JP2696773B2 - 繊維構造物の処理方法 - Google Patents

繊維構造物の処理方法

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正三 牧野
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鐘紡株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は高密度織編物用として好適なフィブリル化型
複合繊維からなる繊維構造物の処理方法に関するもので
ある。
(従来の技術とその問題点) 従来、高密度織物としては、綿の細番手糸を経,緯に
高密度に打ち込んで製織し、仕上加工に際し、樹脂加
工,表面押圧等の処理を施したものが一般的に知られ、
かつ実用に供せられている。しかしかかる織物は細番手
綿糸を超高密度に打ち込むため製織効率に難があり、ま
た得られた織物自体は地厚感があって風合の面でも必ず
しも満足できるとは云えず、更に大量の高級糸使用のた
め高価となり、一般への普及が妨げられるという欠点を
有していた。
そこで、上記欠点を克服すべく、合繊長繊維糸を使用
して高密度織物を開発する努力が続けられ、その1つと
してナイロンフィラメント糸を用いた超高密度タフタが
提案された。
しかし、合繊長繊維糸による前記超高密度タフタは製
織技術が極めて難しいため製織能率は頗る低く、商業的
生産に適しない。また実際の使用に際し、織り上ったも
のに更に熱カレンダー仕上げを施して使用しているが、
風合いが硬く、光沢が品位に欠ける上に、ダウン衣料に
用いた場合に充填物であるダウンが使用時の衝撃によっ
て抜け出るのを防止する性能即ちダウンプルーフ性も充
分、満足できるに至らなかった。
このようなダウンプルーフ性を向上させる手段として
表面をコーティングする方法もあるが、コーティングし
た場合には逆に通気性を失ない、ダウンの持つ優れた吸
湿性,透湿性を活用することができなくなって、折角の
商品価値の低下を招くことになる。
そこで上述の如き問題を解決した長繊維糸による高密
度織物を本出願人は先に出願した(特開昭57-117647号
公報)。すなわち、横断面形状で特定形状をもつフィブ
リル化型複合フィラメントを用い、かつ製織面において
特別に高密度化を要せず、加工段階で必要な程度に収縮
高密度化させると共に織物内部での単糸配列を特定化す
ることによって適度の通気性並びに撥水性をもち、しか
もダウンプルーフ性に優れた性能を備えた高密度織物が
知られている。
またこの織物を製造するに好適な方法として、ポリア
ミドとポリエステルが長手方向に沿って接合され、横断
面が前記一方のポリマーからなり、少なくとも2方向に
延びた形状のセグメントと、他方のポリマーからなり前
記セグメント間を補完する形状のセグメントとから構成
されたフィブリル化型複合フィラメントを加熱,熱固定
及び解撚して得た巻縮加工糸、あるいは該解撚後実質的
に緊張下、再度熱固定して得た潜在巻縮加工糸を緯糸の
少なくとも20重量%に用いて平織物を製織し、その後、
該平織物をポリアミドを膨潤せしめる薬剤により処理し
て収縮せしめ、更に爾後、加熱押圧して織物表面を平滑
化することを要旨とする高密度平織物の製造方法を上記
特開昭57-117647号公報は開示している。
上記の先に提案した高密度織物の製造法は良好な高密
度織物を与えるが、ポリアミドを膨潤させる薬剤により
処理して織物を収縮させる工程に改善の余地がある。該
工程の主な目的は複合フィラメントを構成するポリアミ
ドとポリエステル間の接合を解放して各々の微細な非円
形断面の糸とする(フィブリル化)ことにあるが、織物
組織に組込まれた複合フィラメントはときには十分にフ
ィブリル化せず、あるいは十分にフィブリル化させるた
めにはポリアミドを膨潤させる薬剤の含浸あるいは塗布
後の放置時間を長時間取る必要があり、さらにはポリア
ミドを膨潤させる薬剤の含浸あるいは塗布後、マンブル
で搾液或いは脱水機で脱水する等被処理繊維構造物及び
/又は処理液の移動が必要であり、生産性が向上しない
という問題があった。また、長時間処理を行うと、ポリ
アミドを膨潤させる薬剤の不均一浸透および機械装置の
滞留時間の長期化に伴い、斑,モアレ等が発生し、高品
質のものが得られないという問題があった。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであっ
て、ポリアミドとポリエステルに限定されないフィブリ
ル化型複合繊維からなる繊維構造物を簡単で効率よく実
質的にフィブリル化する方法の提供を目的とするもので
ある。
(問題点を解決するための手段) 上述の目的は、フィブリル化型複合繊維からなる繊維
構造物を該繊維構造物の一方の成分を膨潤せしめる薬剤
により処理して構造物を構成する複合繊維を実質的にフ
ィブリル化するに際し、上記繊維構造物を上記薬剤の存
在下超音波で処理することを特徴とする繊維構造物の処
理方法により達成される。
本発明方法にいう「フィブリル」とは、それが多数本
集束して繊維束を成す細繊度の繊維のことであり、例え
ば、多成分から成る複合構造を有する繊維(複合繊維)
を何らかの手段でもって各成分に分割することにより容
易に得ることができる。
本発明方法に於けるフィブリル化型複合繊維とは、A
成分フィラメント及びB成分フィラメントが、単一フィ
ラメントの横断面において一方の成分が他方の成分を完
全に包囲しない形成で、単一フィラメントの長手方向に
沿って接合されるものを言い、具体的には横断面がサイ
ドバイサイド繰返し型の複合繊維、放射型の形状を有す
る成分と該放射部を補完する形状を有する他の成分から
なる複合繊維、放射型の形状を有する成分と該放射部を
補完し且つ中心方向に向いたV字型の凹部のある形状を
有する他の成分と該凹部を補完するV字型の形状を有す
る該放射型の形状を有する成分と同じ成分からなる複合
繊維及び中空部分のあるサイドバイサイド繰返し型複合
繊維等が挙げられる。これらの複合繊維のうち、単糸繊
度が0.5デニール以下の極細フィブリルが得易いという
点から、中空部分のある又はないサイドバイサイド繰返
し型の横断面を有する複合繊維、及び横断面が放射型の
形成を有する成分のある複合繊維が好適であるが、複合
繊維製造面では両者の中繊維断面形態の安定性の点から
横断面が放射型の形状を有する成分のある複合繊維が有
利である。
本発明方法に於けるフィブリル化型複合繊維のA成分
フィラメントとB成分フィラメントは特に限定されない
が通常はポリアミド/ポリエステルの組合せが用いられ
る。
ここでポリアミドとしては、例えばナイロン4,ナイロ
ン6,ナイロン7,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン66,ナ
イロン6・10,ポリメタキシレンアジバミド,ポリパラ
キシリレンデンアミド,ポリビスシクロヘキシルメタン
デカンアミド及びそれらを成分とするコポリアミド等が
挙げられる。
またポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレ
フタレート,ポリテトラメチレンテレフタレート,ポリ
エチレンオキシベンゾエート,ポリ1,4−ジメチルシク
ロヘキサンテレフタレート,ポリピバロラクトン及びこ
れらを成分とするコポリエステル等が挙げられる。
本発明方法によるフィブリル化型複合繊維を用いてな
る繊維構造物とは、平織,綾織、朱子織,経編物、横編
物,丸編物等のいずれでもよく、特に限定されるもので
はない。
本発明方法は、これらの繊維構造物にA成分を膨潤せ
しめる薬剤(以下フィブリル化剤と呼ぶ)により処理し
て構造物を構成する複合繊維を実質的にフィブリル化す
るに際し、フィブリル化剤の存在下超音波で処理するこ
とが行われる。該処理をするためには、たとえば超音波
発振器等を具えた処理槽にフィブリル化剤を投入し、こ
の中に繊維構造物を浸漬させて処理を行うことが好まし
い。
ここでフィブリル化剤としては、ポリアミドを例にと
ると具体的には、ベンジルアルコール、β−フェニルエ
チルアルコール、フェノール、m−クレゾール、蟻酸、
酢酸等が挙げられる。またその水溶液又は水性エマルジ
ョンとして用いるのが適している。特に以上の中でもベ
ンジルアルコールの水性エマルジョンを用いる方法がフ
ィブリル化効果の点で、また取扱いが比較的容易な点で
本発明方法には最適である。
上記フィブリル化剤の水性エマルジョンを作るには、
フィブリル化剤に界面活性剤を添加して乳化分散させれ
ばよく、該界面活性剤としては、ノニオン系活性剤、カ
チオン系活性剤、アニオン系活性剤、両性活性剤、又は
それらの混合型等いずれでもよい。更には一般の乳化剤
や糊剤等の増粘剤を添加し該エマルジョンを安定化させ
るのもよい。
フィブリル化剤の濃度は、フィブリル化効果を得るた
めには1.5重量%以上とする必要がある。
本発明方法において超音波処理の際の条件としては、
出力200W以上、振動数10KHz〜200KHzが好ましく、更に
好ましくは10KHz〜100KHzである。10KHz以下であると繊
維構造物のフィブリル化が促進されず、また200KHz以上
であると指方向性の為、内部迄効果が発揮出来ず斑にな
る場合がある。また出力が200W以下の時は、繊維構造物
のフィブリル化が促進されない場合がある。
本発明方法では、次いで該繊維構造物を洗浄してフィ
ブリル化剤を繊維構造物から除去し、乾燥を行なう。
そして、その後染色、樹脂加工、起毛、シャーリング
等必要に応じて行なう。
(作用) フィブリル化型複合繊維からなる繊維構造物を該繊維
構造物の一方の成分を膨潤せしめる薬剤により処理して
構造物を構成する複合繊維を実質的にフィブリル化する
に際し、上記繊維構造物を上記薬剤の存在下超音波で処
理すると、超音波により繊維構造物を構成している経,
緯糸がほぐれてフィブリル化し、これに薬剤を含浸させ
た場合、薬剤が浸透しやすく更にフィブリル化が促進さ
れるのである。
(実施例) 次に実施例に基づき本発明方法を具体的に説明する。
実施例1 (1) フィブリル化型複合繊維 第1図に示したような横断面をもち、且つA成分がナ
イロン6、B成分がポリエチレンテレフタレート(以下
「PET」という)であり、またナイロン6とPETの容積比
が1:3の割合で構成される50デニール/25フィラメントの
フィブリル化型複合繊維を作成した。
(2) 織物製織 経糸,緯糸に上記フィブリル化型複合繊維50D/25f/
2、110T/MSを用い、経密度90本/インチ、緯密度80本/
インチで2/2ツイルを製織した。
(3) 織物の処理 上記製織して得た織物を30℃のベンジルアルコール25
%エマルジョン(乳化剤として日華化学製のサンモール
BK concを1.5%使用)からなる処理液に含浸し、出力50
0W,振動数28KHzの超音波をかけながら10分間処理し、そ
の後60℃の温水により約5分洗滌し、乾燥し、本発明実
施例1の高密度織物を得た。
比較例1 実施例1と同様の織物を用い、実施例1の超音波処理
を施す部分を除き、実施例1と同様の方法で比較例1の
織物を得た。
次に、本発明の実施例1により得られた高密度織物の
フィブリル化度を面積収縮率(So-S/So×100)でもって
測定し、比較例1と比較した結果を第2図に示す。
実施例2 経糸に絹/PET(重量比50:50)120/2、緯糸に実施例1
と同じフィブリル化型複合繊維50D/25f/2、110T/MSを用
い経密度85本/インチ、緯密度81本/インチで平織物を
製織した。
次に実施例1のベンジルアルコールの濃度を15%とす
る以外は、実施例1と同様の方法で織物を処理し、本発
明実施例2の高密度織物を得た。
比較例2 実施例2と同様の織物を用い、実施例2の超音波処理
を施す部分を除き、実施例2と同様の方法で比較例2の
織物を得た。
次に本発明の実施例2により得られた高密度織物のフ
ィブリル化度を緯方向収縮率(Lo-L/Lo×100)でもって
測定し、比較例2と比較した結果を第3図に示す。
第2図及び第3図から明らかなように、実施例で得ら
れた高密度織物のフィブリル化度は従来品の比較例と比
較して大幅に改善されているのである。
また、実施例の高密度織物は斑,モアレ等がなく、高
品質のものであった。それに比して、比較例の織物は
斑,モアレ等の発生が見られ、高級品には使用出来ない
ものであった。
(発明の効果) 以上詳述した様に、本発明はフィブリル化型複合繊維
からなる繊維構造物のフィブリル化を短時間に実施でき
るものであるため、生産性向上,生産コストの低減とい
う効果が得られる。
さらに、本発明方法によるフィブリル化処理は、フィ
ブリル化が短時間に行われるため、繊維構造物に斑,モ
アレ等の発生がないので、高品質のものが得られ、スエ
ード調擬革用途、ダウンプルーフ用途としては好適であ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明実施例のフィブリル化型複合繊維の横
断面である。また第2図及び第3図はフィブリル化型複
合繊維のフィブリル化状態を示すグラフである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィブリル化型複合繊維からなる繊維構造
    物を該繊維構造物の一方の成分を膨潤せしめる薬剤によ
    り処理して構造物を構成する複合繊維を実質的にフィブ
    リル化するに際し、上記繊維構造物を上記薬剤の存在下
    超音波で処理することを特徴とする繊維構造物の処理方
    法。
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