JP2653799B2 - 窒素酸化物の除去方法および該方法に用いる触媒 - Google Patents

窒素酸化物の除去方法および該方法に用いる触媒

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は窒素酸化物の除去およびそれに用いる触媒に
係り、特に排ガス中の揮発性金属化合物によって触媒の
活性が低下し難い触媒および該触媒を用いて効率よく窒
素酸化物を除去する方法に関する。
〔従来の技術〕
各種排ガス中の窒素酸化物(NOx)をアンモニア(N
H3)で還元除去する方法はシステムが簡単で効率がよい
ため、ボイラ燃焼排ガスを初めとする各種固定用発生源
排ガスの脱硝プロセスの主流となっている。このプロセ
スには、NOxとNH3との反応を促進するための、いわゆる
脱硝触媒が必要であり、これまでに数多くの発明がなさ
れてきた。これらのうち現在実用に供されているもの
は、特開昭50−51966号および特開昭52−122293号に代
表される酸化チタン(TiO2)を主成分とし、これにバナ
ジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン
(W)、鉄(Fe)などの酸化物を添加したものである。
これらの触媒は排ガス中にイオン酸化物が含まれていて
も劣化しにくく、高い脱硝性能を示す優れたものであ
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、このような従来の触媒は、燃料中の鉱
物成分から主に生成する揮発性の金属化合物、すなわ
ち、セレン、テルル、タリウム、ヒ素の酸化物やこれら
とアルカリ金属、アルカリ土類金属等との化合物による
触媒活性の低下については考慮されていなかった。
近年、鉱物質を多く含有する石炭や石油が燃料に用い
られ、排ガス中の前記揮発性化合物濃度が高くなる傾向
にあるが、このような排ガスの脱硝に上記従来触媒を使
用すると、活性が大幅に低下するという問題を生じる。
本発明の目的は、排ガス中の揮発性金属化合物による
活性低下を防止した耐久性に優れた触媒および該触媒を
用いる脱硝方法を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明の第1は、窒素酸化物を含有する排ガスをアン
モニアの存在下で酸化チタンを含有する触媒と接触させ
て窒素酸化物を除去する方法において、排ガスが揮発性
金属化合物を含有するものであり、かつ前記酸化チタン
の平均細孔直径が10,000Å以下で、その全細孔容積に対
する400〜5000Åの細孔直径を有する細孔の占める容積
の割合が50%以上であることを特徴とする窒素酸化物の
除去方法である。
本発明の第2は、平均細孔直径が10,000Å以下で、か
つ全細孔容積に対して400〜5000Åの細孔直径のものの
占める容積の割合が50%以上である酸化チタンに脱硝活
性成分を担持してなることを特徴とするアンモニア接触
還元用窒素酸化物除去触媒である。
本発明の第3は、酸化チタンの水性スラリゾル、また
はチタン塩を加水分解させて得られた水酸化物からなる
触媒担体前駆体を150℃以上、700℃以下の温度で予備焼
成した後、これに脱硝活性成分を添加して本焼成するこ
とを特徴とするアンモニア接触還元用窒素酸化物除去触
媒の製法である。
本発明になる触媒は、従来の酸化チタンを含有する触
媒に比較して、揮発性金属化合物による活性低下が著し
く小さくなる。この理由は現在のところ明らかではない
が、本発明の触媒は、従来の酸化チタンを含有する触媒
に比較し、直径400Å以上、10,000Å以下の細孔が増加
することにより、揮発性金属化合物の凝縮が起こりにく
くなるため、活性低下を防止できるものと考えられる。
本発明になる触媒は、少なくとも酸化チタンを含有
し、直径10,000Å以下の平均細孔を有し、かつ細孔容積
の50%以上、好ましくは60%以上を、直径400Å以上、5
000Å以下、好ましくは400〜2000Åの細孔が占めるもの
である。直径400Å未満の細孔が50%以上を占める場合
は、揮発性金属化合物が凝縮し易く、触媒が被毒され易
い。また、直径5000Åを超える細孔が50%以上を占める
場合は、触媒活性が低く実用的でない。
また、本発明の方法に用いる触媒用の酸化チタンには
脱硝反応の活性を示す各種の成分、例えばV、Mo、W、
Mn、Fe、Cr、Ce、Cu、Niなどの酸化物、これらの複合酸
化物および/または硫酸塩などを加えることにより、高
活性の触媒が得られる。これらのうち、特にV、Mo、
W、V−Mo複合酸化物、V−Mn複合酸化物が優れてい
る。さらに触媒性能、例えば強度向上のためなどに各種
の添加物(SiO2、Al2O3等)を加えることも可能であ
る。
触媒形状としては、ペレット状、球状、円筒状、ハニ
カム状、板状、三次元網目状などいずれも使用できる。
触媒の細孔容積を制御し、直径400Å以上、5000Å以
下の容積が50%以上を占めるようにする方法としては、
予備焼成法と高分子添加法がある。
予備焼成法は、前記の脱硝活性成分を担持する前の、
チタン化合物を含有する触媒担体の前駆体を、150℃か
ら700℃、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは250
〜350℃の温度で予め焼成しておき、その後、脱硝活性
成分を添加し、本焼成する方法である。予備焼成温度が
150℃未満では焼成による細孔容積制御の効果が小さ
く、触媒が被毒され易い。また700℃を超えると担体の
比表面積が小さくなり、触媒活性が低くなるため実用的
でない。触媒担体の前駆体としては、酸化チタンのスラ
リゾル、チタン塩、例えば硫酸チタン、四塩化チタン等
の各種のチタン塩を加水分解等により沈澱させて調製し
た水酸化物等があげられる。さらに担体の強度向上のた
めなどに、SiO2、Al2O3、ZrO2のような添加剤を加えた
ものも用いてもよい。本焼成温度としては、150℃から7
00℃が好ましい。
高分子添加法は、上述の触媒担体の前駆体に高分子化
合物を予め混合し、予備焼成を行なった後、触媒活性成
分を担持する方法である。高分子化合物としては、熱分
解温度が150〜400℃、好ましくは300℃以下のもの、例
えばPVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブ
チラート)、PEO(ポリエチレンオキシド)等の有機高
分子があげられる。これらのうち、特にポリビニルアル
コールが好ましい。高分子化合物の添加量は1〜20重量
%、好ましくは1〜10重量%である。1重量%に達しな
いとその効果が少なく、20重量%を超えると平均細孔の
直径が5000Å以上となり脱硝性能が低下する。予備焼成
温度は、高分子化合物の熱分解温度以上である。例えば
PVAの場合、その分解温度は約400℃であるから、この温
度以上であればよいが、700℃以上では担体の比表面積
が小さくなり実用的でない。担体から高分子化合物が加
熱分解、蒸散した部分に直径の大きな細孔が形成され
る。触媒活性成分担持後、触媒は一般に本焼成される
が、この焼成温度は150〜700℃、好ましくは300〜700℃
である。
上記したように細孔を直径10,000Å以下で、かつ全細
孔容積の50%以上を直径400〜5000Åで占める酸化チタ
ン触媒担体を用いることにより、排ガス中に含まれる揮
発性金属酸化物の触媒中での凝縮を抑え、高活性を維持
することができる。
本発明になる触媒を用いて脱硝反応を行なう場合の温
度は150℃以上、600℃以下が好ましく、特に200℃以
上、550℃以下が好ましい。この温度範囲外では脱硝活
性が低くなる。
〔実施例〕
以下、実施例をあげて本発明の内容をより詳細に説明
する。
なお、本発明における触媒の細孔容積および細孔直径
の測定法は水銀圧入法によった。
実施例1 本発明の方法に用いる触媒を下記のように調製した。
メタチタン酸スラリ(TiO2として30重量%含有)100g
を100℃で乾燥する。得られた粉末を500℃で4時間予備
焼成し、酸化チタン担体の粉末を得る。上記担体粉末に
モリブデン酸アンモニウム7.1g、バナジン酸アンモニウ
ム2.0gをライカイ機にて充分混練する。200℃で乾燥
後、1重量%のグラファイトを加え、直径6mm、高さ6mm
に打錠成型する。得られた成型品を500℃で2時間本焼
成して実施例触媒1を得た。この触媒はTiO2にMoO3とV2
O5を、Ti/Mo/V=86/10/4のモル比で含有するものであ
る。
実施例2〜4 実施例1における予備焼成温度を150℃(実施例
2)、300℃(実施例3)、700℃(実施例4)とし実施
例1と同様の方法により触媒を調製し、実施例触媒2〜
4を得た。
比較例1 実施例1において、予備焼成を行なわず、メタチタン
酸スラリにモリブデン酸アンモニウム、バナジン酸アン
モニウムを直接添加し、ライカイ機にて充分混練する。
以下実施例触媒1と同様の方法により、比較例触媒1を
得た。
実施例1〜4および比較例1で得られた触媒の細孔容
積および細孔直径を水銀圧入法により測定した。
第1図は、実施例1および比較例1における細孔直径
に対する細孔容積および細孔分布を示したものである。
比較例1の触媒は200Åに最大ピークが認められ、300Å
以下の細孔直径が全細孔容積の55%を占めている。これ
に対し実施例1の触媒は、細孔直径が約3000Åに最大ピ
ークを有し、400〜5000Åの範囲の細孔容積は全細孔容
積に対し62%を有していることがわかる。
同様にして実施例2、3、4について細孔分布および
細孔容積を求めた結果次のとおりであった。実施例2
(予備焼成温度150℃)では最大のピークが900Åで、40
0〜5000Åの細孔容積は全細孔容積に対し52%であっ
た。また実施例3(予備焼成温度300℃)では最大ピー
クが1500Åにあり、400〜1500Åの細孔割合は58%であ
った。実施例4(予備焼成温度700℃)では、最大ピー
クが4200Åであり、400〜1500Åの細孔割合は70%であ
った。
上述した物理的特性の異なる実施例1〜4および比較
例1の触媒について、実験例1に示す方法で脱硝性能を
調べた。
実験例1 実施例1〜4、および比較例1の触媒について鉱物質
含有率の高い石炭の燃焼排ガスを想定した模擬ガスによ
り耐久試験(加速試験)を行なった。触媒毒成分として
は、石炭中の鉱物質として一般に知られている硫ヒ鉄鉱
の酸化生成物であるSO3とAs2O3とを蒸気にしてガス中に
添加した。試験条件は第1表のとおりである。
上記耐久試験を30分間行ない、その前後で触媒脱硝性
能を測定した。測定には常圧流通式固定床反応装置を用
いて行なった。反応管は内径20mmの石英ガラス製であ
る。この反応管を電気炉で加熱し、熱電対で温度を測定
した。この反応管の中央部に10〜20メッシュに整粒した
触媒を2ml充填して、第1表に示した条件下で耐久試験
を行なった。NOxの分析にはケミルミネッセンス方式のN
Ox分析計を用い、NOx除去率は次式により求めた。
結果を第2表に示す。第2表からわかるように、本発
明触媒は比較例触媒に較べ、劣化しにくいことがわか
る。
第2表で示したように本発明からなる実施例1〜4の
触媒は、比較例1に較べ揮発性金属化合物による被毒が
少なく耐久性に優れていることがわかる。
実施例5 本実施例では実施例1で用いたメタチタン酸スラリを
100℃で予備焼成し、酸化チタン担体の粉末を得る。こ
の担体粉末にPVA(ポリビニルアルコール)を5重量%
加え、ライカイ機にて充分混練する。200℃で乾燥後、5
00℃で2時間焼成する。得られた担体粉末に実施例1と
同様の方法でMoO3とV2O5を担持し、実施例触媒5を得
た。実施例1〜4と同様にして水銀圧入法により、細孔
容積および細孔分布を調べた。その結果を第2図に示
す。図から細孔直径の最大ピークは950Åにあり、400〜
5000Åの細孔容積は全細孔容積の65%であった。
実施例6〜8 本実施例では実施例5においてPVAの添加量を2%
(実施例6)、8%(実施例7)、10%(実施例8)に
替えて、実施例5と同様な方法により実施例触媒6〜8
を得た。本実施例触媒の細孔直径の最大ピークおよび全
細孔容積に対する400〜5000Åの細孔容積の割合は、そ
れぞれ実施例6では500Å、51%、実施例7では1100
Å、68%、実施例8では3500Å、75%であった。
実施例9 本実施例では、実施例5と同様であるが、PVAの代わ
りにPEO(ポリエチレンオキシド)を用いた。その他の
調製法は全く同様である。本実施例触媒の細孔直径の最
大ピークは1100Åであり、全細孔容積に対する400〜500
0Åの細孔容積の割合は68%であった。
上述の実施例5〜9の触媒について、実験1で示した
方法で脱硝性能を調べた。その結果を第3表に示す。
以上実施例1〜9および比較例1で示したように、本
発明のごとく、細孔直径が10,000Å以下で、全細孔容積
に対して400〜5000Åの細孔容積の割合が50%以上の触
媒を用いることにより、揮発性金属化合物の被毒を抑制
することができる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、排ガス中の窒素酸化物を触媒上で接
触させて除去する方法において、排ガス中の揮発性金属
化合物による被毒を防止し、従来の脱硝触媒では劣化が
著しく適用できなかった、Se、Asなどの揮発性金属化合
物を多量に含む排ガスの処理が可能となる。また、劣化
が少なく高活性であるため、触媒の使用量を低減するこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図はそれぞれ本発明の実施例の結果を
示す触媒の細孔直径に対する細孔容積または細孔分布の
関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山下 寿生 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (72)発明者 加茂 友一 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (72)発明者 松田 臣平 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (72)発明者 加藤 泰良 広島県呉市宝町3番36号 バブコック日 立株式会社呉研究所内 (72)発明者 中島 史登 広島県呉市宝町3番36号 バブコック日 立株式会社呉研究所内 (56)参考文献 特開 昭56−108517(JP,A) 特開 昭62−204830(JP,A) 特開 昭62−227427(JP,A) 特開 昭50−98487(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒素酸化物を含有する排ガスをアンモニア
    の存在下で酸化チタンを含有する触媒と接触させて窒素
    酸化物を除去する方法において、排ガスが揮発性金属化
    合物を含有するものであり、かつ前記酸化チタンの平均
    細孔直径が10,000Å以下で、その全細孔容積に対する40
    0〜5000Åの細孔直径を有する細孔の占める容積の割合
    が50%以上であることを特徴とする窒素酸化物の除去方
    法。
  2. 【請求項2】平均細孔直径が10,000Å以下で、かつ全細
    孔容積に対して400〜5000Åの細孔直径のものの占める
    容積の割合が50%以上である酸化チタンに脱硝活性成分
    を担持してなることを特徴とするアンモニア接触還元用
    窒素酸化物除去触媒。
  3. 【請求項3】酸化チタンの水性スラリゾル、またはチタ
    ン塩を加水分解させて得られた水酸化物からなる触媒担
    体前駆体を150℃以上、700℃以下の温度で予備焼成した
    後、これに脱硝活性成分を添加して本焼成することを特
    徴とするアンモニア接触還元用窒素酸化物除去触媒の製
    法。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第3項において、前記触媒
    担体前駆体に、熱分解温度が110〜300℃の高分子化合物
    を1〜20重量%添加混合し、該熱分解温度以上の温度で
    予備焼成することを特徴とするアンモニア接触還元用窒
    素酸化物除去触媒の製法。
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