JP5476579B2 - 2:1型3八面体合成粘土、透明粘土ゲル、コーティング粘土膜及び自立粘土膜 - Google Patents

2:1型3八面体合成粘土、透明粘土ゲル、コーティング粘土膜及び自立粘土膜 Download PDF

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本発明は、2:1型3八面体合成粘土、透明粘土ゲル、コーティング粘土膜及び自立粘土膜に関する。
ポリマーの低い耐熱性(例えば、最も高い耐熱性を有するイミド樹脂で約350℃)と低いガスバリア性を改善することを目的として、粘土を添加剤として用いるポリマー粘土ナノコンポジットの検討がなされている(例えば特許文献1、2参照)。これらのポリマー粘土ナノコンポジットは、粘土の配合率が高くなるほど耐熱性、ガスバリア性等の性能は向上する。しかし、粘土は成形性に劣るため、成形性を確保するためにはポリマー粘土ナノコンポジット中の粘土の配合率は制限される。
一方、近年、ポリマー粘土ナノコンポジットの耐熱性、ガスバリア性を超える性能を有する粘土膜が開発されている(例えば、特許文献3、4参照)。特許文献3には、粘土膜の全固形分に対して粘土を90〜100質量%含有し、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、350℃以上の高温においてもフレキシブリティーに優れ、高い耐熱性(最大600℃)とガスバリア性(ガス透過係数:3.2×10−11cm−1cmHg−1未満)を達成する粘土膜が開示されている(特許文献3参照)。また、特許文献4には、粘土の含有率が70質量%以上で高いガスバリア性(ガス透過係数:3.2×10−11cm−1cmHg−1未満)を有し、200℃以上を超える高温においても化学的に安定で、透明性を有し(全透過率80%以上)、柔軟な粘土膜が開示されている。これらの粘土膜は、ディスプレイ材料・包装材料・電子デバイス封止材料などとしての使用が期待される。
上記の粘土を主成分とする膜(粘土膜)は、粘土としてスメクタイトを使用している。スメクタイトは水中で膨潤して均一な粘土分散液になり、前記粘土分散液を塗布し、乾燥することによって粘土の層が均一に積層した膜になることが知られている(非特許文献1参照)。上記粘土膜は、粘土単独でも成膜性が高いスメクタイトを用いることで、粘土を多く含有する場合でも、粘土膜の形成が可能となる。
水等の分散媒に対するスメクタイトの膨潤性は、粘土膜形成に重要な性質である。しかし、一方で、水等への高い分散性及び膨潤性は、形成した粘土膜の耐水性を低下させる原因となる。そのため、粘土膜中のスメクタイトの含有量を増加させるほど、粘土膜の水蒸気バリア性は低下し、水中で再び分散してしまう問題がある。
この問題を解決する方法の一つとして、変性粘土を用いた粘土膜が報告されている(特許文献5参照)。前記変性粘土は、有機カチオンを30質量%未満含有し、粘土の交換性陽イオンの少なくとも50%がリチウムイオンである。変性粘土を用いた粘土膜は、加熱処理をすることによって層間のリチウムが粘土の八面体層内に移動し、層間のイオン成分が減少することにより耐水性が向上する。この耐水性の向上は、層間イオン性物質のうちリチウムイオンを50%以上にすることで顕著となる。
上記のような、リチウムイオンの粘土の八面体層内への移動による耐水性の向上は、電荷の主な発生源が八面体層であり、例えば、モンモリロナイトのような、八面体層に空隙がある2八面体粘土に特有な挙動であると報告されている(非特許文献2、3参照)。しかし、2八面体粘土は合成が難しく工業化されておらず、工業用途には主に天然の粘土が使用されている。また、天然の粘土は不純物の混入が避けられず、透明な粘土ゲル又は粘土膜を得ることが出来ない。
一方、2八面体粘土に比べて3八面体粘土は、合成温度が低い等、合成条件が比較的にマイルドであるため、透明な粘土ゲル又は粘土膜を得ることができる純度の高い3八面体粘土が工業的にも合成され、市販されている。そこで、3八面体粘土においても2八面体粘土と同様な原理で耐水性の向上が得られれば、透明で耐水性のある粘土ゲル又は粘土膜の作製が可能となる。
3八面体の粘土の一つであるスチブンサイトは八面体層のマグネシウムの一部が欠位した粘土である。従って、電荷の発生源が八面体層であり、八面体層に空隙があるため、2八面体で報告されているような原理から耐水性の向上が期待出来ると考えられる。
上記したスメクタイトが水等により膨潤する現象は、粘土の層間に水が入り込むことで起きる現象である。膨潤の度合は層間イオンの種類によって異なるが、層間に陽イオンが存在する限り水分の吸収は必ず起きる。特に、ナトリウムイオンは水の吸着力が非常に高いため、層間に水が入り込みやすく、水分に対して無限膨潤を起こす。しかし、ナトリウムイオンはカルシウムイオンと共に、天然のスメクタイトの層間イオンの体表的なイオンであり、天然粘土には必ず含まれている。また、合成粘土でも、ナトリウムが含まれてないスメクタイトは報告された例はほとんどない。
このように、ナトリウムを含有しない合成粘土の開発が行われなかった理由の一つとしては、ナトリウムの含有が問題になるような産業分野への粘土の利用がなかったことが挙げられる。また、ナトリウムが合成における粘土生成の促進剤の役割をするため、ナトリウムがないと粘土(特にスチブンサイト)の合成が困難とされる(非特許文献4参照)。
粘土を、被膜形成用コーティング液、金属材料の表面コート剤として利用する目的の場合、ナトリウムイオンは基板材料の腐食、塗膜の剥離の原因になる。そこで、ナトリウムイオン含有量を低減させた粘土合成方法として、リチウム型ヘクトライトの合成が報告され(特許文献7)、ナトリウム含有量は0.5wt%以下(一般に市販されているヘクトライトに比べて約10%の量)である合成粘土が開示されている。しかし、この方法ではシリカゾルの原料として珪酸ナトリウム水溶液を使用するため、少量ではあるが、ナトリウムの含有は避けらず、ナトリウムを完全に排除することは困難である。
ナトリウム含有量を低下させたリチウム型スメクタイトを得るもう一つの方法は、イオン交換法があげられる。粘土のイオン交換方法は幾つか挙げられるが、最も一般的に行われている方法としては、リチウムイオンが含まれた溶液にナトリウム型又はカルシウム型粘土を分散させ、粘土の層間イオンと溶液中のイオンとを交換する方法である。リチウムイオンの塩化物(例えば塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム等)を溶解した溶液に粘土を分散させ攪拌してから濾過する。この作業を何回か繰り返して層間イオンの交換を行う。交換が出来た後は繰り返し水又はアルコール洗浄を行い不純物として付着した塩を取り除く。この塩化物溶液を用いたイオン交換法は、非常に手間が掛かるにも関らず、完全なイオン交換が出来ない。さらに、洗浄し切れない塩化物の不純物の影響が残り、また、洗浄時に粘土も流失するためイオン交換度を高めるほど、純度を高めるほど粘土の収率が激減する問題がある。イオン交換樹脂を用いたイオン交換法も報告されているが(特許文献6)、層間ナトリウムイオンの15%ほどは交換できず、粘土中に残留してしまう。
米国特許第4739007号公報 特開昭51−7056号公報 特開2006−77237号公報 特開2007−63118号公報 特開2007−277078号公報 特開2007−302897号公報 特開平9−249412号公報
Clay Science 13 (2007) 159 粘土科学討論会講演要旨集31 (1987) 67 粘土科学討論会講演要旨集44 (2000) 238 鉱物学雑誌14 (1979) 170
本発明は、透明度が高く耐水性が高いコーティング粘土膜及び自立粘土膜を得ることが可能な2:1型3八面体合成粘土を提供することを目的とする。また、本発明は、透明度が高く耐水性が高いコーティング粘土膜及び自立粘土膜を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の組成を有するスチブンサイトを含むことにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記(1)〜(14)に記載の事項をその特徴とするものである。
(1)Li、Mg及びSiを含み、Li/Si=0.08〜0.17、Mg/Si=0.65〜0.72の範囲であるスチブンサイトを含む2:1型3八面体合成粘土。
(2)Naを含まない(1)に記載の2:1型3八面体合成粘土。
(3)500℃での加熱処理後の吸水率が5%未満である(1)又は(2)に記載の2:1型3八面体合成粘土。
(4)不純物としてのLiが、Li/Si<0.15である(1)〜(3)いずれか一項に記載の2:1型3八面体合成粘土。
(5)上記(1)〜(4)いずれか一項に記載の2:1型3八面体合成粘土及び分散媒として水を含み、チクソトロピー性を有する透明粘土ゲル。
(6)上記(5)に記載の透明粘土ゲルを用いてなるコーティング粘土膜。
(7)透明度が全光線透過率90%以上である(5)に記載のコーティング粘土膜。
(8)400℃以下の加熱処理後の全光線透過率が70%以上である(6)又は(7)に記載のコーティング粘土膜。
(9)加熱処理をすることによって、耐水性が向上することを特徴する(6)〜(8)いずれか一項に記載のコーティング粘土膜。
(10)上記(5)に記載の透明粘土ゲルを用いてなる自立粘土膜。
(11)透明度が全光線透過率80%以上である(10)に記載の自立粘土膜。
(12)厚さ30〜500μmを有する(10)又は(11)に記載の自立粘土膜。
(13)400℃以下の加熱処理後の全光線透過率が70%以上である(10)〜(12)いずれか一項に記載の自立粘土膜。
(14)加熱処理をすることによって、耐水性が向上することを特徴する(10)〜(13)いずれか一項に記載の自立粘土膜。
本発明によれば、透明度が高く耐水性が高いコーティング粘土膜及び自立粘土膜を得ることが可能な2:1型3八面体合成粘土を得ることが可能となる。また、本発明は、透明度が高く耐水性が高いコーティング粘土膜及び自立粘土膜を得ることが可能となる。
実施例1で得られた粘土のXRDパターンである。 (a)実施例7で得られた粘土のXRDパターンである。 (b)実施例8で得られた粘土のXRDパターンである。 (c)実施例9で得られた粘土のXRDパターンである。 実施例1で得られた自立粘土膜の写真である。 実施例1で得られた自立粘土膜の端面のSEM写真である。 実施例1で得られた自立粘土膜を400℃で3時間加熱処理した後、水の中に入れ一晩放置した後の写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の2:1型3八面体合成粘土は、Li、Mg及びSiを含み、Li/Si=0.08〜0.17、Mg/Si=0.65〜0.72の範囲であるスチブンサイトを含むことを特徴とする。また、Li/Siの値は結晶性が高く、より質の高い粘土となる観点から、0.10〜0.17であることが好ましい。
本発明の2:1型3八面体合成粘土は、Li、Mg及びSiを含むが、Siを有する一対の四面体層(四面体シート)が頂点を向かい合わせて配置し、前記一対の四面体層に挟まれるように、Mgを有する八面体層(八面体シート)位置し、層間陽イオンとしてLiを配置した構造となる。
なお、本発明におけるLi/Si及びMg/Siは下記の方法により算出した値を示す。
Li/Siは、合成原料に入れたSiの量に対して、層間イオン又は層内に入ったLiを測定し計算した。層間イオンとしてのLi量は、メチレンブルー吸着法を用いて層間のLiと交換されたメチレンブルーの量を測定し、換算した。一方、層内に入ったLiの量は合成原料に添加したLi量とICP測定で検出されたLi量の差から算出した。Mg/SiはEDX元素分析を用いて測定した。
また、本発明の2:1型3八面体合成粘土はNaを含まないことを特徴とする。Naを含まないとは、得られた粘土の層間イオンをICPによって測定した際に、検出限界値においてもNaが検出されないことであり、測定誤差程度でNaが検出されることは意図しない。2:1型3八面体合成粘土がNaを含まないことによって、層間に存在する陽イオン(層間陽イオン)はほぼ全てがリチウムイオンとなり、加熱処理をすることによって層間のリチウムイオンが粘土の八面体層内に移動し、層間陽イオン成分が減少することにより耐水性が向上する。本発明の2:1型3八面体合成粘土は、例えば、500℃、12時間の加熱をすることによって、耐水性が向上する。すなわち、具体的には、前記加熱処理を施す前の粘土を、温度40℃、湿度90%に設定した恒温高湿庫中に5時間放置した際の吸湿率と、同様の方法にて測定した、500℃、12時間の加熱処理を施した粘土の吸湿率とを比較した際に、加熱処理後の粘土の吸湿率が加熱処理前の粘土の吸湿率と比較して95%以上減少する。
耐水性が向上する加熱温度としては、350〜500℃であることが好ましい。リチウムイオンはイオン半径が小さいため、リチウムイオンが上記加熱処理によって粘土の八面体層内に移動し、固定される。この反応は非可逆的な反応であり、一旦、層内に移動したリチウムイオンは、再び粘土の層間に戻ることはなくなる。これによって、粘土の層電荷は低下し、水中で膨潤しにくくなる(耐水性が向上する)。一方、ナトリウムイオンは半径が大きいため、加熱処理を行っても八面体層内に移動することができず、上記のような粘土の層電荷変化は起こらない。このように、本発明の合成粘土は層間にナトリウムイオンが含まれず、ほぼリチウムイオンのみが存在するため、加熱処理によりほぼ全てのリチウムイオンが八面体層内に移動することにより、耐水性の高い粘土が得られるものと考えられる。
また、本発明の2:1型3八面体合成粘土は、上記粘土の構成元素としてではなく、不純物として、Li/Si<0.15含まれていてもよい。3八面体粘土の合成は、求める粘土の理論組成比に従って原料を配合し合成を行うのが一般的である。しかし、後述する本発明の2:1型3八面体合成粘土の合成方法の一例においては、理論組成比に従って原料を配合しても、理論組成の粘土の合成が出来ない場合がある。これは、本発明の2:1型3八面体合成粘土の合成方法の一例においては、粘土合成の促進剤として機能するナトリウムを含まない原料を用いるためと考えられる。本発明の2:1型3八面体合成粘土の合成方法の一例においては、層間イオンであるリチウムイオンの量を理論組成比よりも過剰にすることが好ましい。リチウムイオンが過剰の環境下においては、ナトリウムが存在しなくてもスチブンサイトを含む2:1型3八面体粘土が合成できると考えられる。
上記リチウムイオンの過剰な条件下での合成においては、合成後に過剰に存在するリチウムは粘土の構成元素としてではなく、塩の形で生成することになる。このリチウム塩は、合成後に、例えば、洗浄を行うことによって除去しても良いが、洗浄を行わなくても上記範囲内(Li/Si<0.15)であれば本発明の効果に大きく影響を与えない。一方、不純物として含まれるリチウム塩が、Li/Siで0.15以上となると、粘土合成の時粘土の結晶化が妨害される可能性がある。
なお、本発明における不純物としてのLi/Siは下記の方法により算出した値を示す。不純物としてのLi量は、添加したLi量から層間イオンとしてのLiと層内に入ったLiの量を引いた値である。層間イオンとしてのLi量は、メチレンブルー吸着法を用いて層間のLiと交換されたメチレンブルーの量を測定し、換算した。層内に入ったLiの量は合成原料に添加したLi量とICP測定で検出されたLi量の差から算出した。Li/Siは、合成原料に入れたSiの量と不純物としてのLi量の比から計算した。
本発明の2:1型3八面体合成粘土は、例えば、分散媒として水と混合することにより容易に分散し、チクソトロピー性を有する透明な粘土ゲルを形成することが可能となる。これは、層間イオンとして一価のリチウムイオンを有することに起因する。
上記粘土ゲルは、基板上に塗布し、静置乾燥することによって、粒子の配向のそろったコーティング粘土膜を形成することが可能となる。コーティング粘土膜を形成可能な基板としては、特に制限はないが、例えば、ほう珪酸ガラス、パイレックス(登録商標)、石英などのガラス類、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅などの金属類、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどのセラミック類、ポリプロフィレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナフロン(PTEF)などのプラスチック類等が挙げられる。
また、本発明のコーティング粘土膜は、透明度が全光線透過率で90%以上であることが好ましく、400℃以下の加熱処理後においてコーティング膜の全光線透過率が70%以上であることがより好ましい。
なお、コーティング粘土膜の全光線透過率は、濁度計(ヘーズメーター)によって測定することができる。
また、本発明の透明粘土ゲルは、基板上に塗布し、乾燥することによって透明な膜を形成することが可能であるが、例えば、ポリプロフィレン製の基板上に塗布し乾燥させると、乾燥後に、前記基板と形成した膜とを容易に分離することが可能であり、自立粘土膜を作製することができる。本発明の自立粘土膜は、基板から分離された状態でも、ハンドリングできる強度を有することが好ましい。本発明の自立粘土膜の厚み(膜厚)は、基板に塗布した当面粘土ゲルの濃度、透明粘土ゲルの厚み等によって適宜調整することが可能であり、30〜500μmの自立粘土膜の作製が可能であり、ハンドリング強度、透明度等の観点からは30〜150μmの自立粘土膜が好ましい。
また、本発明の自立粘土膜は、透明度が全光線透過率で80%以上であることが好ましく、400℃以下の加熱処理後において自立粘土膜の全光線透過率が70%以上であることがより好ましい。
本発明のコーティング粘土膜及び自立粘土膜は、上記2:1型3八面体合成粘土と同様に耐水性が向上することが好ましい。
次に、本発明の2:1型3八面体合成粘土の合成方法の一例を説明する。本発明の2:1型3八面体合成粘土は、水熱法により合成することができる。以下、水熱法の各工程について詳細に説明する。
(第1工程)
粘土のシリカ源となるケイ素化合物及びマグネシウム源となるマグネシウム化合物を含有する水溶液を調製する。前記水溶液は、例えば、それぞれの化合物を含有する水溶液を常温(15〜25℃)にて混合することによって調整することができる。
ケイ素化合物を含有する水溶液としては、例えば、コロイダルシリカ、アモルファスシリカ、珪酸エチル、二酸化ケイ素等を含有する水溶液または非結晶質シリカが挙げられる。これらは、一種又は二種以上を組み合わせて用いても構わない。一般的には、水ガラスがシリカ源となるが、水ガラスは酸化ナトリウムを9〜10%程度含有するため、本発明の効果が得られにくい傾向があり好ましくない。本発明の粘土の合成においては、原料の段階からナトリウムを含有しない材料を用いることが好ましい。ケイ素化合物を含有する水溶液を調整する際には、pHを5以下とすることが好ましく、必要に応じて、硝酸、塩酸、硫酸等の鉱酸によって調整してもよい。
また、マグネシウム化合物を含有する水溶液としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等を含有する水溶液が挙げられる。これらは、一種又は二種以上を組み合わせて用いても構わない。
次に、ケイ素化合物及びマグネシウム化合物を含有する水溶液に、常温(15〜25℃)にてアルカリ水溶液を滴下することにより均質複合沈殿物を含む分散液を得る。
アルカリ水溶液としては、例えば、アンモニア水、水酸化リチウム水溶液等が挙げられるが、水酸化リチウム水溶液にはリチウムイオンが含まれるため、粘土の層間イオンの量に影響を及ぼす可能性があるため、アンモニア水を用いることが好ましい。
アルカリ水溶液の滴下は、撹拌をしながらゆっくりとアルカリ水溶液を混合し、全体に均一な状態とすることが好ましい。また、アルカリ水溶液の滴下は、pHが10以上になるまで行うことが好ましい。滴下終了後、必要に応じて、数時間放置することによって、均質複合沈殿物の生成を充分なものとすることができる。
得られた均質複合沈殿物は、水洗浄を繰り返し行うことにより、NH 、NO -、Cl等の副生電解質を充分に除去することが好ましく、例えば、アルカリ水溶液としてアンモニア水を用いた場合は、アンモニア臭が無くなるまで水洗浄を繰り返すことが好ましい。水洗浄は、均質複合沈殿物へ蒸留水を添加後、振盪し、固液分離を行うことが挙げられる。洗浄後の均質複合沈殿物は、水と混合して次工程に用いる分散液とすることができる。
(第2工程)
第1工程にて得られた均質複合沈殿物の分散液に、リチウムイオン源となるリチウム化合物を含有する水溶液を混合し出発原料スラリーを得る。
リチウム化合物の水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、水素化リチウム、過酸化リチウム等を含有する水溶液が挙げられる。これらは、一種又は二種以上を組み合わせて用いても構わない。リチウム化合物の添加量は、シリカ源として用いられるケイ素化合物中のSiを4とした場合、リチウム化合物中のLiが、(0.45〜1.20であることが好ましい。Liの添加量が、前記範囲内であれば、後述する第3の工程において洗浄を行わずとも、目的の粘土が得られやすい傾向がある。
(第3の工程)
第3の工程は、第2の工程で得られた出発原料スラリーの水熱反応を行う。この工程では、出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み、水熱反応をさせる。水熱反応の温度は、100〜300℃であることが好ましい。水熱反応の時間は、24時間以上であることが好ましい。出発原料スラリーをオートクレーブに仕込む前に、また、水熱反応終了後に、必要に応じて、出発原料スラリー中に不純物として含まれるリチウム塩を洗浄することも可能である。
(第4の工程)
第3の工程の水熱反応後、オートクレーブ内の内容物を取り出し、15〜150℃の温度で乾燥、適宜粉砕することにより、本発明の2:1型3八面体合成粘土を得ることができる。
得られた粘土は、EDX、ICP、XRD等の測定を行うことにより、スチブンサイトを含む3八面体粘土であることが確認できる。
具体的には、EDXによって、粘土のSiとMgの比率又は不純物成分を確認することができる。
ICPによって、層間イオンの種類・量又は層間・層内のLiイオン量を確認することができる。
XRDによって、粘土の種類、配向性、結晶化度、結晶系不純物を確認することができる。
上記の合成方法によって、得られた2:1型3八面体合成粘土は、上述のように、水等の分散媒と混合することでチクソトロピー性を有する透明粘土ゲルを作製することができる。また、前記透明粘土ゲルを基板に塗布し、乾燥することによってコーティング粘土膜を得ることができ、基板から剥がすことによって自立粘土膜を得ることができる。本発明のコーティング粘土膜及び自立粘土膜は、高い透明性を有し、耐水性に優れたものとなる。
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
コロイダルシリカ(Ludox TM 50、SigmaAldrich社製)60gと蒸留水120mlとを混合した分散液に硝酸20mlを添加した。これに硝酸マグネシウム(一級試薬)91gと蒸留水128mlとを混合した溶液を入れて攪拌しながら、アンモニア水(28%水溶液)をゆっくりと滴下した。pH10になったところで滴下を止め、室温で一晩熟成させ、均一複合沈殿を得た。その後、蒸留水の添加、振盪、固液分離の過程による水洗浄をアンモニア臭がなくなるまで繰り返した。充分に洗浄を行った均一複合沈殿の分散液に、10wt%の水酸化リチウム水溶液を25.4ml添加し、よく混合し、出発原料スラリーを得た。出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み、200℃で48時間水熱反応させた。冷却後、オートクレーブ内の反応生成物を取り出し、60℃で乾燥した後、粉砕し、2:1型3八面体合成粘土を得た。得られた粘土を用いて、下記各種評価を行った。
[2:1型3八面体合成粘土の確認]
XRDのパターン(Bruker/MacScience M21X)から目的の粘土が生成しているかを確認した。得られた粘土の水分散液(2.5wt%)をガラス基板上に滴下し、乾燥してできた粘土膜のXRDパターンを測定した。目的の粘土が得られている場合、図1に示すようなd(001)ピークが2θ=6℃付近に現れるスメクタイトのパターンを示す。このd(001)ピークの有無によって目的の粘土が得られているかどうかを判断した。結果を表1に示す。
[Li/Si及びMg/Siの算出]
下記の方法により、Li/Si及びMg/Siの算出を行った。
Li/Siは、合成原料に入れたSiの量に対して、層間イオン又は層内に入ったLiを測定し計算した。
層間イオンとしてのLi量は、メチレンブルー吸着法を用いて層間のLiと交換されたメチレンブルーの量を測定し、換算した。具体的には、得られた粘土を110℃で1時間乾燥し0.02gを秤量し、濃度1.5×10−6mol/mlのメチレンブルー水溶液30ml中に添加し、撹拌しながら3日間室温にて放置した。その後、孔径0.45μmのフィルターを用いて、粘土と溶液を分離した。分離した溶液0.1mlに蒸留水3mlを添加し希釈した後、希釈溶液のメチレンブルー濃度を測定した。濃度の測定は、分光光度計((株)島津製作所製 MPS−2450)を用い波長665nmで測定し、粘土100gあたりのメチレンブルー吸着量を算出した。ここで算出されたメチレンブルー吸着量を、層間イオンとして存在するLiの量とした。
一方、層内に入ったLiの量は合成原料に添加したLi量とICP測定で検出されたLi量の差から算出した。具体的には、得られた粘土0.1mgを10mlの酢酸アンモニウム溶液(1N)に入れ、100rpmで一晩振とうした。その後、上澄みを孔径0.45μmのフィルターに通して、ICP分析(ICP発光分析装置(セイコー電子(株)製 SPS−1500R))を行った。
Mg/SiはEDX元素分析((株)日立製作所製 S−800)を用いて測定した。
結果を表1に示す。
[不純物としてのLi/Siの算出]
下記の方法により、Li/Siの算出を行った。
不純物としてのLi量は、添加したLi量から層間イオンとしてのLiと層内に入ったLiの量を引いた値である。層間イオンとしてのLi量は、上記と同様にメチレンブルー吸着法を用いて層間のLiと交換されたメチレンブルーの量を測定し、換算した。層内に入ったLiの量は上記と同様に合成原料に添加したLi量とICP測定で検出されたLi量の差から算出した。Li/Siは、合成原料に入れたSiの量と不純物としてのLi量の比から計算した。結果を表1に示す。
[Na含有量]
粘土に含まれているナトリウムイオン量を測定した。酢酸アンモニウム溶液(1N)に得られた粘土0.1mgを入れ、一晩100rpmで振とうした。その後、上澄みをフィルター(気孔0.45μm)に掛けてから、ICP分析(ICP発光分光分析装置(セイコー電子社製/SPS−1500R)を行った。結果を表1に示した。上記装置の検出限界値以下の場合はN.D.と記載した。
[水分散性(透明粘土ゲルの調製)]
得られた粘土を、蒸留水に分散させ、2.5wt%の透明粘土ゲルを得た。水によく分散し、チクソトロピー性を有することが確認された場合は○、分散後、沈殿物の生成が確認された場合は×として水分散性の判断をした。結果を表1に示す。
[成膜性(自立粘土膜の調製)]
上記水分散性評価で得られた透明粘土ゲルをポリプロフィレン容器の中に注ぎ、室温にて自然乾燥した。乾燥した粘土膜を、容器から物理的に剥離することにより、自立粘土膜を得た。得られた自立粘土膜の写真を図3に、その自立粘土膜の端面のSEM写真を図4に示した。なお、SEM写真はHITACHI製/S−800を使用した。成膜性の評価は目視にて下記の基準にて行った。結果を表1に示す。
ハンドリング可能な自立粘土膜:○
膜形成はするが、収縮が大きく塊の状態:△
膜形成せず粉末状態:×
[透明度]
上記成膜性の評価で得られた自立粘土膜を用いて透明度を測定した。透明度は、濁度計(日本電色工業株式会社製/NDH5000)における全光線透過率の測定により評価した。また、水分散性評価で得られた透明粘土膜をスライドガラス上に塗布し、乾燥して得られたコーティング粘土膜を用いて同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[耐水性(水中への溶解性)]
成膜性の評価で得られた自立粘土膜を用いて、耐水性の評価を行った。得られた自立粘土膜を400℃で3時間加熱処理した後、水の中に入れ一晩放置し、自立粘土膜が溶けるかどうかを目視にて判断した。水中への溶解が見られない場合を○とし、水中への溶解が見られた場合は×として評価した。結果を表1に示す。
[耐水性(吸湿率変化)]
上記成膜性の評価で得られた自立粘土膜を用いて加熱処理前後の吸湿率を測定した。得られた自立粘土膜を500℃で12時間加熱した後、温度40℃、湿度90%に設定した恒温高湿庫中に5時間放置した。吸水率は、500℃での加熱処理後の自立粘土膜の質量と、恒温高湿庫への放置後の自立粘土膜の質量とを測定し、その質量変化より算出した。
(実施例2)
10wt%水酸化リチウム水溶液を30.8ml添加し、水熱合成を150℃で48時間行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例3)
10wt%水酸化リチウム水溶液を30.8ml添加し、水熱合成を200℃で24時間行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例4)
10wt%水酸化リチウム水溶液を30.8ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例5)
10wt%水酸化リチウム水溶液を33.2ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
10wt%水酸化リチウム水溶液を42.2ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
10wt%水酸化リチウム水溶液を50.8ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
10wt%水酸化リチウム水溶液を58.9ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
10wt%水酸化リチウム水溶液を58.9ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行い、水熱合成後に生成した反応生成物を取り出し、水洗浄を5回繰り返し行った以外は実施例1と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例10)
アモルファスシリカ(Cab−O−Sil M5、Cabot社製)60gと蒸留水600mlとを混合した分散液に硝酸40mlを添加した。これに硝酸マグネシウム(一級試薬)182gと蒸留水256mlとを混合した溶液を入れて攪拌しながら、アンモニア水(28%水溶液)をゆっくりと滴下した。pH10になったところで滴下を止め、室温で一晩熟成させ、均一複合沈殿を得た。その後、蒸留水の添加、振盪、固液分離の過程による水洗浄をアンモニア臭がなくなるまで繰り返した。充分に洗浄を行った均一複合沈殿の分散液に、10wt%の水酸化リチウム水溶液を58.0ml添加し、よく混合し、出発原料スラリーを得た。出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み,200℃で48時間水熱反応させた。冷却後、オートクレーブ内の反応生成物を取り出し、60℃で乾燥した後、粉砕した。評価は実施例1と同様に行った。
(実施例11)
10wt%水酸化リチウム水溶液を67.0ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例10と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例12)
10wt%水酸化リチウム水溶液を73.2ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例10と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例13)
10wt%水酸化リチウム水溶液を95.6ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は実施例10と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。
(実施例14)
硝酸マグネシウム(一級試薬)182gと蒸留水182mlとを混合した溶液に珪酸エチル208gを入れて攪拌しながら、アンモニア水(28%水溶液)をゆっくりと滴下した。pH10になったところで滴下を止め、室温で一晩熟成させ、均一複合沈殿を得た。その後、蒸留水の添加、振盪、固液分離の過程による水洗浄をアンモニア臭がなくなるまで繰り返した。充分に洗浄を行った均一複合沈殿の分散液に、10wt%の水酸化リチウム水溶液を61.6ml添加し、よく混合し、出発原料スラリーを得た。出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み,200℃で48時間水熱反応させた。冷却後、オートクレーブ内の反応生成物を取り出し、60℃で乾燥した後、粉砕した。評価は実施例1と同様に行った。
(実施例15)
二酸化珪素n水和物71gと蒸留水600mlとを混合した分散液に硝酸40mlを添加した。これに硝酸マグネシウム(一級試薬)182gと蒸留水256mlとを混合した溶液を入れて攪拌しながら、アンモニア水(28%水溶液)をゆっくりと滴下した。pH10になったところで滴下を止め、室温で一晩熟成させ、均一複合沈殿を得た。その後、蒸留水の添加、振盪、固液分離の過程による水洗浄をアンモニア臭がなくなるまで繰り返した。充分に洗浄を行った均一複合沈殿の分散液に、10wt%の水酸化リチウム水溶液を61.6ml添加し、よく混合し、出発原料スラリーを得た。出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み,200℃で48時間水熱反応させた。冷却後、オートクレーブ内の反応生成物を取り出し、60℃で乾燥した後、粉砕した。評価は実施例1と同様に行った。
(比較例1)
3号水ガラス(SiO:28%、NaO:9%、小宗化学薬品社製)200gと蒸留水1000mlとを混合した分散液に硝酸70mlを添加した。これに硝酸マグネシウム(一級試薬)182gと蒸留水182mlとを混合した溶液を入れて攪拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液(20wt%水溶液)をゆっくりと滴下した。pH10になったところで滴下を止め、室温で一晩熟成させ、均一複合沈殿を得た。その後、蒸留水の添加、振盪、固液分離の過程による水洗浄を繰り返した。得られた出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み,200℃で48時間水熱反応させた。冷却後、オートクレーブ内の反応生成物を取り出し、60℃で乾燥した後、粉砕した。評価は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
コロイダルシリカ(Ludox TM 50、Sigma Aldrich社製)60gと蒸留水120mlとを混合した分散液に硝酸20mlを添加した。これに硝酸マグネシウム(一級試薬)91gと蒸留水128mlとを混合した溶液を入れて攪拌しながら、アンモニア水(28%水溶液)をゆっくりと滴下した。pH10になったところで滴下を止め、室温で一晩熟成させ、均一複合沈殿を得た。その後、蒸留水の添加、振盪、固液分離の過程による水洗浄をアンモニア臭がなくなるまで繰り返した。充分に洗浄を行った均一複合沈殿の分散液に、10wt%の水酸化リチウム水溶液を16.8ml添加し、よく混合し、出発原料スラリーを得た。出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み,200℃で48時間水熱反応させた。冷却後、オートクレーブ内の反応生成物を取り出し、60℃で乾燥した後、粉砕した。比較例2においては粘土が得られなかった。
(比較例3)
10wt%水酸化リチウム水溶液を84.3ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は比較例2と同様に合成を行い、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
アモルファスシリカ(Cab−O−Sil M5、Cabot社製)60gと蒸留水600mlとを混合した分散液に硝酸40mlを添加した。これに硝酸マグネシウム(一級試薬)182gと蒸留水256mlとを混合した溶液を入れて攪拌しながら、アンモニア水(28%水溶液)をゆっくりと滴下した。pH10になったところで滴下を止め、室温で一晩熟成させ、均一複合沈殿を得た。その後、蒸留水の添加、振盪、固液分離の過程による水洗浄をアンモニア臭がなくなるまで繰り返した。充分に洗浄を行った均一複合沈殿の分散液に、10wt%の水酸化リチウム水溶液を19.4ml添加し、よく混合し、出発原料スラリーを得た。出発原料スラリーをオートクレーブに仕込み,200℃で48時間水熱反応させた。冷却後、オートクレーブ内の反応生成物を取り出し、60℃で乾燥した後、粉砕した。比較例4においては粘土が得られなかった。
(比較例5)
10wt%水酸化リチウム水溶液を38.6ml添加し、水熱合成を200℃で48時間行った以外は比較例4と同様に合成を行った。
実施例で得られた粘土は、図1に示すようなd(001)ピークが2θ=6°付近に現れるスメクタイトのパターンを示し、目的の2:1型3八面体合成粘土が得られたことが分かった。実施例7、8の場合、上記ピーク以外に、リチウムイオンに起因する鋭いピークが現れた(図2(a)(b))。また、このリチウムイオンに起因するピークは、水熱反応後に洗浄を行った実施例9では消失したことから(図2(c))、過剰のリチウムイオンが共存していてもある範囲であれば、粘土の特性に影響を与えず、また、これは、合成後の洗浄によって除去が可能であることが示された。
実施例でられた粘土は、水分散性評価において、チクソトロピー性を有する透明なゲルが得られた。一方、比較例2〜5の粘土は、水分散性評価において、粘土の沈殿が見られた。
実施例で得られた粘土は、成膜性の評価において、透明な粘土膜が形成し、図4に示すような規則的な積層構造となった。一方、比較例2〜5の粘土は、成膜性評価において、乾燥後に、白い粉末状、又は、乾燥中に収縮し厚みのある白い塊となった。
実施例で得られた粘土は、耐水性の評価において、水に溶けることなく、形状を維持していた。一方、比較例1の粘土は、水に溶解し、耐水性は見られなかった。
実施例2〜4では、本発明の本発明の2:1型3八面体合成粘土の合成方法の一例における好ましいLi添加量の範囲内で水熱法の条件(水熱反応温度、水熱反応時間)を変化させたが、他の実施例と同等の水分散性、成膜性を有する粘土が合成でき、他の実施例と同等の透明性及び耐水性を有するコーティング粘土膜及び自立粘土膜が形成できた。
実施例10〜15では、本発明の本発明の2:1型3八面体合成粘土の合成方法の一例における好ましいLi添加量の範囲内で、リチウムイオン源となるリチウム化合物として、アモルファスシリカ、珪酸エチル及び二酸化珪素n水和物を用いて合成を行った。その結果、コロイダルシリカを用いた場合と同等の水分散性、成膜性を有する粘土が合成でき、他の実施例と同等の透明性及び耐水性を有するコーティング粘土膜及び自立粘土膜が得られた。

Claims (11)

  1. Li、Mg及びSiを含み、Naを含まず、原子比でLi/Si=0.08〜0.17、Mg/Si=0.65〜0.72の範囲であるスチブンサイトを含み、
    前記Li/SiにおけるLiが、層間イオン又は層内に入ったLiである2:1型3八面体合成粘土。
  2. 500℃での加熱処理後の吸水率が5%未満である請求項1に記載の2:1型3八面体合成粘土。
  3. 不純物としてのLiが、原子比でLi/Si<0.15である請求項1又は2に記載の2:1型3八面体合成粘土。
  4. 請求項1〜いずれか一項に記載の2:1型3八面体合成粘土及び分散媒として水を含み、チクソトロピー性を有する透明粘土ゲル。
  5. 請求項に記載の透明粘土ゲルを用いてなるコーティング粘土膜。
  6. 加熱処理をすることによって、耐水性が向上することを特徴する請求項に記載のコーティング粘土膜。
  7. 請求項に記載の透明粘土ゲルを用いてなる自立粘土膜。
  8. 厚さ30〜500μmを有する請求項に記載の自立粘土膜。
  9. 透明度が全光線透過率80%以上である請求項8に記載の自立粘土膜。
  10. 400℃以下の加熱処理後の全光線透過率が70%以上である請求項8又は9に記載の自立粘土膜。
  11. 加熱処理をすることによって、耐水性が向上することを特徴する請求項10いずれか一項に記載の自立粘土膜。
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