JP2680458B2 - トラクタの変速操作構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はトラクタの変速装置構造に係り、詳しくはエ
ンジン後部のクラッチケース部にミッションケースを直
結し、このミッションケースの後部に後車軸を支承する
とともに、そのミッションケースの前部上方位置に操作
部のステップボードを配置してあるトラクタの変速操作
構造に関する。

〔従来の技術〕 前述したトラクタにあってはミッションケースの前部
内に走行系とPTO系の各変速用機構が配設されており、
機械式の手動変速構造を採るPTO系の変速機構の変速レ
バーは、その変速機構の真上、すなわちミッションケー
ス前部からステップボードを貫通して立設配置されてお
り、シートに着席した操縦者の手の届く位置まで延設し
てあった。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところが、前記変速レバーはその立設位置がステップ
ボードの前後方向における前寄りの中間部位で立ち上が
る状態となっているので、シートに着席しての操縦姿勢
の際には該変速レバーの根元部に足のつま先が当たり易
い傾向があるとともに、乗り降りの際にその張り出た変
速レバーが邪魔になったりする等、ステップボードの居
住性には改善の余地があった。

本発明は前記変速レバーの配設に起因する居住性の不
具合を改善することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するために本発明は、エンジン後部の
クラッチケース部にミッションケースを直結し、このミ
ッションケースの後部に後車軸を支承するとともに、エ
ンジン後方側に配置された操縦部と機体後部の運転座席
との前後間におけるミッションケースの前部上方位置に
ステップボードを配置してあるトラクタの変速操作構造
において、 ミッションケースの前部内に走行系或いはPTO系のギ
ヤ変速機構を構成し、その変速機構における変速用シフ
タの操作ロッドを、クラッチケース部とミッションケー
スとを前後に仕切る縦壁を貫通させてクラッチケース部
内に延設し、かつ、操作ロッドの貫通延設部を押し引き
操作する変速レバーを、クラッチケース部の上面を貫い
て上方へ延出するとともに、ステップボードの平坦部前
端を、クラッチケース部とミッションケースとの接続部
近くに配置してあることを特徴構成とする。

〔作 用〕

一般にトラクタでは、エンジン後部のクラッチケース
部は、エンジン本体部よりも後方に突出した状態となっ
ており、この点に着目して前記特徴構成を採ったのであ
る。

すなわち、変速機構の操作ロッドは前記方向に亘って
配設されているので、その前端を仕切縦壁を貫通してク
ラッチケース部内に延ばすことが可能であり、従って、
その操作ロッドを押し引き操作する変速レバーを、従来
のミッションケース前部上方位置よりも前側に寄せるこ
とができ、クラッチケース部上面から立ち上げて配設す
ることが可能になった。

そして、ステップボードの平坦部前端は仕切縦壁付近
に位置しているので、クラッチケース部から立ち上がる
変速レバーはボード平坦部よりも前の部分に位置するこ
とになり、足の爪先が接当し難くなるとともに、乗り降
りの際の邪魔にもなり難いようになる。

例えば、操作ロッドを後方に延設することによって、
変速レバーをシート横位置に配設する手段が考えられる
が、この手段では操作ロッドが非常に長くなって操作が
大型で複雑になるとともに、ハンドル近くに変速レバー
を配置しての良好な操縦性も期待できないことになるか
ら、本願の手段の方が明らかに有利である。

〔発明の効果〕

その結果、シフトロッドが前後に配設される操作構造
を有効利用することにより、変速レバーのステップボー
ド上の配設位置を、従来よりも前寄りの位置としてボー
ド平坦部外に配置でき、足の置き場所や乗降の妨げにな
り難くステップボードでの居住性を向上することができ
た。

〔実施例〕

以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第５図に、農用トラクタが示されている。このトラク
タの機体前部にはエンジン（Ｅ）が配置されており、中
央部には操縦部（１）が備えてあるとともに、エンジン
（Ｅ）の動力を後輪（２）、およびPTO軸（３）へ伝え
るトランスミッションケース（Ｍ）が、機体フレームを
兼ねた状態で、エンジン（Ｅ）に直結されて前後向きに
配設されている。

操縦部（１）には、ハンドル（４）、操縦席（５）、
及び搭乗用のステップボード（６）が装備されており、
このステップボード（６）の左右の中央部付近の下側
に、ミッションケース（Ｍ）が位置している。

第１図で示すように、ミッションケース（Ｍ）内は、
前後方向に大別して３個の区画（７），（８），（９）
に区分されており、前部区画（７）には、走行系の主ギ
ヤ変速機構（10）とPTO系のギヤ変速機構（11）、及びP
TO系の正逆変速機構（12）とを配備するとともに、中間
区画（８）には走行系の正逆変速機構（13）、この正逆
変速機構（13）から伝動下手側の走行系の変速機構の変
速操作に対する油圧式の変速クラッチ（14）、および油
圧式のPTOクラッチ（15）を配備し、後部区画（９）に
は走行系の副ギヤ変速機構（16）、超減速機構（17）、
および走行系の最終変速動力を受ける後輪駆動用の差動
変速機構（18）、さらには後輪（２）を支持する後車軸
（35）を配備してある。

ミッションケース（Ｍ）は、エンジン（Ｅ）後部のク
ラッチケース部（19）に直結さており、該クラッチケー
ス（19）内に備えられた油圧式の主クラッチ（Ｃ）を介
して、前部区画（７）内の主軸（20）に動力が伝達され
る。

第２図に示すように、該主軸（20）の右側にはPTO系
の伝動軸（21）とPTO系の逆転軸（22）とを、左側には
走行系の伝動軸（23）を振り分けて並列配置するととも
に、主軸（20）と走行系の伝動軸（23）とに亘って主ギ
ヤ変速機構（10）を組込み、かつ、主軸（20）とPTO系
の伝動軸（21）とに亘ってギヤ変速機構（11）が組込ん
である。

すなわち、主軸（20）には前から順に第４ギヤ（G
4）、中間ギヤ（G5）、第３ギヤ（G3）、第２ギヤ（G
2）および第１ギヤ（G1）が夫々一体回転状態に装備さ
れ、走行系の伝動軸（23）には前から順に４速ギヤ（G
9）、３速ギヤ（G8）、２速ギヤ（G7）、および１速ギ
ヤ（G6）が夫々遊転外嵌され、PTO系の伝動軸（21）に
は前から順に第３速ギヤ（G12）、第４速ギヤ（G13）、
第２速ギヤ（G11）、および第１速ギヤ（G10）が夫々遊
転外嵌されており、主ギヤ変速機構（10）は２個の変速
部材（24），（24）を持つ油圧操作式のシンクロメッシ
ュ機構に、ギヤ変速機構（11）は第４速ギヤ（G13）と
第２速ギヤ（G11）とが変速部材を兼ねた機械操作式の
コンスタントメッシュ機構に夫々構成されている。

そして、主軸（20）の第1,2,3ギヤ（G1），（G2），
（G3）は、走行系の1,2,3速ギヤ（G6），（G7），（G
8）、及びPTO系の第1,2,4速ギヤ（G10），（G11），（G
13）の双方とこの順で夫々咬合する兼用ギヤに構成さ
れ、変速比の都合上走行系の４速キヤ（G9）とPTO系の
第３速ギヤ（G12）には別々に用意された主軸（20）の
第４ギヤ（G4）と中間ギヤ（G5）が咬合する構成とされ
ている。また、逆転軸（22）には第２ギヤ（G2）に咬合
可能な逆転ギヤ（G14）をスライド自在に遊転外嵌して
正逆変速機構（12）を構成してあり、その逆転ギヤ（G1
4）をスライド操作して第２ギヤ（G2）と第２速ギヤ（G
11）双方とに咬合させることによって逆転状態が得られ
るのである。

PTOクラッチ（15）を経た動力は、中間軸（25）、PTO
軸（３）を経由して図示しない作業装置に伝達される。

走行系の正逆変速機構（13）は機械操作式のシンクロ
メッシュ機構に構成されており、この正逆変速機構（1
2）を人為的に変速操作するシャトルレバー（26）とギ
ヤ変速機構（11）を人為操作するPTO変速レバー（27）
とをハンドル（４）の両横位置に配設しており、その構
造について説明する。

第１図乃至第４図に示すように、ギヤ変速機構（11）
の第２速ギヤ（G11）と第４速ギヤ（G13）をスライドさ
せる第１シフタ（28）、第２シフタ（29）を各別に固定
支持する第１ロッド（30）と第２ロッド（31）、および
PTO正逆変速機構（12）の変速部材（32）用第３シフタ
（33）を固定支持する第３ロッド（34）とをミッション
ケース（Ｍ）内の前後方向に配設してあり、これらロッ
ド（30），（31），（34）はクラッチケース部（19）と
ミッションケース（Ｍ）とを前後に仕切る縦壁（36）を
貫通させてクラッチケース部（19）内に延設してある。

また、走行系の正逆変速機構（13）における変速部材
（37）操作用の第４シフタ（38）を固定支持する第４ロ
ッド（39）も前方へ延設して同様にその前端をクラッチ
ケース部（19）内に位置させてある。第1,2,3ロッド（3
0），（31），（34）は、クラッチケース部（19）の右
端部にそれらの係合部（40），（41），（42）を互いに
横方向に近接させた状態で並列されている。

クラッチケース部（19）はその上部がステップボード
（６）の平坦部（6a）よりも上側に突出しているととも
に、そのボード平坦部（6a）の前端は縦壁（36）の直後
に位置している。クラッチケース部（19）の右端上面に
は、球面軸受（43）に支承された変速レバー（27）を立
設してある。この変速レバー（27）の下端はロッドを操
作する作用部（44）に形成されており、３つの係合部
（40），（41），（42）と択一的に係合することによっ
て、PTO系の正転４速と逆転１速の変速を行うのであ
る。

第４ロッド（39）はクラッチケース部（19）の左端部
に位置し、その係合部（45）に係合する操作片（46）を
前後揺動する支軸（47）をクラッチケース部（19）上面
から上方に立ち上げてあり、途中に自在継手（48）を介
してハンドル（４）の左横脇部位に延設してあり、その
先端を左方に屈曲することによってシャトルレバー（2
6）を構成してある。

従って、ステップボード（６）の平坦部（6a）には両
レバー（26），（27）の根元部が存在しないので居住性
に優れているのである。

〔別実施例〕

変速レバー（27）が走行系の主ギヤ変速機構（10）を
変速操作するように構成しても良く、さらに主ギヤ変速
機構（10）とギヤ変速機構（11）の双方の変速レバーを
クラッチケース部（19）上面に立設配置する構成とした
ものでも良い。

本発明では各ロッドを夫々操作ロッド（Ｒ）、各シフ
タを変速用シフタ（Ｓ）と呼ぶものとする。

尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にする
為に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構
造に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明に係るトラクタの変速操作構造の実施例を
示し、第１図は伝動装置の構造を示す縦断断面図、第２
図は伝動装置の変速装置部を示す横断断面図、第３図は
クラッチケース部の構造を示す横断断面図、第４図は各
操作ロッドの配置を示す図、第５図はトラクタの側面図
である。 （１）……操縦部、（６）……ステップボード、（11）
……変速機構、（19）……クラッチケース部、（27）…
…変速レバー、（35）……後車軸、（Ｅ）……エンジ
ン、（Ｍ）……ミッションケース、（Ｓ）……シフタ、
（Ｒ）……操作ロッド。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジン（Ｅ）後部のクラッチケース部
   （19）にミッションケース（Ｍ）を直結し、このミッシ
   ョンケース（Ｍ）の後部に後車軸（35）を支承するとと
   もに、前記エンジン（Ｅ）後方側に配置された操縦部
   （１）と機体後部の運転座席（５）との前後間における
   前記ミッションケース（Ｍ）の前部上方位置にステップ
   ボード（６）を配置してあるトラクタの変速操作構造で
   あって、 前記ミッションケース（Ｍ）の前部内に走行系或いはPT
   O系のギヤ変速機構（11）を構成し、その変速機構（1
   1）における変速用シフタ（Ｓ）の操作ロッド（Ｒ）
   を、前記クラッチケース部（19）と前記ミッションケー
   ス（Ｍ）とを前後に仕切る縦壁（36）を貫通させて前記
   クラッチケース部（19）内に延設し、かつ、前記操作ロ
   ッド（Ｒ）の貫通延設部を押し引き操作する変速レバー
   （27）を、前記クラッチケース部（19）の上面を貫いて
   上方へ延出するとともに、前記ステップボード（６）の
   平坦部（6a）前端を、前記クラッチケース部（19）と前
   記ミッションケース（Ｍ）との接続部近くに配置してあ
   るトラクタの変速操作構造。