JP2661911B2 - 高強度ばね用鋼線 - Google Patents
高強度ばね用鋼線Info
- Publication number
- JP2661911B2 JP2661911B2 JP8533987A JP8533987A JP2661911B2 JP 2661911 B2 JP2661911 B2 JP 2661911B2 JP 8533987 A JP8533987 A JP 8533987A JP 8533987 A JP8533987 A JP 8533987A JP 2661911 B2 JP2661911 B2 JP 2661911B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- spring
- strength
- wire
- steel
- steel wire
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Springs (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、高強度ばね用鋼線に係り、特に内燃機関用
弁ばね、クラッチばね又はブレーキばね等の機械用ばね
に用いられるものに関する。 (従来の技術) 耐疲労性や耐へたり性が要望される代表的なばね用鋼
線としてはSi−Cr鋼のオイルテンパー線が用いられてい
る。 これらのワイヤーの引張強さは線径に応じた概略式と
して、 T.S.=71d−1/2+155 ここで、 T.S.:引張強さ(kgf/mm2) d:素線径(mmφ) で与えられる。 具体的にこの式に基づいて引張強さを求めると、4mm
φのワイヤーでT.S.は約190kgf/mm2となる。 また、ばね用オイルテンパー線としてSWRS67B等のピ
アノ線が用いられることがある。このときのワイヤーの
引張強さはSi−Cr鋼のオイルテンパー線よりも更に低
く、4.0mmφのワイヤーで目標とされる引張強さは約165
kgf/mm2である。 更に、ばね用ワイヤーとして、伸線加工されたまゝの
ワイヤーが用いられる場合もある。その代表的な例とし
て、SWRS82Aを伸線加工したワイヤーが挙げられるが、
その引張強さは約170kgf/mm2である。 そして、従来のばね用ワイヤーに関する規格としては
次のようなものがある。 《JIS規格等》 JIS G3566、JIS G3561、 JIS G3565、 JSMA(日本ばね工業会規格) (発明が解決しようとする問題点) 一般に、圧縮・引張コイルばねにおいて、ばねの高さ
H(mm)、並びに軸方向力が作用した場合の素線に生じ
るねじり応力(kgf/mm2)はそれぞれ次式で与えられ
る。 H=A・Na・d …… τ=8・P・D/(π・d3) …… 但し、 A:定数、Na:有効巻数、d:素線径(mm) P:ばねにかかる荷重(kgf) D:コイル平均径(mm) ところで、ばねの高さを低くすることによって、ばね
のみではなく、その駆動系全体及びそれを保護している
ブロックを軽量化することができるが、ばねの高さを低
くするためには、前記式からわかるように、有効巻数
Naを減少させ、素線径dを小さくすることが必要とな
る。 しかし、この場合には、前記式からわかるように、
ばねに作用する繰り返し応力が大きくなるため、ばねの
疲労寿命が低下してしまうという相反関係がある。 またエンジン等においては、その出力を向上させるた
めにはエンジンの回転数を上げることが最も有効であ
る。従って、エンジン等の要部に使用されているばねに
ついては、その固有振動数を大きくすることが望まれる
ことが少なくない。 なお、固有振動数f1は f1=3.56×105・d/(Na・D2) …… (JIS B2704) で与えられる。 このためには、有効巻数Naを減少させ、ばねの素線径
dを大きくすることが必要となる。 しかし、素線径dを大きくすると軽量化に不適当であ
るため、素線径dを一定にして有効巻数Naを減少させる
ことになるが、この場合にもばねに作用する繰り返し応
力が大きくなるため、ばねの疲労寿命が低下してしまう
という相反関係がある。 以上のことから、ばねの疲労寿命を保証するために
は、ばねの素材の強度を向上させることが必要となる。 現在使用されているばね用ワイヤーの代表的素材であ
るSi−Cr鋼でも、オイルテンパー処理での焼もどし温度
を下げることによって高強度ワイヤーは得られるが、こ
の場合には次のような問題点が生じる。 焼もどし処理は溶融鉛を使用することにより行われる
が、現行のSi−Cr鋼で高強度化を図るためには、素線径
4.0mmφのワイヤーで溶融鉛温度を400℃以下にしなけれ
ばならない。しかし、溶融鉛の融点は327℃であり、こ
の処理温度では処理鋼線の表面に鉛が付着してしまうと
いう問題がある。 更に、引張強さを220kgf/mm2以上にすると延性が極端
に低下し、ばねコイリング時での折損や疲労寿命の低下
を招いてしまうという問題がある。 一般に成形されたばねは、ばね成形時の歪除去と弾性
限の向上のためブルーイング処理がなされるが、この際
に現行のSi−Cr鋼で高強度を維持するためにはブルーイ
ング温度が低くなり、上記の問題点について充分な効果
が得られなくなる。 そこで、本発明は、上記従来技術の欠点を解消し、高
強度でも高い延性を有し、且つ高いブルーイング処理温
度でもその強度を維持する鋼線を提供することを目的と
するものである。 (問題点を解決するための手段) 上記目的を達成するため、本発明者は、化学成分をバ
ランスよく調整し、特に低C、高Cr、極低Al化により所
期の高強度化を図ると共に、またばね用鋼線としては引
張強さを調整して疲労特性の向上を図ったものであり、
その要旨とするところは、次のとうりである。 すなわち、高強度ばね用鋼線に係る本発明は、C:0.3
〜0.5%未満、Si:0.8〜2.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:1.2
〜2.5%、Al≦0.005%及び0≦30ppmを含み、更に必要
に応じてV:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Nb:0.05〜0.
5%及びTa:0.05〜0.5%のうちの1種又は2種以上を含
み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼線であっ
て、引張強さT.S.(kgf/mm2)が素線径d(mm)に対し
て、 71d−1/2+173≦T.S.≦71d−1/2+201 なる関係を有するように調整したことを特徴とするもの
である。 以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。 まず、本発明に用いられる鋼の化学成分を限定した理
由について説明する。 C: Cは強度を増大するために有効な元素であるが、0.3
%未満では十分な強度を得ることができず、また0.5%
以上では、本発明のようにCr量が1.2%以上の鋼を用い
る場合には靭性が劣化するので、0.3〜0.5%未満とし
た。 Si: Siは脱酸に有効で、且つオイルテンパー処理した場合
の強度増大に大きく寄与する元素であるが、0.8%未満
では高強度にすることが困難になる。一方、2.5%を超
えると脱炭を助長して表面の強度を低下させるばかりで
なく、Alの混入源となる。後述するように、Alの増加は
非延性介在物を生成せしめるため、ばねの疲労特性が悪
くなる。従って、Si量は0.8〜2.5%とした。 Mn: 焼入焼もどし処理では、鋼の焼入性が重要であり、こ
のためにはMnの添加がなされなければならない。また、
鋼の靭延性に有害なSを固定する役割を果たすため、あ
る程度のMnの添加が必要とする。しかし、添加しすぎる
と、処理鋼の延性が低下し、高強度ワイヤーが得られな
くなる。従って、Mn量は0.1〜1.0%とした。 Cr: 脱炭を防止するのに有効な元素であり、また、鋼の焼
もどし軟化抵抗を大きくするため、高強度化に有効であ
る(第1図参照)。しかし、1.2%未満ではその効果は
少なく、2.5%を超えると既述のような低Cの範囲でも
靭性が劣化するので、Cr量は1.2〜2.5%とした。 Al: Alを0.005%以上添加した材料では多数のAl2O3が生成
し、このAl2O3は非延性であるだけでなく、非常に硬度
が高いため、疲労試験において早期破壊が発生する。こ
のため、Alの添加量は極力抑えるべきであり、0.005%
以下にする必要がある。 O: Oは鋼中のAl、Siなどと結び付いてSiO2系、Al2O3系
の介在物を生成する。これらの介在物は疲労に有害であ
るので、少なくするにはOを30ppm以下に規制する必要
がある。 V、Mo、Nb、Ta: これらの元素は析出強化を付与する元素であり、高強
度化に効果があるので、必要に応じて単独又は複合して
適量添加することができる。 すなわち、Vの添加は結晶粒を微細にし、処理鋼の靭
延性の向上に寄与する。また、耐へたり性の改善にも有
効である。更に、Vはばね成形後の歪取り焼鈍及びオイ
ルテンパー処理において二次析出強化を図るため、焼も
どし軟化抵抗が大きくなり、高強度化に有効である。し
かし、0.05%以下ではその効果は非常に小さくなる。 一方、オイルテンパー処理におけるオーステナイト化
時に過度にVを添加すると溶け込まず、未溶解炭化物が
オイルテンパー材に残ってしまい、この未溶解炭化物が
粗大になると処理材の延性が低下する。従って、この添
加量には上限があり、0.5%である。以上のことから、
V量を0.05〜0.5%とした。 また、Mo、Nb、Taは、Vと同様に析出強化を付与する
元素であり、高強度化に効果がある。しかし、各元素と
も0.05%以下ではその効果が小さく、一方、0.5%を超
えると粗大な未溶解炭化物ができるため、各元素の添加
量はそれぞれ0.05〜0.5%の範囲とした。 なお、P、S等々の不可避的不純物を規制するのが望
ましい。例えば、鋼中にPが多く存在すると偏析の原因
となり、素材の靭延性を損う恐れがあるので、Pを0.02
0%以下にするのが望ましい。またS含有量が高くなる
とワイヤーの絞り値を低下させることになるので、高強
度ワイヤーで良好な絞り値を得るにはSを0.010%以下
にするのが望ましい。 次に、引張強さを素線径との関係で限定した理由につ
いて説明する。 一般的にばねの素線の疲労限はワイヤーの引張強度が
高いほど向上する。 しかし、引張強さT.Sが素線径dに対して、T.S.=71d
−1/2+155で与えられる強度より10(kgf/mm2)程度大
きくても疲労限の向上は顕著でなく、目的を達成するこ
とができない。一方、T.S.=71d−1/2+201で与えられ
る強度より大きくなると靭延性が不足し、コイリング時
に折損が増えるだけでなく、疲労限も低下してゆく。従
って、前記鋼をオイルテンパー処理し、引張強さを素線
径に対して、 71d−1/2+173≦T.S.≦71d−1/2+201 なる関係を有するように調整することにより、ばね用鋼
線を得ることとした。 次に、本発明の一実施例を示す。 (実施例) 第1表に示した化学成分(wt%)を有する供試鋼(a
〜d)につき素線径4.2mmφのワイヤーを製造し、オイ
ルテンパー処理[加熱(875〜925℃)→油焼入れ(60〜
70℃)→焼戻し(400〜450℃)]した後に中村式回転曲
げ疲労試験機で疲労試験を行い、疲労限度を求めた。 その結果を第2表に示す。 同表より、本発明に用いられる鋼種a、bを用い、オ
イルテンパー処理により引張強さを調整した場合には、
高強度で優れた疲労特性を示すことが分かる。これに対
して本発明で規定する成分組成を満足しないc、dを用
いた場合には、引張強さを素線径(4.2mmφ)に対して
所望の強度に調整すること(207.6〜235.6kgf/mm2)自
体が困難であり、疲労限測定用サンプルを得ることがで
きなかった。特に鋼種dはAlの量が多く、Al2O3系の非
金属介在物が鋼中に多数存在するため、T.S.が195〜205
kgf/mm2においても疲労限が低いことが分かる。 (発明の効果) 以上詳述したように、本発明によれば、鋼の化学成分
をバランスよく調整すると共に、該鋼を使用し、従来か
らのSi−Cr鋼と同様の焼もどし及びブルーイング処理温
度で処理することによって、引張強さが素線径に対して
T.S.=71d−1/2+173(kgf/mm2)以上の引張強さを有す
るオイルテンパー線が得られるだけでなく、超微細粒を
有する鋼線を製造することが可能となる。 特に、このワイヤーを使用することにより、従来より
高い疲労強度を有したばね用鋼線を得ることができ、更
に本発明ではAlが極端に低いレベルに押さえられている
ため、疲労に有害な非延性介在物も非常に少なくするこ
とができる。 従って、従来材(Si−Cr鋼等)よりも高い疲労強度を
得ることが可能となり、エンジンの小型化や軽量化に寄
与するだけでなく、小型のばねで高出力の機能を内燃機
関に与えることが可能となる。 また高Cr量の添加により焼もどし軟化抵抗が向上し、
高強度鋼線の製造が可能になると共に、弁ばね用鋼線で
重要な耐熱性も向上する。
弁ばね、クラッチばね又はブレーキばね等の機械用ばね
に用いられるものに関する。 (従来の技術) 耐疲労性や耐へたり性が要望される代表的なばね用鋼
線としてはSi−Cr鋼のオイルテンパー線が用いられてい
る。 これらのワイヤーの引張強さは線径に応じた概略式と
して、 T.S.=71d−1/2+155 ここで、 T.S.:引張強さ(kgf/mm2) d:素線径(mmφ) で与えられる。 具体的にこの式に基づいて引張強さを求めると、4mm
φのワイヤーでT.S.は約190kgf/mm2となる。 また、ばね用オイルテンパー線としてSWRS67B等のピ
アノ線が用いられることがある。このときのワイヤーの
引張強さはSi−Cr鋼のオイルテンパー線よりも更に低
く、4.0mmφのワイヤーで目標とされる引張強さは約165
kgf/mm2である。 更に、ばね用ワイヤーとして、伸線加工されたまゝの
ワイヤーが用いられる場合もある。その代表的な例とし
て、SWRS82Aを伸線加工したワイヤーが挙げられるが、
その引張強さは約170kgf/mm2である。 そして、従来のばね用ワイヤーに関する規格としては
次のようなものがある。 《JIS規格等》 JIS G3566、JIS G3561、 JIS G3565、 JSMA(日本ばね工業会規格) (発明が解決しようとする問題点) 一般に、圧縮・引張コイルばねにおいて、ばねの高さ
H(mm)、並びに軸方向力が作用した場合の素線に生じ
るねじり応力(kgf/mm2)はそれぞれ次式で与えられ
る。 H=A・Na・d …… τ=8・P・D/(π・d3) …… 但し、 A:定数、Na:有効巻数、d:素線径(mm) P:ばねにかかる荷重(kgf) D:コイル平均径(mm) ところで、ばねの高さを低くすることによって、ばね
のみではなく、その駆動系全体及びそれを保護している
ブロックを軽量化することができるが、ばねの高さを低
くするためには、前記式からわかるように、有効巻数
Naを減少させ、素線径dを小さくすることが必要とな
る。 しかし、この場合には、前記式からわかるように、
ばねに作用する繰り返し応力が大きくなるため、ばねの
疲労寿命が低下してしまうという相反関係がある。 またエンジン等においては、その出力を向上させるた
めにはエンジンの回転数を上げることが最も有効であ
る。従って、エンジン等の要部に使用されているばねに
ついては、その固有振動数を大きくすることが望まれる
ことが少なくない。 なお、固有振動数f1は f1=3.56×105・d/(Na・D2) …… (JIS B2704) で与えられる。 このためには、有効巻数Naを減少させ、ばねの素線径
dを大きくすることが必要となる。 しかし、素線径dを大きくすると軽量化に不適当であ
るため、素線径dを一定にして有効巻数Naを減少させる
ことになるが、この場合にもばねに作用する繰り返し応
力が大きくなるため、ばねの疲労寿命が低下してしまう
という相反関係がある。 以上のことから、ばねの疲労寿命を保証するために
は、ばねの素材の強度を向上させることが必要となる。 現在使用されているばね用ワイヤーの代表的素材であ
るSi−Cr鋼でも、オイルテンパー処理での焼もどし温度
を下げることによって高強度ワイヤーは得られるが、こ
の場合には次のような問題点が生じる。 焼もどし処理は溶融鉛を使用することにより行われる
が、現行のSi−Cr鋼で高強度化を図るためには、素線径
4.0mmφのワイヤーで溶融鉛温度を400℃以下にしなけれ
ばならない。しかし、溶融鉛の融点は327℃であり、こ
の処理温度では処理鋼線の表面に鉛が付着してしまうと
いう問題がある。 更に、引張強さを220kgf/mm2以上にすると延性が極端
に低下し、ばねコイリング時での折損や疲労寿命の低下
を招いてしまうという問題がある。 一般に成形されたばねは、ばね成形時の歪除去と弾性
限の向上のためブルーイング処理がなされるが、この際
に現行のSi−Cr鋼で高強度を維持するためにはブルーイ
ング温度が低くなり、上記の問題点について充分な効果
が得られなくなる。 そこで、本発明は、上記従来技術の欠点を解消し、高
強度でも高い延性を有し、且つ高いブルーイング処理温
度でもその強度を維持する鋼線を提供することを目的と
するものである。 (問題点を解決するための手段) 上記目的を達成するため、本発明者は、化学成分をバ
ランスよく調整し、特に低C、高Cr、極低Al化により所
期の高強度化を図ると共に、またばね用鋼線としては引
張強さを調整して疲労特性の向上を図ったものであり、
その要旨とするところは、次のとうりである。 すなわち、高強度ばね用鋼線に係る本発明は、C:0.3
〜0.5%未満、Si:0.8〜2.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:1.2
〜2.5%、Al≦0.005%及び0≦30ppmを含み、更に必要
に応じてV:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Nb:0.05〜0.
5%及びTa:0.05〜0.5%のうちの1種又は2種以上を含
み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼線であっ
て、引張強さT.S.(kgf/mm2)が素線径d(mm)に対し
て、 71d−1/2+173≦T.S.≦71d−1/2+201 なる関係を有するように調整したことを特徴とするもの
である。 以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。 まず、本発明に用いられる鋼の化学成分を限定した理
由について説明する。 C: Cは強度を増大するために有効な元素であるが、0.3
%未満では十分な強度を得ることができず、また0.5%
以上では、本発明のようにCr量が1.2%以上の鋼を用い
る場合には靭性が劣化するので、0.3〜0.5%未満とし
た。 Si: Siは脱酸に有効で、且つオイルテンパー処理した場合
の強度増大に大きく寄与する元素であるが、0.8%未満
では高強度にすることが困難になる。一方、2.5%を超
えると脱炭を助長して表面の強度を低下させるばかりで
なく、Alの混入源となる。後述するように、Alの増加は
非延性介在物を生成せしめるため、ばねの疲労特性が悪
くなる。従って、Si量は0.8〜2.5%とした。 Mn: 焼入焼もどし処理では、鋼の焼入性が重要であり、こ
のためにはMnの添加がなされなければならない。また、
鋼の靭延性に有害なSを固定する役割を果たすため、あ
る程度のMnの添加が必要とする。しかし、添加しすぎる
と、処理鋼の延性が低下し、高強度ワイヤーが得られな
くなる。従って、Mn量は0.1〜1.0%とした。 Cr: 脱炭を防止するのに有効な元素であり、また、鋼の焼
もどし軟化抵抗を大きくするため、高強度化に有効であ
る(第1図参照)。しかし、1.2%未満ではその効果は
少なく、2.5%を超えると既述のような低Cの範囲でも
靭性が劣化するので、Cr量は1.2〜2.5%とした。 Al: Alを0.005%以上添加した材料では多数のAl2O3が生成
し、このAl2O3は非延性であるだけでなく、非常に硬度
が高いため、疲労試験において早期破壊が発生する。こ
のため、Alの添加量は極力抑えるべきであり、0.005%
以下にする必要がある。 O: Oは鋼中のAl、Siなどと結び付いてSiO2系、Al2O3系
の介在物を生成する。これらの介在物は疲労に有害であ
るので、少なくするにはOを30ppm以下に規制する必要
がある。 V、Mo、Nb、Ta: これらの元素は析出強化を付与する元素であり、高強
度化に効果があるので、必要に応じて単独又は複合して
適量添加することができる。 すなわち、Vの添加は結晶粒を微細にし、処理鋼の靭
延性の向上に寄与する。また、耐へたり性の改善にも有
効である。更に、Vはばね成形後の歪取り焼鈍及びオイ
ルテンパー処理において二次析出強化を図るため、焼も
どし軟化抵抗が大きくなり、高強度化に有効である。し
かし、0.05%以下ではその効果は非常に小さくなる。 一方、オイルテンパー処理におけるオーステナイト化
時に過度にVを添加すると溶け込まず、未溶解炭化物が
オイルテンパー材に残ってしまい、この未溶解炭化物が
粗大になると処理材の延性が低下する。従って、この添
加量には上限があり、0.5%である。以上のことから、
V量を0.05〜0.5%とした。 また、Mo、Nb、Taは、Vと同様に析出強化を付与する
元素であり、高強度化に効果がある。しかし、各元素と
も0.05%以下ではその効果が小さく、一方、0.5%を超
えると粗大な未溶解炭化物ができるため、各元素の添加
量はそれぞれ0.05〜0.5%の範囲とした。 なお、P、S等々の不可避的不純物を規制するのが望
ましい。例えば、鋼中にPが多く存在すると偏析の原因
となり、素材の靭延性を損う恐れがあるので、Pを0.02
0%以下にするのが望ましい。またS含有量が高くなる
とワイヤーの絞り値を低下させることになるので、高強
度ワイヤーで良好な絞り値を得るにはSを0.010%以下
にするのが望ましい。 次に、引張強さを素線径との関係で限定した理由につ
いて説明する。 一般的にばねの素線の疲労限はワイヤーの引張強度が
高いほど向上する。 しかし、引張強さT.Sが素線径dに対して、T.S.=71d
−1/2+155で与えられる強度より10(kgf/mm2)程度大
きくても疲労限の向上は顕著でなく、目的を達成するこ
とができない。一方、T.S.=71d−1/2+201で与えられ
る強度より大きくなると靭延性が不足し、コイリング時
に折損が増えるだけでなく、疲労限も低下してゆく。従
って、前記鋼をオイルテンパー処理し、引張強さを素線
径に対して、 71d−1/2+173≦T.S.≦71d−1/2+201 なる関係を有するように調整することにより、ばね用鋼
線を得ることとした。 次に、本発明の一実施例を示す。 (実施例) 第1表に示した化学成分(wt%)を有する供試鋼(a
〜d)につき素線径4.2mmφのワイヤーを製造し、オイ
ルテンパー処理[加熱(875〜925℃)→油焼入れ(60〜
70℃)→焼戻し(400〜450℃)]した後に中村式回転曲
げ疲労試験機で疲労試験を行い、疲労限度を求めた。 その結果を第2表に示す。 同表より、本発明に用いられる鋼種a、bを用い、オ
イルテンパー処理により引張強さを調整した場合には、
高強度で優れた疲労特性を示すことが分かる。これに対
して本発明で規定する成分組成を満足しないc、dを用
いた場合には、引張強さを素線径(4.2mmφ)に対して
所望の強度に調整すること(207.6〜235.6kgf/mm2)自
体が困難であり、疲労限測定用サンプルを得ることがで
きなかった。特に鋼種dはAlの量が多く、Al2O3系の非
金属介在物が鋼中に多数存在するため、T.S.が195〜205
kgf/mm2においても疲労限が低いことが分かる。 (発明の効果) 以上詳述したように、本発明によれば、鋼の化学成分
をバランスよく調整すると共に、該鋼を使用し、従来か
らのSi−Cr鋼と同様の焼もどし及びブルーイング処理温
度で処理することによって、引張強さが素線径に対して
T.S.=71d−1/2+173(kgf/mm2)以上の引張強さを有す
るオイルテンパー線が得られるだけでなく、超微細粒を
有する鋼線を製造することが可能となる。 特に、このワイヤーを使用することにより、従来より
高い疲労強度を有したばね用鋼線を得ることができ、更
に本発明ではAlが極端に低いレベルに押さえられている
ため、疲労に有害な非延性介在物も非常に少なくするこ
とができる。 従って、従来材(Si−Cr鋼等)よりも高い疲労強度を
得ることが可能となり、エンジンの小型化や軽量化に寄
与するだけでなく、小型のばねで高出力の機能を内燃機
関に与えることが可能となる。 また高Cr量の添加により焼もどし軟化抵抗が向上し、
高強度鋼線の製造が可能になると共に、弁ばね用鋼線で
重要な耐熱性も向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図は引張強さとブルーイング温度の関係に与えるCr
の効果を示す図である。
の効果を示す図である。
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 昭61−30653(JP,A)
特開 昭60−89553(JP,A)
特公 昭33−6454(JP,B1)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量%で(以下、同じ)、C:0.3〜0.5%未満、Si:
0.8〜2.5%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:1.2〜2.5%、Al≦0.00
5%及び0≦30ppmを含み、残部がFe及び不可避的不純物
からなる鋼線であって、引張強さT.S.(kgf/mm2)が素
線径d(mm)に対して、 71d−1/2+173≦T.S.≦71d−1/2+201 なる関係を有するように調整したことを特徴とする高強
度ばね用鋼線。 2.前記不純物として、P≦0.020%、S≦0.010%に規
制した特許請求の範囲第1項に記載の高強度ばね用鋼
線。 3.C:0.3〜0.5%未満、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.1〜1.0
%、Cr:1.2〜2.5%、Al≦0.005%及び0≦30ppmを含
み、更にV:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、Nb:0.05〜0.
5%及びTa:0.05〜0.5%のうちの1種または2種以上を
含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼線であっ
て、引張強さT.S.(kgf/mm2)が素線径d(mm)に対し
て、 71d−1/2+173≦T.S.≦71d−1/2+201 なる関係を有するように調整したことを特徴とする高強
度ばね用鋼線。 4.前記不純物として、P≦0.020%、S≦0.010%に規
制した特許請求の範囲第3項に記載の高強度ばね用鋼
線。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8533987A JP2661911B2 (ja) | 1987-04-07 | 1987-04-07 | 高強度ばね用鋼線 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8533987A JP2661911B2 (ja) | 1987-04-07 | 1987-04-07 | 高強度ばね用鋼線 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63250441A JPS63250441A (ja) | 1988-10-18 |
JP2661911B2 true JP2661911B2 (ja) | 1997-10-08 |
Family
ID=13855889
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8533987A Expired - Fee Related JP2661911B2 (ja) | 1987-04-07 | 1987-04-07 | 高強度ばね用鋼線 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2661911B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101461717B1 (ko) | 2012-09-27 | 2014-11-14 | 주식회사 포스코 | 초고강도 타이어코드용 선재 및 강선 및 그 제조방법 |
KR101912048B1 (ko) * | 2017-09-07 | 2018-10-25 | 전경수 | 인체 맞춤형 매트리스 |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH06240408A (ja) * | 1993-02-17 | 1994-08-30 | Sumitomo Electric Ind Ltd | ばね用鋼線及びその製造方法 |
JP4608242B2 (ja) * | 2004-06-07 | 2011-01-12 | 株式会社神戸製鋼所 | 冷間曲げ加工用鋼材 |
-
1987
- 1987-04-07 JP JP8533987A patent/JP2661911B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101461717B1 (ko) | 2012-09-27 | 2014-11-14 | 주식회사 포스코 | 초고강도 타이어코드용 선재 및 강선 및 그 제조방법 |
KR101912048B1 (ko) * | 2017-09-07 | 2018-10-25 | 전경수 | 인체 맞춤형 매트리스 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS63250441A (ja) | 1988-10-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2746420B1 (en) | Spring steel and spring | |
JP3754788B2 (ja) | 耐遅れ破壊性に優れたコイルばね及びその製造方法 | |
EP1612287B1 (en) | Use of steel for spring being excellent in resistance to setting and fatigue characteristics | |
JP4097151B2 (ja) | 加工性に優れた高強度ばね用鋼線および高強度ばね | |
JP2783145B2 (ja) | 疲労強度の優れた窒化ばね用鋼および窒化ばね | |
JP2661911B2 (ja) | 高強度ばね用鋼線 | |
JPH0796697B2 (ja) | 高強度ばね用鋼 | |
JPS62274051A (ja) | 耐疲労性、耐へたり性に優れた弁ばね用鋼線 | |
JPH064904B2 (ja) | ばね用▲高▼強度オイルテンパー線 | |
JP3075314B2 (ja) | 超高強度ばね用鋼線の製造方法 | |
JP2968430B2 (ja) | 高強度低熱膨張合金 | |
JP2708279B2 (ja) | 高強度ばねの製造方法 | |
JP3384887B2 (ja) | 強度及び捩り特性に優れたバネ用析出硬化型ステンレス鋼 | |
JPH05148581A (ja) | 高強度ばね用鋼および高強度ばねの製造方法 | |
JP4515347B2 (ja) | ばね用鋼線材およびばね用鋼線の耐疲労性の判定方法 | |
JPH05331597A (ja) | 高疲労強度コイルばね | |
JPS6130653A (ja) | 高強度ばね鋼 | |
JPH07292435A (ja) | 高強度ばね用鋼 | |
JP4261760B2 (ja) | 耐水素疲労破壊特性に優れた高強度ばね用鋼およびその製造方法 | |
JP3055050B2 (ja) | 高靱性歯車用鋼材の耐衝撃性向上方法 | |
JP3453501B2 (ja) | ばね巻き加工後の残留応力の小さい冷間巻きばね用鋼 | |
JPS63153240A (ja) | 耐へたり性に優れたばね用鋼 | |
JPH02217421A (ja) | 高疲労強度ばねの製造方法及びそれに用いる鋼線 | |
JPH0873931A (ja) | 強度及び捩り特性に優れたバネ用析出硬化型ステンレス鋼の製造方法 | |
JPH11236617A (ja) | 冷間加工性と耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼およびその製法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |