JP2979141B2 - 合成含鉄膨潤性ケイ酸塩およびその製造方法 - Google Patents

合成含鉄膨潤性ケイ酸塩およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規の含鉄膨潤性
ケイ酸塩およびその製造方法に関するものである。更に
詳しく言えば、水中で卓越した膨潤能、分散性あるいは
ゲル形成能を示し、フィルム形成能あるいは高い陽イオ
ン交換能を有する新規の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩および
このものを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】2-八面体型スメクタイトは2枚のシリカ
四面体シートが1枚のアルミニウム八面体シートを間に
はさんだ層構造を有する膨潤性アルミノケイ酸塩であ
る。八面体シートの3価のアルミニウムの一部分が2価の
マグネシウムと置換することによって層電荷が発現する
モンモリロナイトと四面体シートの4個のシリコンの一
部分が3価アルミニウムと置換することによって層電荷
が発現するバイデライトの2種類に大別されている(例
えば Crystal Structure of Clay Minerals and Their
X-ray Identification, Edited by G.W. Brindley and
G. Brown, Mineralogical Society, 169-176頁、1980
年)。
【0003】モンモリロナイトは米国、日本など世界各
地で産出し、層電荷より発現するイオン交換能、インタ
ーカレーション機能、膨潤性、水中でのゾル・ゲル特性
など特異な性質を有しており、陶磁器原料として用いら
れるカオリナイトなど他の粘土鉱物とは異なり、ボーリ
ング泥水、鋳物砂、有機スメクタイトなど特殊な工業的
用途に用いられている。
【0004】天然産のモンモリロナイトには通常不純物
化学成分として3価鉄が含有されており、八面体シート
のアルミニウムと置換していることが多い。世界各地か
ら産出した12個のモンモリロナイトの八面体シート中で
のアルミニウムと3価鉄に占める3価鉄の割合 (Fe(III)/
Al+Fe(III))は0.3〜22.8 %の間にあり、平均10.1 %であ
った。この様に天然産のモンモリロナイトは3価鉄を含
有していることが多いが、3価鉄の割合が25%以下のもの
が通常モンモリロナイトと呼ばれている(Chemistry of
Clays and Clay Minerals, Edited by A.C.D. Newman,
John Wiley& Sons, 49-51頁、1987年)。
【0005】更に多くの3価鉄を含有するモンモリロナ
イトの産出は非常に少なく、オーストラリアおよびドイ
ツの2試料が記載されており、Fe(III)/Al+Fe(III)の割
合はそれぞれ98.6 %および76.6 %と3価鉄の含有率が非
常に高く、鉄リッチモンモリロナイトと呼ばれている
(同上、52-54頁、1987年)。これらの鉄リッチモンモ
リロナイトの工学的特性はほとんど知られていない。
【0006】原子力発電所の使用済み核燃料から出る高
レベル放射性廃棄物の有力な方法として、高レベル放射
性廃棄物をガラス固化体とし、安定な地層中に埋め、生
物圏から隔離する方法が想定されている。その際、ガラ
ス固化体周辺に人工バリア−と呼ばれる幾重もの障壁の
設置が予定されている。モンモリロナイトを含むベント
ナイトも緩衝材として候補材料となっている。モンモリ
ロナイトの期待される役割は膨潤性を利用した止水作用
と水がガラス固化体に到達した後、水中に溶出した半減
期の長いセシウム137とストロンチウム90の吸着・固定
作用である。地層中では緩衝材は100℃以上の水熱条件
となり、更に還元環境となることが予期されている。
【0007】モンモリロナイトなど2-八面体型スメクタ
イトの八面体シートに3価鉄が多く含有するものは還元
環境下の100℃以上の水熱条件で3価鉄が2価鉄になり、
その結果八面体シートの陰電荷量が増加し、セシウム固
定量を増大させることが知られている(特許第2500
322号)。そのため、鉄リッチモンモリロナイトも高
レベル放射性廃棄物処分用緩衝材として有力な材料と考
えられるが、世界中でも産出は少なく、日本ではほとん
ど産出は知られていない。将来、大量に鉄モンモリロナ
イトなど鉄含有膨潤性ケイ酸塩を材料として用いるため
には、高性能の鉄含有膨潤性ケイ酸塩およびその安価な
製造方法の開発が期待されている。
【0008】含鉄層状ケイ酸塩の合成研究としては、Fe
として2価鉄を用い、Si-Fe(II)系を酸化状態にして150
℃で含鉄層状ケイ酸塩を合成しているが、生成物は不純
物を含むものであった。得られた含鉄層状ケイ酸塩のa
b面の大きさは9nmでかなり小さいことが報告されてい
る(A. Decarreau, D. Bonnin, D. Badaut-Trauth, R.
County and P. Kaiser, Clay Minerals, 22, 207-223,
1987)。Si-Fe-Mg系での合成研究は報告されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は天然ではその
産出が少ない鉄リッチモンモリロナイトに類似した化学
組成および構造を有する新規の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩
およびその製造方法を提供することを目的としてなされ
たものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは含鉄膨潤性
ケイ酸塩を工業材料として応用するために鋭意研究を重
ねた結果、新規物質である合成含鉄膨潤性ケイ酸塩およ
びその製造方法の発明をなすに至った。すなわち、本発
明は水中で分散して卓越したゲル形成能を示し、高い陽
イオン交換能を有する合成含鉄膨潤性ケイ酸塩およびそ
の製造方法を提供するものである。
【0011】すなわち、本発明は基本構造が、一般式 Ac+ (a+3b)/c (Fe4-a-b Mgab)Si8O20(OH)4 (式中、a,b及びcは、0<a<2、0≦b<0.5及び
1≦c≦2を満足する数を示し、 Feは3価鉄であり、□
は八面体シートに占める陽イオンの空孔を示し、及びA
はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、水素
イオン及びアンモニウムイオンからなる群から選ばれる
少なくとも一種の陽イオンを示す。) で表わされる合
成含鉄膨潤性ケイ酸塩を提供するものである。
【0012】本発明の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩は膨潤性
を有し、水中で分散し、チクソトロピックなゲル特性を
示す。またAで示される層間の陽イオンは水中で他の陽
イオンとイオン交換でき、たとえばセシウムと置換して
構造中のヘキサゴナルホールへ固定化することもでき
る。この陽イオン交換能はカチオン交換するメチレンブ
ルー吸着量などを測定することによって知ることができ
る。一般に陽イオン交換容量が低い値を示す2-八面体型
スメクタイトは膨潤性が弱くなり、更に水中でも分散せ
ず、沈澱する傾向が認められ、0.4 meq・g-1以下のもの
は特にその傾向が著しい。本発明の合成含鉄膨潤性ケイ
酸塩の陽イオン交換能は0.4〜1.3 meq・g-1であるのが望
ましく、0.7〜1.3 meq・g-1であるのが更に望ましい。A
は水熱合成用スラリーに添加した陽イオンで決定され、
たとえば水酸化ナトリウムを用いた場合はナトリウムイ
オンとなる。
【0013】本発明によれば、一般式の記載に従って定
められた割合にケイ素、3価鉄およびマグネシウムの複
合含水酸化物を調製し、濾過水洗によって副生塩を除去
した後、陽イオンや水を添加してスラリーのpHを11〜1
2.7に調整するのが望ましく、12.0〜12.5であるのが最
も望ましい。これらのスラリーを100〜300℃の条件下で
水熱反応を行い、必要に応じて乾燥した後粉砕すること
によって本発明製品を得ることができる。用途によって
は乾燥・粉砕せず本発明製品として用いることもでき
る。
【0014】ケイ素、3価鉄とマグネシウムの酸性均質
溶液とアルカリ水溶液を混合することによってSi-Fe-Mg
複合含水酸化物を得ることができる。pHが高くなると、
ヘマタイトなどの不純物の核形成が起こる可能性が高く
なる。また逆にpHが低くなるとマグネシウムが沈澱しが
たくなる。沈澱pHは6〜11が好ましいが、最も好ましい
沈澱pHは8〜10である。
【0015】Si-Fe-Mg複合含水酸化物を用いて水熱合成
に用いるスラリーを作製する際、陽イオン水酸化物の水
溶液を添加してスラリーのpHを調整する。pHが12.7以上
になるとアクマイトあるいは含水酸化鉄が不純物として
生成しやすくなる。またpHが9以下の条件下では非晶質
物質が生成し、あるいはpH9.1〜10.9では3価鉄の錯イオ
ン溶液相となり、固体生成物は得られなくなる。従って
スラリーのpHは11〜12.7が好ましく、最も好ましくはpH
12.0〜12.5に調整するのが良い。
【0016】水熱処理に用いられるスラリーにおいて複
合含水酸化物と添加する水溶液の重量固液比は、同一容
器で反応せしめたとき生成量の割合を多くするため、複
合含水酸化物が分散する程度に小さい値であることが好
ましいが、通常0.1〜10の範囲で選ぶことができる。
【0017】上記スラリーは100〜300℃で水熱処理して
合成含鉄膨潤性ケイ酸塩を生成させることができる。得
られた生成物を固液分離し、水洗し、必要に応じて乾燥
・粉砕して本発明製品が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の物質は一般式 Ac+ (a+3b)/c (Fe4-a-b Mgab)Si8O20(OH)4 (式中、a,bおよびcは、0<a<2、0≦b<0.5及
び1≦c≦2を満足する数を示し、 Feは3価鉄であり、
□は八面体シートに占める陽イオンの空孔を示し、及び
Aはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、水
素イオン及びアンモニウムイオンからなる群から選ばれ
る少なくとも一種の陽イオンを示す。)で表わされる合
成含鉄膨潤性ケイ酸塩である。
【0019】前記一般式においてAは陽イオンであり、
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、水素イ
オン及びアンモニウムイオンから選ばれた少なくとも一
種の陽イオンである。ここでアルカリ金属イオンとして
は、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウ
ムイオンなどが、アルカリ土類金属イオンとしては、例
えばカルシウムイオン、バリウムイオン、マグネシウム
イオン、ストロンチウムイオンなどが挙げられる。この
Aで示される陽イオンは1種類含まれていても良いし、2
種類以上含まれていても良いが、アルカリ金属イオンあ
るいはアンモニウムイオンが好ましく、特にナトリウム
イオンが好適に用いられうる。
【0020】更に、一般式においてa,bおよびcは、
0<a<2、0≦b<0.5及び1≦c≦2の関係を満た
す数である。
【0021】本発明においては前記一般式におけるaと
cの値を設定することによってケイ素、3価鉄、マグネ
シウムおよびアルカリ金属イオンなどの陽イオンから成
る組成を設定することができる。八面体シートの陽イオ
ンの空孔を示すbの値はあらかじめ設計することもでき
るが、合成条件によって変動する場合が多い。
【0022】本発明の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩の製造方
法については前記の性状を有する合成含鉄膨潤性ケイ酸
塩が得られる方法であれば良く、特に制限はないが、以
下に示す本発明方法に従えば、所望の合成含鉄ケイ酸塩
を効率よく製造することができる。
【0023】本発明方法においては、第1工程で目的の
合成含鉄膨潤性ケイ酸塩の組成になるような割合のケイ
素、3価鉄及びマグネシウムを含む複合含水酸化物を調
製する。この複合含水酸化物の調製方法として、例えば
蒸留水に高濃度鉱酸を加えた後、3価鉄塩試薬とマグネ
シウム塩試薬を設計組成になるように所定量加えて、攪
拌し、Fe(III)-Mg酸性均質混合液を得る。このFe(III)-
Mg酸性均質混合液を攪拌しながら、例えば珪酸ナトリウ
ム水溶液を少量ずつ添加して、Si-Fe(III)-Mg酸性均質
混合液を作製する。珪酸ナトリウム水溶液を添加する際
に沈澱が生じない様にするため、Fe(III)-Mg酸性均質混
合液のpHを3以下、好ましくはpH2以下になる様に所定量
の鉱酸を加える。高濃度鉱酸は珪酸ナトリウム水溶液に
加えてから混合しても良い。
【0024】3価鉄塩試薬としては、例えば塩化鉄(III)
六水和物、硫酸鉄(III)n水和物、硝酸鉄(III)九水和
物、硫酸アンモニウム鉄(III)12水和物などの試薬に代
表される塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、硫酸アンモニウム
塩、炭酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩などを用いることが
できる。マグネシウム塩としては例えば塩化マグネシウ
ム六水和物、硫酸マグネシウム七水和物、硫酸マグネシ
ウム無水、硝酸マグネシウム六水和物などに代表される
塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、過塩素
酸塩などを用いることができる。ケイ酸ナトリウムとし
ては、一般に市販されている1号ないし3号水ガラス及び
メタケイ酸ナトリウムなどが好ましく用いられる。また
鉱酸としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸などを用いるこ
とができる。
【0025】次にSi-Fe(III)-Mg酸性均質溶液にアルカ
リ溶液を添加して、徐々にpHを上げてSi-Fe(III)-Mg複
合含水酸化物の沈澱を得る。沈澱pHは6〜11が好ましい
が、最も好ましいpHは8〜10である。
【0026】生成したSi-Fe(III)-Mg複合含水酸化物を
洗浄して副生塩を除去し、濾過した後、得られた複合含
水酸化物を出発原料として用いる。
【0027】次の第2工程では、第1工程で得られたSi-F
e(III)-Mg複合含水酸化物と陽イオンあるいは水を混合
して出発原料スラリーを調製する。陽イオンとしては、
例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、
アンモニウムイオンなどを用いることができ、好ましく
はナトリウムイオンやアンモニウムイオンである。これ
らは陽イオン水酸化物の水溶液であるのが好ましく、例
えば水酸化ナトリウム水溶液、アンモニウム水溶液、水
酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などとして
添加するのが望ましい。必要であれば更に水道水や蒸留
水を添加することもできる。陽イオン水酸化物例えば水
酸化ナトリウム水溶液の添加量はスラリーのpHが11〜1
2.7になるのが望ましく、好ましくはpH12.0〜12.5にな
る様に調製する。スラリー中の複合含水酸化物と添加す
る水道水や陽イオン水酸化物水溶液の添加量で示される
重量固液比が最終的に0.1〜10になる様に、更に好まし
くは3〜10になる様に添加水量を調節するのが望まし
い。
【0028】前記の条件で調製した原料スラリーをテフ
ロン内筒型密閉容器に入れ、オーブン内で100〜300℃、
好ましくは150〜250℃の条件下で水熱処理を行うことが
できる。水熱処理はオートクレーブを用いて行うことも
できる。水熱処理中において容器内を特に攪拌する必要
はないが、攪拌するのは一向に差し支えない。水熱処理
時間は24時間程度であれば良好な特性の発明製品が得ら
れるが、処理時間を長くすることは一向に差し支えな
い。
【0029】第3工程においては、第2工程の水熱反応終
了後、反応容器から黄褐色を呈したゲル状の反応生成物
を取り出し、200℃以下、好ましくは50〜120℃で乾燥
し、粉砕することにより目的の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩
が得られる。反応生成物は特に濾過、水洗する必要はな
いが、水洗することは一向に差し支えない。乾燥は通常
の乾燥器を用いて乾燥することができ、噴霧乾燥法、真
空凍結乾燥法などを用いて乾燥することもできる。ゲル
化材として用いる場合など用途によっては乾燥せずその
まま発明製品として用いることもできる。乾燥処理後
は、必要に応じ粉砕処理を施しても良い。なお、噴霧乾
燥法を採用すれば、粉砕処理は必要ない。
【0030】本発明で得られる合成含鉄膨潤性ケイ酸塩
は、2-八面体型スメクタイトのモンモリロナイトに類似
した構造を有する。
【0031】本発明の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩は例えば
X線回折、化学分析、陽イオン交換容量測定、電子顕微
鏡観察、赤外線吸収スペクトル、X線光電子分光スペク
トル、示差熱分析、分散水溶液の粘性特性などによって
評価することができる。
【0032】実施例 次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本
発明は、これらの例によって何ら限定されるものではな
い。
【0033】実施例1 500mlのビーカーに水200mlを入れ、3号水ガラス(SiO2:2
8 wt.%, Na2O:9 wt.%)21.46gを溶解してケイ酸ナトリウ
ム水溶液を作製した。別の2000mlのビーカーに水500ml
を入れ、塩化鉄(III)六水和物一級試薬(純度98%)11.3
9gと塩化マグネシウム六水和物一級試薬(純度98%)を
溶解し、14規定硝酸7mlを添加した後、ケイ酸ナトリウ
ム水溶液を加えてSi-Fe(III)-Mg酸性均質水溶液を作製
した。この酸性均質水溶液に28%アンモニア水50mlを攪
拌しながら徐々に滴下してSi-Fe(III)-Mg複合含水酸化
物を沈澱させた。沈澱pHは10であった。直ちに得られた
複合含水酸化物を濾過し、充分に水洗した。この複合含
水酸化物10gを分取し、0.1規定の水酸化ナトリウム水溶
液43mlを加えてpH12.4のスラリーを作製した。このスラ
リーを内容積100mlのステンレス製テフロン密閉型反応
容器に入れて、乾燥器で200℃、24時間の水熱処理を行
った。水熱処理後、自然冷却して取り出した反応生成物
は褐色のゼラチン状であり、濾過し、80℃で乾燥した
後、粉砕して合成含鉄膨潤性ケイ酸塩を得た。
【0034】本発明製品はAとしてナトリウムイオンを
用い、a=0.70, b=0およびc=1で設計して、製造した
もので、分析値から得られた組成はSi:Fe(III):Mg:Na=
8:3.32:0.68:0.69であり、分析値から計算した値はa=
0.68, b=0およびc=1であった。メチレンブルー吸着量
から得られた陽イオン交換容量は0.98ミリク゛ラム当量/gで
あった。粉末X線回折図は天然産モンモリロナイトに類
似したパターンを示し、2-八面体型スメクタイトの001,
02, 004, 20および06ピークに相当するピークが12.7
、4.53 、3.16 、2.58 および1.52 に観察され
た。06ピークから計算されたb軸の大きさは9.12 であ
った。定方位試料の001ピークはエチレングリコール処
理によって12.7 から17.2 に膨張し、膨潤性スメクタ
イトの特性を示した。透過型電子顕微鏡によって、50〜
100ナノメーターの大きさを有する矩形板状形態を示
し、4〜6層に積層している様子が観察された。KBr法に
て測定した赤外吸収スペクトルでは金属−OHの変角振動
が818cm-1および618cm-1に観察され、Fe(III)Fe(III)-O
HおよびMg Fe(III)-OHに相当し、3価鉄とマグネシウム
が八面体シートに存在していることを示すと考えられ
る。2 %分散液はチクソトロピックなゲルを形成した。
【0035】実施例2 実施例1と同様に操作して合成含鉄膨潤性ケイ酸塩を得
た。ただし、得られた生成物は乾燥しないで、本発明製
品とした。2 %分散液はチクソトロピックなゲルを形成
した。
【0036】実施例1および実施例2で得られた本発明
製品の2 %分散のずり速度2〜80 s-1の見掛け粘度をB型
粘度計(東京計器社製)で測定し、天然産モンモリロナ
イト製品であるクニゲルVI製品(クニミネ工業株式会社
製)の2.5 %および5.5 %分散液の値とともに表1に示し
た。表1から、実施例1および2の本発明の合成含鉄膨
潤性ケイ酸塩は市販品のクニゲルVIよりも低濃度分散液
で良好な増粘作用を有することがわかる。特に乾燥しな
いで用いた実施例2の発明製品の方が、乾燥した実施例
1の本発明製品より増粘効果が高いことが判明した。本
発明製品はいずれも、クニゲルVI製品と比べて、より低
濃度の分散水溶液においても、低ずり速度における見掛
け粘度が高く、チクソトロピー性が高いことがわかる。
【0037】
【表1】
【0038】実施例3 実施例1において添加する28 %アンモニア水の量を13.5
mlに変えてSi-Fe(III)-Mg複合含水酸化物を作製した。
沈澱pHは6.5であった。この複合含水酸化物10gに0.1規
定水酸化ナトリウム水溶液44mlを加えて、pH12.0のスラ
リーを作製した。このスラリーを実施例1と全く同じ条
件で水熱処理して褐色を呈したゼラチン状の合成含鉄膨
潤性ケイ酸塩を得た。生成物を濾過した後、80℃乾燥
し、粉砕して本発明製品とした。
【0039】本発明製品はAとしてナトリウムイオンを
用い、a=0.70, b=0およびc=1で設計して製造し
たもので、分析値から得られた組成はSi:Fe(III):Mg:Na
=8:3.60:0.28:0.66となり、分析値から計算した値はa
=0.28, b=0.12およびc=1であった。メチレンブル
ー吸着量から得られた陽イオン交換容量は0.91ミリク゛ラム当
量/gであった。粉末X線回折図は天然産モンモリロナ
イトに類似したパターンを示し、2-八面体型スメクタイ
トの001, 02, 004, 20および06ピークに相当するピーク
が12.8 、4.57 、3.19 、2.57 および1.53 に観察
された。06ピークから計算したb軸の大きさは9.18 で
実施例1より大きい値を示した。定方位試料の001ピー
クはエチレングリコール処理によって12.8 から17.3
に膨張し、膨潤性スメクタイトの特性を示した。透過型
電子顕微鏡観察は実施例1とほぼ同様な形態であった。
KBr法による赤外線吸収スペクトルはFe(III)Fe(III)-OH
に相当する吸収スペクトルが815cm-1に観察された。X
線光電子分析法によるFe(2P)3/2の結合エネルギー値71
1.5 KeVから組成中の鉄はほどんどが3価の形で存在して
いると考えられる。2 %分散水溶液はチクソトロピック
なゲルを形成した。
【0040】比較例1 実施例1において得られた複合含水酸化物10gに0.2規定
水酸化ナトリウム水溶液を50ml加えてpH13.1のスラリー
を作製した。このスラリーを実施例1と全く同じ条件で
水熱処理した結果、赤褐色の部分と黄白色の部分が混在
した沈澱を得た。生成物を80℃で乾燥し、粉砕して試料
とした。
【0041】X線粉末回折図ではスメクタイトに類似し
た強度の低いパターンとともに、6.40 、4.40 および
2.97 のアクマイト(Na Fe Si2 O6)のピークが観察さ
れ、不純物としてアクマイトが生成していることが判明
した。透過型電子顕微鏡観察でスメクタイト粒子に繊維
状のアクマイト粒子が多く混在していることが判明し
た。2%分散液は沈澱し、ゲル化剤として不適であると考
えられる。
【0042】比較例2 実施例1において得られた複合含水酸化物10gに0.1規定
の水酸化ナトリウム水溶液9 mlと水40mlを加えてpH9.7
のスラリーを作製した。このスラリーを実施例1と全く
同じ条件で水熱処理した結果、黄色透明な溶液層だけが
得られ、沈澱生成物は得られなかった。
【0043】
【発明の効果】本発明の合成膨潤性ケイ酸塩は水に対し
て優れた分散性及びゲル形性能を示し、卓越したチクソ
トロピー性を有することから、例えば水溶性塗料、化粧
品、セラミックス原料、スラリー安定剤、沈降防止剤、
増粘剤、粘結剤、懸濁安定剤、チクソトロピー性付与剤
などとして極めて有用である。深部地熱や石油の掘削泥
水としても好適に用いられうる。更にゲル形性能が高い
ため、止水性も高く、各種止水材として用いることがで
きる。更に本発明の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩は0.4〜1.3
ミリク゛ラム当量/gの陽イオン交換容量を有する。八面体シ
ートに3価鉄を有するため、還元環境下でのセシウムの
固定化機能が高くなり、更に高い止水性を有するため、
高レベル放射性廃棄物処分用の緩衝材としても好適な材
料と考えられる。またピラードクレーの原料として用い
ることもでき、3価鉄を含有した触媒、触媒担体、吸着
剤、分離材、脱臭剤、除放材などとしても利用できる。
層状構造を有し、平板状であるため、製膜に用いること
もできる。3価鉄を含有するため、紫外線や可視光線の
カット材、吸収材としての機能を有し、化粧品、塗料、
高分子材料の充填剤、複合材としても用いられうる。ま
た電磁波の障壁材としても用いることができる。アルキ
ル第四級アンモニウム塩と複合させることによって親油
性スメクタイトとしても用いることができる。更に本発
明の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩は3価鉄を含有することか
ら殺菌、抗菌、抗黴、防虫、消毒などの目的でフィルタ
ー、吸着剤にも用いることができる。また焼成すること
によって、セラミックスとして用いることもでき、セン
サー、磁性材料、半導体などとしても有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 拓道 宮城県仙台市泉区南光台南3丁目21番18 −503号 (72)発明者 蛯名 武雄 宮城県仙台市宮城野区清水沼2丁目3番 6−202号 (72)発明者 鳥居 一雄 宮城県仙台市太白区西中田1丁目19番13 号 (56)参考文献 特開 平6−124694(JP,A) 特開 昭59−21517(JP,A) 前野 昌弘 「粘土の科学」(平5− 7−30)日刊工業新聞社 p.35−36 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01B 33/20 - 33/46 CA(STN)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 Ac+ (a+3b)/c(Fe4-a-b Mgab )Si820(OH)4 (式中、a,bおよびcは、0<a<2、0≦b<0.
    5及び1≦c≦2を満足する数を示し、Feは3価鉄で
    あり、□は八面体シートに占める陽イオンの空孔を示
    し、及びAはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イ
    オン、水素イオン及びアンモニウムイオンからなる群か
    ら選ばれる少なくとも一種の陽イオンを示す。)で表わ
    される合成含鉄膨潤性ケイ酸塩。
  2. 【請求項2】 陽イオン交換容量が0.4〜1.3me
    q・g-1である請求項1記載の合成含鉄膨潤性ケイ酸
    塩。
  3. 【請求項3】 請求項1の記載に従って定められた割合
    にケイ素、3価鉄およびマグネシウムの複合含水酸化物
    を調製し、濾過水洗によって副生塩を除去した後、陽イ
    オンを添加してスラリーのpHを11〜12.7に調整
    し、100〜300℃の条件下で水熱反応を行い、必要
    に応じて乾燥した後、粉砕することを特徴とする請求項
    または2記載の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩の製造方法。
  4. 【請求項4】 ケイ素、3価鉄とマグネシウムの複合含
    水酸化物が、ケイ素、3価鉄およびマグネシウムの酸性
    均質溶液とアルカリ水溶液を混合することによって得ら
    れたものである請求項3記載の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 複合酸化物の調製pHが6〜11である
    請求項3または4記載の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 水熱処理に用いられるスラリーのpHが
    12.0〜12.5である請求項3、4または5記載の
    合成含鉄膨潤性ケイ酸塩の製造方法。
  7. 【請求項7】 水熱処理に用いられるスラリー中の複合
    含水酸化物と添加する水溶液の添加量との重量固液比が
    0.1〜10である請求項3、4、5または6記載の合
    成含鉄膨潤性ケイ酸塩の製造方法。
  8. 【請求項8】 一般式の陽イオンAがナトリウムである
    請求項1または2記載の合成含鉄膨潤性ケイ酸塩。
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