるリム材であって、該アルミニウム合金中
に平均粒径が2〜10μmのSiCを1〜3%含有させ
たことを第1の特徴とし、SiCの平均粒径が2〜5μ
mで、SiCの含有量が1〜2%であることを第2の特
徴とする。
【0006】本発明の自転車リム材は、上記の組成を有
する6000系のアルミニウム合金よりなり、当該アル
ミニウム合金を中空部およびタイヤの嵌合部を具えたリ
ム形状に押出加工およびプレス焼入れし、これを円形に
曲成して端部をフラッシュバット溶接などで突き合わせ
溶接することによって成形される。
【0007】本発明は、リム材を構成するアルミニウム
合金中に平均粒径が2〜10μmのSiCを1〜3%含
有させることを特徴とし、リム材の成形は、上記のアル
ミニウム合金を粉末状で供給し、SiC粒子を混合して
粉末冶金法によりビレットを製作し、このビレットを押
出加工することにより行う。
【0008】アルミニウム合金に対するSiCの含有
は、合金の剛性および耐摩耗性を向上させる。好ましい
含有範囲は1〜3%であり、SiC粒子を1%以上含有
させることによりアルマイト皮膜の色調が高級感のある
ステンレス鋼の色調に変わる。SiCの含有量が3%を
越えると、焼入れ性がわるくなって十分な硬度が得られ
なくなる。また、押出性が劣化して押出されたリム材表
面に微小割れが生じ易くなるとともに溶接性が低し、耐
摩耗性も飽和する傾向がある。さらにアルマイト皮膜の
色調が再び灰色がかった色調となる。合金組成、リム形
状、製造条件などを考慮し、剛性、耐摩耗性、押出性、
溶接性、アルマイト性などの要求性能を確実に得るため
には、SiCの含有量を1〜2%とするのが最も好まし
い。
【0009】アルミニウム合金中に添加されるSiC
は、粒子としてアルミニウム合金のマトリックス中に分
布するが、粒径が大きくなると、押出ダイスを摩耗させ
てダイス寿命を短くし、押出用ビレットの切削性を劣化
させる。SiCの平均粒径の好ましい範囲は、2 〜10μ
m であり、最も好ましい範囲は2 〜5 μm である。平均
粒径が10μm を越えると押出ダイスの摩耗が激しくな
り、ダイス傷は生じ易くなる。押出用ビレットの切削性
は、例えば粒径15μm の場合、粒径5 μm の場合に比べ
て約1/4 〜1/10に低下する。SiCの平均粒径が2 μm
未満では、SiCが凝集し、アルミニウム合金への均一
な混合が難しい。
【0010】上記アルミニウム合金のうち、Mg0.40〜
1.2 %およびSi0.40〜0.9 %の添加は、押出性を低下
させることなく、押出し直後に空気焼入れあるいはミス
ト焼入れすることにより、合金の強度を高める効果を有
する。Mg、Si以外に含有されるFe、Cu、Mn、
Cr、Zn、Tiは、合金の諸性能を向上させるために
合金元素として添加してもよく、不純物として含有され
ていてもよい。
【0011】
【作用】本発明の構成によれば、Al−Mg−Si系ア
ルミニウム合金を基材とし、これに特定粒径のSiCを
添加することにより、押出性、溶接性など、当該アルミ
ニウム合金が有する特性を低下させることなく、合金の
剛性、耐摩耗性を向上させ、自転車用リム材として十分
な性能を有し、より厳しい条件下で走行するマウンテン
バイク用自転車リム材としても十分な耐久性を備えた材
料が得られる。しかも、陽極酸化処理後のアルマイト皮
膜の色調は高級感のあるステンレス鋼の色調となり、商
品価値の高いものとなる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。 実施例1 Mg 0.7%、Si0.53%、Fe0.17%、Cu0.10%、M
n0.03%、Cr0.04%、Zn0.03%、Ti0.01%を含
み、残部Alからなる6000系アルミニウム合金(A60
63相当) のエアアトマイズ粉末( 平均粒径149 μm 以
下) に、平均粒径5μm のSiCを添加、混合して混合
粉末とし、この混合粉末をアルミニウム缶に装入、充填
して、495 ℃で真空脱気したのち密封し、450 ℃の温度
でホットプレスを行い、脱缶して押出用ビレットを製作
した。
【0013】得られた押出用ビレットを、550 ℃で4 時
間の均質化処理後、530 ℃の温度で15mm径の丸棒に押出
加工し、押出直後にミスト焼入れを行い、175 ℃で8 時
間の高温時効処理を行った。得られた時効処理材から試
験材を採取し、これらの試験材について、剛性( ヤング
率) およびシャルピー衝撃値を測定した。測定結果を表
1に示す。また、回転する鋳鉄の円板の平面部に前記時
効処理材から採取されたピン状の小試験片を5MPaの面圧
で押しつけ、小試験片の摩耗による長さの減少から耐摩
耗性を判断する摩耗試験機を用いて耐摩耗試験を行っ
た。結果を表2に示す。
【0014】比較例1 実施例1と同一組成のAl−Mg−Si系アルミニウム
合金のエアアトマイズ粉末(粒径149 μm 以下) に、平
均粒径5 μm のSiCを4 %混合し、以後実施例1と同
様の処理工程を経て、高温時効処理材を製作し、実施例
1と同様、剛性、シャルピー衝撃値の測定、および耐摩
耗試験を行った。結果を表1および表2に示す。
【0015】表1にみられるように、平均粒径5 μm の
SiCを1 〜2 %添加することにより、合金材の剛性は
約3 〜6 %向上している。シャルピー衝撃値はSiCの
添加により低下するが、1 〜2 %添加の場合は自転車用
リム材として使用するに十分な値を保持している。ま
た、表2に示されるように、合金材の耐摩耗性はSiC
の添加によって顕著に向上するのが認められる。一方、
SiCを4 %添加したものは、剛性、耐摩耗性の向上は
著しいが、衝撃値の急速な低下が認められた。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】実施例2 Mg0.60%、Si0.65%、Fe0.18%、Cu0.13%、M
n0.18%、Cr0.12%、Zn0.04%、Ti0.02%を含
み、残部Alからなる6000系アルミニウム合金(A6
N01 相当) のエアアトマイズ粉末( 平均粒径149 μm 以
下) に平均粒径5μm のSiCを1 〜3 %添加、混合し
て混合粉末とし、この混合粉末をアルミニウム缶に装
入、充填して、495 ℃で真空脱気したのち密封し、450
℃の温度でホットプレスを行い、脱缶して押出用ビレッ
トを製作した。
【0019】得られた押出用ビレットを530 ℃の温度で
15mm径の丸棒に押出加工し、押出直後にミスト焼入れを
行い、175 ℃で8 時間の高温時効処理を行った。つぎ
に、高温時効処理後の15mm径の丸棒材をフラッシュバッ
ト溶接により突合せ溶接し、溶接個所が試験部位となる
よう引張試験片を成形して引張試験を行った。なお、溶
接条件は、溶接電流80A ×4 sec.、突合せ荷重3.3kN ×
10 sec. とした。引張試験結果を表3に示す。
【0020】比較例2 実施例2と同一組成のAl−Mg−Si系アルミニウム
合金のエアアトマイズ粉末(平均粒径149 μm 以下)
に、平均粒径5 μm のSiCを4 〜5 %混合し、以後実
施例2と同様の処理工程を経て、15mm径の丸棒に押出加
工し、ミスト焼入れ、高温時効処理を行い、実施例2と
同一条件でフラッシュバット溶接した後、溶接個所が試
験部位となるよう引張試験片を成形して引張試験を行っ
た。結果を表3に示す。
【0021】
【表3】
【0022】表3にみられるように、SiC添加が1 〜
3 %の合金材については、溶接部の強度低下がなく、自
転車用リム材として十分な溶接性能を有しているのが認
められる。一方、SiCを4 〜5 %添加した合金材で
は、溶接部の強度低下が大きく自転車用リム材として実
用化した場合に問題となるおそれがある溶接強度を示し
た。
【0023】実施例3 実施例2と同一組成のAl−Mg−Si系アルミニウム
合金のエアアトマイズ粉末(平均粒径149 μm 以下)
に、平均粒径5 μm のSiCを0.5 〜3 %混合し、以後
実施例2と同一の工程を経て押出用ビレットを製作し
た。得られたビレットを、530 ℃の温度で中空部を有す
る幅23mmのリム形状に押出加工し、押出加工時に割れが
生じない限界の押出速度を測定した。また、押出直後に
ミスト焼入れを行い、ついで175 ℃で8 時間の高温時効
処理を行った後の材料の硬度を測定した。測定結果を表
4に示す。
【0024】比較例3 実施例2と同一組成のAl−Mg−Si系アルミニウム
合金のエアアトマイズ粉末(平均粒径149 μm 以下)
に、平均粒径5 μm のSiCを4 〜5 %添加、混合し、
以後実施例2と同一工程を経て押出用ビレットを製作し
た。得られたビレットを実施例3と同様に押出加工し、
実施例3と同様、限界押出速度を求め、高温時効処理後
の硬度を測定した。結果を表4に示す。
【0025】
【表4】
【0026】表4にみられるように、SiC添加量が多
くなるにしたがって、限界押出速度および焼入れ性が低
下する。SiC添加量0.5 〜3 %では、その低下が少な
く、自転車用リム材の実用上の性能および生産性を満足
する範囲であるが、4 〜5 %添加したものでは、限界押
出速度が急速に低下して実用上満足すべき生産性が得ら
れず、焼入れ性も低下し十分な強度が達成できない。
【0027】実施例4 実施例2と同一組成のAl−Mg−Si系アルミニウム
合金のエアアトマイズ粉末(粒径149 μm 以下) に、平
均粒径2 〜10μm のSiCを2 %添加、混合し、以後実
施例3と同一工程を経て、中空部を有する幅23mmのリム
形状に押出加工して、合金材中に分散しているSiC粒
子によって押出ダイスが摩耗しダイスベアリング表面の
粗さが大きくなり、押出材表面に深さ0.01mm以上の傷が
発生するまでの押出長さを測定した。測定結果を表5に
示す。
【0028】比較例4 実施例2と同一組成のAl−Mg−Si系アルミニウム
合金のエアアトマイズ粉末(粒径149 μm 以下) に、平
均粒径1 μm 、15μm のSiCを2 %添加、混合し、以
後実施例3と同一工程を経て、中空部を有する幅23mmの
リム形状に押出加工して、実施例4と同様、傷発生まで
の押出長さを測定した。測定結果を表5に示す。
【0029】
【表5】
【0030】実施例5 Mg0.35%、Si0.30%、Fe0.18%、Cu0.08%、M
n0.03%、Cr0.03%、Zn0.03%、B0.01%を含み、
残部Alからなる6000系アルミニウム合金(A6101
相当) のエアアトマイズ粉末( 平均粒径149 μm 以下)
に、平均粒径が5 μm のSiCを2 %添加、混合し、こ
の混合粉末をアルミニウム缶に装入、充填して、495 ℃
で真空脱気したのち密封し、450 ℃の温度でホットプレ
スを行い、脱缶して押出用ビレットを製作した。押出用
ビレットを、550 ℃で4 時間均質化処理した後、530 ℃
の温度で15mm径の丸棒材に押出加工し、押出直後にミス
ト焼入れを行い、175 ℃で8 時間の高温時効処理を行っ
た。
【0031】時効処理された丸棒材をフラッシュバット
法により突合せ溶接した後、接合部が試験部位となるよ
うな引張試験片を成形し、引張試験を行って、溶接部の
引張強度を測定したところ、引張強度275MPaであり、通
常の自転車用リム材としては使用に耐え得る溶接強度を
示したが、マウンテンバイクのような過酷な条件下で使
用する自転車用リム材の溶接強度としては十分とはいえ
ない。なお、溶接条件は、溶接電流80A ×4sec. 、突合
せ荷重3.3kN ×10sec.とした。
【0032】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、剛性、
耐摩耗性、押出性、溶接性に優れた自転車用リム材が提
供され、押出、曲成および突合せ溶接によりリムを形成
することにより、耐久性のある自転車用リムとなり、と
くにマウンテンバイク用リムとして好適に使用し得る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg0.40〜1.2%(質量%、以下
    同じ)、Si0.40〜0.9%、Fe0.35%以
    下、Cu0.35%以下、Mn0.50%以下、Cr
    0.30%以下、Zn0.25%以下、Ti0.1%以
    下を含有し、残部Alと不可避的不純物よりなるアルミ
    ニウム合金粉末の押出成形材を円形に曲成し、端部を突
    き合わせ溶接してなるリム材であって、該アルミニウム
    合金中に平均粒径が2〜10μmのSiCを1〜3%含
    有させたことを特徴とする自転車リム材。
  2. 【請求項2】 SiCの平均粒径が2〜5μmで、Si
    Cの含有量が1〜2%であることを特徴とする請求項1
    記載の自転車リム材。
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JPH06346175A JPH06346175A (ja) 1994-12-20
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