JP5644148B2 - 加工後の表面外観に優れたステンレス冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、上述したような成形において、数%の伸びによるストレッチャストレインと呼ばれる微小な凹凸、およびオレンジピールと呼ばれる表面荒れといったものが発生し、平面性状が劣化する。これらの発生により、鋼板の外観が著しく損なわれるため、調質圧延等の工程の追加を余儀なくされるという問題が生じている。従って、このストレッチャストレインおよびオレンジピールを抑制することが肝要であるが、ストレッチャストレインの発生を抑制するためには、降伏伸びを低減することが必要であり、オレンジピールの発生を抑制するためには、フェライトの粒径制御が必要となる。
また、特許文献3には、スラブ加熱温度および熱延終了温度の高温化により、冷延板の結晶粒を粗大化させ、さらに熱延板焼鈍の低温化により歪を残存させる方法が示されているが、冷延板の結晶粒は、粗大化すると、成形加工時にオレンジピールが生じやすくなり、さらに、歪を残存させた場合には、前述したスキンパス圧延と同様に、延性が低下するという問題もある。
しかし、転位の発生源が多数存在していることにより、鋼板の変形の初期においても、自由に動く転位は、次々に発生する。これによって、連続的に降伏現象が発生し、その結果、鋼板は、降伏伸びがほとんど生じることなく変形すると考えられる。
本発明は上述した知見に基づいてなされたものである。
(1)質量%で、C:0.010〜0.025%、Si:0.02〜0.30%、Mn:0.30〜1.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.005〜0.050%およびCr:16.0〜20.0%を含有し、かつCとNは、次式:0.015%≦(C+N)≦0.050%を満たし、残部Feおよび不可避的不純物の組成になり、降伏伸びが0.5%以下で、かつフェライト相の平均結晶粒径が40μm以下で、さらに全伸びが30.0%以上であることを特徴とする加工後の表面外観に優れたステンレス冷延鋼板。
まず、本発明において、ステンレス鋼板の成分組成を、前記の範囲に限定した理由について述べる。なお、以下、成分にかかる%表示については、特に断らない限りmass%を意味するものとする。
C:0.010〜0.025%
Cは、Crと炭化物を形成することにより、転位の発生源となる界面を生成させる重要な元素である。しかし、Cの含有量が0.01%未満の場合、これが十分に生成されないために降伏伸び低減効果が小さい。一方、Cの含有量が0.025%を超えると、冷延板焼鈍でマルテンサイトが生成しやすくなり、延性が大きく低下する。よってCの含有量は、0.010〜0.025%の範囲とする。
Siは、溶製段階で脱酸剤としての効果を有する。しかし、Si含有量が0.02%未満の場合、脱酸剤としての効果が十分に得られない。一方、Si含有量が0.30%を超えると鋼板が硬質化し、延性が低下する。従って、Siの含有量は0.02〜0.30%の範囲とする。
Mnは、脱酸剤としての効果を有する。しかし、Mn含有量が0.30%未満の場合、脱酸剤としての効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が1.00%を超えるとMnSの生成量が増加して鋼板の耐食性が低下する。従って、Mnの含有量は0.30〜1.00%の範囲とする。
Pは、不可避的に残留する不純物元素であり、特に、0.05%を超えて残留すると、固溶強化によってフェライト相の延性が著しく低下する。従って、Pの含有量は0.05%以下とする。
Sも、不可避的に残留する不純物元素であり、0.01%を超えて残留すると、耐食性が著しく低下する。従って、Sの含有量は0.01%以下とする。
Nは、Crと窒化物を形成することにより、転位の発生源となる界面を生成させる重要な元素である。N含有量が0.005%未満の場合、上記界面が十分に生成されないために降伏伸び低減効果が小さい。一方、N含有量が0.050%を超えると、冷延焼鈍中にマルテンサイトが生成しやすくなり、延性が大きく低下する。従って、Nの含有量は0.005〜0.050%とする。
Crは、ステンレス冷延鋼板の表面に不動態皮膜を形成して耐食性を高める元素である。Cr含有量が16.0%未満では、十分な耐食性が得られない。一方、20.0%を超えて多く含有すると、延性が低下する。従って、Crの含有量は16.0〜20.0%とする。
(C+N)量は、延性の低下を招くことなく、降伏伸びを効果的に低減させるために、転位の発生源となる界面の生成量を制御する上で重要な要素である。
この(C+N)量が0.015%に満たないと、降伏伸びを低減化させるための転位の発生源の生成量が不足する。一方、0.060%を超えると、組織上にマルテンサイト相が生じやすくなり、延性が低下する傾向となる。従って、(C+N)量は、0.015〜0.060%の範囲に限定する。
さらに、延性の低下を招くことなく、降伏伸びを低減化させるための転位の発生源を効果的に発生させるためには、(C+N)量を、0.020〜0.050%とすることが一層有利である。
降伏伸び:0.5%以下
圧延方法に対して引張り方向が平行となるように、JIS 13B号引張り試験片を採取した。ついで、JIS Z 2241に記載の方法に従い、引張り試験を実施し降伏伸びを測定した。その測定値に基づき、降伏伸びと加工時のストレッチャストレインの発生状況の関係を確認した。その結果、降伏伸びが0.5%を超えると、加工時にストレッチャストレインが生じやすくなることが分かった。従って、降伏伸びは0.5%以下とする。
フェライト相の平均結晶粒径:40μm以下
100倍の光学顕微鏡写真を用いて、任意の断面におけるフェライト相の結晶粒径をASTM Designation E 112-82に従い、測定し、平均結晶粒径とする。本発明にかかる試験中、平均結晶粒径が40μmを超えると、成形加工を行った際にオレンジピールが発生しやすくなることが分かった。従って、平均結晶粒径は40μm以下とする。より好ましくは、30μm以下である。
転炉、電気炉等を用いて所定の成分を有するステンレス鋼を溶製し、さらに脱炭処理を施す。得られた溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊法によってスラブとする。一般的には、生産性の高い連続鋳造法を採用することが好ましい。
この冷間圧延以降の焼鈍および冷却する工程の条件が、本発明のステンレス冷延焼鈍板の特性を決める重要な製造条件である。
また、冷却速度が50℃/秒を超える場合、Crの炭、窒化物が十分均一に再析出せず、転位の発生源箇所が減少する。一方、冷却速度が10℃/秒に満たない場合、Crの炭、窒化物が粗大化しやすくなり転移の発生源も減少する。また、フェライト相の粒径も、40μmを超えて粗大化しやすくなる。
上記した制御冷却を行うべき温度域は、少なくとも500℃までとする必要がある。というのは、500℃を超える領域で冷却速度の制御をやめると、所定の転位の発生源、鋼板の延性等が得られないからである。
なお、フェライト相の粒径の微細化のためには、熱延板焼鈍は実施しないことが望ましい。
表1に示す成分のステンレス鋼を、転炉〜2次精錬工程で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらのスラブを、1200℃に加熱後、圧延終了温度を900℃、巻取り温度を750℃として熱間圧延を施し、板厚:4mmの熱延鋼板とした。得られた熱延鋼板を酸洗後、板厚:0.8mmまで冷間圧延し、(a)、(b)の二つの温度域〔(a)800〜830℃、(b)870〜900℃〕で30秒の焼鈍を行った後、500℃までを40℃/秒の速度で冷却した。各試料の冷延板焼鈍条件を表2に示す。
上記引張り試験は、JIS Z 2241に記載の方法に従い降伏伸びと全伸びを測定した。降伏伸びが0.5%以下を良好とした。得られた結果を表2にさらに併記する。
なお、引張試験後の試験片表面(ストレッチャーストレインについては肩部、オレンジピールについては平行部)の外観の目視検査により加工後の外観を評価した。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.010〜0.025%、Si:0.02〜0.30%、Mn:0.30〜1.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.005〜0.050%およびCr:16.0〜20.0%を含有し、かつCとNは、次式:0.015%≦(C+N)≦0.050%を満たし、残部Feおよび不可避的不純物の組成になり、降伏伸びが0.5%以下で、かつフェライト相の平均結晶粒径が40μm以下で、さらに全伸びが30.0%以上であることを特徴とする加工後の表面外観に優れたステンレス冷延鋼板。
- 質量%で、C:0.010〜0.025%、Si:0.02〜0.30%、Mn:0.30〜1.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.005〜0.050%およびCr:16.0〜20.0%を含有し、かつCとNは、次式:0.015%≦(C+N)≦0.050%を満たし、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成のスラブを、熱間圧延後、700℃以上の温度で巻取り、ついで冷間圧延後、850〜950℃の温度域で20秒以上の冷延板焼鈍を行った後、少なくとも500℃までを10〜50℃/秒の速度で冷却することを特徴とする降伏伸びが0.5%以下、フェライト相の平均結晶粒径が40μm以下であって、全伸びが30.0%以上である加工後の表面外観に優れたステンレス冷延鋼板の製造方法。
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