JP2667978B2 - 合成多孔体およびその製造方法 - Google Patents

合成多孔体およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】 この発明は3−八面体型スメクタイト様構造を有する
合成多孔体およびその製造方法に関する。 スメクタイトは2層のシリカ四面体シートがマグネシ
ウム八面体シートあるいはアルミニウム八面体シートを
間にはさんだサンドイッチ型の三層構造を有するフィロ
ケイ酸塩の一員であり、水中において陽イオン交換能を
有し、層電荷の値が雲母などと比べて小さいため層間が
広がりやすく、無機物あるいは有機物と複合体を形成す
る特異な性質を持つ粘土鉱物である。この特性を利用し
て、層間に無機物の柱を立て、ゼオライト様の多孔体と
し、触媒、触媒担体あるいは吸着剤等に使用する試みが
なされている。 たとえば天然に産出する2−八面体型スメクタイトの
一種であるモンモリロナイトを用い、その層間にアルミ
ニウムヒドロキシドをイオン交換により導入し、電気炉
中で加熱処理してアルミニウムヒドロキシドをアルミナ
の柱にして多孔体を製造する方法が知られている(山中
昭司、粘土科学、21、78〜82、1981)。この場合、水酸
化ナトリウム水溶液をアルミニウム塩水溶液に添加して
アルニウムヒドロキシドのオリゴマーを合成するのに1
週間程度の反応時間を要する。またモンモリロナイトと
アルミニウムヒドロキシドをうまく反応させるのに大過
剰のアルミニウムヒドロキシド量を必要とし、反応時間
も長時間要する。しかも反応終了後、大過剰のアルミニ
ウムヒドロキシドおよび副生溶解質を除去するのにかな
りの困難を伴うなどの欠点を有する。更に原料素材とし
て用いるモンモリロナイトはベントナイト中に構成鉱物
の一つとして存在し、石英、クリストバライト、カルサ
イトなどの不純物を伴うため、あらかじめモンモリロナ
イトのみを抽出分離精製しておく必要がある。通常、純
モンモリロナイト製品は1〜2%程度の希薄ベントナィ
ト分散水溶液より抽出して製造するため、乾燥費などの
精製コストを要し極めて高価格で市販されている。しか
も天然物であるが故に化学組成、構造、欠陥、不純物な
ど材料特性の変動が大であるため、複合化して多孔体を
製造する場合、その特性制御は困難であり、鉄分など触
媒毒となりうる不純物を考慮に入れれば触媒あるいは触
媒担体として用いるには適正を欠く場合もでてくる。 一方、不純物の影響をさけ、特性制御を容易ならしめ
るため、原料素材として合成スメクタイトを用いた例が
報告されているが、やはり天然スメクタイトの場合と同
様に多孔体を製造するのに長時間を要し、天然スメクタ
イトよりアルミニウムヒドロキシドと複合化しがたい欠
点を有する場合が多い。たとえば合成フッ素ヘクトライ
トとアルミニウムヒドロキシドの反応によって得られて
いるアルミニウム架橋合成フッ素ヘクトライト多孔体の
比表面積は73m2/gの低い値が得られている(K.Urabe,H.
Sakurai and Y.Izumi,J.Chem.Commun.,1986,1074〜107
6)。同様に合成したアルミニウム架橋モンモリロナイ
ト多孔体の比表面積の値は228m2/gであるとK.Urabeらは
報告している。 本発明の目的は天然産スメクタイトあるいは合成スメ
クタィトに無機物の柱を立てて得た多孔体にみられる様
な欠点を有しない、工業的に満足し得る設計された精密
素材としての合成多孔体およびその製造技術を提供する
ことである。 本発明者らは触媒、触媒担体、吸着剤などとして有用
な多孔体の合成について長年鋭意研究を重ねた結果、極
めて大きい比表面積を有し、耐熱性の高い新規の合成多
孔体およびその製造方法の発明に至った。 すなわちこの発明は一般式 aA2/x・bMO・cF・dOH・8SiO2 (1) (式中のa、b、c、dおよびxの値は0<a≦2、0
<b<10、0≦c<6、0≦d<6および1≦x≦2と
し、Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン
およびアンモニウムイオンからなる群から選んだ少なく
とも1個の陽イオンであり、またMはMg、Co、Ni、Zn、
Cu、Fe、Mn、Pb、Cdなどの2価金属イオンから選んだ少
なくとも1個の2価金属イオンである)で表わされ、ベ
ット比表面積の値が200〜400m2/gで示される合成多孔体
およびその製造方法を提供するものである。 3−八面体型スメクタイトは三層構造の八面体シート
中にマグネシウムを含有するスメクタイトである。八面
体シート中の二価のマグネシウムが一価のりチウムで置
換されたり、あるいはマグネシウムの構造欠損が生じる
ことにより、シリケート層中で負の層電荷が生じ、それ
と電気的にバランスする形で層間に陽イオンが入ってい
る。 一般式(1)で表わされる本発明の合成多孔体におい
て2価金属としてマグネシウムを用いた場合、水熱合成
により3−八面体型スメクタイト様鉱物が生成する時に
未反応のシリコン、マグネシウム又は両者の複合した含
水酸化物が層間に取り込まれ、100℃から800℃の熱処理
により層間に酸化物の柱が生成してゼオライト様の多孔
体になったものと推察される。本発明の多孔体に含まれ
るスメクタイト様鉱物は通常の3−八面体型スメクタイ
トにおける八面体シート中のマグネシウムの全てあるい
は一部がコバルト、ニッケル、亜鉛、銅、鉄、マンガ
ン、鉛、カドミウムなどの2価重金属で置換された構造
も存在する。この様な2価重金属を多く含有する3−八
面体型スメクタイトは天然にはほとんど知られていず、
本発明の合成多孔体は新規の素材であると考えられる。 本発明を構成するための製造方法については以下に述
べる。本発明の合成多孔体の製造方法は次の工程から成
る。 第1にシリコンと一般式(1)で示した2価金属を含
有させた均質複合沈殿物を調製し、第2にこの均質複合
沈殿物に水と要すればアルカリ金属、アルカリ土類金属
あるいはアンモニウムイオンから成る群から選んだ陽イ
オンあるいはフッ素イオンを添加して出発原料スラリー
とし、第3に該スラリーを水熱反応せしめ、第4にこの
水熱反応物を100℃ないし800℃の間の温度で加熱処理し
て本発明製品を得ることができる。 第1工程においてケイ酸と2価金属塩を混合して得た
均質溶液をアルカリ溶液で沈殿させ、濾過、水洗により
副生溶解質を除去することにより均質複合沈殿物が調製
される。ケイ酸と2価重金属塩を含む均質溶液はケイ酸
溶液と2価重金属塩水溶液を混合し、あるいはケイ酸溶
液に直接2価金属塩を溶解することにより得られる。ケ
イ酸と2価金属塩の混合割合は一般式(1)で満足する
範囲のbの値を選ぶことにより与えられる。bの値は0
〜10であるが、通常好ましい値は3〜8である。ケイ酸
溶液はケイ酸ソーダと鉱酸を混合し、液のpHを酸性とす
ることにより得られる。ケイ酸ソーダは一般に市販され
ている1号ないし4号水ガラスならびにメタケイ酸ソー
ダはいずれも使用できる。鉱酸としては硝酸、塩酸、硫
酸などが用いられる。2価金属塩はマグネシウム、コバ
ルト、ニッケル、亜鉛、銅、鉄、マンガン、鉛、カドミ
ウムなどの塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などから選
ぶことができる。一般式(1)の組成を満足する値であ
れば、2価金属は一種類だけでなく、二種類以上のどの
様な組成の組合せでも選ぶことができ、触媒反応などの
用途に応じて組成を設計できる。次に常温でケイ酸と2
価金属塩を含有する均質溶液とアルカリ溶液を混合して
均質複合沈殿物を得る。アルカリ溶液としては水酸化ナ
トリウム溶液、水酸化カリウム溶液、アンモニア水など
が用いられる。アルカリ溶液の量は混合後のpHが10以上
となる様な値を選ぶのが望ましい。上記均質溶液とアル
カリ溶液を混合する場合、アルカリ溶液に均質溶液を滴
下して沈殿せしめてもよく、あるいはその逆の順序にし
てもよい。また両者の液を瞬時に混合しても均質複合沈
殿物は得られる。混合の際、特に攪拌を必妥としない
が、攪拌することは一向にさしつかえない。次いで濾
過、水洗により副生電解質を充分に除去する。 第2工程の出発原料スラリーは第1工程で得た均質複
合沈殿物に水、要すれば陽イオンの水酸化物、フッ化物
あるいはそれらの混合水溶液を加え、または要すればフ
ッ化水素酸を添加することによって調製される。 第3工程の水熱反応は第2工程で得られた出発原料組
成スラリーをオートクレーブに仕込み、100℃ないし300
℃の水熱温度で反応させるが、通常好ましい温度範囲は
100〜200℃である。反応中特に攪拌を必要としないが攪
拌することは一向にさしつかえない。 第4工程においては第3工程の水熱反応終了後オート
クレーブ内容物を取り出し、100℃ないし800℃の温度で
加熱処理することにより最終製品が得られるが、通常好
ましい加熱処理温度範囲は200ないし500℃の間である。
加熱処理する前にオートクレーブ内容物をあらかじめ乾
燥する必要はないが、乾燥することは一向にさしつかえ
ない。乾燥後、微粉末とし、用途に応じた成形体にして
加熱処理することもできる。また用途によってはオート
クレーブ内容物を直接成形した後、加熱処理して多孔体
とすることもできる。 本発明を実施することによって製造した新規の合成多
孔体はX線粉末回折、示差熱分析、赤外吸収スペクト
ル、化学分析、ベット比表面積測定、細孔分布測定など
によって評価することができる。本発明の新規の合成多
孔体はCu−Kα線を用いた場合の回折角(2θ)が、
(hk)反射の(35,06)について60.0度から61.3度の間
に現われ、3−八面体型スメクタイト類似構造の化合物
を含有していると考えられる。ベット比表面積を測定し
た場合、通常200〜400m2/gの高い値を示し、水熱処理温
度が低い試料ほど値が大きくなる傾向を示す。また700
℃から800℃の処理温度でも比較的大きい比表面積の値
を示し、天然産スメクタイトあるいは合成スメクタイト
などから製造されたアルミニウム架橋多孔体よりも高い
耐熱性を示し、触媒、触媒担体、吸着剤、断熱材などと
して有用である。更に構造中に種々の2価重金属を含有
することができるため、殺菌、抗菌、消毒などを目的と
した多孔体材料、電磁遮蔽材、センサー、半導体材料な
どの用途に用いられ有用である。 次に実施例によってこの発明をさらに詳細に説明す
る。 実施例1 1lのビーカーに水400mlを入れ、3号水ガラス(SiO22
8%、Na2O9%、モル比3.22)86gを溶解し、16N硝酸23ml
を攪拌しながら一度に加えてケイ酸溶液を得る。次に水
100mlに塩化マグネシウム六水和物一級試薬(純度98
%)58.0gを溶解した溶液をケイ酸溶液に加えて調製し
たケイ酸一マグネシウム均質混合溶液をアンモニア水26
0ml中に攪拌しながら5分間で滴下する。直ちに得られ
た反応均質複合沈殿物を濾過し、充分に水洗した後、水
酸化ナトリウム1.47gおよび10%フッ化水素酸20mlを加
えてスラリー状とし、1l内容積のオートクレーブに移
す。15.9kg/cm2、200℃で3時間反応させる。冷却後、
反応生成物をとりだし、電気炉中300℃で1時間加熱処
理を行った。 本品は八面体シート中に2価金属としてマグネシウム
を、また陽イオンとしてナトリウムを含有し、化学分析
の結果からa=0.65、b=5.70、c=2に相当し、その
比表面積は272m2/gであった。 X線粉末回折図は3−八面体型スメクタイトであるヘ
クトライトに類似したパターンを示すが、全体的にピー
クはブロードであり、(35,06)反射ピークのd値は1.5
18Åであった。(001)に相当するピークは10.1Åと22.
2Åに現れ、層間が収縮している部分と多孔体となって
いる部分があることが推察される。本品は13.6Å程度の
長さの柱が存在する多孔体と考えられる。 実施例2 原料物負の仕込量を次の通りとして実施例1と同様に
操作した。 3号水ガラス 86 g 塩化マグネシウム六水和物一級試薬 62 g 水酸化ナトリウム 1.47g 本品は八面体シートの2価金属イオンとしてマグネシ
ウムを、また陽イオンとしてナトリウムを含有し、a=
0.63、b=6.17、c=0に相当し、その比表面積は372m
2/gであった。X線粉末回折図はヘクトライトに類似し
たパターンを示すが、全体的にピークはブロードであ
り、(35,06)反射ピークのd値は1.527Åであった。 実施例3 原料物質の仕込量を次の通りとして実施例1と同様に
操作した。ただしアンモニア水の代りに2規定水酸化ナ
トリウム水溶液400mlを使用した。 3号水ガラス 86g 塩化ニッケル(II)六水和物特級試薬(純度98%) 71g 10%フッ化水素酸 30ml 本品は八面体シート中の2価金属としてニッケルを、
また陽イオンとしてナトリウムを含有し、a=0.68、b
=5.92、c=3に相当し、その比表面積は311m2/gであ
った。X線回折パターンはヘクトライトに類似してお
り、(35,06)反射ピークのd値は1.524Åであった。 実施例4 原料物質の仕込量を次の通りとし、実施例1と同様に
操作した。ただし、水熱処理圧力2.4kg/cm2、水熱処理
温度125℃および水熱処理時間を2時間とした。 3号水ガラス 86 g 塩化マグネシウム六水和物一級試薬 56 g 水酸化リチウム一水和物 1.26g 水酸化ナトリウム 1.47g 本品は八面体シートにマグネシウムおよびリチウム
を、また陽イオンとしてナトリウムを含有し、a=0.7
3、b=6.11(Mg=5.58、Li=0.53)、c=0に相当
し、比表面積は376m2/gであった。X線回折パターンは
ヘクトライトに類似しており、(35,06)反射ピークの
d値は1.531Åであった。 実施例1〜4で得られた本発明製品および実施例4に
おける水熱処理する前の均質複合沈殿物の比表面積の値
を表1に示す。 比較として市販の精製モンモリロナイト、合成フッ素
ヘクトライトおよび合成四ケイ素ナトリウム雲母(NTS
M)から製造したアルミニウム架橋粘土多孔体のベット
比表面積の値も表1に示す。 表1から明らかなごとく実施例4における本発明製品
と水熱処理する前の均質複合沈殿物を比べた場合、ベッ
ト比表面積の値に極端な差が認められ、本発明を実施す
るには水熱処理が必要不可欠であることを示す。また本
発明製品四種のベット比表面積は三種のアルミニウム架
橋粘土多孔体よりもいずれも大きい値を示し、多孔体と
して優れており、触媒、触媒担体、吸着剤などとして有
用である。 実施例5 原料物質の仕込量を次の通りとして実施例1と同様に
操作した。ただし水熱処理圧力41kg/cm2および水熱処理
温度250℃とした。 3号水ガラス 86 g 塩化マグネシウム六水和物一級試薬 83 g 水酸化ナトリウム 1.47g 本品は八面体シートにマグネシウムを、また陽イオン
としてナトリウムを含有し、a=0.47、b=7.75、c=
0に相当し、その比表面積は275m2/gであった。X線粉
末回折パターンはヘクトライトに類似しており、(35,0
6)反射ピークのd値は1.534Åであった。 実施例6 原料物質の仕込量を次の通りとして実施例1と同様に
操作した。 3号水ガラス 86 g 塩化マグネシウム六水和物一級試薬 62 g 水酸化ナトリウム 1.47g 10%フッ化水素酸 40 ml 本発明製品は八面体シートにマグネシウムを、また陽
イオンとしてナトリウムを含有し、a=0.62、b=6.1
2、c=4に相当し、その比表面積は237m2/gであった。
X線粉末回折パターンはヘクトライトに類似しており、
(35,06)反射ピークのd値は1.516Åであった。 実施例7 実施例2および実施例3で得られた水熱処理物の100
℃〜900℃の間の加熱処理による比表面積の変化を表2
に示す。比較としてアルミニウム架橋合成NTSMの比表面
積も示す。 表2から明らかな様にアルミニウム架橋合成NTSMでは
600℃以上の温度で急激にベット比表面積の値が小さく
なるのに対し、実施例2および実施例3の本発明製品で
それぞれ700℃および800℃まで200m2/g以上の比表面積
の値を示し、耐熱性に優れていることを示す。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.一般式 aA2/x・bMO・cF・dOH・8SiO2 (式中のa、b、c、dおよびxの値は0<a≦2、0
    <b<10、0≦c<6、0≦d<6および1≦x≦2と
    し、Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン
    およびアンモニウムイオンからなる群から選んだ少なく
    とも1個の陽イオンであり、またMはMg、Co、Ni、Zn、
    Cu、Fe、Mn、Pb、Cdなどの2価金属イオンから選んだ少
    なくとも1個の2価金属イオンである)で表わされ、ベ
    ット比表面積の値が200〜400m2/gで示される合成多孔
    体。 2.ケイ酸と2価金属イオンの均質混合液とアルカリ溶
    液より均質複合沈澱物を調製し、副生溶解質を除去した
    後、要すれば陽イオンおよびフッ素イオンを添加して得
    たスラリーを100℃ないし300℃の条件下で水熱反応せし
    め、次いで反応生成物を100℃ないし800℃で加熱処理す
    ることを特徴とし、一般式 aA2/xO・bMO・cF・d(OH)・8SiO2 (式中のa、b、c、dおよびxの値は0<a≦2、0
    <b<10、0≦c<6、0≦d<6および1≦x≦2と
    し、Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン
    およびアンモニウムイオンからなる群から選んだ少なく
    とも1個の陽イオンであり、またMはMg、Co、Ni、Zn、
    Cu、Fe、Mn、Pb、Cdなどの2価金属イオンから選んだ少
    なくとも1個の2価金属イオンである)で表わされ、ベ
    ット比表面積の値が200〜400m2/gで示される合成多孔体
    の製造方法。
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