JP2645406B2 - 磁気浮上式列車の車体構造 - Google Patents

磁気浮上式列車の車体構造

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、磁気浮上式列車の車体構造に係わり、特
に、フレーク状のアモルファス金属をフィルムではさみ
込みシート状にしてなるアモルファスシートによって磁
気シールドした車体構造及び車体全体及び部分をフレー
ム状のアモルファス金属を分散させた繊維強化プラスチ
ックスで形成した車体構造に関するものである。
「従来の技術」 車体(車両)を磁気を用いて空中に浮上させ、軌道に
沿って走行させる磁気浮上式列車は、車輪とレールによ
るこれまでの鉄道に代わる新しい高速輸送機関として現
在各国で研究開発が進められている。このような磁気浮
上式列車は、磁極間の吸引力や反発力を利用して、車体
を浮上させ、リニアモーターなどによる推進手段により
走行させるもので、最近では、超電導現象を応用し、強
力な磁場を作って車体を浮上させリニアモーターにより
推進させる構造のいわゆるリニアモーターカーが実用化
直前にある。
ところで、前記磁気浮上式列車においては、その車体
を強力な磁力によって浮上させる構造上、高磁場を形成
するため、磁気による車両内部の影響に対する配慮が要
求される。
そこで、このような場合従来においては、漏洩磁場を
軽減し、車両内部を保護する目的で磁気シールドを施す
ことが提案されている。このような磁気シールドとして
は、たとえば部屋(車室)全体を磁気シールドしたり、
あるいは磁気発生体のみを磁性体(磁気シールド体)で
覆ったりする構造があるが、特に大形の車両のようなも
のでは、車室全体を磁気シールドすることが望まれる。
そこで、このような磁気シールドを行うため、たとえ
ば軟磁鉄などの磁性体プレートを用いて部屋全体を一様
に覆う構造が提案されている。
「発明が解決しようとする課題」 ところが、このような磁性体プレートによる磁気シー
ルドでは、担当の鉄の量を必要とするため、車両重量が
大きくなるなどの問題点があり、また、それに伴ってコ
スト高になるなどの不満もあった。
本発明は、このような従来技術の問題点を有効に解決
するもので、その目的とするところは、優れた磁気シー
ルドの効果があり、また全体を軽量化することのできる
磁気浮上式列車における車体構造を提供することにあ
る。
「課題を解決するための手段」 本発明は、このような目的を達成するために、磁力に
より車体が浮上させられた状態で走行する磁気浮上式列
車において、前記車体を構成する床、壁、天井の内面
に、これら内面を覆うようにしてフレーム状のアモルフ
ァス金属をフィルムではさみ込みシート状にしてなるア
モルファスシートを設けてなり、かつ、該アモルファス
シートを、床から壁に沿って天井に行くに従いその厚さ
が薄くなるように形成したことを特徴とするものであ
る。
また同様の目的を達成するために、本発明は、磁力に
より車体が浮上させられた状態で走行する磁気浮上式列
車において、前記車体全体を繊維強化プラスチックスに
より形成してなり、かつ、当該繊維強化プラスチックス
中にフレーク状のアモルファス金属を分散させた状態で
含有させてなる構成とすることもできる。
「作用」 本発明の車体構造によれば、車体の壁、床、天井の内
面のアモルファスシートが走行路側の磁界および車上か
らの磁界をそれぞれ遮蔽し、優れた磁気シールド作用を
発揮する。
しかも、前記アモルファスシートは、磁場の中心に向
かうに従いその厚みを増して形成されるので、素材の有
効利用が図れる。
なお、車体全体を繊維強化プラスチックスにより形成
し、当該繊維強化プラスチックス中にフレーク状態のア
モルファス金属を分散させた状態で含有させてなるもの
においては、車体を構成するプラスチックス中のアモル
ファス金属が走行路側および車上からの磁界を遮蔽し、
優れた磁気シールド作用を発揮する。
「実施例」 以下、本発明の一実施例を第1図ないし第3図を参照
して説明する。
これらの図において、全体として符号1で示すものが
磁気浮上式列車、符号2はこの列車1の走行路であり、
列車1を浮上させるための浮上用コイル3および列車1
を推進させるための推進案内用の地上コイル4が設置さ
れている。
前記列車2は、車体10と、この車体10を空気ばね11を
介して支持する車体フレーム12とを主体として構成さ
れ、前記車体10には座席13が設けられるとともに、前記
車体フレーム12には超電導コイル14、補助車輪15、補助
案内車輪16およびヘリウム冷凍機17などが設けられる。
そして、前記車体10は全体が繊維強化プラスチックス
(FRP)によって筒状に形成されており、この車体10を
構成する床10a、壁10bおよび天井10cの各内面には、車
体下部および走行路側からの漏洩磁場を遮蔽する目的で
アモルファスシート20が、車体の内面全面を覆うように
して設けられている。
このアモルファスシート20は、第2図および第3図な
どに示すように、フレーク状のアモルファス金属21を2
枚のフィルム22,23ではさみ込み全体をシート状にして
なるもので、図示例では、床10aに一番厚くアモルファ
スシート20が貼られ、また壁10bはその下部から上部に
向かうに従い厚みlが薄くされ、さらに、天井10cは一
番薄くアモルファスシート20が貼られた構成となってい
る。
これは磁石周辺の磁場は、中心からの距離の3乗に反
比例して減少するためで、磁石の中心磁場に近いほどア
モルファスシート20の厚みを大きくすることによって磁
気シールドの効果を向上させ、素材を有効に使用するこ
とを目的とするためである。
なお、車体10への磁気遮蔽をさらに向上させる目的
で、車体10を構成するFRPの中に予め後述のフレーク状
アモルファス金属を分散させた状態に含有させておけ
ば、プラスチックス中のアモルファス金属によっても磁
気シールド作用が発揮され、車体10の磁気シールドと車
体10の補強を兼用できるので、好ましい。
ここで、アモルファス金属としては、たとえばコバル
ト、鉄などを主成分とする軟磁性の非晶質合金片(たと
えば磁歪が(−10〜+10)×10-6で透磁率が1000以上の
コバルト基非晶質合金片))などが適用され、また、こ
のアモルファス金属をはさみ込むフィルム22,23として
は、軟質の合成樹脂(たとえばポリビニル樹脂やポリエ
ステル樹脂)が用いられるが、磁気浮上式列車の車体に
おける磁気シールドに使われる構造上、難燃性のもの
(たとえばフェノール樹脂)を使用するのが好ましい。
なお、このようなアモルファス金属を使ったアモルフ
ァスシート20を製造する場合には、所望の磁気シールド
特性に合わせて所定重量秤量したアモルファス金属21を
2枚のフィルム22,23の間に均一に分散させてフィルム2
2,23を磁気抵抗が小さくなるよう接触させて固定すれば
良い。また、磁気シールドの効果を増す場合には、アモ
ルファスシート20を複数枚重ね合わせれば良いので、製
造段階でアモルファス金属の量を予め磁気シールドすべ
き場所の磁気シールド特性に合わせて作らずに平均化し
ておき、その生産性を向上させるようにしても良い。ち
なみに、アモルファス金属21を0.20kg/m2使ったシート
によれば、漏洩磁束が60%低下することが知られている
ので、このようなシールド特性を備えたアモルファスシ
ート20を用いてこれらを重ね合わせるようにすることも
できる。
なお、前記アモルファスシート20は予め所定の幅寸法
に裁断しておき、これを接着剤等の手段により、車体10
の内面に貼ることにより取り付けられる。また、前記ア
モルファスシート20はこのように所定幅に形成されたも
のをアモルファス金属21が重なるようにして磁気抵抗が
小さくなるようにつなぎあわせて車体10の内面に取り付
けられるものであるが、このアモルファスシート20によ
り所望の磁気シールド効果を得ようとしたとき、継目に
おいて間隙が生じないようにする必要がある。第4図お
よび第5図は継目の処理方法の例を示したもので、第4
図のものは、継目が交互に形成される如くアモルファス
シート20を2重に設けたもの、また第5図に示すもの
は、継目を十分にカバーし得る程度の幅に裁断したアモ
ルファスシート20aを、継目部分に貼着したものであ
る。いずれの手段によっても継目からの漏洩磁気を遮蔽
することができるが、第4図によるものでは、アモルフ
ァスシート20が2重に形成されるから、全体的により高
い磁気シールド効果が期待できるものとなる。
ところで、FRP製の車体10を形成するには、基本的に
は接触圧形成法などが用いられる。この場合には、常温
硬化型樹脂を用い、ガラス繊維に含浸させながら成形
し、この際に前記アモルファス金属を含有させるように
すれば、プラスチックス中にアモルファス金属を分散さ
せておくことができるものである。
次に、この列車1が走行する走行路2について第6図
を参照して説明を加えておくと、この走行路2は軌道の
道床となる床版30と、この床版30の両側に床版30の長手
方向に沿って立設された左右一対のガイド壁31とから構
成され、図示例では、このガイド壁31の内面に走行路1
周辺への磁力の影響を無くす目的でアモルファスシート
20が設けられている。
次に、前記構成の磁気浮上式列車の車体構造について
の作用を説明する。
前記車体10によれば、車体10を構成する床10a,壁10b,
天井10cに、透磁性金属であるアモルファス金属を積層
したアモルファスシート20が設けられているので、該ア
モルファスシート20により超電導磁石により発生する強
い磁気を車内に漏洩せしめることがない。すなわち、ア
モルファスシート20により、走行路2側および列車1か
ら発生する強い磁気を遮蔽することができ、すぐれた磁
気シールド作用を発揮できる。しかも、アモルファスシ
ート20を構成するアモルファス金属21が極めて高透磁率
を示すものであるため、磁気遮蔽体としてのアモルファ
スシート20を極めて薄いものとすることができ、車体の
軽量化を達成することができる。特にアモルファスシー
ト20だけの全厚でいえば、従来の鉄板(たとえば25mmの
もの)に比して1/5〜1/8の厚みのものとなり、その重量
が大きくなることがない。
また、実施例では、前記アモルファスシート20は、磁
場の中心に向かうに従いその厚みを増して形成されるの
で、素材の有効利用が図れる。
「発明の効果」 以上説明したように本発明によれば、次のような優れ
た効果を奏する。
本発明の車体構造によれば、車体の壁、床、天井の
内面にアモルファスシートが走行路側の磁界および車上
からの磁界をそれぞれ遮蔽するので、優れた磁気シール
ド効果が得られ、しかも、アモルファスシートにより磁
気遮蔽体の軽量化をはかることができるので、磁気浮上
式列車における有効適切な車体を提供することができ
る。
また、前記アモルファスシートは、磁場の中心に向
かうに従いその厚みを増して形成されるので、素材の有
効利用が図れ、コストの低下を図ることができる。
また、車体を構成する繊維強化プラスチックス中に
フレーク状のアモルファス金属を分散させた状態で含有
させているので、車体自身に磁気シールド効果をもたせ
ることができ、磁気浮上式列車の車体として優れた磁気
シールド特性に優れた車体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第6図は本発明の一実施例を説明するため
に示したもので、第1図は車体構造を示す断面図、第2
図は車体の斜視図、第3図はアモルファスシートを示す
断面図、第4図および第5図は共にアモルファスシート
の継目部分を示す斜視図、第6図は走行路を説明するた
めに示した斜視図である。 1……列車、2……走行路、 10……車体、10a……床、10b……壁、 10c……天井、 12……車体フレーム、 20……アモルファスシート、 21……アモルファス金属、 22,23……フィルム。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 比企 健次 東京都中央区京橋2丁目16番1号 清水 建設株式会社内 (72)発明者 向山 澄夫 東京都中央区京橋2丁目16番1号 清水 建設株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−290102(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁力により車体が浮上させられた状態で走
    行する磁気浮上式列車において、前記車体を構成する
    床、壁、天井の内面に、これら内面を覆うようにしてフ
    レーク状のアモルファス金属をフィルムではさみ込みシ
    ート状にしてなるアモルファスシートを設けてなり、か
    つ、該アモルファスシートは、床から壁に沿って天井に
    行くに従いその厚さが薄くなるように形成したことを特
    徴とする磁気浮上式列車の車体構造。
  2. 【請求項2】磁力により車体が浮上させられた状態で走
    行する磁気浮上式列車において、前記車体全体及び一部
    を繊維強化プラスチックスにより形成してなり、かつ、
    当該繊維強化プラスチックス中にフレーク状のアモルフ
    ァス金属を分散させた状態で含有させてなることを特徴
    とする磁気浮上式列車の車体構造。
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