JPH0873931A - 強度及び捩り特性に優れたバネ用析出硬化型ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

強度及び捩り特性に優れたバネ用析出硬化型ステンレス鋼の製造方法

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JPH0873931A
JPH0873931A JP24069194A JP24069194A JPH0873931A JP H0873931 A JPH0873931 A JP H0873931A JP 24069194 A JP24069194 A JP 24069194A JP 24069194 A JP24069194 A JP 24069194A JP H0873931 A JPH0873931 A JP H0873931A
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steel
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aging treatment
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JP24069194A
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English (en)
Inventor
Katsuhisa Miyakusu
克久 宮楠
Sadao Hirotsu
貞雄 廣津
Seiichi Ohashi
誠一 大橋
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】時効処理後に強度及び捩り特性に優れたバネ用
鋼材。 【構成】重量%で、Si:0.5〜2.0、Ni:6.
5〜9.5、Cr:12.0〜16.0で、C:0.0
6、Mn:1.0、S:0.005、N:0.015そ
れぞれ以下で、更に、Ti:0.45、Nb:0.55
及びAl:0.45それぞれ以下の1種以上を含み、か
つ、0.20≦Si×(Ti+0.8×Nb+Al)≦
0.80で、[Cr+3.5×(Ti+Nb+Al)+
1.5×Si]/[Ni+0.65×Mn+10×C]
≦2.45に調整された鋼に、溶体化処理後又は焼鈍後
に圧下率3〜30%の調質圧延を施し次いで500〜5
50℃で均熱10分以上加熱する時効処理を施す強度及
び捩り特性に優れたバネ用析出硬化型ステンレス鋼の製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、時効処理後に高強度を
発現し、捩り特性及び打抜き加工性に優れたバネ用析出
硬化型ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】バネ用ステンレス鋼としては、SUS3
01に代表される加工硬化型ステンレス鋼や17−7P
Hに代表される析出硬化型ステンレス鋼が代表的に使用
されている。この種のステンレス鋼で硬さを向上させる
ためには、高加工度の冷間加工が必要とされる。その結
果、冷間加工状態での硬さが高くなり、成形加工性や打
抜き加工性に劣る。逆に成形加工性や打抜き性を向上さ
せる場合には、時効処理後の硬さが不十分となる。この
ように相反した制約を受けることから、硬さと加工性と
を両立させたバネ用ステンレス鋼を得ることは困難であ
る。しかも、成分変動に起因してオーステナイト相の安
定度が変化すると、一定の冷間加工を施しても一定量の
マルテンサイトが得られず、硬さのバラツキが大きくな
り、製品特性の安定性が劣化する。本出願人は、硬さ及
び加工性を両立させるため、時効処理前の硬さが低く、
打抜き加工性や成形加工性に優れた析出硬化型マルテン
サイト系ステンレス鋼を開発し、その一部を特開昭60
−152660号公報として紹介した。この鋼に時効処
理を施すと高強度が発現され、従来の鋼材で問題とされ
ていた成形加工性や製造性が改善される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】析出硬化型マルテンサ
イト系ステンレス鋼は、たとえばC型又はE型のリング
状バネに打抜き加工し、時効処理によって高強度化した
状態では、強度に関する要求特性が満足される。しか
し、装置,機械等への装着時に引裂き応力に加えて高い
捩り応力が付与される場合があり、このときに要求され
る捩り特性が満足されないことがある。捩り特性の不足
は、特に狭幅に打抜き加工されたバネ材にあっては大き
な問題となる。捩り特性は、靭性とは異なる傾向を示
す。靭性は、ある程度強度に支配され、強度が高い場合
に低くなる傾向を示す。析出硬化型マルテンサイト系ス
テンレス鋼の靭性は、本出願人が特開昭60−3664
9号公報で紹介したように、Moを添加することによっ
て向上する。しかし、捩り特性は、Mo添加によって必
ずしも改善されない。本発明は、このような問題を解消
すべく案出されたものであり、各合金元素間の成分調整
に特定された調質圧延及び時効処理を組み合わせること
により、高強度を維持しつつ、従来の鋼材では得られな
かった優れた捩り特性を呈する析出硬化型マルテンサイ
ト系ステンレス鋼を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明のバネ用析出硬化
型マルテンサイト系ステンレス鋼製造方法は、その目的
を達成するため、C:0.06重量%以下,Si:0.
5〜2.0重量%,Mn:1.0重量%以下,S:0.
005重量%以下,Ni:6.5〜9.5重量%,C
r:12.0〜16.0重量%,N:0.015重量%
以下を含み、更にTi:0.45重量%以下,Nb:
0.55重量%以下及びAl:0.45重量%以下の1
種又は2種以上を含み、式(1)で定義されるH値が
0.20〜0.80の範囲にあり、式(2)で定義され
るD値が2.45以下となるように成分調整された鋼
に、溶体化処理後又は焼鈍後に圧下率3〜30%の調質
圧延を施し次いで500〜550℃で均熱10分以上加
熱する時効処理を施すことを特徴とする。 H=Si%×(Ti%+0.8×Nb%+Al%) ・・・・(1) D=[Cr%+3.5×(Ti%+Nb%+Al%)+1.5×Si%] /[Ni%+0.65×Mn%+10×C%] ・・・・(2) 本発明が対象とする鋼材は、更にCu:1.5重量%以
下及び/又はMo:3.0重量%以下を含むことができ
る。この場合、式(2)の代わりに式(3)で定義され
るD´値が2.45以下となるように成分調整される。 D´=[Cr%+3.5×(Ti%+Nb%+Al%)+1.5×Si% +Mo%]/[Ni%+0.3×Cu%+0.65×Mn%+10×C%] ・・・・(3)
【0005】
【作用】本発明者等は、析出硬化型マルテンサイト系ス
テンレス鋼において、時効処理後に優れた捩り特性が得
られるように種々調査・研究した。その結果、溶体化処
理又は焼鈍後にδフェライトが存在しないように各合金
元素間の成分調整を図り、且つ析出硬化元素であるS
i,Ti,Nb及びAl間の成分バランスを調整した鋼
に適度の調質圧延を施した後、500〜550℃で均熱
10分以上の熱処理を施すとき、高強度を損なうことな
く、従来では得られなかった優れた捩り特性をもつ鋼材
が製造されることを解明した。以下、本発明の析出硬化
型マルテンサイト系ステンレス鋼に含まれる合金成分,
含有量等について説明する。 C:0.06重量%以下 鋼の強度を上昇させ、且つ高温で生成するδフェライト
相を抑制する上で重要な元素である。しかし、多量のC
が含まれると、溶体化処理後又は焼鈍後に多量のオース
テナイトが残留する。残留したオーステナイトは、調質
圧延で一部がマルテンサイトに変態するものの、調質圧
延後にも比較的多量が残留し、時効処理後に高強度を得
ることが困難になる。また、多量のC含有は、TiC,
NbC等の炭化物の生成を促進させ、結果として捩り特
性を低下させる原因にもなる。そこで、本発明において
は、C含有量の上限を0.06重量%に定めた。
【0006】Si:0.5〜2.0重量% 固溶強化能が大きく、マトリックスを強化する作用をも
つ。また、Ti,Nb又はAl及びNiと複合添加する
とき、時効処理後にこれらの合金元素からなる金属間化
合物が微細に整合析出し、鋼の強度を上昇させる。この
ような作用は、Si含有量が0.5重量%以上で顕著と
なる。しかし、2.0重量%を超える多量のSiを含有
させると、δフェライト相の生成が助長され、強度及び
捩り特性が低下する。 Mn:1.0重量%以下 高温域でδフェライト相の生成を抑制する作用を呈す
る。しかし、1.0重量%を超えて多量のMnを含有さ
せると、MnSの生成が促進される。MnSは、捩り応
力付加時に亀裂発生の起点となり、捩り特性を著しく低
下させる。したがって、Mn含有量は低いほど望まし
く、その上限を1.0重量%に規定した。
【0007】S:0.005重量%以下 MnS等の非金属介在物として鋼中に存在し、捩り特性
を低下させる。また、疲労強度,耐食性,熱間加工性等
にも悪影響を与える。したがって、S含有量は低いほど
望ましく、その上限を0.005重量%に規定した。 Ni:6.5〜9.5重量% 析出硬化に有効な合金元素であり、且つ溶体化処理後又
は焼鈍後のδフェライト相の生成を抑制する。δフェラ
イト相の生成を抑制し、高強度で優れた捩り特性を維持
することから、Ni含有量の下限を6.5重量%に設定
しているが、7.0重量%以上のNi含有量が好まし
い。しかし、9.5重量%を超える多量のNiが含まれ
ると、溶体化処理後又は焼鈍後に多量のオーステナイト
が残留し、高強度が得られ難くなる。 Cr:12.0〜16.0重量% ステンレス鋼としての耐食性を確保するため、少なくと
も12.0重量%以上のCr含有量が必要である。しか
し、16.0重量%を超える多量のCrを含ませると、
δフェライト相及び残留オーステナイト相が多量に生成
し、強度及び捩り特性が低下する原因となる。
【0008】N:0.015重量%以下 非金属系介在物を生成する原因となることから、N含有
量は低いほど好ましい。特に本発明が対象とするTi,
Nb,Al等を含む鋼においては、TiN,AlN等の
粗大な窒化物が生成し、捩り特性及び疲労特性が悪化す
る原因となる。この点、N含有量は低いほど好ましく、
本発明では上限を0.015重量%に規定した。 Ti:0.45重量%以下 析出硬化に有効な合金元素であり、高強度を確保する上
でTi含有量は高いほど望ましい。しかし、Tiを単独
で含ませる場合、Ti含有量が0.45重量%を超える
とき、時効処理後に強度の上昇が得られるものの、Ti
C,TiN,TiO等の非金属介在物の分布量が多くな
り、結果として捩り特性が著しく低下する。
【0009】Nb:0.55重量%以下 Tiと同様に析出硬化に有効な合金元素である。しか
し、単独添加の場合に0.55重量%を超える多量のN
bを含ませると、強度が過度に上昇することに加え、N
bC,NbN等の炭窒化物の生成量が多くなり、捩り特
性が低下する。 Al:0.45重量%以下 脱酸剤として使用される合金元素であると共に、Ti,
Nbと同様に析出硬化にも有効に働く。しかし、単独で
0.45重量%を超える多量のAlを含ませると、Al
N等の非金属介在物の分布量が増加し、捩り特性が著し
く低下する。 Cu:1.5重量%以下 本発明の合金系においては、Cuの析出強化作用に依る
ことなく高強度が得られる。更に優れた強度を得る上で
は、Cuの含有が有効である。しかし、多量のCu添加
は、熱間加工性を低下させ、表面割れ発生の原因となる
ばかりでなく、時効処理後に硬さが過度に上昇し捩り特
性が悪化する。そこで、本発明においては、Cu含有量
の上限を1.5重量%に規定した。
【0010】Mo:3.0重量%以下 本発明においては、Moの添加によることなく、高強度
及び優れた捩り特性が得られるが、Mo添加により更に
特性が向上する。Moを添加する場合、1.0重量%以
上をMo含有で添加効果がみられる。しかし、3.0重
量%を超える多量のMoを含ませても、Mo含有量の増
加に見合った強度及び捩り特性の向上が得られない。し
かも、多量のMo含有は、δフェライト相の生成を助長
し、強度及び捩り特性を低下させる原因となる。 H値:0.20〜0.80 Ti,Nb及びAlは、前述した範囲の含有量で1種又
は2種以上が添加される。その際、式(1)で定義され
るH値が0.20〜0.80の範囲にあるように調整さ
れる。 H=Si%×(Ti%+0.8×Nb%+Al%) ・・・・(1) 式(1)で表されるH値は、高強度及び優れた捩り特性
を維持するために必要なTi,Nb及びAl間のバラン
スを示す指標である。H値が2.0に達しないと、T
i,Nb,Al等の添加による析出硬化が不十分で、高
強度が得られない。しかし、H値が0.80を超えるよ
うにTi,Nb及びAl間のバランスを図ったもので
は、詳細な理由は不明であるが捩り特性が劣化する。
【0011】D値又はD´値:2.45以下 本発明では、各合金元素の含有量を規定すると共に、式
(2)で定義されるD値又は式(3)で定義されるD´
値が2.45以下となるように成分調整する。 D=[Cr%+3.5×(Ti%+Nb%+Al%)+1.5×Si%] /[Ni%+0.65×Mn%+10×C%] ・・・・(2) D´=[Cr%+3.5×(Ti%+Nb%+Al%)+1.5×Si% +Mo%]/[Ni%+0.3×Cu%+0.65×Mn%+10×C%] ・・・・(3) D値又はD´値は、本発明が対象とする成分系において
Cr当量/Ni当量の限定式である。D値又はD´値が
2.45を超えるように成分調整されると、鋼材が加熱
されたときに多量のδフェライトが生成し、熱間加工性
が低下する。更に、溶体化処理後又は焼鈍後にも多量の
δフェライト相が残存し、特に時効処理後の捩り特性が
低下する。D値又はD´値が2.45以下になるとδフ
ェライトの生成が抑制され、特に2.35以下になると
溶体化処理後又は焼鈍後にδフェライトが完全に消失す
る。
【0012】本発明に従ったマルテンサイト系ステンレ
ス鋼は、残部が基本的にFeである。しかし、脱硫を目
的としたCaや希土類金属,熱間加工性を向上させるた
めに添加した0.01重量%以下のBを含有する場合も
ある。本発明が対象とする鋼は、前述した合金成分の含
有量範囲で溶体化処理後又は焼鈍後にマルテンサイト組
織又は少量の残留オーステナイトとマルテンサイトの混
合組織を呈するように成分設計されている。しかし、時
効硬化元素であるTi,Nb,Alの含有量が本発明で
規定する範囲にあるとき、溶体化処理状態又は焼鈍状態
で時効処理を施しても必ずしも高強度が得られないこと
がある。特にC及びNiの含有量が高い場合には、多量
のオーステナイトが溶体化処理後又は焼鈍後に残留し、
調質圧延によっても比較的多量のオーステナイトが残留
し易い。その結果、時効処理後に十分な時効硬化能が得
られず、高強度を得ることが困難なことがある。残留オ
ーステナイトの影響を回避するためには、残留オーステ
ナイトをマルテンサイト化し、且つ鋼板の形状を修正す
る調質圧延を施した後に時効処理を施す必要がある。
【0013】調質圧延:圧延率3〜30% 調質圧延では、鋼板の形状を改善し、残留オーステナイ
トをマルテンサイト化し、時効処理によって高強度を発
現するために、3%以上の圧延率が必要とされる。しか
し、30%を超える圧延率では、圧延率増加に見合った
形状改善効果が小さく、強度は向上するものの、却って
捩り特性の低下を引き起こす。 時効処理:500〜550℃で均熱10分以上加熱 調質圧延された鋼材は、高強度を維持しつつ優れた捩り
特性を得るために、500〜550℃で均熱10分以上
加熱する時効処理が施される。加熱温度が500℃に達
しない時効処理では、要求される強度が発現するもの
の、必ずしも十分な捩り特性が得られない。時効処理を
500℃以上で行っても、均熱が10分未満の短時間で
あると、要求される強度を得ることが困難になり、捩り
特性を向上させる効果も小さい。逆に550℃を超える
時効処理温度では、過時効に起因して強度低下が大きく
なる。特に高い硬度を確保する上では、500〜530
℃の均熱が好ましい。
【0014】通常、本発明で規定した成分系の鋼におい
て、シャルピー衝撃試験等で評価される靭性は、425
℃前後の強度が低い時効処理温度域で比較的高く、50
0℃前後の高強度領域で低下する傾向を示す。このこと
から、靭性と異なる材料特性である捩り特性は、靭性と
はかなり異なる時効処理温度依存性をもっていることが
判る。時効処理温度の上昇に応じて捩り特性が向上する
理由は、具体的な解明は進んでいないが、次のように推
察される。時効処理前の調質圧延によって導入された歪
みが時効処理である程度除去され、時効処理温度が高い
ほど歪み除去効果が大きく、結果として捩り特性が向上
する。また、時効析出物とマトリックスの整合性が変化
し、捩り応力に対する転位の移動が容易になる。
【0015】
【実施例】表1及び表2に示した成分をもつ各ステンレ
ス鋼について、100kgの鋼塊から熱間圧延を経て板
厚4mmの熱延板を製造した。表1において、Aグルー
プは本発明に従った鋼を示し、BグループはTi含有
量,Cu含有量,H値,D値,D´値の何れかが本発明
で規定した範囲を外れている比較鋼を示す。
【0016】
【表1】
【0017】各熱延板を切削加工した後、溶体化処理を
施し、次いで冷間圧延及び1030℃で均熱60秒加熱
する焼鈍を施した。一部の鋼材については、更に最高5
0%までの調質圧延を施した。板厚は、焼鈍材及び調質
圧延材の何れも1mmに設定した。各ステンレス鋼帯に
ついて、調質圧延状態及び時効処理した際の硬さ,捩り
特性等の機械的特性を調査した。捩り特性の評価には、
調質圧延後の鋼帯から打抜き加工によって作成した図1
に示す形状の試験片を使用した。試験片は、掴み部A及
びBの幅を8mm,板幅極小部Cの幅を1.2mm,板
幅極小部Cの曲率半径を10mmに設定した。試験片を
時効処理し、次いでバレル研磨した後、掴み部A及びB
の一方を固定し、他方を回転させる捩り試験に供した。
捩り加重が最大になるときの回転角度を捩り角度とし、
この値により捩り特性を評価した。各ステンレス鋼の1
5%調質圧延材について、525℃で均熱60分の時効
処理を施した際の硬さ,捩り角度等を、調質圧延材の硬
さと合わせて表2に示す。
【0018】
【表2】
【0019】15%調質圧延→525℃均熱60分時効
処理を経た鋼材について、捩り角度と硬さとの間には図
2に示す関係があった。本発明に従ったAグループの鋼
は、何れも比較鋼と同程度の強度をもっており、しかも
捩り角度が高い値を示した。このことから、高強度で且
つ優れた捩り特性を得るためには、本発明で規定した範
囲にそれぞれの合金元素の含有量及びそのバランスを調
整する必要があることが確認された。たとえば、Ti含
有量が本発明で規定する上限0.45重量%を超える比
較鋼B1,H値が上限0.80を超える比較鋼B2,C
u含有量が上限1.5重量%を超える比較鋼B5は、必
要な強度を持っているものの、何れも捩り角度が低い値
を示した。他方、H値が下限0.20に達しない比較鋼
B3は、捩り特性に優れているものの、硬さが不足して
いた。
【0020】本発明で規定した成分系において優れた捩
り特性を得るためには、δフェライトが生成しないよう
に成分調整する必要がある。比較鋼B4は、D値が2.
48と高く、捩り角度が低い値になっている。比較鋼B
4の組織を光学顕微鏡で観察すると、時効処理状態では
スジ状のδフェライトが観察され、捩り試験後の試験片
の破面においてδフェライト近傍の破壊形態が脆性的で
あった。このことから、δフェライトの残存に起因して
捩り特性が低下したものと推察される。525℃時効処
理後にほぼ同じ硬さになるように成分調整された本発明
に従った鋼A5及び比較鋼B1について、時効処理前の
調質圧延率を最大50%まで変化させ、次いで525℃
で均熱60分の時効処理を施した。時効処理後の硬さ及
び捩り角度を時効処理前の調質圧延率で整理したとこ
ろ、図3に示す関係が成立していた。
【0021】時効処理後の硬さは、図3から明らかなよ
うに、調質圧延率が大きくなるに従って向上している。
調質圧延率0%の焼鈍材を時効処理しても十分な硬さが
得られないこと及び調質圧延による鋼板の形状修正作用
を考慮すると、圧延率3%以上の調質圧延が有効であ
る。他方、捩り特性は、調質圧延率が高くなるに従って
低下する傾向を示す。これは、調質圧延率の上昇に応じ
て破断起点となる表面欠陥や加工歪みが増加し、過度の
加工歪みが時効処理で十分に除去されないことに起因す
るものと推察される。特に、鋼A5では、調質圧延率が
30%を超えると捩り角度の低下が大きくなる傾向が示
されている。このことから、優れた捩り特性を得るため
には、調質圧延率を30%以下にすることが必要であ
る。また、Ti含有量が本発明で規定した上限0.45
重量%を超える比較鋼B1では、捩り角度が低く、調質
圧延率が低い領域においても十分な特性が得られなかっ
た。
【0022】本発明に従った鋼A1,A2及び比較鋼B
1を圧延率15%で調質圧延した後、425〜550℃
の温度範囲で均熱60分の時効処理を施した。時効処理
後の硬さ及び捩り角度に及ぼす時効処理温度の影響を調
査した。調査結果を示す図4にみられるように、何れの
鋼材も時効処理温度の上昇に伴って硬くなっていた。硬
さのピークは500℃前後にあり、それ以上の時効処理
温度では却って硬さが低下した。他方、鋼A1の捩り角
度は、時効処理温度の上昇に伴って高くなる傾向を示
し、特に500℃以上の時効処理温度域での上昇が大き
かった。鋼A2は、500℃以下の時効処理温度域でも
比較的高い捩り角度を示すが、500℃以上の時効処理
によって更に捩り特性が向上した。図4に示した結果か
ら、500℃以上の温度で時効処理することにより高い
捩り角度が得られることが確認される。したがって、時
効処理後の強度を考慮するとき、時効処理温度は500
〜550℃、好ましくは500〜530℃の範囲に設定
する必要がある。
【0023】Ti含有量が本発明で規定した上限0.4
5重量%を超える比較鋼B1でも、時効処理温度の上昇
に伴って捩り特性が向上する。しかし、捩り特性の上昇
度は本発明が対象とするAグループの鋼材に比較して小
さく、十分な捩り角度が得られない。このことから、成
分及び時効処理温度の特定された組合せが有効であるこ
とが確認される。時効処理後にほぼ同じ硬さを示す本発
明に従った鋼A5及び比較鋼B1を圧延率15%で調質
圧延した後、525℃で均熱時間が最大500分の時効
処理を施した。そして、時効処理後の硬さ及び捩り特性
に均熱時間が与える影響を調査した。
【0024】調査結果を示す図5にみられるように、1
0分より短い均熱では時間経過に伴って硬さが急激に上
昇する。硬さの上昇度は、均熱時間10分以上で小さく
なり、安定して高い値を示しす。硬さのピークは均熱時
間60分前後にあり、それ以上の時間をかけて時効処理
しても却って硬さが低下する傾向がある。このことか
ら、本発明に従った成分系の鋼では、525℃時効によ
って時効析出が完了するには約60分の均熱時間が必要
であり、10分に達しない短時間の均熱では十分な硬さ
が得られないことが判る。したがって、均熱時間を10
分以上に設定する必要があることが確認された。
【0025】均熱時間が60分を超えると、均熱時間の
経過に伴って強度が徐々に低下する。そのため、要求さ
れる強度及び熱処理方法に応じて、均熱時間又は均熱温
度を変化させる必要がある。捩り角度は、均熱時間の経
過に応じて高くなる傾向を示し、均熱時間が10分に達
しない短時間側では比較的低くなっている。これは、1
0分未満の短時間均熱では調質圧延で導入された歪みが
十分に除去されないこと、捩り特性の向上に有効な逆変
態γ相が生成しないことに由来するものと推察される。
このようなことから、10分以上の均熱は、優れた捩り
特性を得るためにも必要である。
【0026】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明は、H値
が0.20〜0.80の範囲に、D値又はD´値が2.
45以下となるように、C,Si,Mn,S,Ni,C
r,Cu,Ti,N,Nb,Al,Mo等の成分調整を
図ると共に、Si,Ti,Nb及びAl間の成分バラン
スを適正化している。これにより、δフェライトの生成
が抑制され、時効処理後に高強度を維持しつつ、従来よ
りも更に捩り特性を向上させた鋼材となる。得られた析
出硬化型ステンレス鋼は、従来鋼と同等の強度が要求さ
れ、更に高い捩り特性が要求されるバネとして各種機
械,器具に組み込まれて使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 捩り角度の測定に使用した試験片
【図2】 15%調質圧延材を525℃で均熱60分の
時効処理を施した鋼材について、硬さと捩り角度との関
係を示したグラフ
【図3】 525℃均熱60分の時効処理を施した鋼材
について、時効処理後の硬さ及び捩り角度に時効処理前
の調質圧延率が及ぼす影響を表したグラフ
【図4】 15%調質圧延材を均熱時間60分で時効処
理した鋼材について、時効処理後の硬さ及び捩り角度に
及ぼす時効処理温度の影響を表したグラフ
【図5】 15%調質圧延材を525℃で時効処理した
鋼材について、時効処理後の硬さ及び捩り角度に及ぼす
時効処理時間の影響を表したグラフ
【符号の説明】
A,B:掴み部 C:板幅極小部

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.06重量%以下,Si:0.5
    〜2.0重量%,Mn:1.0重量%以下,S:0.0
    05重量%以下,Ni:6.5〜9.5重量%,Cr:
    12.0〜16.0重量%,N:0.015重量%以下
    を含み、更にTi:0.45重量%以下,Nb:0.5
    5重量%以下及びAl:0.45重量%以下の1種又は
    2種以上を含み、式(1)で定義されるH値が0.20
    〜0.80の範囲にあり、式(2)で定義されるD値が
    2.45以下となるように成分調整された鋼に、溶体化
    処理後又は焼鈍後に圧下率3〜30%の調質圧延を施し
    次いで500〜550℃で均熱10分以上加熱する時効
    処理を施す強度及び捩り特性に優れたバネ用析出硬化型
    ステンレス鋼の製造方法。 H=Si%×(Ti%+0.8×Nb%+Al%) ・・・・(1) D=[Cr%+3.5×(Ti%+Nb%+Al%)+1.5×Si%] /[Ni%+0.65×Mn%+10×C%] ・・・・(2)
  2. 【請求項2】 請求項1記載の合金成分に加え、更にC
    u:1.5重量%以下及び/又はMo:3.0重量%以
    下を含み、式(3)で定義されるD´値が2.45以下
    となるように成分調整された鋼に、溶体化処理後又は焼
    鈍後に圧下率3〜30%の調質圧延を施し次いで500
    〜550℃で均熱10分以上加熱する時効処理を施す強
    度及び捩り特性に優れたバネ用析出硬化型ステンレス鋼
    の製造方法。 D´=[Cr%+3.5×(Ti%+Nb%+Al%)+1.5×Si% +Mo%]/[Ni%+0.3×Cu%+0.65×Mn%+10×C%] ・・・・(3)
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