JP2682335B2 - フェライト系ステンレス鋼熱延鋼帯の製造法 - Google Patents

フェライト系ステンレス鋼熱延鋼帯の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼熱延鋼帯の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、耐熱材料としてFe−Cr−Al系合金
が注目されており、ストーブ部品、自動車用排ガス部品
等に使用されているが、特に自動車用排ガス浄化装置に
用いられる触媒担体材料として、従来のセラミックスに
代わって、耐衝撃性のすぐれたステンレス鋼箔が用いら
れるようになってきており、使用環境の過酷化にともな
ってより一層の耐熱性が要求されるようになってきてい
る。
【0003】ところで、Fe−Cr−Al系合金にYを添加す
ると、耐熱性が大幅に向上することは知られているが、
一方、Yを添加した熱延鋼帯は靱性が著しく劣化し、コ
イル展開あるいはさらに冷間圧延を行う場合、割れや破
断が生じ、トラブルの原因となることも知られている。
【0004】このような脆化現象を防止するための従来
技術としては、例えば特開昭60−228616号公報のように
C、Nを低減し、熱間圧延後に10℃/sec以上の冷却速度
で急冷して450 ℃以下の低温で巻取る方法がある。しか
し、Yを添加したFe−Cr−Al系合金では、この方法によ
っても今日求められている程度には十分に靱性が改善さ
れず、そのため現状では 100〜400 ℃に加熱後、温間加
工を経て使用に供している。作業能率の低下、歩留低減
による製造コストの上昇はさけられない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、Yを添加し
てFe−Cr−Al系合金熱延鋼帯の耐熱性を改善する方法に
おいて、得られる熱延鋼帯の靱性を一層改善すること
で、冷間加工を可能とし、製造歩留を向上させ、作業性
を改善し、さらに製品の加工性を向上させることを目的
としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的のた
めに製造工程およびその条件を検討した結果、完成した
ものであり、その要旨は下記のとおりである。
【0007】重量%にて、 C:0.020%以下、Si:1.0%以下、Mn:
1.0%以下、N:0.020%以下、 ただし、C(%)+N(%):0.030%以下、 Cr:9.0〜35.0%、Al:3.0〜8.0%、
Y:0.010〜0.10%、Ti:0.010〜0.
10% さらに、必要により上記Mnを除く成分にMo:0.5
〜5%、Si:1.0%超5%以下、 およびMn:1.0%超2%以下のうちの1種以上、 残部:Feおよび不純物 から成る成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼の
熱延鋼帯を製造するに際し、前記成分組成の鋼を熱間圧
延した後、直ちに20℃/sec以上の冷却速度で急冷
し、400℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする耐
熱性の優れたフェライト系ステンレス鋼熱延鋼帯の製造
方法である。
【0008】
【作用】本発明の方法において、鋼の組成成分量、およ
び熱間圧延後の冷却・巻取り条件を前記の如くに限定し
た理由を以下に説明する。なお、本明細書において特に
ことわりがない限り、「%」は「重量%」である。
【0009】C、N:C、Nはそれぞれが0.020 %を超
えて存在する場合、もしくは( C+N) が0.030 %を超
える場合は、熱延鋼帯の靱性を著しく低下させる。従っ
て、C、Nはそれぞれ0.020 %以下でかつC+Nの総量
を0.030 %以下とした。好ましくはC:0.010%以下、
N:0.010%以下である。
【0010】Cr:Cr はステンレス鋼の耐酸化性および耐
食性を確保する最も基本的な元素である。本発明におい
ては、9.0 %未満ではこれらの特性が十分に確保され
ず、35.0%を超えると熱延鋼帯の靱性および冷間での加
工性 (延性) が著しく低下する。従って、本発明におい
て、Crの成分範囲は9.0 〜35.0%とした。好ましくは、
18〜25%である。
【0011】Al:Alはフェライト系ステンレス鋼の耐酸
化性を向上させる元素である。本発明においては、3.0
%未満では耐酸化性は十分でなく、また8.0 %を超えて
含有すると、熱延鋼帯での靱性および冷間での加工性を
著しく低下させる。従って、Alの成分範囲は3.0 〜8.0
%とした。好ましくは、 3.0〜6.0 %である。
【0012】Y:Yは耐酸化性を顕著に向上させるため
に添加し、この効果は0.010 %未満では十分ではない。
しかし、0.10%を超えて添加すると熱間加工性が著しく
低下する。従って、Yの成分範囲は0.010 〜0.10%とし
た。
【0013】Ti:Tiは窒化物あるいは炭化物を形成して
固溶C、Nを減少させ、熱延鋼帯の靱性を向上させる。
この効果は、0.010 %未満では十分でなく、一方、0.10
%を超えると冷間での加工性を劣化させる。従って、Ti
の成分範囲は0.010 〜0.10%とした。
【0014】Y+Ti添加の相乗的効果 Fe−Cr−Al系合金にYを単独で添加した場合、耐酸化性
は著しく改善されるが、それにともない、熱延鋼帯の靱
性は著しく低下する。一方、Ti添加によって靱性は著し
く改善される。しかしながら、YとTiとの同時添加を行
うと、耐熱性の改善が図られるばかりでなく、靱性につ
いても温水浸漬加熱による温間圧延が可能な程度に改善
されるのである。
【0015】Mo、Si、Mn: これらの成分は、任意添加成分であって、Moはフェラ
イト系ステンレス鋼の耐食性を、Si、Mnは耐高温酸
化性をさらに一層改善する作用を有し、Mo:0.5〜
5%、Si:1.0%超5%以下、Mn:1.0%超2
%以下の少なくとも一種必要により添加される。Si、
Mnの下限は特に規定されないが、好ましくは、それぞ
れ0.01%、0.01%以上配合されるときにその効
果が見られる。積極的に添加する場合にはそれぞれ1.
0%超添加するのが好ましい。
【0016】本発明においては上述の成分組成の鋼は熱
間圧延を経て熱延鋼帯とする。このとき熱間圧延条件は
特に制限されないが、通常は、例えば加熱温度1100〜12
50℃、終了温度 800〜1000℃で行えば十分である。
【0017】冷却速度:熱間圧延終了時の冷却速度が20
℃/secよりも遅くなると、熱延鋼帯の衝撃破面遷移温度
が高くなり、熱延コイル展開や冷間・温間圧延時に脆化
トラブルを発生することが予想される。従って、熱間圧
延後の冷却速度を水スプレー法等によって20℃/sec以上
とする必要がある。
【0018】巻取り温度 巻取り温度が400 ℃よりも高いと、熱間圧延終了時の冷
却速度が20℃/sec以上であっても、巻取り後の徐冷中で
の熱サイクルによって熱延鋼帯の脆化を生じるので、巻
取り温度を400 ℃以下と定めた。なお、巻取り温度の下
限は格別に制限されるものではないが、250 ℃よりも低
い温度になると鋼帯の変形強度が著しく高くなり、実用
上巻取りに困難を伴うことから、250 ℃以上で巻取るこ
とが好ましい。
【0019】熱延鋼帯焼鈍の影響:本発明によって得ら
れた熱延鋼板はそのまゝ温間加工によって所定寸法にま
で加工できるが、所望により焼鈍工程を経て冷間圧延を
行って所定寸法としてもよい。冷間加工を行うに当たっ
ては焼鈍処理を行う必要がある。熱延板焼鈍温度と、衝
撃破面遷移温度との関係があり、熱延帯焼鈍を行う場
合、900 ℃以上で行うことが望ましい。しかしながら、
1050℃超での焼鈍を行った場合、結晶粒の粗粒化が起こ
り、むしろ靱性が低下する可能性があるので、軟質化等
の目的で焼鈍を行う場合は900 〜1050℃が好ましい。
【0020】
【実施例】まず、真空溶解法によって表1に示される如
き成分組成の鋼を溶製した。次いで、これらの各鋼を表
2に示される条件で熱間圧延し、巻取りを行って厚さ4.
5 mmの熱延鋼帯とした。このようにして製造された熱延
鋼帯について特性評価を行った。
【0021】なお、靱性評価は、JIS 規格に準拠してサ
ブサイズ (板厚:2.5mm) のVノッチシャルピー試験片を
圧延方向と直角方向に沿って採取し、衝撃試験を行い、
遷移温度を求めた。遷移温度が100 ℃以下である場合、
温水浸漬による熱延鋼帯の温間圧延が可能である。
【0022】図1は、Fe−Cr−Al系合金の添加元素の違
いによる、熱延鋼帯の衝撃破面遷移温度の変化を調べた
グラフである。すなわち、鋼種A、K、L、Mについ
て、加熱温度1200℃、終了温度830 ℃で熱間圧延後、冷
却速度20℃/sec で冷却してから350 ℃で巻取り、得ら
れた熱延鋼帯の衝撃破面遷移温度の変化を調べた。
【0023】図1のグラフからは、Fe−Cr−Al系合金に
Yを単独添加すると(鋼種M)、無添加の場合(鋼種
K)と比較して衝撃破面遷移温度が大幅に上昇し、靱性
が著しく低下していることがわかる。しかしながら、Y
+Ti添加材(鋼種A)は、Ti単独添加の場合( 鋼種L)
には及ばないが、衝撃破面遷移温度が75℃と、Y単独添
加の場合と比較して大幅に靱性が改善され、温水浸漬加
熱による温間圧延が可能な範囲となっている。
【0024】図2は、同様の実験を耐熱性についても行
った場合の結果を示すグラフであって、この場合にもY
+Tiの複合添加の作用効果が顕著であることが分かる。
図3は、Y+Ti添加材を用いて、巻取り温度と衝撃破面
遷移温度との関係をまとめたグラフである。すなわち、
鋼種Aについて加熱温度1200℃、終了温度830 ℃で熱間
圧延後、冷却速度20℃/sec で冷却してから巻取り、得
られた熱延鋼帯の巻取り温度と衝撃破面遷移温度との関
係を調べた。
【0025】図2のグラフからは、800 〜500 ℃で巻取
りを行った場合には衝撃破面遷移温度が100 ℃を超えて
しまうのに対して、巻取り温度を400 ℃以下とすれば衝
撃破面遷移温度を75℃以下にでき、温水浸漬による温間
圧延で製造が可能となることがわかる。次に、表1に示
す組成を有する各供試鋼について表2示す条件で熱間圧
延を行い、得られた鋼帯の遷移温度を前述と同様にして
調べた。結果は同じく表2に示す。
【0026】本発明の範囲内の条件で加工することによ
り、遷移温度100 ℃以下が実現されるのが分かる。次
に、表3は、表1の鋼種AのY+Ti添加材を用いて、熱
延板焼鈍温度と、衝撃破面遷移温度との関係を調べたも
のである。
【0027】表3の結果からは、700 ℃、800 ℃で焼鈍
を行った場合は、遷移温度が100 ℃を超えてしまうのに
対し、900 ℃焼鈍および焼鈍なしの場合は、遷移温度が
75℃となる。したがって、熱延帯焼鈍を行う場合、900
℃以上で行う必要がある。しかしながら、1050℃超での
焼鈍を行った場合、結晶粒の粗粒化が起こり、靱性が低
下する可能性があるので、軟質化等の目的で焼鈍を行う
場合は900 〜1050℃が好ましい。これらの結果からも分
かるように、本発明方法により製造した熱延鋼帯は、靱
性が大幅に改善されており、温水浸漬による温間圧延が
可能となった。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、耐酸化
性に優れたFe−Cr−Al系合金熱延鋼帯を温水浸漬によっ
て温間圧延することが可能となり、圧延時の割れや板破
断を防止でき、作業性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Fe−Cr−Al系合金熱延鋼帯の衝撃破面遷移温度
に及ぼす添加元素の影響を示すグラフである。
【図2】同じくFe−Cr−Al系合金熱延鋼帯の耐熱性に及
ぼす添加元素の影響を示すグラフである。
【図3】同じくFe−Cr−Al系合金熱延鋼帯の衝撃破面遷
移温度に及ぼす巻取り温度の影響を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−33064(JP,A) 特開 平4−218623(JP,A) 特開 平5−331552(JP,A) 特開 平4−147944(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、 C:0.020%以下、Si:1.0%以下、Mn:
    1.0%以下、N:0.020%以下、 ただしC(%)+N(%):0.030%以下、 Cr:9.0〜35.0%、Al:3.0〜8.0%、
    Y:0.010〜0.10%、Ti:0.010〜0.
    10%、 残部:Feおよび不可避不純物 から成る成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼の
    熱延鋼帯を製造するに際し、前記成分組成の鋼を熱間圧
    延した後、直ちに20℃/sec以上の冷却速度で急冷
    し、400℃以下の温度で巻取ることを特徴とする耐熱
    性の優れたフェライト系ステンレス鋼熱延鋼帯の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記成分組成が、重量%にて、 C:0.020%以下、N:0.020%以下、 ただしC(%)+N(%):0.030%以下、 Cr:9.0〜35.0%、Al:3.0〜8.0 %、Y:0.010〜0.10%、
    Ti:0.010〜0.10%、 さらに、 Si:1.0%超5%以下およびMn:1.0%超2%以下のうちの
    1種以上、 残部: Feおよび不可避不純物を含む組成である請求項1
    記載の耐熱性の優れたフェライト系ステンレス鋼熱延鋼
    帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記成分組成が、重量%にて、Mo:0.5〜
    5%をさらに含む請求項1または2記載の耐熱性の優れ
    たフェライト系ステンレス鋼熱延鋼帯の製造方法。
  4. 【請求項4】 得られた熱延鋼帯にさらに900 〜1050℃
    での焼鈍処理を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の
    方法。
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