JP2660582B2 - 電解処理方法 - Google Patents

電解処理方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、金属板を電気化学的に粗面化処理する電解
処理方法に関するものであり、特に、印刷版用アルミニ
ウム支持体の電解処理方法に関するものである。
〔従来の技術〕
印刷版支持体、特にオフセット印刷版用支持体とし
て、アルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)が用
いられている。
一般に、アルミニウム板をオフセット印刷用版材(支
持体)として使用するためには、該アルミニウム板が感
光材との適度な接着性と保水性を有していることが必要
である。
このためには、アルミニウム板は表面が均一かつ緻密
な砂目を有する様に粗面化されなければならない。この
粗面化処理は、製版後実際に印刷を行ったときに版材の
印刷性能や耐刷力に著しい影響を及ぼすので、その良否
は版材製造上重要な要素となっている。
印刷版用アルミニウム支持体の粗面化方法としては、
交流電解エッチング法が一般的に採用されており、電流
としては、普通の正弦波交流電流、矩形波等の特殊交番
波形電流が用いられている。そして、黒鉛等の適当な電
極を対極として用い、交流電流によりアルミニウム板の
粗面化処理を行うもので、通常一回の処理で行われてい
る。しかし、このような方法で得られるピット深さは全
体的に浅く、耐刷性能に劣るものであった。このため、
その直径に比べて深さの深いピットを均一かつ緻密に存
在させて、印刷版用支持体として好適なアルミニウム板
を得るためには、数々の方法が提案されている。
その方法としては、例えば、特殊電解電源波形を使っ
た粗面化方法(特開昭53−67507号公報),交流を使っ
た電解粗面化時の陽極と陰極の電気量の比率を設定した
方法(特開昭54−65607号公報),特殊電源波形による
方法(特開昭55−25331号公報),単位面積あたりの通
電量の組み合わせによる方法(特開昭56−29699号公
報)などが知られている。
なお、これらの技術は、印刷版用アルミニウム支持体
の粗面化以外にも、鉄などの電解エッチング処理,電解
着色など広汎に実用化されており、また、利用される電
源は、要求される品質や反応効率の向上の目的から直
流,商用交流,その他サイリスター制御による特殊波形
や矩形波交番電流等が用いられている。
第4図は、従来のシステムを利用したオフセット印刷
版の電解粗面化装置の概略図を示す。
1,2は主対極と成る黒鉛電極、3は補助対極で、ダイ
オード5を通して電流が流れる為にアノード電流のみが
流れる。4は電源で、商用交流,矩形波等、求める品質
レベルに応じて決められており、第5図にその電流波形
を示す。6はアルミニウムウェブ6、7はアルミニウム
ウェブ6を支えるガイドロール、8はインシュレーター
で、隣接する黒鉛電極1,2への電流廻り込みを防止する
ものであり、9は電解セル、10は電解液で、オフセット
印刷版の場合、硝酸,塩酸を主体とした液が用いられ
る。
このような構成において、主対極に前記黒鉛電極1,2
を適用した場合、QRA<Q′FA+QP,QRA>Q′FA、即ち
(QFA=Q′FA+QP)とすることが黒鉛電極を溶解させ
ない為の条件であり、その為、第5図の様な特殊波形Q
FA>QRA が電源として必要であった。
但し、 QRA:黒鉛電極Aから流出する電気量 Q′FA:黒鉛電極Bから流出する電気量 QP:補助極3から流出する電気量 QFA:黒鉛電極Bと補助極3から流出する電気量 〔発明が解決しようとする課題〕 しかしながら、第5図に図示した様な特殊波形を発生
させる電源は電気回路が複雑となり、電源設備が大型と
なってコストが高くなると共に、変圧器が偏磁してしま
う為、それを対策する装置については複雑な制御が必要
であると云う欠点を有した。
また、QFA>QRAとなると、第5図で対称波形の場合、
IF>IPとなることから、第4図での黒鉛電極1及び黒鉛
電極2とアルミニウムウェブとの間に電極反応の差が生
じ、均一な粗面化処理が出来ないと云う欠点があった。
本発明の目的は、上記欠点を解消する為に成されたも
ので、均一な粗面化処理が行えると共に、複雑な電源設
備を不要にしてコスト低減も図れる電解処理方法を提供
することにある。
〔課題を解決するための手段及び作用〕
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討
した結果、硝酸または塩酸を主体とする電解処理液中
で、被処理材と黒鉛対極との間に交番電流を供給して該
被処理材に電気化学的処理を施す交流電解処理方法であ
って、前記対極を主対極と補助対極及び両者によって挟
まれたインシュレータによって形成し、該主対極に接続
された回路に、上記補助極に対する回路を並列に連結
し、アノード電流の主対極における流れを制御するため
のダイオード又はサイリスタ等ダイオード的作用をなす
機構を電源又は前記補助対極に対する回路に設け、前記
電源で発生する波形の位相角に応じて該機構により位相
角制御を施して前記補助対極に対する回路に制御分岐電
流を流すことを特徴とする電解処理方法により、本発明
の目的が達成されることを見出した。
以下、図面を用いて本発明の実施態様を説明する。
第1図は本発明に適用されるアルミニウム電解粗面化
装置の構成図であり、第2図はその電流波形のモデルを
示した図である。
なお、従来例と同一構成部分については同一符号を用
い、説明は簡単に述べる。
第1図において、1は被処理材に対して対向配置され
た黒鉛電極、2は同じく対向配置された黒鉛電極、3は
同じく対向配置された補助対極で、後述する電源4で位
相制御が行われてアノード電流のみが流れる。4は電源
であり、一端が分岐されて黒鉛電極1と補助対極3に接
続されており、同じく他端が分岐されて黒鉛電極2と前
記補助対極3に接続されている。この際、前記電源4又
は前記補助電極3は、例えば後に第3図に示すように前
記アノード電流の主対極1又は2への流れを制御するた
めのダイオード的作用をなす機構を有しており、電源4
は、第2図に示す様な電源波形を出力する。この場合、
電源4の両出力端子から流出する電気量をそれぞれ
QFA、QRAとするとQFA=QRAであり、フォアード,リバー
ス共、位相角制御によって補助対極に流す電流を制御す
る。
なお、第2図は、第1図に示す〜における各波形
を示している。
第2図において、Q′RA、Q′FAはそれぞれ黒鉛電極
1、黒鉛電極2から流出する電気量で、QRP、QFP
QRA、QFAのうち、位相角制御によって補助極3から流出
する電気量である。
この様に位相角制御をして補助対極に電流を流すこと
で、黒鉛電極1ではQ′RA<Q′FA+QFP=QFA、黒鉛電
極2ではQ′FA<Q′RA+QRP=QRAとなり、黒鉛電極の
溶解を防ぐことができる。
なお、電源4はQFA=QRA、(QFA=Q′FA+QFP,QRA
Q′RA+QRP)である。
6はアルミニウムウェブ、7はアルミニウムウェブと
黒鉛電極1,2及び補助対極3との間のクリアランスが一
定となる様に支持するガイドロール、8はインシュレー
ター、9は電解セル、10は電解液であり、ポンプで循環
しても良しても良いし、循環系の一部に熱交換器及びフ
ィルターを設置しても良い。また、温度制御について
は、循環系に設置することとし、電解液は不純物を分離
除去した方が良い。また、電源4の位相角制御に関して
は、第3図に図示する様に、サイリスタで制御するのが
一般的である。即ち、第3図において、11は整流回路、
12はチョッパー回路、13は主極へ流れる回路(第1図で
は黒鉛電極1,2)、14は補助極へ流れる回路、15は補助
対極の位相角制御を行うため、前記チョッパー回路12の
出力に並列に組み込まれたサイリスタから成る制御回路
である。
〔実 施 例〕
硝酸10g/、アルミ2g/、温度40℃の電解液中にJIS
1050材アルミニウム板のオフセット印刷版支持体を作
成する為、前記第1図の装置にて電解粗面化処理を行っ
た。補助電極としては、フェライト電極を用い、アルミ
巾1000mm、処理スピード1m/minで、QFA=QRA:(300c/dm
2),QRP=QFP:(30c/dm2)の条件に設定し、電源周波数
40Hzの対称波形を用いた。粗面化された板をスマット除
去後電子顕微鏡にて観察したところ、1μ〜5μの均一
なピットが多数出来ていた。また、1年間稼働させた
が、電源の故障もなく、黒鉛電極の消耗も全くなかっ
た。
〔比 較 例〕
硝酸10g/、アルミ2g/、温度40℃の電解液中にJIS
1050材アルミニウム板のオフセット印刷版支持体を作
成する為、前記第4図の装置にて電解粗面化処理を行っ
た。補助電極としては、フェライト電極を用い、アルミ
巾1000mm、処理スピード1m/minで、QFA:310c/dm2,QRA:2
90c/dm2、電源周波数40Hzの波形を用いた。粗面化され
た板をスマット除去後電子顕微鏡にて観察したところ、
1μ〜10のピットがやや不均一に生成されていた。ま
た、1年間稼働させたところ、3解故障停止した。
〔発明の効果〕
上記実施例から明らかな様に、本発明の電解処理方法
により均一なピットが生成できる共に、電源に複雑な制
御が不必要となり、従って、故障回数も減少された。ま
た、設備費も1/5程度となった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に適用される電解粗面化装置の概略構成
図、第2図は第1図装置の各点における電流波形図、第
3図は位相角制御を行う回路例、第4図は従来例に適用
されるオフセット印刷版支持体の電解粗面化装置の概略
構成図、第5図は第4図装置における電流波形図であ
る。 1,2……黒鉛電極(主対極) 3……補助対極 4……電源 5……ダイオード 6……アルミニウムウェブ 7……ガイドロール 8……インシュレーター 9……電解セル 10……電解液 11……整流回路 12……チョッパー回路 13……主対極へ流れる回路 14……補助極へ流れる回路 15……位相角制御回路

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硝酸または塩酸を主体とする電解処理液中
    で、被処理材と黒鉛対極との間に交番電流を供給して該
    被処理材に電気化学的処理を施す交流電解処理方法であ
    って、前記対極を主対極と補助対極及び両者によって挟
    まれたインシュレータによって形成し、該主対極に接続
    された回路に上記補助極に対する回路を並列に連結し、
    アノード電流の主対極における流れを制御するためのダ
    イオード又はサイリスタ等ダイオード的作用をなす機構
    を電源又は前記補助対極に対する回路に設け、前記電源
    で発生する波形の位相角に応じて該機構により位相角制
    御を施して前記補助対極に対する回路に制御分岐電流を
    流すことを特徴とする電解処理方法。
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