JP2627644B2 - 組織型プラスミノーゲン活性化因子の測定方法及びその測定試薬キット - Google Patents

組織型プラスミノーゲン活性化因子の測定方法及びその測定試薬キット

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、エンザイム・イムノアッセイを用いて、t
−PA(組織型プラスミノーゲン活性化因子)を高感度か
つ高精度で測定するための方法及びその測定試薬キット
に関する。
従来技術 血液は生体機能を司る最も重要な液性因子であり、種
々の研究が盛んに行われ、その機能が明らかにされてき
ている。この中でも、近年になり、特に詳細な解析が進
められてきたのが、凝固・線溶系の機能である。つま
り、出血により凝固因子が活性化されて止血されたり、
血管内に血塊が生成した際に、線溶機能が活性化されて
フィブリンが分解され、一時的に停止していた血流が再
開されたりする機能である。そして、このフィブリン分
解の過程で、重要な役割を果たす物質がt−PAである。
因に、このt−PAの血中濃度は、正常な状態の成人で5n
g/ml程度であることが知られている。したがつて、線溶
系機能の異常をチェックするために、t−PAの血中濃度
を測定することは非常に意義がある。また、最近では、
遺伝子組換技術によつてヒト型のt−PAが大量に供給さ
れるようになり、心筋梗塞患者や脳梗塞患者のような血
栓によつて起こつた重度の疾患に対し、血栓溶解の目的
で使用されるようになつてきたが、t−PAを大量に投与
することによつて出血傾向となるため、或いは、治療に
必要なt−PAの血中濃度維持が難しいため、t−PAの血
中濃度測定が不可欠とされている。更には、各種の疾患
と血中t−PA値との因果関係にも注目されるようにな
り、t−PA値が正常値より高い場合は肺梗塞症等の疾患
が想定され、また、t−PA値が正常値より低い場合はエ
ンドトキシン・ショックによるDIC(播種性血管内凝固
症)等の疾患が想定されるようになつてきている。
一方、現在までに、t−PAの血中濃度を測定するため
の試薬キットとしては、t−PAのポリクローナル抗体を
用いた2種類のELISAキットが既に市販されている。し
かし、これら市販の測定キットは、何れも、検量線の直
線性が悪く、感度も低いという問題があり、また、一次
抗体としてアフィノピューリファイされていないポリク
ローナル抗体を用いるために、特異性が劣るという問題
もあつた。更に、血漿中のt−PAを測定する場合、t−
PAがインヒビターと結合している状態を考慮して、血漿
を分離後、速やかに酸処理を行い、その後、直ちに中和
処理を行つたものをサンプルとして用いなければ正確な
測定値を得ることができず、したがつて、大量のサンプ
ルを処理する際には、煩雑な前処理操作が大きな欠点と
なつていた。なお、サンドイッチ・エンザイム・イムノ
アッセイ法によるt−PAの測定については、特開昭59−
174759に提案されているが、測定に用いる血漿サンプル
の調製についても問題がある。因に、血漿中には測定の
対象となるt−PAの他に、類似の特性を持つた蛋白分解
酵素が多数存在し、また、エンザイム・イムノアッセイ
法の標識として用いる酵素の阻害物質も多種存在するた
め、このような物質に対する抑制を検討しなければ、高
精度で、且つ、高感度の測定は困難である。
発明が解決しようとする課題 本発明者らは、上述のような問題に鑑み、エンザイム
・イムノアッセイ法によるt−PAの測定について鋭意検
討を重ねたところ、サンドイッチ法を採用し、該方法に
おける一次抗体としてt−PAの一本鎖及び二本鎖の両方
を等しく認識し、かつ遊離のt−PAのみならず、t−PA
−PAIコンプレックス(組織型プラスミノーゲン活性化
因子−プラスミノーゲン活性化因子阻害物質コンプレッ
クス)もほぼ完全に認識するモノクローナル抗体を用い
ることにより、簡単な操作で高感度、高精度にt−PAを
測定できることを見出した。しかも、特に、血漿中のt
−PAを測定する際に、ベンズアミジン等の低分子のセリ
ンプロテアーゼインヒビター、エチレンジアミン四酢酸
(EDTA)、及び牛血清アルブミン(BSA)を含む所定の
リン酸食塩緩衝液(PBS)を用いて測定に供するサンプ
ルを希釈することにより、簡単な操作で、測定の感度と
精度を高めることに成功した。
したがつて、本発明は、高感度で、且つ、高精度の測
定値が得られるt−PA測定法を提供することを課題とす
る。また、特に、血漿中のt−PAを測定する際に、煩雑
なサンプルの前処理操作を必要としない簡便なt−PA測
定法を提供することを課題とする。更には、これらの測
定法に適した測定試薬キットを提供することも課題とす
る。
以下本発明を詳しく説明する。
発明の構成 本発明の特徴は、t−PAを測定するサンドイッチ・エ
ンザイム・イムノアッセイ法において、一次抗体として
t−PAの一本鎖及び二本鎖の両方に親和性を有し、かつ
遊離のt−PA及びt−PA−PAIコンプレックスの両方に
親和性を有するモノクローナル抗体を使用することにあ
る。また、本発明の特徴は、次の1)〜3)を組み合せ
た、t−PAサンドイッチ・エンザイム・イムノアッセイ
に用いるt−PA測定試薬キットにある。
1)一本鎖及び二本鎖の両方のt−PA及びt−PA−PAI
コンプレックスをともに等しく認識するモノクローナル
抗体からなる固定化一次抗体、 2)t−PA抗体に標識酵素を結合させた酵素標識二次抗
体、 3)5〜10mMの低分子プロテアーゼインヒビター、1〜
10mMのエチレンジアミン四酢酸、0.05〜0.15%の牛血清
アルブミン、0.01〜0.10%の1ポリオキシエチレンソル
ビタンモノラウレート(商品名、例えばトウィーン20)
を含むリン酸食塩緩衝液、 前記3)で用いる低分子プロテアーゼインヒビターに
は、え酸ベンズアミン、パラアミノベンサミジン、メシ
ル酸カモスタット(camostat mesylate,FOY)、ジイソ
プロピルフルオロフォスフェート(diisopropyl fluoro
phosphate DFP)、及びフェニルメチルスルホニル フ
ルオライド(phenylmethyl sulfonyl fluoride,PMSF)
よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物が用
いられる。また、リン酸食塩緩衝液は、サンプル、例え
ば血漿を希釈するための緩衝液に用いられる。
課題を解決するための手段 本発明に用いる一次抗体は、t−PAの一本鎖及び二本
鎖の両方及び遊離のt−PA、更にはt−PA−PAIコンプ
レックスの両方に親和性を有するモノクローナル抗体で
あり、該モノクローナル抗体としては先に本発明者らが
出願したモノクローナル抗体(特開昭61−221128)の中
から選ばれる。また、酵素標識する二次抗体は、一次抗
体と抗原認識部位の異なるポリクローナル抗体、又はモ
ノクローナル抗体を用いるが、一般的にサンドイッチ・
エンザイム・イムノアッセイ法では、ポリクローナル抗
体を用いた方が良好な測定結果が得られるため、抗t−
PAポリクローナル抗体を用いることが好ましい。この二
次抗体の標識に用いる酵素は、ペルオキシダーゼ、ガラ
クトシダーゼ、或いは、ホスファターゼ等を例示し得
る。更には、測定試薬キットに組み込む一次抗体は、96
穴マイクロウエル、ガラスビーズ、プラスチツク小試験
管、イムノボール等の固相表面に固定化する。
本発明においては、t−PAの一本鎖及び二本鎖の両方
及び遊離のt−PA、およびt−PA−PAIコンプレックス
の両方に親和性を有するモノクローナル抗体を一次抗体
として、96穴マイクロウエル、ガラスビーズ、プラスチ
ツク小試験管、イムノボール等の固相表面に固定化す
る。抗体の固定化は、例えばPBSで希釈した抗体を37
℃、3時間、固相表面に接触、吸着させる方法等、通常
の方法を用いることができる。一次抗体を固相表面に吸
着させた後、0.1%BSA、0.05%ポリオキシエチレンソル
ビタンモノラウレートを含むPBSで3〜4回洗浄するこ
とにより、固相表面に固定化した一次抗体は使用が可能
となる。なお、一次抗体の固定化に用いられる固相とし
ては、96穴マイクロウエル(ファルコン社製)が簡単で
あり、最も利用されることが多い。
二次抗体として用いる抗体と標識酵素を結合させる方
法としては、例えば、抗体をF(ab′)フラグメント
に切断した後、高純度t−PAを固定化したアフィニティ
ー・クロマトグラフィーにより、t−PAに特異的なF
(ab′)のみを取得し、マレイミド化ペルオキシダー
ゼと結合させる方法(特開昭58−149700)等を用いるこ
とができる。
このようにして、作成された固定化一次抗体及び酵素
標識二次抗体を用いて、サンドイッチ・エンザイム・イ
ムノアッセイにより、t−PAの測定を行う。
特に、t−PA測定の対象が血漿のような夾雑酵素や酵
素阻害物質を含むものであつても、塩化ベンズアミン等
のセリン・プロセアーゼ・インヒビター、キレート化剤
のエチレンジアミン四酢酸、一般的なエンザイム・イム
ノアッセイに用いられるブロッキング剤の牛血清アルブ
ミン、及び界面活性剤のポリオキシエチレンソルビタン
モノラウレートを含むリン酸食塩緩衝液(0.1N NaClでp
H 7.4に調整)で希釈することにより、簡単にサンプル
として測定することが可能である。
次に、サンプルの希釈に用いるリン酸食塩緩衝液の組
成を示す。
リン酸食塩緩衝液 塩酸ベンズアミジン 5〜10 mM エチレンジアミン四酢酸 1〜10 mM 牛血清アルブミン 0.05〜0.15% ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート0.01〜0.
10% 一次抗体を固定化したウエル中に、血漿サンプルを一
定の濃度段階で希釈液により希釈したもの各100μ添
加し、37℃、3時間、又は4℃、一夜放置して抗体とt
−PAを結合させる。その後0.1%のBSA及び0.05%のポリ
オキシエチレンソルビタンモノラウレートを含有するPB
Sで3回洗浄した後、洗浄に用いたものと同一のPBSで至
適濃度に希釈した二次抗体を100μ加える。そして、3
7℃、3時間又は4℃、一夜放置して二次抗体とt−PA
を充分反応させる。次いで、洗浄用PBSで3回洗浄し、
ラベルした酵素に適した基質を添加する。例えば、ペル
オキシダーゼを用いた場合、オルトフェニレンジアミン
10mg、35%過酸化水素水5μ、及びpH 4.5,0.1Mクエ
ン酸−0.2Mリン酸2ナトリウム緩衝液25mlからなる基質
液を用いるとよい。この基質液を使用直前に調製し、各
ウエルに100μ添加する。その後、37℃、30分間反応
させ、反応を6N硫酸液50μを加えて反応を停止させ、
発色を492nmの波長で吸光度を測定し、同様に測定した
t−PA標準液の検量線によつてt−PA量を測定する。
なお、本発明の方法によるt−PA標準液の検量線、及
び市販の測定キットを用いたt−PA標準液の検量線を添
付の第1図に示す。
本発明に係る測定方法に用いるt−PA測定用試薬キッ
トは、前述したモノクローナル抗体からなる固定化一次
抗体と酵素標識二次抗体及び検体希釈用のリン酸食塩緩
衝液を組合せて成るものであつて、本試薬キットをt−
PAのエンザイム・イムノアッセイに利用すると、t−PA
試料(血漿検体)を該試薬キット中の緩衝剤により、酸
処理を行うことなく、簡易な操作で希釈することがで
き、更に該試薬キット中の一本鎖及び二本鎖のt−PA、
遊離のt−PA及びt−PA−PAIコンプレックスにそれぞ
れ等しく親和性を有するモノクローナル抗体を一次抗体
として用いることにより、高感度かつ高精度でt−PAを
測定することが可能となる。
因に、現在t−PA測定試薬キットとして市販されてい
る各製品においては、一次抗体及び二次抗体としてポリ
クローナル抗体を用いており、血中のt−PA量を測定す
る場合、両製品とも遊離のt−PAの回収は可能であるも
のの、血中に存在するインヒビターPAIとt−PAとが結
合したt−PA−PAIコンプレックスの完全なる回収は不
可能であるために、血中の全t−PA抗原量を測定するに
は、血漿を酸処理(pH 3.9)してt−PA−PAIコンプレ
ックスを切断した後、中和して測定することが必要であ
る。そして、この酸処理により未処理の場合に比べてt
−PA抗原量は約1.5〜2倍高値となるという問題があ
り、しかも上記酸処理と中和には臨床検査上手数と時間
がかかり、実用上大きな障害となつている。
これに対し、本発明に係る試薬キットでは、一次抗体
に前述したように、一本鎖及び二本鎖のt−PA及び遊離
のt−PA、更にはt−PA−PAIコンプレックスをともに
等しく認識し得るモノクローナル抗体を用いているた
め、遊離のt−PAのみならずt−PA−PAIコンプレック
スもほぼ完全に認識し回収されるので、血漿を酸処理し
なくても容易に血中の全t−PA抗原量を測定することが
可能となる。事実、本発明による試薬キットは血漿の酸
処理、未処理でも全t−PA抗原量はほぼ一定であつた
(実施例5参照)。
更に、本発明に係る試薬キットのリン酸食塩緩衝液を
用いて、凍結保存血漿を融解したものを希釈する場合10
0%の回収率を得ることができる。なお、このことは、
上記緩衝液中のセリンプロテアーゼインヒビター、例え
ばベンズアミジンハイドロクロライドとエチレンジアミ
ン四酢酸(EDTA)による、血漿に由来する抗原抗体反応
阻害因子の影響の排除及び血漿に由来する各種プロテア
ーゼによるt−PA抗原分解作用の抑制の各作用に因るも
のと推定される。
以下実施例を示して本発明及びその効果を具体的に説
明する。
実施例1 ヒト血漿を試料としたt−PAの測定 マウス腹水より精製した抗t−PAモノクローナル抗体
(モノクローナル抗体の調製については特開昭61−2211
28号公報参照)100μg/ml(PBS)をPBSで10倍に希釈し
たものを、96穴マイクロウエルプレート(ファルコン社
製)に各ウエル当り100μ分注した。次いで、37℃で
3時間放置した後、上記プレートを裏返して液を排除
し、各ウエルを0.1%BSA(牛血清アルブミン)と0.05%
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含有す
るPBS(BT−PBS)で3回洗浄したものを一次抗体として
用いた。
次に、試料として14名の健康成人からの血漿を、下記
組成のリン酸食塩緩衝液を用いて10倍並びに20倍に希釈
した。
5 mM EDTA 10 mM 塩酸ベンズアミジン 0.1 % BSA 0.05% ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 上記組成のものをPBSに溶解し、pH 7.4に調整したも
のを上記希釈用緩衝液とした。
上記により希釈して得られた血漿の希釈液を、各ウエ
ル当り100μ分注し、37℃で3時間放置して前記一次
抗体に反応させた後、BT−PBSで3回洗浄した。
次に、二次抗体としてペルオキシダーゼラベルt−PA
ポリクローナル抗体をBT−PBSで1000倍に希釈したもの
を各ウエルに100μ加え、37℃で3時間放置した後、B
T−PBSで3回洗浄した後、下記組成の基質液を100μ
添加し、37℃で30分間反応させた。
基質液組成: オルトフェニレンジアミン 10 mg 35%過酸化水素水 5μ 0.1Mクエン酸−0.2Mリン酸2 25 ml ナトリウム緩衝液(pH 4.5) 反応終了後、6N硫酸を各ウエル当り50μ加え、酵素
反応を停止させ、次いでマイクロプレートフォトメータ
ー(コロナ社製)で492nmの吸光度を測定した。
同様に処理したt−PA標準品を用いて検量線を描き、
血漿当りのt−PA濃度を測定した。
これらの測定値に基いて、10倍及び20倍に希釈した血
漿値のt−PA換算値を算出した結果は表1に示すとおり
である。
実施例2 本例は、ヒト血漿を検体として用いた場合の添加回数
の試験結果を示したものである。
実施例1に示した14人分の血漿をプールし、このプー
ル血漿を抗t−PAマウスモノクローナル抗体固定化カラ
ムを通し、t−PAのみを選択的に除去した。これに段階
希釈したt−PAを添加し、これを実施例1に示す組成の
血漿希釈のためのリン酸食塩緩衝液(BEバッファー)で
10倍に希釈した。一方、対照として、t−PA添加血漿を
実施例1に示したBT−PBSで10倍に希釈した。本検量線
を、BT−PBS、BEバッファーの2種をつくり、それぞれ
を、実施例1に示した手順に従つて測定した。
結果は第2図に示す通りであつて、BT−PBS希釈血漿
サンプルは、検量線、BEバッファー希釈のものに比較し
て誤差の大きいことが明らかである。
次に、上記血漿希釈液のための緩衝液に、塩酸ベンズ
アミジンに代えて低分子セリンプロテアーゼの1種であ
るパラアミノベンザミジンを含むリン酸緩衝液を用い同
様の試験を行つた。すなわち、上記BEバッファーの組成
中の塩酸ベンザミジンの代わりにパラアミノベンザミジ
ンを用いるほかは、上述したと同様の手順に従つて試験
を行つた。
その結果、血漿希釈のための緩衝液組成にパラアミノ
ベンザミジンのような低分子セリンプロテアーゼインヒ
ビターを用いた場合にも、塩酸ベンザミジンを上記組成
に用いた場合と同様の効果が得られた。
上述により、各種血漿へのt−PA添加回収試験を行つ
た結果を表示すると表2のとおりである。
実施例3 本例は一本鎖t−PAと二本鎖t−PAの回収比較試験を
行つた結果を示したものである。
t−PA(90%以上が一本鎖のfibroblastt−PA)溶液
にプラスミン溶液を加えたもの並びに等量の緩衝液(実
施例1で用いたもの)を加えたものをそれぞれ37℃で1
時間反応させて一本鎖t−PAと二本鎖t−PAを得た。一
本鎖と二本鎖の確認は電気泳動法により行つた。
次いで、t−PA濃度が等しい一本鎖t−PA溶液並びに
二本鎖t−PA溶液を、本発明によるt−PA ELISAプロト
コールに従つて測定した。
結果は第3図に示すとおりであつて、一本鎖t−PA溶
液、二本鎖t−PA溶液ともに抗原量に差は認められず、
これにより本発明によるELISAは、一本鎖及び二本鎖t
−PAを等しく認識することがわかる。
実施例4 本例はt−PA−PAIコンプレックスの回収試験を行つ
た結果を示したものである。
0.1Mグリシン、0.5M NaClを含む0.1MトリスHCl(pH
8.2)で2倍段階希釈した精製PAI(72.8μg/ml〜1.2μg
/ml)を用意し、これに0.05%ポリオキシエチレンソル
ビタンモノラウレートを含むPBS(pH 7.4)で調整した1
00ng/mlのt−PA溶液を等量混合し、37℃で30分間イン
キュベートを行つた。
これらの反応液のt−PA抗原量及び活性を測定した。
t−PA抗原量は本発明によるELISAプロトコールに従つ
て測定した。
また、t−PA活性は合成基質S−2288を用いて行つ
た。すなわち、100mMトリスHCl(pH 8.2)に15mMのS−
2288と0.26mg/mlのt−PAstimulatorを加えたものを基
質液として用意し、この基質液30μにサンプルを等量
加えた後、37℃で2時間反応させた。同時に標準t−PA
としてWHO・t−PAstandardを用いて反応させた。
結果は第4図に示すとおりで、PAI−1濃度が増加す
るに伴ない、t−PA活性は減少したが、t−PA抗原量に
は変化がみられなかつた。t−PA活性が減少するのはt
−PAがPAIとコンプレックスを形成しているためと考え
られる。この結果より、本発明によるELISAは遊離のt
−PAのみならず、t−PA−PAIコンプレックスも認識し
ていることがわかる。
実施例5 本例は本発明に係る測定方法と、従来の酸処理を行う
方法との比較を行つた結果を示したものである。
15例の血漿試料を用い、各血漿試料を2分割し、一方
は実施例1に示す方法で測定した。他方は、市販の測定
試薬を用い、前述した酸処理と中和を行う前処理、すな
わち、血漿に等量の1.0M酢酸緩衝液(pH 3.9)を加え、
37℃、15分間保温した後、直ちに0.1M Na2HPO4と0.4M N
aOHを含む中和液を2容を加える処理を行つた後、BT−P
BSで液量を10倍に希釈した。
次いで、この希釈した液を試料として用い、実施例1
に示した手順に従つて測定を行つた。
結果は表3に示すとおりである。
表3にみられるとおり、本発明による測定方法は、酸
処理を行う従来法に比べて測定結果に実質的な差がな
く、一方、本発明は、酸処理と中和の前処理を省略し得
る利点がある。
発明の効果 以上述べたとおり、本発明によると、従来の測定法に
おいて必須とされていた検体(例えば血漿)の煩雑な前
処理(酸処理と中和)を行う必要がなく、塩酸ベンズア
ミジン、EDTA、BSA及びポリオキシエチレンソルビタン
モノラウレートを含むリン酸食塩緩衝液(PBS)で希釈
するという簡易な操作で測定精度が著しく向上し、かつ
多数の検体を同時に高感度で測定することが可能とな
る。
更に、従来方法では比較的低い感度と検量線の非直線
性が問題とされていたが、本発明によると、一本鎖及び
二本鎖のt−PA、遊離のt−PA及びt−PA−PAIコンプ
レックスとそれぞれ等しく親和性を有するモノクローナ
ル抗体を一次抗体として使用することにより、高感度で
かつ検量線の直線性の良好なt−PA測定方法を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
添付の第1図は、本発明の方法によるt−PA標準液の検
量線と市販の測定試薬キットを用いたt−PA標準液の検
量線をそれぞれ示す。第2図は、ヒト血漿を検体として
用いた場合の添加回収試験の結果を示す。また、第3図
は、一本鎖t−PAと二本鎖t−PAの添加回収試験の結果
を示し、第4図はt−PA−PAIコンプレックスの回収試
験結果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−181964(JP,A) 特開 昭58−24862(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固定化した一次抗体と酵素標識二次抗体と
    を用いるサンドイッチ・エンザイム・イムノアッセイに
    より組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)を測
    定する方法において、固定化一次抗体として、一本鎖及
    び二本鎖の両方のt−PAを等しく認識し、かつ遊離のt
    −PAのみならず、組織型プラスミノーゲン活性化因子−
    プラスミノーゲン活性化因子阻害物質コンプレックス
    (t−PA−PAIコンプレックス)も等しく認識するモノ
    クローナル抗体を用いることを特徴とするt−PAの測定
    方法。
  2. 【請求項2】一本鎖及び二本鎖の両方のt−PA及びt−
    PA−PAIコンプレックスを認識するモノクローナル抗体
    は、固相表面に固定化したものである請求項(1)に記
    載の測定方法。
  3. 【請求項3】次の1)〜3)を組み合わせたことを特徴
    とする、t−PAのサンドイッチ・エンザイム・イムノア
    ッセイに用いるt−PA測定試薬キット。 1)一本鎖及び二本鎖の両方のt−PA及びt−PA−PAI
    コンプレックスをともに等しく認識するモノクローナル
    抗体からなる固定化一次抗体、 2)t−PA抗体に標識酵素を結合させた酵素標識二次抗
    体、 3)5〜10mMの低分子セリンプロテアーゼインヒビタ
    ー、1〜10mMのエチレンジアミジン四酢酸、0.01〜0.10
    %のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含
    むリン酸食塩緩衝液、
  4. 【請求項4】低分子セリンプロテアーゼインヒビター
    が、塩酸ベンズアミジン、パラアミノベンサミジン、メ
    シル酸カモスタット(FOY)、ジイソプロピル フルオ
    ロフォスフェート(DFP)及びフェニルメチルスルホニ
    ル フルオライド(PMSF)よりなる群から選択される少
    なくとも1種の化合物である請求項3に記載のt−PA測
    定試薬キット。
JP63146363A 1988-06-14 1988-06-14 組織型プラスミノーゲン活性化因子の測定方法及びその測定試薬キット Expired - Lifetime JP2627644B2 (ja)

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