JP2759382B2 - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents

平版印刷版用支持体の製造方法

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JP2759382B2 JP3131058A JP13105891A JP2759382B2 JP 2759382 B2 JP2759382 B2 JP 2759382B2 JP 3131058 A JP3131058 A JP 3131058A JP 13105891 A JP13105891 A JP 13105891A JP 2759382 B2 JP2759382 B2 JP 2759382B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム板の表面
を電気化学的に粗面化処理する平版印刷版用支持体の製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、オフセット印刷版用支持体とし
てアルミニウム板が使用されており、その表面は、その
上に設けられる感光層との密着性を良好にすること、印
刷時に使用する湿し水を保持すること等の目的のため
に、通常、粗面化されている。
【0003】この粗面化の処理方法として、ボールグレ
イニング、ブラシグレイニングなどの機械的処理方法が
知られているが、近年、塩酸、硝酸などの酸性電解液中
でアルミニウム板の表面を電気化学的に粗面化処理をす
る電解粗面化処理方法が注目されている。この電解粗面
化処理方法は、従来の機械的粗面化処理方法に比べて平
均粗さ分布の小さな均一な粗面を有するアルミニウム板
が得られるが、そのような粗面を得るための条件は極め
て狭いものである。しかし、電解液組成、温度、電解条
件などの諸条件を一定にすれば、製品のばらつきも極め
て少なく、均一な性能を有するアルミニウム板を容易に
得ることができる。
【0004】しかしながら、塩酸、硝酸などの水溶液中
での電解粗面化方法は、電気化学的な反応により溶出し
たアルミニウムイオン液の疲労がおこるので、水と硝酸
または塩酸を添加し、電解液中のアルミニウムイオン濃
度、硝酸または塩酸濃度を一定にする必要があった。ま
た、このとき増加した電解液はオーバーフローさせて廃
液として系外に排出するので、自然界にとって有害な成
分を取り除く処理を行う必要があった。これらの理由に
より、塩酸等の水溶液中での電解粗面化方法は極めてコ
ストが高いものであった。また、イオン交換膜により酸
の回収を行うという方法もあるが、この方法によると付
帯設備が大きくなり、メンテナンスの点で問題が残って
いた。
【0005】そこで、以上のような塩酸等の水溶液を用
いる方法を改善するために、中性塩水溶液中で直流また
は交流を用いて電気化学的に粗面化をおこなう方法が提
案されている(特開昭52-26904号公報等)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した中性塩水溶液
を用いる方法は、コストが低く好ましいものであった
が、均一で充分に深いピットを得るには充分でなかっ
た。
【0007】本発明は、上記問題点を解消し、均一で充
分に深いピットを形成することができる平版印刷版用支
持体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意研究し、パルス状の電位をアルミ
ニウム板に与えると、均一かつ充分に深いピットを形成
できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】すなわち、本発明の平版印刷版用支持体の
製造方法は、中性塩水溶液中でアルミニウム板を陽極に
してパルス状の電位を与えて電気化学的に粗面化する平
版印刷版用支持体の製造方法において、前記パルス状の
電位の低電位時に、アルミニウム板とこれに対向する電
極とに流れる電流密度が0.1〜1.5A/dm2である
ことを特徴として構成されている。
【0010】本発明において、アルミニウム板を陽極に
してパルス状の電位を与えるとは、アルミニウム板の処
理面の任意の点の電位が所定間隔で変わるようにするこ
とで、その電位の周期のduty比が2:1〜1:9である
ことが好ましい。
【0011】例えば、duty比が2:1〜1:9のパルス
化した直流電圧を用いて行なう。このパルス化した直流
電圧は、直流電圧が周期的に強さを変えるものをいい、
例えば、交流をサイリスタ、トランジスタ、GTOなど
で整流したもの、交流と整流素子を通して直流に変換
し、その直流をサイリスタ、トランジスタ、GTOなど
を使ったインバータ回路を使ってチョッピングしたも
の、米国特許第4897168号明細書で開示されているよう
な短時間で反転するような波形のものがある。
【0012】また、中性塩水溶液中で連続直流電圧を用
いてアルミニウム板を陽極にして電気化学的に粗面化処
理を行なうときに、アルミニウム板に対向する陰極のア
ルミニウム板の進行方向の長さAと陰極の間隔Bの比
A:Bが2:1〜1:9となるように陰極を複数個設置
して行うこともできる。
【0013】さらに、中性塩水溶液中で連続直流電圧を
用いてアルミニウム板を陽極にして電気化学的に粗面化
処理を行なうときに、アルミニウム板とこれに対向する
陰極の間にアルミニウム板の進行方向と垂直なスリット
を有するマスキングボードを設置し、スリットのアルミ
ニウム板の進行方向の長さCとスリットの間隔Dの比
C:Dが2:1〜1:9となるようにスリットを複数個
設置して行うこともできる。このマスキングボードとし
ては、例えば、塩化ビニール、テフロン、ポリエチレン
などを単体又はこれらが被服されたものを用いる。ま
た、マスキングボードは分割したものを並べてもよい。
【0014】アルミニウム板の処理面の任意の点にかか
る電位の周期は、0.1〜60Hzが好ましく、特に0.5〜2.0H
zが好ましい。電位の周期は、パルス状の直流電圧を用
いるときは、その電源電圧の周期を変化させることによ
り達成される。連続直流電圧を用いるときは、アルミニ
ウム板の移動速度Vからアルミニウム板に対向する陰極
の長さAと、設置間隔B又はアルミニウム板とアルミニ
ウム板に対向する電極との間に設置するマスキングボー
ドのスリットの長さCと間隔Dを計算により求め、電極
またはマスキングボードを所定位置に設置することによ
っても達成される。
【0015】電流密度は、アルミニウム板にかかるパル
ス状の電位が高い時に流れる電流において、1〜200
A/dm2が好ましい。また、パルス状の電位の低電位
時においては、電流密度が0.1〜1.5A/dm2であ
る。電流密度をこの範囲に設定することにより、どのよ
うな電源装置を用いても均一なピットを形成することが
できる。
【0016】また、電解時間は、0.1〜90秒が好まし
く、パルス状の直流を用いた場合、その立ち上がり時間
または立ち下がり時間は0〜100msecが好ましく、特に
0〜3.0msecが好ましい。立ち下がり時間は特に砂目立
てに影響を与える。
【0017】本発明に用いる中性塩水溶液は、例えば、
特開昭52-26904号公報に記載されているような中性塩の
水溶液であり、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金
属硝酸塩であり、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムが好
ましく、特に、硝酸ナトリウムが好ましい。pHは5〜9
が好ましく、特に、溶解したほとんどのアルミニウムイ
オンが水酸化アルミニウム又は酸化アルミニウム水和物
の形で沈澱し、かつ中性塩水溶液はアルミニウム板の持
ち出し以外にはほとんど消費されず、ろ過又は遠心分離
により中性塩水溶液から連続的に除去することができ廃
液処理に要するコストを低減できるので、pH6〜8の範
囲が好ましい。但し、アルミニウム板または電極界面近
傍はpH5以下又はpH9以上になる。濃度は、1〜40%が
好ましい。液温は、35〜75℃が好ましい。
【0018】アルミニウム板に対向する電極としては、
カーボン、ステンレスなどを用いることができる。電極
はあまり大きな物は製作困難であるため、分割した物を
1〜5mmの間隔を隔てて、または1〜5mm程度の厚さの
塩ビ等で出来たインシュレーターを挟んで並べて1個の
電極とするのが常法である。
【0019】本発明で用いるアルミニウム板は、純アル
ミニウム板またはアルミニウム合金板をいう。
【0020】本発明の中性塩水溶液中での電解粗面化処
理の前段に、苛性ソーダ、硫酸、硝酸等への浸漬による
エッチング処理及び洗浄処理、中性塩水溶液中での電解
洗浄処理等の前処理を行うことが好ましい。
【0021】本発明の中性塩水溶液中での電解粗面化処
理の後段に、苛性ソーダ、硫酸、硝酸等への浸漬による
軽度のエッチング処理及びデスマット処理、中性塩水溶
液中での電解洗浄処理等の後処理を行うことが好まし
い。中性塩水溶液中での電解洗浄処理は、専用の電源を
設けてもよいし、本発明の電解粗面化に用いるパルス化
した直流電流を供給する電源を共用してもよい。
【0022】さらに、このように処理されたアルミニウ
ム板は、親水性、保水性、耐印刷性能を向上させるため
に、常法により硫酸または燐酸を含む電解液中で陽極酸
化処理を行うことが出来る。また、陽極酸化処理後に封
孔処理を行うことが出来る。さらにまた、珪酸ソーダな
どを含む水溶液中に浸漬し、浸水化処理を行うこともで
きる。また、特公昭57−16918号公報に開示されている
ように、機械的な粗面化を事前に行ってもよい。
【0023】
【作用】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、パ
ルス化した直流電圧によりアルミニウム板が電解処理さ
れ、均一かつ深いピットが形成される。
【0024】
【実施例】本発明の印刷版用支持体の製造方法の一実施
例を図1及び図2に基づいて説明する。
【0025】図1は、印刷版用支持体の製造方法を実施
する支持体製造装置の一例の概略図、図2は同上におい
て用いるパルス化された直流電圧の一実施例の波形図で
ある。
【0026】図1において、符号10はアルミニウム板を
中性塩水溶液中で陰極として電解処理する陰極電解処理
部、符号20は陰極電解処理部で処理されたアルミニウム
板を中性塩水溶液中で電気化学的に粗面化処理する粗面
化処理部、符号30は粗面化処理部で粗面化処理されたア
ルミニウム板を中性塩水溶液中で陰極として電解処理す
る陰極電解処理部30である。
【0027】陰極電解処理部10、粗面化処理部20及び陰
極電解処理部30は、それぞれ陰極電解槽11、粗面化処理
槽21及び陰極電解槽31に中性塩水溶液12、22及び32が貯
留されており、中性塩水溶液12及び32内には陽極13及び
33が配置され、また中性塩水溶液22内には陰極23が配置
されている。そして、陰極23は、パルス直流電源40を介
して陽極13及び33にそれぞれ接続されている。
【0028】また、各中性塩水溶液12、22及び32中並び
にその上方には、ロール50…50が配置され、アルミニウ
ム板としてのアルミニウムウェブ60の走行路が形成され
ている。
【0029】以上のような印刷版用支持体の製造装置で
支持体を製造するには、まず、中性塩水溶液12、22及び
32にパルス直流電源40で図2に示すパルス直流電圧を供
給するとともに、アルミニウムウェブ60を走行させる(
図中、右方向) 。すると、アルミニウムウェブ60は、ま
ず、陰極電解処理部10において陰極として電解処理さ
れ、表面が洗浄される。次に、粗面化処理部20でパルス
化した直流電圧で所定粗さの粗面化処理がなされる。そ
して、陰極電解処理部30において再び陰極として電解処
理され、表面が洗浄される。電極33への電流は、サイリ
スタ41、GTOなどの点孤タイミングにより調整するこ
とができる。
【0030】図3は、パルス化した直流電圧の他の例の
波形図である。このパルス化した直流電圧は、図2のパ
ルス化した直流電圧に比して振幅が大きくかつパルス間
隔が短くなっている。
【0031】図4は、印刷版用支持体の製造装置の他の
例の概略図である。図4に示す製造装置は、陰極23がパ
ルス直流電源40を介してコンダクタロール70に接続さ
れ、このコンダクタロール40が直接アルミニウムウェブ
60に接続されている。
【0032】実施例1 まず、JIS 1050−H18アルミニウム板を苛性ソーダ水溶
液で洗浄した後水洗した。次に、硝酸イオン濃度120g/
lを含む硝酸ナトリウム水溶液中で、アルミニウム板に
1Hzでduty比1:1の直流パルスを加え粗面化処理をお
こなった。そして、この粗面化処理されたアルミニウム
板を、60℃の硫酸水溶液300g/lに20秒間浸漬した後水
洗し、電解粗面化処理で生成した水酸化アルミニウムを
除去した。
【0033】従来例1 1Hzの交流矩形波を用いた他は、実施例1と同様に行っ
た。
【0034】従来例2 連続直流を用いた他は、実施例1と同様に行った。
【0035】以上の実施例1、従来例1及び2で得られ
たアルミニウム板の粗面を走査型電子顕微鏡で観察し
た。観察結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】表1から明らかなように、実施例1が従来
例より均一な粗面となっており、このときの平均ピット
径は約5μmであり、平らな部分に均一なピットを有す
る表面であった。
【0038】実施例2 厚さ0.3mmのアルミニウム板(JIS 1050材)を5%の水
酸化ナトリウム水溶液中60℃でエッチング処理を行った
あと、水洗し25%の硫酸水溶液中60℃でデスマット処理
をおこない水洗した。
【0039】次に、硝酸イオン120g/lを含むpH
7の硝酸ナトリウム水溶液中45℃でアルミニウム板に
矩形波のパルス直流をアルミニウム板が陽極となるよう
に加え、アルミニウム板の粗面化処理を行った。パルス
のduty比は1:1であり、周期は1Hzであった。
電流密度は高電圧時の電流密度(IH)をIH=60A
/dm2とし、低電圧時の電流密度(IL)を、表2に示
したように、−0.6、0、0.3、0.6、1.2A/
dm2と変化させて、それぞれ粗面化処理をおこなっ
た。電解処理時間は20秒間であった。
【0040】このアルミニウム板の面質を目視により観
察し、そのピット形状を走査型電子顕微鏡で観察した。
結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】本発明は、パルス化した直流電圧を用い
て電解粗面化処理することいより、均一かつ深いピット
を形成することができるので、印刷版用支持体として極
めて好適な粗面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による印刷版用支持体の製造方法を実施
する支持体製造装置の一例の概略図。
【図2】本発明による印刷版用支持体の製造方法に用い
るパルス化された直流電圧の波形図。
【図3】パルス化された直流電圧の他の実施例の波形
図。
【図4】他の支持体製造装置の概略図。
【符号の説明】
10…陰極電解処理部 20…粗面化処理部 30…陽極電解処理部 12、22、32…中性塩水溶液 13、33…陽極 23…陰極 40…パルス直流電源 41…サイリスタ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中性塩水溶液中でアルミニウム板を陽極
    にしてパルス状の電位を与えて電気化学的に粗面化する
    平版印刷版用支持体の製造方法において、前記パルス状
    の電位の低電位時に、アルミニウム板とこれに対向する
    電極とに流れる電流密度が0.1〜1.5A/dm2であ
    ることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法
JP3131058A 1991-01-23 1991-06-03 平版印刷版用支持体の製造方法 Expired - Fee Related JP2759382B2 (ja)

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DE2537724C3 (de) * 1975-08-25 1981-02-26 Hoechst Ag, 6000 Frankfurt Verwendung eines Verfahrens zum elektrochemischen Aufrauhen von Aluminium bei der Herstellung von Flachdruckplattenträgern
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