JP2595333B2 - 変性ポリオルガノシロキサンおよびその製造方法 - Google Patents

変性ポリオルガノシロキサンおよびその製造方法

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JP2595333B2 JP63281603A JP28160388A JP2595333B2 JP 2595333 B2 JP2595333 B2 JP 2595333B2 JP 63281603 A JP63281603 A JP 63281603A JP 28160388 A JP28160388 A JP 28160388A JP 2595333 B2 JP2595333 B2 JP 2595333B2
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明嗣 栗田
誠 松本
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友治 山元
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東芝シリコーン株式会社
日本合成ゴム株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の技術分野] 本発明は、ビニルモノマーが効率よくグラフト重合さ
れ、容易に安定なグラフト共重合体を形成し得る変性ポ
リオルガノシロキサンおよびその製造方法に関する。
[発明の技術的背景とその課題] ポリオルガノシロキサン(以下、シリコーンゴムと記
す)は、耐熱性、耐寒性、耐候性、電気特性、耐薬品
性、難燃性、耐圧縮永久歪み、気体透過性、耐放射線性
などに優れ、極めて特異なシロキサン骨格から成るポリ
マーとして知られている。
ところで、現在の動向として2種以上のポリマーをブ
レンドして、それぞれのポリマーの利点を合わせ持つポ
リマー、いわゆるポリマーアロイが着目されている。し
かし、ポリマーアロイでは各ポリマー同士の相溶性が問
題となり、非相溶のポリマー同士では良好なポリマーブ
レンド物は得られにくく、その場合、なんらかの変性技
術が必要となる。
このようなポリマーアロイにおいて、シリコーンゴム
の使用を考えた場合、上記した優れた特性を他のポリマ
ーに付与できれば、優れたポリマーブレンド物が得られ
る。しかしながら、シリコーンゴムはシロキサン骨格か
ら成る特異的なポリマーであり、他の一般的なポリマー
であるカーボン骨格から成るポリマーとは相溶性が悪
い。そのため、シリコーンゴムになんらかの変性技術が
必要になる。
この変性技術の手法として数種の方法が提案されてい
る。たとえば、特開昭50−109285号公報には、ビニル基
またはアリル基含有ポリオルガノシロキサンの存在下に
ビニルモノマーを重合させることにより、グラフト共重
合体を形成することが記載されている。また、特開昭52
−130885号公報には、ビニル基またはアリル基含有ポリ
オルガノシロキサンの代わりに、メルカプト基含有ポリ
オルガノシロキサンを用いる方法が記載されている。さ
らに、特開昭60−252613号公報、特開昭61−106614号公
報および特開昭61−136510号公報には、アクリル基また
はメタクリル基を含有するポリオルガノシロキサンのエ
マルジョン中でビニルモノマーを重合させることによ
り、高いグラフト率を有するグラフト共重合体を形成さ
せる手法が記載されている。
しかしながら、上述した方法のうち、ビニル基または
アリル基含有ポリオルガノシロキサンや、メルカプト基
含有ポリオルガノシロキサンは、ビニルモノマーとのグ
ラフト反応性が乏しいという問題があった。したがっ
て、ゲル生成量から換算される見掛けのグラフト率、す
なわちポリオルガノシロキサンに対し、これにグラフト
したビニルポリマーの割合は充分とは言えず、ポリオル
ガノシロキサンとビニルポリマー間の相溶性はあまり改
善されていない。
また、アクリル基またはメタクリル基を含有するポリ
オルガノシロキサンを用いた場合は、高いグラフト率は
得られるものの、変性基がエステル結合によるものなの
で、強酸や強塩基が存在する条件下でエステル分解が起
こりやすく、そのため使用範囲が狭いという欠点を有し
ていた。
[発明の目的] 本発明はこのような従来の事情に対処してなされたも
ので、グラフト反応性に優れ、他の有機ポリマーと容易
に安定なグラフト共重合体を形成し得る変性ポリオルガ
ノシロキサンおよびその製造方法を提供することを目的
とする。
[発明の構成] 本発明の変性ポリオルガノシロキサンは、 (式中、R1は置換または非置換の1価の有機基を、aは
1.80〜2.02の数を示す。)で表されるとともに、前記
(I)式中のR1のうち0.02%〜10%が (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
を示す。)で表される不飽和基を含む基であり、かつ、
けい素原子数が100〜10,000の範囲であることを特徴と
している。
また、本発明の変性ポリオルガノシロキサンサンの製
造方法は、 (式中、R3は置換または非置換の1価の炭化水素基を、
nは0〜3の整数を示す。)で表される構造単位を有す
るオルガノシロキサンと、 (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
を示す。)で表される不飽和基を含む基とアルコキシシ
リル基とを合わせ持つ化合物からなるグラフト交叉剤と
を、触媒の存在下に重縮合させることを特徴としてい
る。
本発明に用いられる(A)成分のオルガノシロキサン
は、上記(III)式で表される構造単位を有するもので
あり、この構造は直鎖状、分岐状または環状など特に限
定はないが、環状構造を有するオルガノシロキサンが好
ましい。
(A)成分のオルガノシロキサンの有する置換または
非置換の1価の炭化水素基としては、たとえばメチル
基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、お
よびそれらをハロゲン原子またはシアノ基で置換された
置換炭化水素基などを挙げることができる。
このような(A)成分のオルガノシロキサンとして
は、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチル
シクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロ
キサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメ
チルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合
物が例示されるが、このほか直鎖状あるいは分岐状のオ
ルガノシロキサンを用いてもよい。
なお、(A)成分のオルガノシロキサンは、予め縮合
された、たとえばポリスチレン換算の重量平均分子量が
500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであっても
よい。
また、このような場合、ポリオルガノシロキサンの分
子鎖末端は、たとえば水酸基、アルコキシ基、トリメチ
ルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニル
ビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基などで封鎖
されているものでもよい。
本発明で使用される(B)成分のグラフト交叉剤は、 (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
を示す。)で表される不飽和基を含む基とアルコキシシ
リル基とを合わせ持つ化合物であり、上記(II)式で表
される不飽和基を含む基としては、ビニルフェニル基、
1−(ビニルフェニル)エチル基、2−(ビニルフェニ
ル)エチル基、(ビニルフェニル)メチル基などが例示
される。
そして、上述したような有機基とアルコキシシリル基
とを合わせ持つグラフト交叉剤としては、p−ビニルフ
ェニルメチルジメトキシシラン、1−(m−ビニルフェ
ニル)メチルジメチルイソプロポキシシラン、2−(p
−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3
−(p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシ
シラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメ
チルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)−
1,1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン、1−
(p−ビニルフェニル)−1,1−ジフェニル−3−エチ
ル−3,3−ジエトキシジシロキサン、m−ビニルフェニ
ル−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジフェニ
ルシラン、[3−(p−イソプロペニルベンゾイルアミ
ノ)プロピル]フェニルジプロポキシシラン、m−ビニ
ルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(m−ビニル
フェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(p−
ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−
(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラ
ン、2−(o−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキ
シシラン、1−(o−ビニルフェニル)エチルメチルジ
メトキシシランなどが例示され、これらを単独で用いる
か、あるいは2種以上の混合物として用いることも可能
である。
なお、(B)成分のグラフト交叉剤として好ましいの
は、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、m−
ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、o−ビニルフ
ェニルメチルジエトキシシラン、2−(p−ビニルフェ
ニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(p−ビニ
ルフェニル)エチルメチルジエトキシシラン、(p−ビ
ニルフェニル)メチルメチルジメトキシシラン、2−
(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラ
ン、1−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキ
シシラン、1−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジ
メトキシシラン、2−(o−ビニルフェニル)エチルメ
チルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)エ
チルメチルジメトキシシランである。
この(B)成分のグラフト交叉剤の使用量は、得られ
る変性ポリオルガノシロキサンの置換または非置換の1
価の有機基R1の総量に対して、0.02%〜10%、好ましく
は0.05%〜3%が(II)式で表される不飽和基を含む基
となるように決定される。
上記(II)式で表される不飽和基を含む基の導入が0.
02%未満では、得られる変性ポリオルガノシロキサンと
ビニル系モノマーとのグラフト重合において高いグラフ
ト率が得られず、そのため、変性ポリオルガノシロキサ
ンとグラフトされたビニル系ポリマー間の界面接着力が
低下し、層状剥離が生じてグラフト共重合体に充分な強
度が得られない。
一方、上記(II)式で表される不飽和基を含む基の導
入が有機基R1の総量に対して10%を超えると、グラフト
率は増大するが、グラフトされたビニルモノマーの重合
が(B)成分のグラフト交叉剤の増加とともに低下し、
このビニルポリマーが低分子量となるため、グラフト共
重合体の強度が低下する。
本発明の変性ポリオルガノシロキサンは、上述した
(A)成分のオルガノシロキサンと、(B)成分のグラ
フト交叉剤とを、たとえばアルキルベンゼンスルホン
酸、アルキル硫酸などの触媒の存在下にホモミキサーな
どを用いてせん断混合し、重縮合させることによって製
造することができる。
この触媒は(A)成分のオルガノシロキサンの重合触
媒として作用するほか乳化剤となる。この触媒の使用量
は、(A)成分および(B)成分の合計量に対して通常
0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%程度である。
なお、この際の水の使用量は、(A)成分および
(B)成分の合計量100重量部に対して、通常200〜400
重量部、好ましくは250〜350重量部である。
また、重縮合反応は、はじめに70℃〜95℃、好ましく
は80℃〜90℃で、2〜8時間、好ましくは3〜6時間加
熱する。その後、3℃〜30℃、好ましくは5℃〜20℃
で、12〜96時間、好ましくは24〜72時間冷却することに
よって行う。
なお、本発明の変性ポリオルガノシロキサンを製造す
るに際し、得られるポリマーの強度を向上させるため
に、第3成分として架橋剤を添加することもできる。こ
の架橋剤としては、たとえばメチルトリメトキシシラ
ン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシ
シランなどの3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン、
1.3−または1.4−ビス[2−(ジメトキシメチルシリ
ル)エチル]ベンゼン、1.3−または1.4−ビス[1−
(ジメトキシメチルシリル)エチル]ベンゼン、1−
[1−(ジメトキシメチルシリル)エチル]−3−[2
−(ジメトキシメチルシリル)エチル]ベンゼン、1−
[1−(ジメトキシメチルシリル)エチル]−4−[2
−(ジメトキシメチルシリル)エチル]ベンゼンなどの
4官能性架橋剤を挙げることができる。この架橋剤の添
加量は、(A)成分のオルガノシロキサンおよび(B)
成分のグラフト交叉剤の合計量に対して、10重量%以
下、好ましくは5重量%以下である。
このようにして(A)成分と(B)成分とを重縮合す
ることにより、 (式中、R1は置換または非置換の1価の有機基を、aは
1.80〜2.02の数を示す。)で表されるとともに、前記
(I)式中のR1のうち0.02%〜10%が (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
を示す。)で表される不飽和基を含む基を有している、
本発明の変性ポリオルガノシロキサンが得られる。
この変性ポリオルガノシロキサンのポリスチレン換算
重量平均分子量は、1万〜500万、好ましくは5万〜300
万である。すなわち、けい素原子数として100〜10,000
を含んでいる。
けい素原子数が100未満ではシロキサン主鎖に基づく
特性の効果が充分に現れず、強度も不充分であり、10,0
00以上では合成が困難となり、他の有機ポリマーとのブ
レンド性および加工性が低下するため好ましくない。
このようにして製造された本発明の変性ポリオルガノ
シロキサンと、種々のビニル系モノマーをグラフト重合
させることによって、シリコーンの特性を付与したグラ
フト共重合体が得られる。
また、他の有機ポリマーとのポリマーブレンド物とし
て使用する場合、ブレンドを行うに際して、ブレンドし
ようとする有機ポリマーと相溶系であるモノマーを、本
発明の変性ポリオルガノシロキサンにグラフト共重合さ
せることによって、各有機ポリマーとの相溶性を高める
ことができる。
本発明の変性ポリオルガノシロキサンにビニル系モノ
マーをグラフト共重合させる場合、使用されるビニルモ
ノマーとしては、たとえばスチレン、α−メチルスチレ
ン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族アルケ
ニル化合物;メチルメタクリレート、エチルメタクリレ
ート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチルメタ
クリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチル
メタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート
などのメタクリル酸エステル;メチルアクリレート、エ
チルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル
酸エステル;アクリロニトリル、メタクリルニトリルな
どのシアン化ビニル化合物;エチレン、プロピレンなど
のオレフィン;ブタジェン、イソプレン、クロロプレン
などの共役ジオレフィン;および酢酸ビニル、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、トリアリルイソシアヌレート、ア
クリル酸、メタクリル酸、N−フェニルマレイミド、N
−シクロヘキシルマレイミド、無水マレイン酸などが例
示され、これらを単独で用いるか、あるいは2種以上の
混合系として用いることも可能である。
これらのビニル系モノマーを用いて形成したグラフト
共重合体の、耐衝撃性を向上させようとするならば、65
〜75重量%のスチレンおよび35〜25重量%のアクリロニ
トリルを含むものを使用することが好ましい。
また、得られるグラフト共重合体のグラフト率は、通
常20重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ま
しくは100重量%以上である。このようにグラフト共重
合体のグラフト率が高いと、変性ポリオルガノシロキサ
ンとグラフトしなかったビニル系ポリマーによって形成
される重合体、もしくは第3のブレンド用ポリマーとの
間の界面接着力が増大し、そのためビニル系ポリマーも
しくは第3のブレンド用ポリマーに変性ポリオルガノシ
ロキサンが均一に分散し、シリコーンの特徴を兼ね備え
た新規なポリマーを得ることができる。
本発明の変性ポリオルガノシロキサンにビニル系モノ
マーをラジカル重合によってグラフト重合する場合、ラ
ジカル重合開始剤の種類によっては、上述したアルキル
ベンゼンスルホン酸などにより、酸性となっている変性
ポリオルガノシロキサンのラテックスを、アルカリで中
和する必要がある。このアルカリとしては、たとえば水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭
酸水素ナトリウム、トリエタノールアミン、トリエチレ
ンアミンなどが用いられる。
また、ラジカル重合開始剤としては、たとえばクメン
ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイ
ドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサ
イドなどの有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化
剤と、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方、
含糖ピロリン酸鉄処方/スルホキシレート処方の混合処
方などの還元剤との組み合せによるレドックス系の開始
剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸
塩;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2′−
アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブ
チロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサ
イド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物な
どを挙げることができ、好ましいものはレドックス系の
開始剤である。これらのラジカル重合開始剤の使用量
は、使用されるビニル系モノマー100重量部に対し、通
常0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部程度であ
る。なお、この際のラジカル重合は、乳化重合あるいは
溶液重合によって実施することが好ましい。
乳化重合に際しては、公知の乳化剤、上述したような
ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤などが使用される。
ここで、乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン
酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジフェニルエ
ーテルジスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルカリエ
ステルスルホンナトリウムなどのアニオン系乳化剤ある
いはポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシ
エチレンアルキルアリルエーテルなどのノニオン系乳化
剤が例示され、単独で用いるか、あるいは2種以上を用
いてもよい。
乳化剤の使用量は、ビニル系モノマーに対して、通常
0.5〜2重量%である。
連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、オ
クチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、
n−ヘキシルメルカブタンなどのメルカプタン類;四塩
化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化合物が、ビニル
系モノマーに対して、0.02〜1重量%使用される。
このほか、必要に応じて各種電解質、pH調整剤などを
併用してもよい。
重合反応は、ビニル系モノマー100重量部に対して、
通常、水を100〜200重量部加え、重合温度40℃〜90℃、
好ましくは60℃〜80℃、重合時間1〜10時間の条件で行
われる。
なお、乳化重合の場合は、(A)成分のオルガノシロ
キサンと(B)成分のグラフト交叉剤との重縮合によっ
て得られる変性ポリオルガノシロキサンを含有するラテ
ックスに、ビニルモノマーおよびラジカル開始剤を加え
ることによって実施することもできる。
一方、溶液重合の場合は、変性ポリオルガノシロキサ
ンおよびビニル系モノマーを有機溶媒に溶解し、これに
ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤、各種添
加剤を加えてラジカル重合させる。
この溶液重合で使用される有機溶媒としては、トルエ
ン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、テ
トラヒドロフランなどが挙げられる。有機溶媒の量はビ
ニルモノマーに対して80〜150重量部使用し、重合温度8
0℃〜150℃、好ましくは90℃〜130℃、重合時間3〜7
時間の条件で溶液重合される。
この溶液重合の方法によれば、乳化重合の場合よりも
不純物を著しく減少させることができる。
こうして形成したグラフト共重合体の精製は、乳化重
合法により形成した場合、塩凝固法により凝固させ、得
られた粉末を水洗したのち、乾燥することなどによって
行い、溶液重合法によって形成した場合は、水蒸気蒸溜
によって未反応のモノマーと有機溶媒を留去したのち、
得られたポリマーの塊を細かく砕いて乾燥することなど
により行う。
以上述べたような方法で得られた本発明の変性ポリオ
ルガノシロキサンと他の有機ポリマーとのグラフト共重
合体は、押し出し機、ロール、ブラベンダー、プラスト
ミルなどの混練機で要求される性能に応じて他の既知の
重合体や、添加剤などと適宜ブレンドすることができ
る。
このような重合体としては、たとえばポリブタジエ
ン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル
−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、天然ゴムなど
のジエン系ゴム;アクリルゴム、エチレン−プロピレン
共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、塩
素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン
系ゴム;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチ
レン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレ
ン−ブタジエン−スチレンラジカルテレブロック共重合
体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合
体;該ブロック共重合体の水素化物;ポリプロピレン、
ポリエチレン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニト
リル共重合体、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリ
ロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、
アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン樹脂
(AES樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチ
レン樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン
−メタクリル酸メチル−スチレン樹脂、アクリロニトリ
ル−n−ブチルアクリレート−スチレン樹脂(AAS樹
脂)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、ポリア
セタール、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニ
リデン、ポリスルホン、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、PPS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、PPO樹脂、
スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無
水マレイン酸共重合体、ゴム変性PPI樹脂、スチレン−
マレイイミド系共重合体、ゴム変性スチレン−マレイミ
ド系共重合体、ポリアミド系エラストマー、ポリエステ
ル系エラストマーなどが例示される。
[発明の効果] 本発明の変性ポリオルガノシロキサンは、特定のグラ
フト交叉剤をポリオルガノシロキサン鎖に結合させたも
のであり、ビニル系モノマーのグラフト重合が起こりや
すく、グラフト率のより高いグラフト共重合体を得るこ
とができる。
さらに、本発明の変性ポリオルガノシロキサンにグラ
フト重合させるモノマーとして、ブレンドしようとする
重合体に相溶系である重合体のモノマーを用いることに
より、従来、ポリオルガノシロキサンと非相溶系であっ
た他の重合体とも、ポリオルガノシロキサンを相溶化す
ることができ、新しいポリマーブレンド物を得ることが
できる。
また、このことは他の重合体にポリオルガノシロキサ
ンの特性を付与できることを意味しており、耐熱性、耐
寒性、耐候性、電気特性などを向上させた重合体を得る
ことができる。
本発明の変性ポリオルガノシロキサンは、このよう
に、種々のモノマーと容易に効率良くグラフト共重合体
を形成することができるため、今後のポリマーアロイ化
技術に大きく貢献するもので、様々な重合体にシリコー
ンの特性を付与するという意味で、新しい利用分野が開
拓されるものであり、この工業的意義は極めて大きいも
のである。
[実施例] 以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明す
る。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り
重量部および重量%を表すものとする。
また、グラフト率およびグラフト効率は、以下の方法
で求めた。
グラフト重合生成物の一定重量(x)をアセトン中に
投入し、振とう機で2時間振とうして遊離の共重合体を
溶解させ、遠心分離機を用いて回転数23,000rpmで30分
間遠心分離し不溶分を得る。次に、真空乾燥機を用いて
120℃で1時間乾燥し、不溶分重量(y)を得、次式に
よりグラフト率、グラフト効率を算出した。
実施例1 p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.5部お
よびオクタメチルシクロテトラシロキサン98.5部を混合
し、これをドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を溶解し
た蒸溜水300部中に入れ、ホモミキサーにより3分間攪
拌し、その後、超音波分散機により5分間、乳化分散さ
せた。
この混合液をコンデンサー、チッ素導入口および攪拌
機を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌混合しなが
ら90℃で6時間加熱し、5℃で48時間冷却することによ
って縮合を完結させた。
得られた変性ポリオルガノシロキサン中のオクタメチ
ルシクロテトラシロキサンの縮合率は98.5%であった。
この変性ポリオルガノシロキサンラテックスを炭酸ナ
トリウム水溶液でpH7に中和し、縮合を終了させた。生
成した変性ポリオルガノシロキサンラテックスを多量の
アセトン中に投入し、変性ポリオルガノシロキサンを析
出させ、濾別後、真空乾燥機で80℃、12時間乾燥し、変
性ポリオルガノシロキサンを得た。
そして、この変性ポリオルガノシロキサンの平均重合
度を測定したところ、ポリスチレン換算重量平均分子量
は130万、けい素原子数で4500であった。
得られた変性ポリオルガノシロキサンのIRのチャート
を第1図に、NMRのチャートを第2図に示す。
次に、上述した方法によって得られた変性ポリオルガ
ノシロキサンを用いて、ビニル系モノマーとのグラフト
共重合体を合成した例について説明する。
はじめに、得られた変性ポリオルガノシロキサンラテ
ックスを炭酸ナトリウム水溶液でpH7に中和した。この
変性ポリオルガノシロキサンラテックスを固形分換算で
35部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部
および蒸溜水140部を混合し、滴下ロート、コンデンサ
ー、チッ素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラ
スコに移し、さらに全スチレン量の34%に相当するスチ
レン15.81部、全アクリロニトリル量の34%に相当する
アクリロニトリル6.29部、ピロリン酸ソーダ0.2部、ブ
ドウ糖0.25部、硫酸第一鉄0.004部およびクメンハイド
ロパーオキサイド0.074部を加え、チッ素を流しながら7
0℃まで昇温した。1時間重合後、残りのスチレン30.69
部、残りのアクリロニトリル12.21部、ドデシルベンゼ
ンスルホン酸ナトリウム1.084部、蒸溜水42部、クメン
ハイドロパーオキサイド0.12部およびt−ドデシルメル
カプタン0.06部の混合液を滴下ロートを使用して3時間
にわたって添加した。滴下終了後、1時間重合反応さ
せ、重合が終了したのち冷却した。
得られたグラフト共重合体ラテックスを、2部の塩化
カルシウム二水和物を溶解した温水中に投入し、塩析凝
固を行って、グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂を分
離した。この熱可塑性樹脂をよく水洗したのち、80℃で
16時間乾燥して精製を完了した。
このグラフト共重合体について、グラフト率およびグ
ラフト効率を測定した。その結果を第1表に示す。
次いで、この熱可塑性樹脂粉末57重量%と、スチレン
およびアクリロニトリルのモノマー仕込み重量比が75対
25で乳化重合して得られた共重合体(AS樹脂)43重量%
とを混合し、熱可塑性樹脂組成物を調製した。この熱可
塑性樹脂組成物を、二軸押し出し機を使用して、シリン
ダー温度230℃で押し出し加工し、ペレットを得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物は、耐寒性、耐候性、摺
動性、耐衝撃性、外観の優れたものであった。
この熱可塑性樹脂組成物について行った耐衝撃性と光
沢度の試験結果を、上述したグラフト率およびグラフト
効率の結果と共に第1表に示す。
実施例2 グラフト交叉剤として2−(p−ビニルフェニル)エ
チルメチルジメトキシシランを使用し、実施例1と同一
条件で変性ポリオルガノシロキサンを製造した。
得られた変性ポリオルガノシロキサン中のオクタメチ
ルシクロテトラシロキサンの縮合率は97.6%であった。
そして、この変性ポリオルガノシロキサンの平均重合
度を測定したところ、ポリスチレン換算重量平均分子量
は130万、けい素原子数で5100であった。
さらに、この変性ポリオルガノシロキサンを用いて、
実施例1と同一条件でビニル系モノマーとのグラフト共
重合体とし、次いで、AS樹脂と混合して熱可塑性樹脂組
成物のペレットを得た。
この実施例におけるグラフト共重合体のグラフト率、
グラフト効率および熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、光
沢度についての試験を、実施例1と同一条件に行った。
この結果を第1表に示す。
実施例3 グラフト交叉剤として3−(p−ビニルベンゾイロキ
シ)プロピルメチルジメトキシシランを使用し、実施例
1と同一条件で変性ポリオルガノシロキサンを製造し
た。
この実施例におけるオクタメチルシクロテトラシロキ
サンの縮合率は96.6%であった。
そして、この変性ポリオルガノシロキサンの平均重合
度を測定したところ、ポリスチレン換算重量平均分子量
は130万、けい素原子数で4800であった。
さらに、この変性ポリオルガノシロキサンを用いて、
実施例1と同一条件でビニル系モノマーとのグラフト共
重合体とし、次いで、AS樹脂と混合して熱可塑性樹脂組
成物のペレットを得た。
この実施例におけるグラフト共重合体のグラフト率、
グラフト効率および熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、光
沢度についての試験を、実施例1と同一条件で行った。
この結果を第1表に示す。
比較例1〜3 グラフト交叉剤としてビニルメチルジメトキシシラ
ン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、
γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランの
それぞれを使用し、実施例1と同一条件で変性ポリオル
ガノシロキサンを製造した。
この比較例におけるオクタメチルシクロテトラシロキ
サンの縮合率は、ビニルメチルジメトキシシランをグラ
フト交叉剤として使用した場合97.1%であり、γ−メル
カプトプロピルメチルジメトキシシランでは96.9%、γ
−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランでは
98.0%であった。
さらに、これらの変性ポリオルガノシロキサンを用い
て、実施例1と同一条件でビニル系モノマーとのグラフ
ト共重合体とし、次いで、AS樹脂と混合して熱可塑性樹
脂組成物のペレットを得た。
これらの比較例におけるグラフト共重合体のグラフト
率、グラフト効率および熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃
性、光沢度についての試験を、実施例1と同一条件で行
った。この結果を上述した実施例の結果と併せて第1表
に示す。
この結果から、グラフト交叉剤としてp−ビニルフェ
ニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニ
ル)エチルメチルジメトキシシランおよび3−(p−ビ
ニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン
を使用した実施例1〜3においては、いずれもグラフト
率が高く、耐衝撃性、光沢度にも優れたポリマーが得ら
れることが明らかとなった。
一方、グラフト交叉剤としてビニルメチルジメトキシ
シラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラ
ンのそれぞれを使用した比較例1、2については、グラ
フト率が低く、耐衝撃性、光沢度も実施例より劣ってい
た。
また、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシ
シランを使用した比較例3の場合、グラフト率は向上す
るが、光沢度が悪く外観に欠点を有していた。
以上の結果から、特定のグラフト交叉剤をポリオルガ
ノシロキサン鎖に結合させた本発明の変性ポリオルガノ
シロキサンは、グラフト反応性に優れ、種々の有機ポリ
マーと容易にグラフト共重合体を形成し得ることが明ら
かである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明における一実施例の変性ポリオルガノ
シロキサンのIR測定結果のチャートであり、第2図は、
本発明における一実施例の変性ポリオルガノシロキサン
のNMR測定結果のチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗田 明嗣 群馬県太田市西新町133番地 東芝シリ コーン株式会社内 (72)発明者 松本 誠 群馬県太田市西新町133番地 東芝シリ コーン株式会社内 (72)発明者 蔵田 貴志 東京都中央区築地2丁目11番24号 日本 合成ゴム株式会社内 (72)発明者 津田 祐輔 東京都中央区築地2丁目11番24号 日本 合成ゴム株式会社内 (72)発明者 山元 友治 東京都中央区築地2丁目11番24号 日本 合成ゴム株式会社内

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均組成式: R1 aSiO(4−a)/2 ……(I) (式中、R1は置換または非置換の1価の有機基を、aは
    1.80〜2.02の数を示す)で表されるとともに、前記
    (I)式中のR1のうち0.02%〜10%が (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
    を示す)で表される不飽和基を含む基であり、かつ、け
    い素原子数が100〜10,000の範囲であることを特徴とす
    る変性ポリオルガノシロキサン。
  2. 【請求項2】前記(II)式で表される不飽和基を含む基
    が、ビニルフェニル基、1−(ビニルフェニル)エチル
    基、2−(ビニルフェニル)エチル基および(ビニルフ
    ェニル)メチル基からなる群から選ばれた少なくとも1
    種の有機基である請求項1記載の変性ポリオルガノシロ
    キサン。
  3. 【請求項3】(A)一般式: R3 nSiO(4−n)/2 ……(III) (式中、R3は置換または非置換の1価の炭化水素基を、
    nは0〜3の整数を示す)で表される構造単位を有する
    オルガノシロキサンと、 (式中、R2は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基
    を示す)で表される不飽和基を含む基とアルコキシシリ
    ル基とを合わせ持つ化合物からなるグラフト交叉剤と
    を、 触媒の存在下に重縮合させることを特徴とする変性ポリ
    オルガノシロキサンの製造方法。
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