JP2628962B2 - 磁気ヘッド及びそれを用いた磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気ヘッド及びそれを用いた磁気記録再生装置

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JP2628962B2
JP2628962B2 JP23458192A JP23458192A JP2628962B2 JP 2628962 B2 JP2628962 B2 JP 2628962B2 JP 23458192 A JP23458192 A JP 23458192A JP 23458192 A JP23458192 A JP 23458192A JP 2628962 B2 JP2628962 B2 JP 2628962B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録再生装置の磁
気ヘッドに係り、特に耐摩耗性、耐傷付き性等に優れた
磁気ヘッドの接合ガラス及びそれを用いた磁気ヘッドに
関する。
【0002】
【従来の技術】従来の磁気ヘッドは、磁気コアにフェラ
イト単体が用いられ、その接合には接合温度が700〜
800℃のSiO2−B23系、PbO−B23系ガラ
スが使用されていた。
【0003】近年、磁気記録の高密度化を図るために、
記録媒体の高保磁力化、記録再生周波数の広帯域化、記
録テープや記録ディスクの高速化が進められている。し
かし、従来のフェライトヘッドでは、上記の要求を満足
させることができなくなってきた。このため、磁気コア
にフェライトより飽和磁束密度が高いアモルファス合金
の磁性膜が注目されるようになった。該磁性膜の飽和磁
束密度は従来のフェライトの2倍以上で、こうした磁性
膜を磁気ヘッドに用いることにより高密度記録が期待で
きる。
【0004】しかし、アモルファス合金の磁性膜は、フ
ェライトに比べると耐熱性が低いため、ヘッド接合ガラ
スとして従来のフェライトヘッド用のガラスでは問題が
ある。そこで、特開昭57−179926号公報に記載
されるように、低温接合が可能なPbO−B23系ガラ
スのような鉛を主成分とする酸化物系ガラスが検討され
ている。
【0005】また、本発明者等は特開昭61−1119
35号、特開昭62−88109号及び特開平2−22
5336号公報に記載されているバナジウム元素を主成
分としたガラスを用いた磁気ヘッドを先に提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】これら従来技術のうち
特開昭57−179926号公報に記載の鉛元素を主成
分とする酸化物系ガラスは、硬度や強度等の機械的性質
について十分に配慮されていないため、機械加工時にチ
ッピングなどが生じ易く、磁気ヘッドの製造歩留りを低
下させると云う問題がある。また、耐水性,耐湿性等の
化学的安定性についても十分に配慮されておらず、信頼
性に優れた磁気ヘッドが得られにくい。
【0007】また、特開昭61−111935号公報に
記載のバナジウム酸化物を主成分としたガラスにアルカ
リ金属酸化物を添加したガラスは、転移温度が低く、流
動性に優れているが、機械的強度及び耐水性に問題があ
った。
【0008】特開昭62−88109号公報に記載の磁
気ヘッドは、機械的性質、化学的安定性及び磁性膜への
侵食を改良したバナジウム元素を主成分の一つとする酸
化物系ガラスを用いて磁気コアを接合したものであるが
機械的性質が不十分であった。
【0009】特開平2−225336号公報記載の磁気
ヘッドは、マイクロビッカース硬度Hv320以上のガ
ラスで接合して耐摩耗性等の機械的性質の信頼性を向上
させたものである。
【0010】これらのガラス中でアモルファス磁性膜の
磁気特性が劣化する結晶化温度の500℃以下で作業で
きるガラス、即ち、ガラス転移温度が340℃(変形温
度の380℃に相当)以下のガラスでは、そのマイクロ
ビッカース硬度は最大でHv355が示されている。
【0011】しかし、アモルファス磁気ヘッドに用いる
接合ガラスの硬度のHv355という値は、従来のPb
O−B23ガラスの凡そ300に比べれば格段に優れて
いるが、磁気テープがヘッドのテープ摺動面を高速で走
行するため、接合部ガラスが摩耗し易く、かつ、テープ
にも傷が付き易くなり、磁気ヘッドの記録特性を損なう
等のヘッド接合ガラスとして十分とは云いがたい。
【0012】本発明の目的は、耐摩耗性、耐傷つき性、
磁気特性等に優れた磁気ヘッド及びそれを用いた磁気記
録装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記課題を達成する本発
明の要旨は次のとおりである。
【0014】(1)支持基板上に形成された高飽和磁束
密度を有する磁性膜からなる一対の磁気コアが接合ガラ
スにより接合された磁気ヘッドであって、前記接合ガラ
スがバナジウム、リン、アンチモン、鉛及びアルカリ金
属を含む酸化物系ガラスであり、かつ、該ガラスのマイ
クロビッカース硬度Hvが360以上であることを特徴
とする磁気ヘッド。
【0015】(2)前記接合ガラスが、タリウム、テル
ル、バリウムまたはビスマスの少なくとも一種を含む磁
気ヘッド。
【0016】(3)高飽和磁束密度を有するアモルファ
ス合金磁性膜からなる一対の磁気コアがマイクロビッカ
ース硬度Hv360以上の酸化物系ガラスにより接合さ
れ一体化された磁気ヘッドと、該磁気ヘッドの駆動部と
情報記録媒体との間の情報処理を行う制御部を備えた磁
気記録再生装置であって、前記酸化物系ガラスがバナジ
ウム、リン、アンチモン、鉛及びアルカリ金属を含むガ
ラスからなることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0017】前記接合ガラスは、転移温度が340℃以
下でマイクロビッカース硬度Hv360〜400が得ら
れ、高硬度化が可能となり磁気ヘッドの耐摩耗性を向上
することができる。
【0018】上記接合ガラスを用いた磁気ヘッドの磁性
膜としては、高飽和磁束密度を有するアモルファス合金
磁性膜が有効である。
【0019】また、本発明のアモルファス合金磁性膜の
磁気コアからなる磁気ヘッドにおいては、磁気ヘッドの
テープ摺動幅を50〜70μmと小さくし、また、高硬
度化に伴う機械的強度向上により磁気ヘッドのギャップ
深さを13〜17μmとすることができる。前記磁気ヘ
ッドは情報記録媒体と5.8m/秒以上の相対速度で摺
動させることができる。
【0020】前記ガラスの主成分としてバナジウム、リ
ン、アンチモン、鉛及びアルカリ金属元素は、それぞれ
25、P25、Sb23、PbO及びアルカリ金属酸
化物に換算して重量でV25が45〜57%、P25
17〜25%、Sb23が4〜20%、PbOが2〜2
0%及びアルカリ金属酸化物が1〜5%のガラスであ
る。
【0021】さらに、アルカリ金属元素としてナトリウ
ム金属元素が好ましく、Na2Oに換算して1〜5重量
%である。
【0022】前記接合ガラスを構成しているV25を4
5〜57重量%としたのは、45重量%未満では転移温
度が高くなり、57重量%を超えるとガラスが結晶化を
起こすためである。P25を17〜25重量%としたの
は17重量%未満では結晶化を起こし、25重量%を超
えると転移温度が高くなるためである。Sb23を4〜
20重量%としたのは、4重量%未満では耐水性が悪
く、硬度小となり、20重量%を超えると結晶化を起こ
すためである。PbOを2〜20重量%としたのは2重
量%未満では耐水性が悪くなり、20重量%を超えると
ガラスが脆くなり機械加工が困難になるためである。ア
ルカリ金属酸化物を1〜5重量%としたのは1重量%未
満では硬度小となり、5重量%を超えると耐水性が悪
く、また結晶化するためである。
【0023】さらにまた、タリウム、テルル、バリウム
及びビスマスの一種以上を含むことが好ましく、これら
の含有量はそれぞれの酸化物に換算して、重量でTl2
Oが1〜10%、TeO2が1〜10%、BaOが1〜
10%及びBi23が1〜10%の範囲である。
【0024】上記酸化物の添加量をそれぞれ1〜10重
量%としたのは10重量%を超えるとTl2O、BaO
は結晶化を起こし、TeO2、Bi23はガラス転移温
度を高くするためである。
【0025】上記接合ガラスのマイクロビッカース硬度
をHv360以上、好ましくは360〜400としたの
はHv360未満では硬度依存度が大きくガラスの摩耗
量が増大する。Hv400を超えるとガラス転移温度が
高くなり、高飽和磁束密度を有する磁性膜、特にアモル
ファス合金磁性膜の耐熱温度以下での接合がむずがしく
なる恐れがある。
【0026】また、接合ガラスをHv360以上とする
ことによりガラスの強度の向上により、アモルファス合
金磁性膜からなる磁気コア間の接着強度が大きくなり、
磁気ヘッドのテープ摺動幅及びギャップ深さを小さくと
することが可能となる。なお、テープ摺動幅を50μm
未満ではガラス接合部が少なくなり磁気コア間で剥がれ
易くなり、70μmを超えるとヘッドのテープタッチが
悪くなり高密度記録が困難になる。ギャップ深さは13
〜17μmが好ましく、13μm未満ではガラス接合部
が少なくなって磁気コア間で剥がれ易くなり、17μm
を超えると磁気記録再生が不十分となり磁気特性が劣化
するためである。
【0027】本発明の磁気ヘッドを用いることにより、
メタルテープ、蒸着テープ等の高保磁力記録媒体に対し
て十分記録が可能となり、テープとの相対速度を高速化
しても長時間安定して使用できるためVTRなどの磁気
記録再生装置の高密度記録が可能となる。
【0028】また、将来VTRの高密度記録がさらに進
み、相対速度の高速化が予想されるが、本発明の磁気ヘ
ッドは相対速度5.8m/秒以上のとすることができる
ので、こうした点でも十分に対応することができる。
【0029】本発明の磁気ヘッドは記録媒体としてテー
プ以外に磁気ディスクを用いた磁気記録再生装置にも使
用することができる。また、本発明で用いた接合ガラス
は、磁気ヘッド以外の電子部品等の接合にも使用するこ
とができる。
【0030】
【作用】高密度記録化に伴なう磁気テープとの相対速度
の高速化が要求される高性能磁気ヘッドとして、バナジ
ウム元素を主成分とした酸化物系ガラスに、アルカリ金
属酸化物、特にナトリウム元素を添加した接合ガラスは
高硬度であることから高信頼性の磁気ヘッドを得ること
ができた。
【0031】上記接合ガラスのバナジウムは、ガラスの
転移点の低温化及び機械加工性の向上を、アンチモン及
び鉛は耐水性,耐候性の向上を、そしてナトリウムは転
移温度の低温化及び機械的強度を向上する作用を有す
る。さらに、このガラスにタリウム、テルル、バリウム
及びビスマスの少なくとも一種を添加することにより、
より低い転移温度と高硬度を与え、高信頼性の磁気ヘッ
ドの作製を容易にするものである。
【0032】
【実施例】本発明を実施例により説明する。
【0033】図1に本発明の対象となるアモルファス合
金を磁性膜とした磁気ヘッドの一実施例を模式斜視図を
示す。また、図2〜図5に上記磁気ヘッドの製造工程の
説明図を示す。
【0034】図2に示すように、フェライト支持基板1
にトラック溝5とコイル巻線溝6を設ける。その後、図
3のように高飽和磁束密度を有するアモルファス合金磁
性膜2をスパッタにより形成し、その面上にアモルファ
ス合金磁性膜の耐熱温度以下で接合できる接合ガラス3
を載せて充填する。
【0035】次に、図4に示すように、磁性膜のトラッ
ク幅tを形成するため余分なガラスと磁性膜を削り落
し、その研削面を平滑にした後、A−Aに沿って切断し
てCコア7、Iコア8に分離した後、ギャップ材をスパ
ッタする。
【0036】次に、図5に示すように、Cコア7とIコ
ア8のギャップ材4のスパッタ面を合わせ、ガラス充填
と同条件でガラス接合し、得られたブロックよりB−B
及びB’−B’に沿って切断して図1に示す磁気ヘッド
を得る。
【0037】次に、上記の磁気ヘッドの接合ガラス3の
製法について説明する。まず、ガラスを構成するV
25、P25、Sb23、PbO、Na2Oの各酸化物
を所定量秤量,配合した後、よく混合してアルミナるつ
ぼに入れ、電気炉中で1000〜1100℃、1〜2時
間加熱溶融する。溶融したガラスを予め300℃に予備
加熱した黒鉛鋳型に流し込みガラスブロックを作製す
る。その後、転移温度以上の温度で再加熱した後、徐冷
して歪取りを行い、前記充填用のガラス板などの所定形
状に加工する。
【0038】〔実施例1〕表1に、本実施例で用いた磁
気ヘッド用接合ガラスNo.A1〜A15の組成及び特
性を示したものである。また、表2は比較のため従来ガ
ラスNo.B1〜B8を示す。B1〜B6はV25を主
成分とするガラス、B7〜B8はPbOを主成分とする
ガラスを示す。
【0039】また、各ガラスの特性は次のようにして求
めた。
【0040】ガラスの転移温度は、熱膨張測定時の熱膨
張曲線において、ガラスの膨張率が低膨張域から高膨張
域へ変化する曲線を外挿して求めた温度である。
【0041】熱膨張係数は、直径5mm×長さ30mm
のガラス棒を測定試料とし、熱膨張計を用いて、大気中
で昇温速度5℃/分で昇温し、50℃から転移温度より
30℃低い温度までの範囲内で求めた。
【0042】マイクロビッカース硬度Hvは,圧子荷重
100gf、加重時間15秒の条件で測定した。
【0043】耐水性は一辺が5mmの立方体のガラス片
を70℃の蒸留水40mlに2時間浸漬後のガラス表面
の変化及び重量減少率をもって評価した。ガラス表面の
変化(目視)及び重量変化が認められない場合は○、重
量減少が認められないが、ガラス表面に水による浸食が
観察された場合は△、両方とも認められる場合は×でラ
ンク付けした。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】表2のB1〜B8に示されるように、アモ
ルファス合金磁性膜、例えばCo−Nb−Zr磁性膜の
結晶化温度500℃以下で作業できるガラス、即ち、ガ
ラス転移温度が340℃以下であるV25を主成分とし
たガラスのマイクロビッカース硬度は、同じガラス転移
温度340℃以下のPbOを主成分としたガラスに比べ
硬度、耐水性に優れているものが最大Hv350程度で
あった。B6のV25を主成分とした従来ガラスは、転
移温度が340℃で硬度がHv355を示すが、PbO
を多量に含むためにガラス自体が脆く、機械加工が困難
である。
【0047】これに対して、A1〜A4はV25、P2
5、Sb23、PbO及びNa2O(またはLi2O)
からなる5元系の接合ガラスであるが、いずれのガラス
もアルカリ金属酸化物を添加したガラスの転移温度は3
40℃以下、マイクロビッカース硬度Hv360以上を
示し、耐水性についても良好な結果を示している。
【0048】A1〜A4ガラスに示されるように、従来
のV25を主成分としたガラスB1〜B6にアルカリ金
属酸化物を添加した結果、ガラス転移温度を維持しなが
ら、マイクロビッカース硬度を高くすることができた。
【0049】さらにまた、A5〜A10に示すように、
Tl2Oを添加した6元系ガラス、及びBi23、Ba
O、TeO2を添加したA11〜A15においても、N
2Oを含むことによりガラス転移温度及びマイクロビ
ッカース硬度ともにA1〜A4の5元系ガラスと同様に
優れた結果が得られた。
【0050】こうした表1のA1〜A15に示す接合ガ
ラスを用いることによりアモルファス磁性膜磁気ヘッド
に適用することにより耐摩耗性の優れたものを得ること
ができる。
【0051】〔実施例2〕表1に示した接合ガラスA
2、A7及びA11と、表2のB5及びB8とを用い、
図2〜図5に示す磁気ヘッド製造工程に従って図1に示
す構造のアモルファス合金磁性膜の磁気ヘッドを作製し
た。
【0052】表3にそれぞれのガラスで接合したアモル
ファス合金磁性膜磁気ヘッドの機械的性質を示す。な
お、アモルファス合金磁性膜の耐熱温度である結晶化温
度が500℃のCo−Nb−Zr膜を選んだ。表中の機
械加工性を示すヘッドチップ加工歩留りは、ヘッドチッ
プ加工により得られた全ヘッドチップ数に対して、加工
によるチッピング及びガラスのカケ、クラックが生じた
不良ヘッドチップ数を除いた割合を示す。また、ヘッド
チップ強度は、最終的に得られた磁気ヘッドチップが、
どの程度の荷重により破壊するかを見るため、チップの
片方のコアを固定し、他の一方のコアをバネ秤で引張り
上げた時の最大荷重を示したものである。
【0053】
【表3】
【0054】ヘッドチップ加工歩留りは、A2、A7、
A11のガラスを適用した磁気ヘッドは全て95%以上
であったが、従来のV25を主成分としたB5ガラスは
85%、PbOを主成分としたB8ガラスは75%であ
った。また、ヘッドチップ強度もA2、A7、A11ガ
ラスを用いたチップが格段に優れていることが分かる。
【0055】〔実施例3〕次に、ヘッドの磁気特性向上
に影響を及ぼすヘッドチップ幅及びギャップ深さについ
て検討した。一般に磁気ヘッドのテープへの記録再生の
磁気特性は、ヘッドとテープの接触状態(テープタッ
チ)に大きく依存し、テープタッチが良好な程、磁気特
性が優れていることが知られている。従って、磁気ヘッ
ドのテープ摺動面のチップ幅及びギャップ深さを、極力
小さくすることが磁気特性向上につながる。
【0056】そこで接合ガラスとしてA7とB5を選ん
だ。まず、テープ摺動面のチップ幅低減については、ギ
ャップ深さ8mmVTRヘッドで実施されている17μ
mとしたヘッドを用い、チップ幅を70,60,50及
び40μmについて検討した。また、ギャップ深さも1
7,15,13及び11μmとした。
【0057】その評価法は、チップ切断加工及びテープ
摺動時に接合ガラスにカケ、ワレがなく、また8mmV
TRのテープ相対速度3.8m/秒でテープを摺動させ
た時のテープタッチ不良に基づく磁気特性の劣化がない
ものは○、そうでないものは×とした。表4にこれらの
検討結果を示す。
【0058】
【表4】
【0059】チップ幅の低減化については、従来のB5
ガラスは70μmまで加工可能で、テープ摺動時にも異
常は認められなかったが、60μm以下では加工時にガ
ラス部にクラックが生じた。一方、A7ガラスは50μ
mまで小さくしても加工並びにテープ摺動時にガラス部
に異常は認められなかった。
【0060】ギャップ深さの低減化では、B5ガラスは
ギャップ深さ17μmまでは加工可能であったが、15
μm以下では、加工時にガラス部にクラックやガラス剥
離などが生じた。一方、A7ガラスは13μmでも加工
可能で、また、ガラス部に異常は認められず優れてい
た。
【0061】こ上記の結果、本発明の磁気ヘッドは、テ
ープ摺動幅50〜70μm、ギャップ深さ13〜17μ
mと小さくでき、それによってヘッドのテープタッチが
改善され、良好な磁気記録再生が可能となった。
【0062】〔実施例4〕次にA2、A7、A11ガラ
スと、比較のためB5及びB8ガラスで接合したアモル
ファス合金磁性膜磁気ヘッドとテープとの耐摺動性を検
討した。テープ摺動試験評価は、ヘッドチップ幅を70
μm(8mmVTR)と50μmの2種を選び、それぞ
れのヘッドチップをVTRのシリンダーに取付け高保磁
力磁気テープを相対速度3.8m/秒(8mmVT
R)、5.8m/秒(VHS−VTR)及び51.8m/
秒(ハイビジョンVTR)で200時間走行させた時の
ヘッドチップガラス接合部の凹凸と傷付き状態から評価
した。良好なものには○、そうでないものは×とした。
【0063】まず、ヘッドチップ幅を70μmとした時
の摺動試験結果を表5に示す。従来のB8ガラスを適用
したヘッドチップは相対速度3.8m/秒、B5ガラス
を適用したヘッドチップは相対速度5.8m/秒までは
ある程度満足できるものゝ、51.8m/秒ではガラス
の硬度不十分なためヘッドチップのテープ摺動面のガラ
スが、フェライト、アモルファス合金部に比べて摩耗が
大きく、テープ摺動面が偏摩耗を起こして、十分なテー
プタッチができず満足する磁気特性が得られなかった。
【0064】一方、A2、A7、A11ガラス適用ヘッ
ドは、51.8m/秒の高速度においてもガラス部の摩
耗は少なく、テープ摺動面の偏摩耗も起こさずテープタ
ッチがよいので満足すべき磁気特性が得られた。
【0065】
【表5】
【0066】次に、ヘッドチップ幅を50μmとした時
の摺動試験結果を表6に示す。B8ガラスを適用したヘ
ッドチップは、ヘッドチップ幅が50μmでは機械加工
時にガラス部にワレやクラックが発生し、チップ加工が
できなかった。B5ガラスを適用したヘッドチップは、
相対速度3.8m/秒まではある程度満足できるものゝ
5.8m/秒以上ではヘッドチップのテープ摺動面ガラ
スがフェライト、アモルファス合金部に比べ摩耗が大き
く、テープ摺動面が偏摩耗を起こし、十分なテープタッ
チが得られず満足する磁気特性が得られない。
【0067】一方、A2、A7、A11ガラス適用ヘッ
ドはチップ幅が50μmでも51.8m/秒の高速の相
対速度でガラス部の摩耗は少なく、テープ摺動面の偏摩
耗を起こさないためにテープタッチがよく満足すべき磁
気特性を得ることができた。
【0068】
【表6】
【0069】図6はヘッドチップ(3×3×0.2m
m)を作製し、接合ガラスのマイクロビッカース硬度H
vとヘッドチップの摩耗量との関係を示すグラフであ
る。相対速度3.8m/秒でVTR用テープを100回
摺動させたときの摩耗量の変化を示す。Hv360以上
になると、摩耗量はほとんど差がなくなることが分か
る。
【0070】アモルファス磁気ヘッドの接合ガラスとし
て前記マイクロビッカース硬度Hv360〜400を有
するガラスを用いることにより、ヘッドチップ幅を70
〜50μmの加工が可能となり、相対速度5.8m/秒
以上の高速でも十分満足できる摺動性の優れた磁気ヘッ
ドを得ることができる。
【0071】以上の実施例から本発明の磁気ヘッドは、
量産性、耐摩耗性、耐候性及び磁気特性に優れている。
【0072】なお、図7は本発明の磁気ヘッドを備えた
VTRの構成図である。磁気ヘッドであるビデオヘッド
9で収集した情報を処理する色信号処理部10及び輝度
信号処理部11等から成る制御部と接続され、情報記録
するテープ13との間で情報の読出し(再生)及び書込
み(記録)を行う。また、ビデオヘッド9はモータ14
及びモータ駆動部15を含む駆動部に接続され高速で回
転される。
【0073】
【発明の効果】本発明のバナジウム、リン、アンチモ
ン、鉛及びアルカリ金属の酸化物系高硬度ガラスを用い
て接合した磁気ヘッドは、量産性、耐摩耗性、耐候性及
び磁気特性に優れており、VTR等の磁気記録再生装置
の性能及び信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた磁気ヘッドの模式斜視図であ
る。
【図2】実施例で用いた磁気ヘッドの基板製造工程の説
明図である。
【図3】図2の基板接合面に接合ガラスを充填する製造
工程の説明図である。
【図4】図3の接合ガラスを充填した基板のカットの製
造工程の説明図である。
【図5】カットした部品材料を組合せ最終カットの製造
工程の説明図である。
【図6】接合ガラスの硬度Hvとヘッドチップの摩耗量
との関係を示すグラフである。
【図7】VTRの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
1,1’…支持基板、2,2’…磁性膜、3,3’…接合
ガラス、4…ギャップ材、5…トラック溝、6…コイル
巻線溝、7…Cコア、8…Iコア、9…ビデオヘッド、
10…色信号処理部、11…輝度信号処理部、12…カ
セット、13…テープ、14…モータ、15…モータ駆
動部。

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持基板上に形成された高飽和磁束密度
    を有する磁性膜からなる一対の磁気コアが接合ガラスに
    より接合された磁気ヘッドであって、前記接合ガラスが
    バナジウム、リン、アンチモン、鉛及びアルカリ金属を
    含む酸化物系ガラスであり、かつ、該ガラスのマイクロ
    ビッカース硬度Hvが360以上であることを特徴とす
    る磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記接合ガラスに含まれるアルカリ金属
    がナトリウムである請求項1に記載の磁気ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記接合ガラスが、タリウム、テルル、
    バリウムまたはビスマスの少なくとも一種を含む請求項
    1または2に記載の磁気ヘッド。
  4. 【請求項4】 磁性膜がアモルファス合金膜である請求
    項1,2または3に記載の磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記接合ガラスが、バナジウム、リン、
    アンチモン、鉛及びアルカリ金属を含む酸化物系ガラス
    において、V25、P25、Sb23、PbO及びアル
    カリ金属酸化物に換算しそれぞれが重量でV25が45
    〜57%、P25が17〜25%、Sb23が4〜20
    %、PbOが2〜20%及びアルカリ金属酸化物が1〜
    5%である請求項1〜4のいずれかに記載の磁気ヘッ
    ド。
  6. 【請求項6】 前記アルカリ金属酸化物がNa2Oに換
    算し1〜5重量%である請求項5に記載の磁気ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記接合ガラスがタリウム、テルル、バ
    リウムまたはビスマスの少なくとも一種を含み、その含
    有量は酸化物に換算して重量でTl2Oが1〜10%、
    TeO2が1〜10%、BaOが1〜10%及びBi2
    3が1〜10%である請求項5または6に記載の磁気ヘ
    ッド。
  8. 【請求項8】 高飽和磁束密度を有するアモルファス合
    金磁性膜からなる一対の磁気コアがマイクロビッカース
    硬度Hv360以上の酸化物系ガラスにより接合され一
    体化された磁気ヘッドと、該磁気ヘッドの駆動部と情報
    記録媒体との間の情報処理を行う制御部を備えた磁気記
    録再生装置であって、前記酸化物系ガラスがバナジウ
    ム、リン、アンチモン、鉛及びアルカリ金属を含むガラ
    スからなることを特徴とする磁気記録再生装置。
  9. 【請求項9】 前記磁気ヘッドのテープ摺動幅50〜7
    0μmであり情報記録媒体との相対速度5.8m/秒以
    上で摺動される請求項8に記載の磁気記録再生装置。
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