JPH064904B2 - ばね用▲高▼強度オイルテンパー線 - Google Patents

ばね用▲高▼強度オイルテンパー線

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JPH064904B2
JPH064904B2 JP62193990A JP19399087A JPH064904B2 JP H064904 B2 JPH064904 B2 JP H064904B2 JP 62193990 A JP62193990 A JP 62193990A JP 19399087 A JP19399087 A JP 19399087A JP H064904 B2 JPH064904 B2 JP H064904B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ばね用高強度オイルテンパー線に関し、詳し
くは、特に、内燃機関等のための弁ばねの製造に好適に
用いることができるばね用高強度オイルテンパー線に関
する。
従来の技術 耐疲労性や耐へたり性が強く要求される弁ばね用鋼とし
ては、代表的には、Si−Cr鋼のオイルテンパー線が
用いられている。かかる線材の引張強さは、線径に応じ
た概略式として、TSを引張強さ(Kgf/mm2)とし、素線
径をd(mm)とするとき、 TS=71d−1/2+155 で与えられる。例えば、4mm径の線材について、上記式
に基づいて求めたその引張強さは、約190kgf/mm2
ある。
また、弁ばね用オイルテンパー線として、SWRS67
B等のピアノ用線が用いられることがある。これらの線
材の引張強さは、上記Si−Cr鋼のオイルテンパー線
よりも更に低く、例えば、4mm径線材で目標とされる引
張強さは、約165kgf/mm2である。更に、弁ばね用線
材として、伸線加工されたままの線材が用いられること
もある。その代表的な例として、例えば、SWRS82
Aを伸線加工した線材を挙げることができるが、その引
張強さは、約170kgf/mm2である。
発明が解決しようとする問題点 一般に、圧縮・引張コイルばねにおいて、ばねの高さH
(mm)と、ばねに軸方向力が作用した場合に素線に生じる
ねじり応力τ(kgf/mm2)は、それぞれ次式で与えられ
る。
H=A・Na・d(1) τ=8・P・d/(π・d3)(2) ここに、Aは定数、Naは有効巻数、dは素線径(mm)、
Pはばねにかかる荷重(kgf)、Dはコイル平均径(mm)で
ある。
一般に、弁ばねの高さを低くすることよって、弁ばねの
みでなく、弁の駆動系全体及びそれを保護しているブロ
ックを軽量化することができるが、ばねの高さを低くす
るためには、前記(1)式から理解されるように、有効巻
数Naを減少させ、素線径dを小さくすることが必要で
ある。しかし、この場合には、前記(2)式から明らかな
ように、ばねに作用する繰り返し応力が大きくなるた
め、ばねの疲労寿命が低下する。
他方、エンジン等においては、その出力を向上させるた
めには、エンジンの回転数を高めることが最も有効であ
ることが知られている。従って、エンジンの要部に用い
られているばねについては、その固有振動数を大きくす
ることが望まれることが少なくない。ここに、上記固有
振動数fは、JIS B 2704によれば、次式 f=3.56×10・d/(Na・D)(3) で与えられるので、固有振動数fを大きくするために
は、有効巻数Naを減少させ、ばねの素線径を大きくす
ることが必要である。
しかし、素線径dを大きくすることは、軽量化の観点か
ら望ましくないために、素線径dを一定にして、有効巻
数Naを減少させることとなるが、この場合にも、ばね
に作用する繰り返し応力が大きくなるため、ばねの疲労
寿命が低下する。
以上の説明から、ばねの疲労寿命を保証するためには、
ばねの素材の強度を向上させることが基本的に必要であ
る。現在、用いられているばね用線材の代表例である前
記Si−Cr鋼でも、オイルテンパー処理での焼戻し温
度を低くすることによって、高強度化することができる
が、しかし、引張強さを220kgf/mm2以上とするとき
は、延性の低下が著しく、ばねコイリング時の折損や疲
労寿命の低下を招く。
更に、一般に成形されたばねは、ばね成形時の歪除去と
弾性限の向上のために、ブルーイング処理が施される
が、この際に従来のSi−Cr鋼の場合、その強度を維
持するためには、ブルーイング温度を低くせざる得ず、
ばね成形時の歪除去と弾性限とを十分に向上させること
ができない。
従って、本発明は、従来のばね用鋼における上記した種
々の問題を解決し、高強度でありながら、高い延性を有
し、しかも、高温度にてブルーイング処理しても、その
強度を維持することができるばね用高強度オイルテンパ
ー線を提供することを目的とする。
問題点を解決するための手段 本発明によるばね用高強度オイルテンパー線は、重量%
で C 0.45〜0.8%、 Si 0.8〜2.5%、 Mn 0.1〜1.0%、 Cr 0.3〜1.2%、 Ni 0.02〜4.0%、 Al 0.01%未満、 残部鉄及び不可避的不純物よりなり、焼入れ、焼戻し後
の引張強さをTS(Kgf/mm2)とし、線径をd(mm)とする
とき、引張強さが次式 71d-1/2+173≦TS≦71d-1/2+201 の範囲にあることを特徴とする。
本発明において用いるばね用線材において、Cは、所要
の強度を得るために必要な元素であって、本発明におい
ては、少なくとも0.45%を添加することが必要である。
しかし、過多に添加するときは、靱性を劣化させるの
で、添加量の上限は0.8%とする。
Siは、鋼の脱酸に有効であると共に、得られた線材を
オイルテンパーした場合に強度を大きく向上させる。こ
れらの効果を有効に発現させるためには、少なくとも0.
8%を添加する必要がある。しかし、2.5%を越えて過多
に添加するときは、脱炭を助長して、得られた線材表面
の強度を低下させるのみならず、Siはまた、Alの混
入源であるので、Al量を必要以上に増加させる。Al
量の増大は、後述するように、非延性介在物を生成させ
て、ばねの疲労特性を劣化させる。従って、本発明にお
いては、Si量は0.8〜2.0%の範囲とする。
Mnは、焼入れ性を高める効果を有し、更に、靱延性に
有害なSを固定する作用を有する。しかし、過多に添加
するときは、延性を劣化させるので、高強度線材を得る
ことが困難となる。従って、本発明においては、Mnの
添加量は0.1〜1.0%の範囲とする。
Crは、脱炭を防止するのに有効であり、また、ばねの
温間での耐へたり性を向上させる。これら効果を有効に
発現させるためには、0.3%以上を添加する必要があ
る。しかし、1.2%を越えて過多に添加するときは、靱
性を劣化させるので、添加量は0.3〜1.2%の範囲とす
る。
Niは、靱性を向上させるために、0.2%以上を添加す
ることが必要であるが、4%を越える場合は、多量の残
留オーステナイトを生じさせるので、添加量の上限を4
%とする。
Alは、これを0.01%以上を添加するときは、多量のAl
2O3を生成する。このAl2O3は、非延性であるばかりでな
く、非常に硬度が高いために、ばねの早期破壊を招く。
このように、Alは極力抑えるべき元素であって、本発
明においては、0.01%未満とされる。
更に、本発明においては、P及びS等の不純物元素も、
これを極力低減することが好ましい。鋼中にPが多量に
存在するときは、偏析の原因となり、素材の靱延性を損
なうおそれがあるので、P量は0.020%以下に抑えるの
が好ましい。また、Sは、その含有量が多いときは、線
材の絞り値を低下させるので、高強度線材においてすぐ
れた絞り値を得るには、S量は0.010%以下とするのが
好ましい。
本発明において用いる線材には、上記した元素に加え
て、V、Mo、Nb及びTaよりなる群から選ばれる少
なくとも1種の元素を合計量にて0.05〜0.5%の範囲で
含有させることができる。これら元素は、上記した範囲
での添加によって、析出強化によって鋼を効果的に強化
し、ばねの耐へたり性を改善する。しかし、上記範囲を
越えて過多に添加するときは、粗大な未溶解炭化物を生
成させるので好ましくない。
本発明によれば、上述したようなばね用線材を用いて、
特に、弁ばねのためのオイルテンパー素線を製造するに
際しては、そのオイルテンパー素線の引張強さをTS(k
gf/mm2)、素線径をd(mm)とするとき、 71d-1/2+173≦TS≦71d-1/2+201(3) なる関係を満たすように引張強さを調整することが好ま
しい。
一般に、ばね素線の疲労限は、線材の引張強さが高いほ
ど向上する。しかし、引張強さが TS=71d−1/2+155 で与えられる強度よりも10kgf/mm2程度大きくとも、
顕著な疲労限の向上を得ることができず、他方、引張強
さが、 TS=71d−1/2+203 で与えられる強度よりも大きくなるときは、靱延性が不
足する結果、ばね素線のコイリング時に折損が増えるの
みならず、疲労限も低下する。従って、前記成分組成を
有する線材をオイルテンパー処理し、引張強さTSを素
線径dに対して前記式(3)を満たすように調整すること
によって、高強度で高延性を有し、従って、コイリング
時に折損の生じない弁ばね用鋼線を得ることができる。
発明の効果 以上のように、本発明によるばね用高強度オイルテンパ
ー線は、高強度でありながら、高延性を有し、従って、
かかるオイルテンパー線を用いることによって、コイリ
ング時折損なしにコイルばねを製造することができ、し
かも、得られるばねは高温にてブルーイング処理して
も、その高い強度を保持する。
実施例 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこ
れら実施例により何ら限定されるものではない。
第1表に示す化学成分を有する比較鋼A〜D及び本発明
鋼E〜Mを熱間圧延によって径7.5mmの線材とし、径6.9
mmに皮削り、焼なまし処理を施した後、径4.2mmに伸線
した。
これをオイルテンパー処理してばね用素線とした後、コ
イル平均径28.0mm、コイル内径24.0mm、有効巻数4.5
巻:総巻数6.5巻及び自由高さ75mmのばね諸元を有する
ばねをそれぞれ1万個ずつコイリングした。このコイリ
ング時の素線の折損状況を第1表に示す。
また、素線においては回転曲げ疲労試験を、ばねにおい
てはへたり試験を実施した。へたり試験は、締付け応力
τmax70kgf/mm2、試験温度120℃、試験時間24時
間とした。へたりは残留せん断歪で示す。
更に、線材から採取した資料を引張強さ220kgf/mm2
に焼入れ焼戻しした後、シャルピー衝撃試験を行なった
結果を第1表に併せて示す。
本発明によるばね用オイルテンパー線は、高強度である
にもかかわらず、比較鋼A及びBに比べて靱性にすぐれ
るので、ばね成形時に折損を生じない。比較鋼C及びD
は、すぐれた成形性を有しているものの、鋼中のAl量
が多く、Al2O3系の非金属介在物が多量に存在している
ために、疲労限が低い。また、V、Mo、Nb、Ta等
を単独または複合添加した本発明によるオイルテンパー
線は、ばね成形性のみならず、耐へたり性にもすぐれて
いる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で C 0.45〜0.8%、 Si 0.8〜2.5%、 Mn 0.1〜1.0%、 Cr 0.3〜1.2%、 Ni 0.02〜4.0%、 Al 0.01%未満、 残部鉄及び不可避的不純物よりなり、焼入れ、焼戻し後
    の引張強さをTS(Kgf/mm2)とし、線径をd(mm)とする
    とき、引張強さが次式 71d-1/2+173≦TS≦71d-1/2+201 の範囲にあることを特徴とするばね用高強度オイルテン
    パー線。
  2. 【請求項2】不可避的不純物としてのPが0.02%以下、
    Sが0.010%以下であることを特徴とする特許請求の範
    囲第1項記載のばね用高強度オイルテンパー線。
  3. 【請求項3】重量%で (a)C 0.45〜0.8%、 Si 0.8〜2.5%、 Mn 0.1〜1.0%、 Cr 0.3〜1.2%、 Ni 0.02〜4.0%、及び Al 0.01%未満を含有し、更に、 (b)V、Mo、Nb及びTaよりなる群から選ばれる少
    なくとも1種の元素を合計量にて0.05〜0.5%含有し、 残部鉄及び不可避的不純物よりなり、焼入れ、焼戻し後
    の引張強さをTS(Kgf/mm2)とし、線径をd(mm)とする
    とき、引張強さが次式 71d-1/2+173≦TS≦71d-1/2+201 の範囲にあることを特徴とするばね用高強度オイルテン
    パー線。
  4. 【請求項4】不可避的不純物としてのPが0.02%以下、
    Sが0.010%以下であることを特徴とする特許請求の範
    囲第3項記載のばね用高強度オイルテンパー線。
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