JP2616356B2 - 車両用シートのヘッドレスト装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は車両用シートのヘッドレ
スト装置に関し、特にヘッドレスト本体をシートバック
上端部においてシート前後方向に起立、倒伏可能に設け
てなる可倒式のヘッドレスト装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、車両用シート等にあっては、自
動車の走行中、着座者を安定して保持すると共に、適切
な座り心地感を与え、長時間にわたる着座状態にあって
も疲労を出来るだけ軽減し得ることが望まれ、この為に
シート各部に種々のサポート装置が付設される。このよ
うなサポート装置として最も一般には、シートバック上
端部に起立して着座者の頭部背面側を支えるヘッドレス
ト装置がある。

【０００３】ところで、このようなヘッドレストとして
従来から種々の構造が知られており、例えばシートバッ
ク上端部に立設されるヘッドレストスティの上端側に設
けられるヘッドレスト本体を、シート前後方向に可動自
在に設けてなる前後位置調整型のものも周知である。こ
のような可動式のヘッドレスト装置では、着座者におけ
る着座時のフィーリングをより一層向上させ得る。

【０００４】更に、近年この種の車両用シートにあって
は、車両の前部座席に用いられるヘッドレスト本体を、
シート前後方向に倒伏又は起立自在に構成し、シート前
方への倒伏時において後部座席に着座した乗員の前方視
野を拡大し、その状態を確保し得るような構成が、例え
ば実公平３−４４５９４号公報により従来既に提案され
ていた。

【０００５】これを簡単に説明すると、この従来のヘッ
ドレスト装置は、ヘッドレスト本体を縦方向において
前、後に二分割してなる前、後部ブロック体を備えてい
る。そして、シートバック上端部に立設されるヘッドレ
ストスティの上端側に後部ブロック体の下端部を回動自
在に軸支し、更にこの後部ブロック体の上端部に、前部
ブロック体の上端部を回動自在に軸支すると共に、この
前部ブロック体の下端部を、前記ヘッドレストスティの
上端側に設けたロック機構にてロック係止することによ
り、両ブロック体を、互いに組合わせた状態でシートバ
ック上端部で起立させ、ヘッドレスト装置としての機能
を発揮させ得るようになっていた。

【０００６】例えば後部乗員のシート前方での視野を拡
大させるには、前記ロック機構を外し、前部ブロック体
を一旦上方に回動させた後、これを後部ブロック体と共
に、前記スティ上での軸支部を中心として前倒れさせる
ことで、前、後部ブロック体をシート前方に倒伏させて
おり、又これから起立状態とするには、上述したとは逆
の操作を行なうとよいものであった。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、上述した従
来構造によるヘッドレスト装置では、前、後部ブロック
体を起立状態としたり、シート前方に倒伏させたりする
為の機構構造が複雑で、コスト高を招き、又ヘッドレス
ト本体を起立、倒伏させる為の操作が面倒である等の不
具合があった。

【０００８】更に、上述した従来のヘッドレスト装置で
は、ヘッドレスト本体の縦方向において前、後に分割し
ていることから、ヘッドレスト本体の外側部に縦方向に
沿って全周に割りが入り、外観上から見栄えが悪いと言
う問題もあった。

【０００９】又、このような従来装置では、ヘッドレス
ト本体を倒伏状態とした時に、起立状態での標準の高さ
の約１／２程度しか、ヘッドレスト高さを低くすること
が出来ない。これは、従来構造では、ヘッドレスト本体
を縦方向において前、後に分割して構成しており、可倒
時においても後部ブロック体がシートバック上端部に積
み重なって前倒れし、この後部ブロック体の厚み分がシ
ートバック上端部に残ってしまう為であり、これらの問
題点を解決し得る何らかの対策を講じることが望まれて
いる。

【００１０】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、可倒式ヘッドレスト装置構造の簡素化やコ
スト低減化を図り、又外観上の見栄えを良くし、更にヘ
ッドレスト本体の倒伏時における高さを可能な限り低く
し、後部座席への乗員の前方視界を可能な限り拡大し得
ると共に、ヘッドレスト本体のシートバック上端部での
起立又は倒伏操作を極めて簡単に行なえる車両用シート
のヘッドレスト装置を得ることを目的としている。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明に係る車両用シー
トのヘッドレスト装置は、着座者の頭部背面を起立状態
で支えるヘッドレスト本体と共に可倒式ヘッドレスト装
置を構成するようにシートバック上端部に立設されるヘ
ッドレストスティの上端側に設けられる回動軸部材を、
ヘッドレスト本体内に左右方向に沿って配置し、この回
動軸部材の少なくとも一端を回動が規制された状態でシ
ート前後方向にスライド動作自在に支持すると共にこの
スライド動作方向の少なくとも一端寄りの部分に回動軸
部材の回動を許容する回動許容部を有するスライドレー
ル部材を、ヘッドレスト本体内でシート前後方向に沿っ
て設け、且つ前記回動軸部材を前記スライドレール部材
の所定個所で前記ヘッドレスト本体側にロック係止する
外部操作可能なロック手段を設けたものである。

【００１２】

【作用】本発明に依れば、起立状態にあるヘッドレスト
本体においてロック手段をロック解除し、ヘッドレスト
本体をシート前方に押圧操作することにより、ヘッドレ
スト本体は、回動軸部材が回動を規制された状態でスラ
イドレール部材に沿ってシート後方に移動すると共にそ
の一端寄りの部分に設けた回動許容部において回動軸部
材が回動動作することにより、相対的にシート前方に移
動すると共に回動されて、シート前方に移動、倒伏回動
され、これによりヘッドレスト本体の倒伏状態が得られ
る。又、この倒伏状態から、ヘッドレスト本体をシート
後方に持ち上げ回動させると、ヘッドレストスティ上端
側に設けられる回動軸部材は、スライドレール部材の回
動許容部で回動すると共にシート前方に向って移動し、
更にロック手段をロック状態とすることによって、ヘッ
ドレスト本体の所要の起立状態が得られることになる。

【００１３】

【実施例】図１乃至図４は本発明に係る車両用シートの
ヘッドレスト装置の一実施例を示し、これらの図におい
て、符号１０で示す可倒式のヘッドレスト装置は、図１
乃至図３から明らかなように、シートバック１の上端部
に設けられ、起立した状態である時に着座者の頭部背面
を支えるヘッドレストフレームとその周囲を覆うパッド
材及び表皮材（共に図示せず）とからなるヘッドレスト
本体１２と、前記シートバック１の上端部に立設される
ヘッドレストスティ１４，１４とによって構成されてい
る。

【００１４】尚、これらのヘッドレストスティ１４，１
４は、その上端側が、シート前方に向って屈曲形成され
ている。

【００１５】さて、本発明に依れば、上述したように着
座者の頭部背面を起立状態で支えるヘッドレスト本体１
２とシートバック１の上端部に立設されるヘッドレスト
スティ１４，１４とからなる可倒式ヘッドレスト装置１
０において、図１乃至図４から明らかなように、ヘッド
レストスティ上端側１４ａ，１４ａに設けられる回動軸
部材２０を、ヘッドレスト本体１２内に左右方向に沿っ
て配置し、この回動軸部材２０の両端部を偏平係合部２
０ａ，２０ａとして形成し、これらの回動を規制した状
態でシート前後方向にスライド動作自在に支持する回動
規制部２２ａ，２２ａとこのスライド動作方向の少なく
とも一端寄りの部分（本実施例ではシート後方位置）に
回動軸部材２０の回動を許容する回動許容部２２ｂ，２
２ｂを有するスライドレール部材２２，２２を、ヘッド
レスト本体１２内でシート前後方向に沿って設け、且つ
回動軸部材２０を前記スライドレール部材２２，２２の
所定個所（本実施例ではシート前方位置）でヘッドレス
ト本体１２側にロック係止する外部操作可能なロック手
段３０を設けたところに特徴を有している。

【００１６】ここで、図１中符号２３，２３はヘッドレ
ストスティ１４，１４の上端側１４ａ，１４ａに回動軸
部材２０を所定のフリクションを与えて回動可能に保持
する為のブラケット２３ａ及び板ばね２３ｂ，２３ｂか
らなる保持部材で、この保持部材２３，２３によって回
動軸部材２０は、スティ１４，１４の上端側１４ａ，１
４ａ側に対し所望のフリクションを持ってロック状態で
設けられている。従って、ヘッドレスト本体１２に、過
度の回動力が作用した時の逃げ用としての回動動作は許
容される。

【００１７】又、上述した回動軸部材２０の両端側に設
けられる偏平状係合部２０ａ，２０ａとしては軸部と一
体構造でも良いが、例えば図５に示すような偏平状キャ
ップ２０ｂを嵌め込んで設ける等の別体型で構成しても
よい。

【００１８】更に、２４は前記保持部材２３のブラケッ
ト２３ａに設けられた係合アーム、２５はこれに選択的
に係合する係合爪、２６はこの係合爪２５を有する軸、
２７はこの軸２６をヘッドレスト本体１２のフレーム
（図示せず）に付設されるレバー部、２８は軸２６を外
部から回動操作することによって係合爪２５のアーム２
４の係合を選択的に解除するための操作ノブで、これら
によって前記ロック手段３０が構成されている。

【００１９】そして、以上の構成に依れば、図２に示す
ように起立状態にあるヘッドレスト本体１２においてロ
ック手段３０をロック解除し、ヘッドレスト本体１２を
シート前方に押圧操作すれば、ヘッドレスト本体１２
は、回動軸部材２０が回動を規制された状態でスライド
レール部材２２，２２に沿ってシート後方に移動すると
共にその一端寄りの部分に設けた回動許容部２２ｂ，２
２ｂにおいて回動軸部材２０の偏平係合部２０ａ，２０
ａが回動動作することにより、相対的にシート前方に移
動すると共に回動されて、シート前方に移動、倒伏回動
され、これにより図３に示したようなヘッドレスト本体
１２の倒伏状態が得られることになる。

【００２０】又、この図３における倒伏状態から、ヘッ
ドレスト本体１２をシート後方に持ち上げ回動させる
と、ヘッドレストスティ上端側１４ａ，１４ａに設けら
れる回動軸部材２０の偏平係合部２０ａ，２０ａは、ス
ライドレール部材２２の回動許容部２２ｂで回動すると
共にシート前方に向って移動し、更にロック手段３０を
ロック状態とすることによって、図２のようなヘッドレ
スト本体１２の所要の起立状態が得られる。

【００２１】そして、このような構成に依れば、ヘッド
レスト装置１０の可倒機構の構造を従来に比べて大幅に
簡素化し、コスト低減化を図れると共に、ヘッドレスト
本体１２を起立、倒伏させる為の操作がロック手段３０
の解除とヘッドレスト本体１２のシート前後方向への押
圧操作によって極めて簡単に行なえる。

【００２２】更に、従来のヘッドレスト装置では、ヘッ
ドレスト本体の外側部での縦方向において前、後に分割
形成されていることから、ヘッドレスト本体の外側部で
縦方向に沿って全周に割りが入り、外観上から見栄えが
悪いと言う問題があったが、このような問題を一掃し得
るものである。

【００２３】又、ヘッドレスト本体１２を倒伏状態とし
た時に起立状態での標準の高さを必要最小限とすること
が可能で、これにより従来の可倒式ヘッドレスト装置に
比べて、ヘッドレスト本体１２の倒伏状態でのシートバ
ック１の上端部におけるヘッドレスト本体１２の高さ位
置を可能な限り低くすることが出来、これにより後部乗
員の前方視界を広げることが可能となる。

【００２４】尚、本発明は上述した実施例構造に限定さ
れず、ヘッドレスト本体１２やヘッドレストスティ１
４，１４からなる可倒式ヘッドレスト装置１０、シート
バック１等を始めとする各部の形状、構造等を、必要に
応じて適宜変形、変更することは自由である。

【００２５】例えば上述した実施例では、ヘッドレスト
本体１２内に臨んで配置されるヘッドレストスティ１
４，１４の上端側１４ａ，１４ａに設けられる回動軸部
材２０の両端部を略偏平状に形成し、これらの偏平状係
合部２０ａ，２０ａをスライドレール部材２２，２２に
可動を規制した状態で係入させてスライド動作自在に構
成しているが、これに限定されず、スライドレール部材
２２，２２とこれに係入される回動軸部材２０の少なく
とも一端側を偏平係合部２０ａとして構成し、且つこれ
を一方のみに設けたスライドレール部材２２に係入させ
てもよい。

【００２６】又、スライドレール部材２２での回動規制
部２２ａと回動許容部２２ｂとに係合し、回動を規制さ
れたり回動を許容されたりする回動軸部材２０の端部係
合部としても、偏平状に限定されるものではない。

【００２７】更に、スライドレール部材２２，２２にお
ける回動許容部２２ｂ，２２ｂとしては、上述した実施
例のようにシート後端側のみに設けた場合に限定され
ず、例えば後端寄りの部分、前端側部分、あるいはスラ
イド方向における複数個所に設けて回動調整可能に構成
する等の種々の変形例が考えられよう。

【００２８】又、ロック手段３０やこれを外部操作する
ためのノブ２８等の手段としても、種々の変形例が考え
られるものであり、しかもその係止ロック位置として
も、上述したシート前方位置に限定されないことも言う
までもない。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係る車両用
シートのヘッドレスト装置に依れば、ヘッドレスト本体
と共に可倒式ヘッドレスト装置を構成するようにシート
バック上端部に立設されるヘッドレストスティの上端側
に設けられる回動軸部材を、ヘッドレスト本体内に左右
方向に沿って配置し、この回動軸部材の少なくとも一端
を回動が規制された状態でシート前後方向にスライド動
作自在に支持すると共にこのスライド動作方向の少なく
とも一端寄りの部分に回動軸部材の回動を許容する回動
許容部を有するスライドレール部材を、ヘッドレスト本
体内でシート前後方向に沿って設け、且つ前記回動軸部
材を前記スライドレール部材の所定個所で前記ヘッドレ
スト本体側にロック係止する外部操作可能なロック手段
を設けるようにしたので、ヘッドレスト本体の可倒機構
の構造を簡素化し、コスト低減化を図れると共に、ヘッ
ドレスト本体を起立、倒伏させる為の操作がロック手段
の解除とヘッドレスト本体のシート前後方向への押圧操
作によって極めて簡単に行なえると言う種々優れた効果
を奏する。

【００３０】更に、本発明に依れば、従来のヘッドレス
ト装置ではヘッドレスト本体外側部の縦方向において
前、後に分割していることから、ヘッドレスト本体の縦
方向に沿って全周に割りが入り、外観上から見栄えが悪
いと言う問題があったが、これを解消し得るものであ
る。

【００３１】又、本発明では、ヘッドレスト本体を倒伏
状態とした時に起立状態での標準の高さを必要最小限と
することが可能で、これにより従来の可倒式ヘッドレス
ト装置に比べて、ヘッドレスト本体の倒伏状態でのシー
トバック上端部におけるヘッドレスト高さを可能な限り
低くすることが出来、これにより後部乗員の前方視界を
広げることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る車両用シートのヘッドレスト装置
の一実施例を示す全体の概略構成を示す概略斜視図。

【図２】図１に示したヘッドレスト本体を起立状態とし
た時の動作説明図。

【図３】図１に示したヘッドレスト本体を倒伏状態とし
た時の動作説明図。

【図４】本発明に係るヘッドレスト装置の要部となるス
ライドレール部材と回動軸部材との関係を説明する概略
図。

【図５】回動軸部材の端部構造の別の実施例を示す概略
斜視図。

【符号の説明】

１ 車両用シートのシートバック １０ 可倒式ヘッドレスト装置 １２ ヘッドレスト本体 １４ ヘッドレストスティ １４ａ ヘッドレストスティ上端側 ２０ 回動軸部材 ２０ａ 偏平係合部 ２２ スライドレール部材 ２２ａ 回動規制部 ２２ｂ 回動許容部 ２４ 係合アーム ２５ 係合爪 ２８ 操作ノブ ３０ ロック手段

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートバック上端部に立設されるヘッド
   レストスティとその上端側に設けられ起立状態で着座者
   の頭部背面を支えるヘッドレスト本体とを備えた車両用
   シートのヘッドレスト装置において、 前記ヘッドレストスティの上端側に設けられる回動軸部
   材を、前記ヘッドレスト本体内に左右方向に沿って配置
   し、この回動軸部材の少なくとも一端を回動が規制され
   た状態でシート前後方向にスライド動作自在に支持する
   と共にこのスライド動作方向の少なくとも一端寄りの部
   分に回動軸部材の回動を許容する回動許容部を有するス
   ライドレール部材を、前記ヘッドレスト本体内でシート
   前後方向に沿って設け、且つ前記回動軸部材を前記スラ
   イドレール部材の所定個所で前記ヘッドレスト本体側に
   ロック係止する外部操作可能なロック手段を設けたこと
   を特徴とする車両用シートのヘッドレスト装置。