JP2631256B2 - 優れたクリープ強度と良好な靱性を有する高Cr耐熱鋼の製造方法 - Google Patents

優れたクリープ強度と良好な靱性を有する高Cr耐熱鋼の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】本発明は、火力発電、化学プラント
等に用いられる高Cr耐熱鋼において、優れたクリープ
強度と良好な靱性を付与する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】9〜12%Crを含有する高Cr耐熱鋼
板は、通常熱間圧延の後、1000℃以上の高温で焼な
らしあるいは焼入れ(以下単に焼ならし)され、所定の
強度に焼もどして使用される。この場合、焼ならし温度
が高いほど、焼もどし後のクリープ強度が向上すること
が知られている。このため、圧延での高温加熱を焼なら
し温度とみなし、熱間圧延後に焼ならしすることなく、
直接焼きもどすことが行われる。このような方法は特開
平2−182826号公報等で知ることができる。
【0003】上記の方法では、靱性を確保するため、1
125℃以上の温度で50%以上の高圧下を行う必要が
ある。しかしながら、スラブの表面では温度が低下しや
すく、上記の条件の確保は容易でない。また、薄手材で
は、さらに温度が低下しやすく、上記の条件の工業的実
現は困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、熱間圧延
後、焼もどす工程において、優れたクリープ強度と良好
な靱性を両立する高Cr耐熱鋼の製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高Cr耐
熱鋼を圧延後焼もどす工程において、クリープ強度と靱
性について種々検討した結果、化学成分と圧延条件の組
合せを制限することにより、優れたクリープ強度と良好
な靱性を工業的に両立できる条件を見出した。本発明は
この知見に基づきなされたものであり、その要旨とする
ところは下記のとおりである。
【0006】(1)重量%にて、 C :0.05〜0.15% Si:0.01〜0.5%、 Mn:0.1〜1%、 Cr:8〜13%、 Mo:0.7〜1.5%、 V :0.05〜0.25% Nb:0.01〜0.15% Al:0.005〜0.05%、 N :0.005〜0.1% を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、
1100℃以上の温度で加熱し、スラブ表面温度が95
0℃以上1125℃未満の温度域で圧延を開始し、75
0℃以上の温度で圧延を終了し、300℃以下まで冷却
の後、Ac1 以下で焼もどすことを特徴とする優れたク
リープ強度と良好な靱性を有する高Cr耐熱鋼の製造方
法。
【0007】(2)重量%にて、さらにB:0.000
2〜0.0025%を含むことを特徴とする前項1記載
の優れたクリープ強度と良好な靱性を有する高Cr耐熱
鋼の製造方法。
【0008】
【作用】以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
0.10%C−0.25%Si−0.52%Mn−8.
93%Cr−0.97%Mo−0.21%V−0.06
7%Nb−0.012%Al−0.054%N、残部は
Feおよび不可避的不純物からなる80mm厚の鋼スラブ
を用い、1250℃で加熱の後、種々の温度から圧延を
開始し、800〜850℃で圧延を終了した。圧延後の
板厚は25mmとした。スラブ温度は輻射温度計により測
定した。圧延後、常温まで冷却した後、780℃で3時
間の焼もどしを行い、2mmVノッチシャルピー試験での
破面遷移温度および600℃−21kgf /mm2 でのクリ
ープ破断時間を求めた。結果を図1および図2に示す。
【0009】図1で、600℃−21kgf /mm2 でのク
リープ破断時間は圧延開始温度が1125℃未満で長く
なり、クリープ破断強度が向上していることが分かる。
これは、低温圧延により鋼材中の転位密度が上昇し、焼
もどし過程での炭窒化物の析出が微細になり、析出強化
機構が十分に働くようになったためと考えられる。一
方、図2でシャルピー試験での破面遷移温度は950℃
〜1125℃未満の圧延開始温度で最も低く、良好な低
温靱性を示す。圧延開始温度がこの温度域より高すぎて
も低すぎても破面遷移温度が上昇し、低温靱性が低下し
ている。高温の圧延開始温度では結晶粒の微細化が不十
分であり、また低温の圧延開始では伸長した組織とな
り、組織が実質的に微細化されないためである。
【0010】このように、圧延開始温度は950℃以上
1125℃未満であることが必要である。以下にその他
の成分元素の限定理由について述べる。Cは常温および
高温の強度を高めるのに有効な元素であり、高Cr耐熱
鋼として要求される強度レベルから、少なくても0.0
5%を必要とする。しかし、C量の増加とともに鋼材の
靱性が低下し、溶接性も悪くなるため、上限を0.15
%とする。
【0011】Siは脱酸および強度上昇のため0.01
%以上添加するが、添加量が多いと靱性を低下するた
め、上限を0.5%とする。MnはSを固定し、強度を
高めるのに有効な元素であるが、添加量が多いとクリー
プ破断強度を低下するため、0.1〜1%とする。Cr
は焼入れ性を増すとともに、焼もどしおよび溶接後熱処
理で炭窒化物を析出し、高温強度を向上させる。またC
rは密着性のよい酸化皮膜を形成し、耐酸化性を向上さ
せるため、8%以上添加する。しかし、13%超の添加
は反応容器用鋼では不必要なため、上限を13%とす
る。
【0012】Moは高温強度、特にクリープ破断強度を
増すために添加する。しかし、0.7%未満の添加では
効果が顕著でなく、1.5%超では効果が飽和し、場合
によってはδフェライトを生成してクリープ強度を低下
するため、添加量を0.7〜1.5%とする。Vはそれ
自体炭窒化物を形成し、強度を上昇するとともに、Cr
の炭窒化物に固溶し、Cr炭窒化物をさらに安定化する
効果がある。しかし、0.05%未満では効果が認めら
れず、0.25%超では効果が飽和し、添加量に応じた
効果が得られないため、0.05〜0.25%とする。
【0013】Nbは焼もどしあるいは溶接後熱処理時に
安定な炭窒化物を形成し、またVの炭窒化物と複合析出
し、鋼のクリープ破断強度を向上させる効果を有する。
このため、0.01%以上を添加するが、0.15%超
では添加量に見合った効果が得られないため、経済的な
理由で0.15%以下に抑制する。Alは鋼の脱酸に不
可欠な元素であり、この目的から0.005%以上を添
加する。しかし、Al添加量が高くなるとクリープ破断
強度を害するため、添加の上限を0.05%とする。
【0014】NはCと同様、0.005%以上の添加で
鋼の強度を上昇させるが、通常の溶製方法では0.1%
超の添加で鋼塊内に気孔を形成する。気孔が圧延によっ
ても未圧着であると、延性および靱性を低下させるた
め、添加量の上限を0.1%とする。本発明は以上の元
素を基本成分として含むが、さらにBの添加が有効であ
る。
【0015】Bは微量添加で粒界に偏析し、粒界を強化
するとともに焼入れ性を上昇させる元素である。この効
果は、0.0002%のB添加から認められるが、0.
0025%超では効果が飽和する。このため、添加量を
0.0002〜0.0025%とする。次に、素材の製
造条件について述べる。
【0016】前記のような化学成分を有する鋼は転炉、
電気炉で溶製した後、必要に応じて取鍋精錬や真空脱ガ
ス処理を施して得られ、通常鋳型あるいは一方向凝固鋳
型で造塊した後、分塊圧延でスラブとされる。スラブは
連続鋳造法により溶鋼から直接製造してもよい。分塊で
の均熱・圧下はいかなるものであっても構わない。即
ち、スラブを冷却した後、均熱してもよく、分塊のまま
熱片で均熱炉に装入してもよい。1000〜1300℃
で均熱の後、圧延または鍛造によりスラブとする。スラ
ブ厚は製品板厚の2倍以上が好ましい。
【0017】スラブは鋼に含有されるNbの一部あるい
は全部が固溶する温度で加熱されることが不可欠であ
る。したがって、1100℃以上の温度で加熱する。し
かし、1280℃を超えると、オーステナイト粒が粗大
化しすぎ、圧延によっても微細化できなくなることがあ
るため、1280℃以下が好ましい。加熱されたスラブ
はクレーン、テーブルローラー等により圧延機まで搬送
され、複数パスの熱間圧延により所定の板厚に圧延され
る。圧延開始温度は既に述べた通りに制限する。また、
圧延終了温度は750℃以上とする。この温度より圧延
終了温度が低下すると、組織の異方性が大きくなり、靱
性が却って低下するため、上記のように750℃以上に
制限する。
【0018】圧延終了後はマルテンサイト変態温度であ
る約300℃以下まで冷却する。冷却は空冷でもよく、
水冷等の加速冷却を採用してもよい。冷却した熱延板は
焼もどしにより所定の強度に調整する。本発明の高Cr
耐熱鋼のAc1温度は概ね830〜850℃であり、焼
もどしはこの温度以下とする。
【0019】
【実施例】表1に示す化学成分を有する鋼を用い、表2
に示す製造条件で熱間圧延し、一旦常温まで冷却した
後、熱処理を施して製品とした。得られた鋼板からサン
プルを切り出し、シャルピー衝撃試験を実施してvTr
sを求めるとともに、600℃−21kgf /mm2 でのク
リープ破断時間を試験した。結果を併せて表2に示す。
【0020】鋼番1Bおよび5Bは熱間圧延後焼ならし
および焼もどした鋼板であり、本発明法で製造した1A
あるいは5Aと比較してクリープ破断時間が短く、クリ
ープ破断強度が低い。鋼板2Bおよび8Bでは圧延での
加熱温度が1100℃より低く、やはり2Aあるいは8
Aと比較してクリープ破断時間が短い。鋼板3Bおよび
7Bでは圧延終了温度が750℃より低く、鋼板3Aあ
るいは7Aと比較してクリープ破断時間が著しく短い。
鋼板4B、4C、6B、6Cでは圧延開始温度が高すぎ
たり、低すぎたりしたため、、クリープ破断時間は鋼板
4Aあるいは6Aと比べて若干短い程度であるが、靱性
の指標である破面遷移温度が異常に高く、低温靱性が低
い。
【0021】このように、本発明法により製造したAシ
リーズの鋼板はクリープ破断強度が優れており、かつ良
好な靱性を有している。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明による高Cr耐熱鋼は優れたクリ
ープ強度を有するばかりでなく、良好な低温靱性を有し
ており、高温高圧で使用される火力発電や化学プラント
用として極めて有用なものであり、工業上価値が大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延開始温度と600℃−21kgf /mm2 での
クリープ破断時間の関係を示す図である。
【図2】圧延開始温度とシャルピー試験での破面遷移温
度(vTrs)の関係を示す図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、 C :0.05〜0.15% Si:0.01〜0.5%、 Mn:0.1〜1%、 Cr:8〜13%、 Mo:0.7〜1.5%、 V :0.05〜0.25% Nb:0.01〜0.15% Al:0.005〜0.05%、 N :0.005〜0.1% を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、
    1100℃以上の温度で加熱し、スラブ表面温度が95
    0℃以上1125℃未満の温度域で圧延を開始し、75
    0℃以上の温度で圧延を終了し、300℃以下まで冷却
    の後、Ac1 以下で焼もどすことを特徴とする優れたク
    リープ強度と良好な靱性を有する高Cr耐熱鋼の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 重量%にて、さらに B:0.0002〜0.0025% を含むことを特徴とする請求項1記載の優れたクリープ
    強度と良好な靱性を有する高Cr耐熱鋼の製造方法。
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JPS61104022A (ja) * 1984-10-27 1986-05-22 Nippon Steel Corp 高温構造用鋼の製造方法
JPH0699741B2 (ja) * 1987-07-29 1994-12-07 住友金属工業株式会社 高温用高Crフェライト鋼の加工方法

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