JP3453501B2 - ばね巻き加工後の残留応力の小さい冷間巻きばね用鋼 - Google Patents
ばね巻き加工後の残留応力の小さい冷間巻きばね用鋼Info
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Description
ヤを冷間でばね巻き加工して製造される冷間巻きばねに
用いられるばね用鋼に関し、詳細にはばね巻き加工に伴
い生じる残留応力の小さい冷間巻きばね用鋼に関するも
のである。
巻きと冷間巻きがある。熱間巻きはオーステナイト変態
点以上に加熱された鋼材をばね形状に成形し、そのまま
焼入れ作業を行うものであり、冷間巻きは先に調質され
た鋼線材(オイルテンパー線)を常温またはオーステナ
イト変態点以下の適当な温度でばね成形加工を行うもの
である。冷間巻きは熱間巻きに比べて均質な熱処理組織
が得やすい等の利点がある一方、ばね成形時に大きな残
留応力が生じるという欠点がある。特にばね内側におい
て残留応力が引張モードとなるため、疲労特性や遅れ特
性等に悪影響を与えることが知られており、このため冷
間巻きばねにおいては成形後に200〜450℃で低温
焼鈍することによって残留応力を除去している。この焼
鈍工程において、焼鈍温度が高く、焼鈍時間が長い程、
焼戻し効果によって残留応力は低下するが、条件によっ
ては疲労寿命や耐へたり性に悪影響を与えるので、焼鈍
の条件設定や工程管理には細心の注意が必要であり、こ
れまでは焼鈍工程に多大な労力を要していた。また、焼
鈍によりある程度の硬さは低下することを見込んで、も
ともとの強度が高いオイルテンパー線を使用せざるを得
なかったので、オイルテンパー線本来の強度特性が十分
に活かしきれておらず、ばね設計の自由度も低かった。
は、成分を限定し、引張強さ200Kgf/mm2以上のオイルテ
ンパー線を100〜550℃でばね成形することによ
り、ばね成形に伴う残留応力を低減し、ばね成形後の焼
鈍工程を省略する方法が開示されている。但し、この方
法を採用するには、ばね成形ラインに加熱設備を付加す
る必要があるので多大な設備投資を伴うものである。
目してなされたものであり、ばね成形ラインに加熱設備
を増設しなくとも、冷間巻き加工時に発生する残留応力
を従来よりも大幅に低減することのできるばね用鋼材を
提供しようとするものである。
明の冷間巻きばね用鋼とは、C:0.3〜0.8%(質
量%の意味、以下同じ)、Si:0.2〜3.0%、M
n:0.05〜0.45%、Cr:3.5%以下(0%
を含む)、Mo:1.5%以下(0%を含む)を満た
し、かつ下記(1) 式を満足することを要旨とするもので
ある。 7.8×[C%]-1.4×[Si%]-0.5 ×[Mn%]- 1.2×[Cr%]+ 2.9
×[Mo%] ≦ 1…(1) 但し、[C%],[Si%] ,[Mn%] ,[Cr%] ,[Mo%] は、夫々
C,Si,Mn,Cr,Moの含有量(質量%)を意味
する。
%を満足させることが望ましい。
が生じる機構は、曲げ加工時の弾性変形と塑性変形の割
合が線材の表層と内部で違うことによるものであること
が知られている。従って、素材の弾性係数,弾性限,加
工硬化係数が、曲げ加工後の残留応力に、主に影響を与
えると考えられる。現実的には、これらの要因を独立さ
せて個別に調整することは困難であり、また全ての要因
を一度に満足できる素材成分を一義的に決定することも
不可能である。そこで本発明者らは、曲げ加工後の残留
応力と成分組成の関係について、理論的に推定式を組み
立てた後、さらに約50種類の調質ばね鋼の成分と、そ
れらから測定した弾性係数,弾性限,加工硬化係数のデ
ータをもとに、これらの要因をバランス良く満足するた
めの合金元素の関係を、以下の通り数式化した。即ち、
本発明者らは下記の条件式(1) を満足させることによ
り、曲げ加工時に発生する残留応力の小さい冷間巻きば
ね用鋼を得ることができることを見出し、本発明に想到
したものである。 7.8×[C%]-1.4×[Si%]-0.5 ×[Mn%]- 1.2×[Cr%]+ 2.9×[Mo%] ≦ 1…(1) 但し、[C%],[Si%] ,[Mn%] ,[Cr%] ,[Mo%] はC,S
i,Mn,Cr,Moの含有量(質量%)を意味する。
力は、鋼線の表層と内部での塑性変形量のギャップによ
るものであるため、この残留応力の量は材料の降伏応力
と降伏後の加工硬化能によっても大きく作用されると言
うことができ、残留応力を残さない為には、耐力比
(「降伏応力」/「最大引張応力」)はできるだけ小さ
い方がよいものと考えられる。またSi,Mn,Crは
耐力比を下げるのに有効な元素である。上記(1) 式にお
いて、Si,Mn,Crの含有量には負の符号が付され
ていて左辺の値を小さくする因子となっており、このこ
とはSi,Mn,Crの含有量を増量することが残留応
力を小さくする上で有効なことと整合している。
関する理論的根拠に基づく推定式をもとに、多数のデー
タを回帰分析した結果で修正して導き出されたものであ
り、上記条件式の左辺の値が、0以下であれば更に大き
な効果が得られる。
の上限及び下限については、残留応力低減の観点から特
に制限されるものではないが、調質型のばねとして必要
な性能(疲労強度、耐へたり性、ばね成形能など)を得
るために好ましい含有量の範囲を以下に説明する。
必要な元素であり、0.3%未満では、硬引線や非調質
鋼でも得られるレベルの硬さ程度しか得られず調質ばね
を用いる意義が小さくなるので0.3%以上含有させる
ことが望ましい。一方多過ぎると、成形後の残留応力が
非常に大きくなるのみならず、調質後の靭性及び延性が
劣化するので0.8%以下とすることが望ましく、0.
65%以下であればより望ましい。
であり、0.2%以上含有させることが望ましく、1.
0%以上であればより望ましい。一方多過ぎると焼入れ
加熱時に表面に過度の脱炭が生じ、ばねの疲労特性が悪
くなるので3.0%以下とすることが望ましい。
ることが望ましい。多過ぎると焼入性が増大し、圧延後
に過冷組織が出やすくなるので、2.0%以下が好まし
く、1.0%以下がより好ましい。
必要に応じて添加すればよい。但し、3.5%を超えて
添加すると焼入れ時の炭化物が溶け込みにくくなり、強
度及び硬さが低下するので3.5%以下とすることが望
ましい。
を改善する効果があるので、必要に応じて添加する。但
し、多過ぎると残留応力が増加し、しかも焼入れ時の炭
化物が溶け込みにくくなるので1.5%以下とすること
が望ましい。
Cr,Al,B等の元素を含有させても良い。
せる作用があり、さらにばね特性として重要なへたり特
性を大幅に改善する作用がある。但し、3.0%を超え
て含有させると焼入性が増大し、圧延後に過冷組織が出
やすくなるので、含有量は3.0%以下とすることが望
ましい。
り、旧オーステナイト結晶粒の微細化によって靭性を改
善したり、炭窒化物自身の水素トラップ効果によって水
素脆化を抑制する効果を有する。いずれの元素も0.0
01%以上の添加が望ましく、0.005%以上であれ
ばより望ましい。但し、多過ぎると、凝固過程で粗大な
炭窒化物を生成し、ばねの疲労特性を劣化させる恐れが
あるので、いずれの元素も0.5%以下とすることが望
ましく、0.3%以下がより望ましい。
り、表面に生成する錆を緻密化して耐食性を高める作用
があるので、耐食性が必要な場合には添加してもよい。
こうした効果は0.01%以上の添加により発揮される
が、0.1%以上添加させることが望ましい。一方1.
0%を超えて含有させてもそれ以上の効果は得られず、
むしろ熱間圧延時に素材の脆化を引き起こす恐れがある
ので1.0%以下とすることが望ましい。
性を向上させる。その効果は0.01%以上含有させる
ことによって有効に発揮される。但し、1.0%を超え
て含有させてもそれ以上の効果は得られず、むしろ酸化
物系介在物(Al2 O3 等)が多く生成し、且つ粗大化
してかえって耐疲労寿命を劣化させるので、1.0%以
下とすることが望ましい。
高める元素である。その効果は1ppm以上添加するこ
とにより得ることができ、50ppmを超えて添加して
も焼入性向上効果は飽和するので50ppm以下の添加
でよい。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
で溶製した。いずれも155×155mm断面の鋼塊に
鍛造または圧延した後、熱間圧延で直径11.0〜1
3.5mmの線材とした。その後、伸線加工により直径
8mmとし、焼入れ・焼戻し処理を施して、オイルテン
パー線を作製した。これをカットしたサンプルを直径9
0mmの芯金に2周以上巻き付け、模擬的な冷間ばね成
形を行った。得られたサンプルの曲がりの内側における
線軸方向の残留応力をX線回折法により測定した。結果
は表1に示す。
の左辺の値であり、この値が1以下のものが本発明例で
あり、1を超えるものが比較例である。また表中の残留
応力値は、最表面,100μm内部,200μm内部の
3か所における3点の測定値を平均したものであり、内
部の残留応力値は化学研磨にて表層を除去することで測
定した。
の範囲で種々の鋼が含まれているが、いずれの鋼も残留
応力は比較例より小さく抑えられている。またその効果
は左辺値が0以下の鋼(No.2,No.5)の場合に
特に顕著である。これに対して左辺値が1以上の比較例
は、合金化元素の含有レベルは本発明例と同程度である
にも関わらず、残留応力が大きくなっている。
留応力をグラフ化したものであり、○が本発明例で、×
が比較例である。条件式(1) の左辺値と残留応力の間に
は、正の相関があり、本発明の前記条件式(1) を満足さ
せることによって、ばね成形に伴う残留応力が低くなる
ことが分かる。
施した場合には、製品の残留応力が従来よりも低くなる
ことは明らかであり、疲労特性や遅れ破壊特性の優れた
ばねを得ることができる。また、製品の残留応力を従来
材なみに調整する為の焼鈍条件は従来よりも低温または
短時間で済むため経済的であるし、硬さ低下が起こり難
くなるので焼鈍の条件設定や工程管理への労力が軽減さ
れる。さらにオイルテンパー線本来の強度性能が活かさ
れ、より高強度なばね製造が可能となるなど設計の自由
度が高くなることが期待できる。
で、ばね成形ラインに加熱設備を増設しなくとも、冷間
巻き加工時に発生する残留応力を従来よりも小さくでき
るばね用鋼材が提供できることとなった。その結果、焼
鈍工程の簡略化やばね性能の向上が可能となった。
関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 C:0.3〜0.8%(質量%の意味、
以下同じ)、 Si:0.2〜3.0%、 Mn:0.05〜0.45%、 Cr:3.5%以下(0%を含む)、 Mo:1.5%以下(0%を含む)を満たし、かつ 下記
(1) 式を満足することを特徴とするばね巻き加工後の残
留応力の小さい冷間巻きばね用鋼。 7.8×[C%]-1.4×[Si%]-0.5 ×[Mn%]- 1.2×[Cr%]+ 2.9
×[Mo%] ≦ 1…(1) 但し、[C%],[Si%] ,[Mn%] ,[Cr%] ,[Mo%] は、夫々
C,Si,Mn,Cr,Moの含有量(質量%)を意味
する。 - 【請求項2】 Siの含有量が、0.2〜1.8%であ
る請求項1に記載の冷間巻きばね用鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31216497A JP3453501B2 (ja) | 1997-11-13 | 1997-11-13 | ばね巻き加工後の残留応力の小さい冷間巻きばね用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31216497A JP3453501B2 (ja) | 1997-11-13 | 1997-11-13 | ばね巻き加工後の残留応力の小さい冷間巻きばね用鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11140588A JPH11140588A (ja) | 1999-05-25 |
JP3453501B2 true JP3453501B2 (ja) | 2003-10-06 |
Family
ID=18026014
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31216497A Expired - Lifetime JP3453501B2 (ja) | 1997-11-13 | 1997-11-13 | ばね巻き加工後の残留応力の小さい冷間巻きばね用鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3453501B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9611523B2 (en) | 2005-12-20 | 2017-04-04 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) | Cold formable spring steel wire excellent in cold cutting capability and fatigue properties and manufacturing process thereof |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4507157B2 (ja) * | 2003-06-17 | 2010-07-21 | 信越半導体株式会社 | ウエーハ製造工程の管理方法 |
-
1997
- 1997-11-13 JP JP31216497A patent/JP3453501B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9611523B2 (en) | 2005-12-20 | 2017-04-04 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) | Cold formable spring steel wire excellent in cold cutting capability and fatigue properties and manufacturing process thereof |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11140588A (ja) | 1999-05-25 |
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