JP2006233251A - 高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法およびその製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 冷間加工性と耐食性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼において、生産性を阻害することなく、延性を改善できることで、更に製造コストを大幅に下げることにある。
【解決手段】 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で焼鈍し、その後、50〜600℃で所定時間の脱水素処理を施して冷間加工する。あるいは、連続焼鈍後に経過時間と平均温度を管理して冷間加工を施すことを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で焼鈍し、その後、50〜600℃で所定時間の脱水素処理を施して冷間加工する。あるいは、連続焼鈍後に経過時間と平均温度を管理して冷間加工を施すことを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、高純度フェライト系ステンレス鋼の延性の改善方法に係わり、例えば、鍛造加工,伸線加工,製網加工,溶接加工,プレス加工,曲げ加工等、2次加工前の素材の延性の改善に関するものである。
これまで、C,N等の不純物元素を低減してNb,Ti等の安定化元素が添加された高純度フェライト系ステンレス鋼は冷間加工性および耐食性に優れる等、コストパフォーマンスの高さから自動車部品,機械部品,日用製品等、あらゆる分野で使用されるようになってきた。該鋼種の大半は2次加工が施されるため、2次加工前の素材には延性が求められる。
しかしながら、水素を含む還元性のガス雰囲気中で、特に高温で焼鈍されると、2次加工前の素材の延性が低下する場合があった。
高純度フェライト系ステンレス鋼の延性等の加工性の改善方法については、熱間圧延の加熱温度を1200℃以上に制御して炭窒化物のサイズを20μm以下に制御して加工性を向上させることが提案されている(特許文献1)。
特に、ステンレス鋼線においては、これまで焼鈍効率が低い950℃以下の低温で焼鈍(バッチ焼鈍等)されており、生産性が非常に悪かった(特許文献1,2の実施例)。
一方、ステンレス鋼の脆性割れを防止することを目的に水素を低減することが提案されている。マルテンサイト系ステンレス鋼においては、水素を2.0ppmに規制することで割れ感受性を低減させ、伸び,絞りなどの加工性を向上させることが提案されている(特許文献3)。また、高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼においても水素を1.5ppm以下に規制することで割れ感受性を低減させることが提案されている(特許文献4)。
しかしながら、軟質な高純度フェライト系ステンレス鋼においては、焼鈍の生産性を劣化させることなく延性を改善する方法として水素の低減技術は提案されていない。
本発明の目的は、冷間加工性と耐食性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼において、生産性を阻害することなく、2次加工前の素材の延性を改善することで、更に製造コストを大幅に下げることにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を含有する還元性のガス中で高温・短時間の連続焼鈍を施した後に脱水素処理を施すか、温度と経過時間を管理する,または、Ar等の不活性ガス中で連続焼鈍を施して鋼中の水素含有量を規制することで2次加工前の素材の延性が飛躍的に向上することを見出した。本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1) 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で連続焼鈍し、その後、(1)式で示されるL1値が30以上になるように50〜600℃で脱水素処理を施して冷間加工することを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
L1=Exp((T+273)/100)×t/10−−−−−−−−−−(1)
T;脱水素処理温度(℃), t;脱水素処理時間(h)
(2) 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で連続焼鈍し、その後、(2)式で示されるL2値が6.2以上になるように経過時間および平均温度を管理して冷間加工を施すことを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
L2値=(T+273)×(20+log(24×D))×10-3−−−−−(2)
T;焼鈍後の雰囲気の平均温度(℃), D;焼鈍後の経過日数
(3) 焼鈍が950〜1100℃の連続焼鈍で施されることを特徴とする前記(1),(2)記載の延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
(4) 焼鈍の在炉時間が120秒以下の短時間で施されることを特徴とする前記(1)〜(3)記載の延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
(5) 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、Arガスを90%以上含有する不活性ガス中で、且つ、950℃以上の温度で連続焼鈍されることを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
(6) 前記(1)〜(5)記載の方法で製造され、水素含有量が2ppm以下であることを特徴とする延性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼である。
(7) 鋼線であることを特徴とする前記(6)記載の延性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼である。
(1) 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で連続焼鈍し、その後、(1)式で示されるL1値が30以上になるように50〜600℃で脱水素処理を施して冷間加工することを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
L1=Exp((T+273)/100)×t/10−−−−−−−−−−(1)
T;脱水素処理温度(℃), t;脱水素処理時間(h)
(2) 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で連続焼鈍し、その後、(2)式で示されるL2値が6.2以上になるように経過時間および平均温度を管理して冷間加工を施すことを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
L2値=(T+273)×(20+log(24×D))×10-3−−−−−(2)
T;焼鈍後の雰囲気の平均温度(℃), D;焼鈍後の経過日数
(3) 焼鈍が950〜1100℃の連続焼鈍で施されることを特徴とする前記(1),(2)記載の延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
(4) 焼鈍の在炉時間が120秒以下の短時間で施されることを特徴とする前記(1)〜(3)記載の延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
(5) 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、Arガスを90%以上含有する不活性ガス中で、且つ、950℃以上の温度で連続焼鈍されることを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
(6) 前記(1)〜(5)記載の方法で製造され、水素含有量が2ppm以下であることを特徴とする延性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼である。
(7) 鋼線であることを特徴とする前記(6)記載の延性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼である。
本発明による高純度フェライト系ステンレス鋼の延性の改善方法は、焼鈍の生産性を落とすことなく2次加工前の素材の延性を向上できるため、一貫での製造コストを飛躍的に低減する効果を発揮する。
以下に、先ず、本発明の請求項1記載の限定理由について説明する。
高純度フェライト系ステンレス鋼とは、Cr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%に低減し、Nb;0.05〜1.0%,Ti;0.01〜1.0%のC,Nの安定化元素を添加した鋼であり、例えば、JIS規格のSUS430LX,SUS430J1L,SUS436L,SUS436J1L,SUS444やSUS4445J1,SUS445J2,SUS447J1,SUSXM27,SUS410Lに相当する。また、例えば、Si≦1.0%,Mn≦1.0%,S≦0.03%,P≦0.04%,Ni≦1.0%,Cu≦1.0%,Mo≦3.0%,Al≦0.5%,Zr;0.01〜1.0%,B≦0.02%,Ca≦0.01%,Mg≦0.01%等の元素で規定されている鋼を言う。
本発明において、これらの高純度フェライト系ステンレス鋼は、Nb,Ti系の炭窒化物を有しているため、水素が存在すると、これらの炭窒化物に水素がトラップされて2次加工時に脆性割れが誘発される場合があることを見出した。そのため、前記の高純度フェライト系ステンレス鋼に限定することで、本発明の水素を規制して素材の延性を改善する技術が工業的・経済的に有効となる。
上記の高純度フェライト系ステンレス鋼は、水素が50%未満のガス雰囲気で焼鈍された場合、鋼材表面の酸化スケールの付着量が多く酸洗工程が必要な上に、水素が鋼中に侵入し難いため、本発明の水素を規制して延性を改善する効果が不明瞭になり、工業的・経済的な意味を持たなくなる。一方、水素が50%以上の還元性のガス雰囲気で連続焼鈍されると、鋼材表面に酸化スケールが付きにくいため酸洗工程が不必要となる上に、鋼中に水素が侵入し易くなり、延性劣化を引き起こすため、本発明の水素を規制して素材の延性を改善する技術が工業的・経済的に有効となる。そのため、水素を50%以上含有する還元性のガス雰囲気に限定する。好ましくは、水素が70%以上のガス雰囲気が効果的である。
次に、前記の水素雰囲気中で鋼中に侵入した水素の放出を促進するために、(1)式で示されるL1値が30以上になるように50〜600℃で脱水素処理を施すが、この時、50℃未満の場合、単時間で水素が放出され難く、延性の改善効果が不明瞭となる。一方、600℃超の場合、表面の酸化スケールの付着が顕著となり、酸洗工程が必要となるため、経済的でない。そのため、焼鈍後の脱水素処理の温度範囲を50〜600℃に限定する。好ましくは、50〜300℃の範囲で2時間以上の脱水素処理が表面の酸化スケールの付着が少なく効果的である。ここで、脱水素処理とは、素材を熱処理炉,乾燥炉,恒温槽に入れたり,熱風を素材に送風したりすることを言い、雰囲気は、大気,窒素,Arガスやその混合ガス等である。
L1=Exp((T+273)/100)×t/10−−−−−−−−−−(1)
T;脱水素処理温度(℃), t;脱水素処理時間(h)
L1=Exp((T+273)/100)×t/10−−−−−−−−−−(1)
T;脱水素処理温度(℃), t;脱水素処理時間(h)
次に、本発明の請求項2記載の限定理由について説明する。
L2値の範囲については、焼鈍後に種々の条件下で大気放置した場合の延性向上を定量的に評価して得られたものであり、L2値が6.2以上になるように経過時間および平均温度を管理することで、加工前の素材の延性を安定して向上することを見出した。好ましくは、L2値が6.5以上である。とりわけ、L2値が6.2以上で、JIS Z 2241の引張試験における素材の絞り値が安定して65%以上を示すようになる。
L2値=(T+273)×(20+log(24×D))×10-3−−−−−(1)
T;雰囲気の平均温度(℃), D;焼鈍後の経過日数
L2値=(T+273)×(20+log(24×D))×10-3−−−−−(1)
T;雰囲気の平均温度(℃), D;焼鈍後の経過日数
次に、本発明の請求項3記載の限定理由について説明する。
連続焼鈍を行うことで、高温・短時間の効率的な焼鈍が可能となり、バッチ焼鈍に比べ大幅に生産性が向上する。この時、焼鈍温度が950℃未満の場合、焼鈍効率が悪く、長時間焼鈍が必要となる(生産性が劣化する)上に、水素が鋼中に侵入し難いため本発明の延性向上の効果が不明瞭になり、工業的・経済的な意味を持たなくなる。一方、焼鈍温度が950℃以上の場合、短時間の効率的な連続焼鈍が可能となる上に、水素が鋼中に侵入し易く延性が劣化するため、本発明の水素を規制して延性を改善する効果が発揮できる。しかしながら、焼鈍温度が1100℃より高い温度の場合、フェライト結晶粒が粗大化するために延性が劣化する。そのため、連続焼鈍の温度を950〜1100℃に限定する。好ましくは、1000〜1100℃の範囲である。
次に、本発明の請求項4記載の限定理由について説明する。
前記の連続焼鈍を950〜1100℃で実施するが、特に、焼鈍の在炉時間が120秒以下の場合、更に短時間の効率的な焼鈍で且つ、延性を改善できる。逆に120秒を超えて焼鈍を施すと、焼鈍時間が長く生産性が低下する一方で、水素の侵入量が多くなるため延性の改善効果が小さくなる。そのため、特に、連続焼鈍の在炉時間を120秒以下に限定する。好ましくは、60秒以下である。
次に、本発明の請求項5記載の限定理由について説明する。
950℃以上で、且つ、Arガスを90%以上含有する不活性ガス中で連続焼鈍を施すと、効率的に焼鈍ができ、焼鈍後に酸洗が不必要になるばかりか、水素の混入がないため、焼鈍後の脱水素処理や大気放置の条件制約もなく安定して良好な延性を得ることができる。一方、950℃未満の場合、焼鈍効率が悪くなるし、Arガスが90%未満になると表面の酸化スケールの付着が激しくなるため酸洗が必要となり経済的でない。このため、好ましくは、Arガスを90%以上含有する不活性ガス中で、且つ950℃以上の連続焼鈍に限定する。好ましくは、Arガスを95%以上含有することである。
次に、本発明の請求項6記載の限定理由について説明する。
本発明の請求項1〜5の延性の改善効果について、鋼材の水素量を測定した結果、水素含有量が2.0ppm以下でその効果が顕著であった。そのため、水素含有量を2.0ppm以下に限定する。好ましくは、1.5ppmである。
次に、請求項7記載の限定理由について説明する。
本発明の水素低減技術による素材の延性向上は、鋼線でより明確に現れる。特に、延性を表す指標である鋼線のJISの引張試験での絞り値で明瞭である。そのため、好ましくは、本発明を鋼線に限定する。
以下に本発明の実施例について説明する。
表1に実施例のフェライト系ステンレス鋼の化学組成を示す。
これらの化学組成の鋼は、100kgの真空溶解炉にて溶解し、φ180mmの鋳片に鋳造し、その鋳片をφ5.5mmまで熱間の線材圧延を行い、1000℃で熱間圧延を終了し、引き続き、1000℃で3分の連続焼鈍を施して、水冷にて室温まで冷却した。そして、酸洗を行い、φ3.9mmまで冷間伸線加工を施し、800〜1150℃の種々の条件で連続焼鈍を施した。この時、表面の酸化スケールの付着が酷いもの(テンパーカラー色を示すもの)は酸洗を実施した。
その後、一部を種々の条件で脱水素処理を施し、残りを種々の条件で大気放置した。脱水素処理後および一定期間の大気放置後、直ちに延性,水素量を評価した。
延性は、JIS Z 2241の引張試験での絞り値により評価した。絞り値が65%未満の場合の評価を×,絞り値が65%以上の場合の評価を○,絞り値が75%以上の場合の評価を◎とした。本発明例の評価は、全て○か◎である。
水素量は、米国・LECO社製のRH404型の水素分析装置を使用し、不活性ガス溶融−熱伝導測定法によりトータル水素量を測定した。試料重量;1g,分析時間;80秒とした。また、ばらつきを考慮し、7回測定し、最大値と最小値を除いた5回の平均値を水素量とした。本発明例の水素量は、全て2.0ppm以下である。
表2は、評価結果を示す。
本発明例No.1〜8と比較例No.20〜24は、脱水素処理および焼鈍後の大気放置条件の影響を調査したものである。本発明例No.1〜8は、脱水素処理や焼鈍後の大気放置条件を管理することで、水素量が2.0ppm以下であり、良好な延性を示す。なお、L2値が6.5以上で延性が向上しているのがわかる。一方、比較例No.20は、脱水素処理が施されておらず、No.21は、脱水素処理温度が低く、No.22はL1値が30未満であり、No.24は、焼鈍後の大気放置によるL2値が不十分なため水素量が2.0ppm超であり、延性に劣る。また、No.23は水素量が低く延性に優れるが、脱水素処理温度が高すぎるために表面に酸化スケールが生成し、その後に酸洗プロセスが必要となるため生産性に劣る。
本発明例No.1,9〜11と比較例No.25,26は、連続焼鈍の雰囲気の影響を調査したものである。本発明例は、適正な焼鈍雰囲気と脱水素処理により、その後に酸洗無しの高生産プロセスで、良好な延性が得られる。一方、比較例No.25,26は、連続焼鈍時の水素の侵入量が少ないため、良好な延性を示すが、酸洗プロセスが必要であり、生産性に劣る。
本発明例No.1,12〜No.15と比較例No.27〜30は、連続焼鈍の温度と在炉時間の影響を調査したものである。本発明例No.1,12〜No.15は、連続焼鈍の生産性が高く、良好な延性を示す。一方、比較例No.27は、連続焼鈍温度が低いため、焼鈍不良を起こしている。比較例No.28は、連続焼鈍温度が高すぎるため延性が劣化している。比較例No.27は、在炉時間が長いため、生産性が低く不経済な上、延性が劣化味である。比較例No.30は、在炉時間が長いため、生産性が低く、不経済である。
本発明例No.1,16〜19と比較例No.31,32は、鋼種の影響を調査したものである。本発明例No.1,16〜19は、NbやTiが添加された高純度フェライト系ステンレス鋼であるため、本発明の延性の改善効果が得られている。一方、比較例No.31は、Nb,Tiを含有しないSUS430であるため、水素による延性の劣化がなく、本発明の効果がない。比較例No.32は、Nb量が高すぎるため、本発明を適用しても延性を改善できない。
以上の実施例から分かるように本発明例の優位性が明らかである。
以上の各実施例から明らかなように、本発明により、高純度フェライト系ステンレス鋼を高生産の連続焼鈍プロセスで生産することができ、且つ、2次加工前の素材の延性を改善でき、鍛造加工,伸線加工,製網加工,溶接加工,プレス加工,曲げ加工等の生産性を向上して、高純度フェライト系ステンレス鋼製品のコストパフォーマンスを著しく上げることができ、産業上極めて有用である。
Claims (7)
- 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で連続焼鈍し、その後、(1)式で示されるL1値が30以上になるように50〜600℃で脱水素処理を施して冷間加工することを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
L1=Exp((T+273)/100)×t/10−−−−−−−−−(1)
T;脱水素処理温度(℃), t;脱水素処理時間(h) - 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、水素を50%以上含有する還元性雰囲気で連続焼鈍し、その後、(2)式で示されるL2値が6.2以上になるように経過時間と平均温度を管理して冷間加工を施すことを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
L2=(T+273)×(20+log(24×D))×10-3−−−−(2)
T;焼鈍後の雰囲気の平均温度(℃), D;焼鈍後の経過日数 - 焼鈍が950〜1100℃の連続焼鈍で施されることを特徴とする請求項1又は2記載の延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 焼鈍の在炉時間が120秒以下の短時間で施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 質量%でCr:10〜32%を含有し、C≦0.03%,N≦0.03%であり、Nb:0.05〜1.0%,Ti:0.01〜1.0%の1種類以上の安定化元素を含む高純度フェライト系ステンレス鋼において、Arガスを90%以上含有する不活性ガス中で、且つ、950℃以上の温度で連続焼鈍されることを特徴とする延性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法で製造され、水素含有量が2ppm以下であることを特徴とする延性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼。
- 鋼線であることを特徴とする請求項6記載の延性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼。
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