JP2594340B2 - チーズフードの製造法 - Google Patents

チーズフードの製造法

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JP2594340B2 JP28508988A JP28508988A JP2594340B2 JP 2594340 B2 JP2594340 B2 JP 2594340B2 JP 28508988 A JP28508988 A JP 28508988A JP 28508988 A JP28508988 A JP 28508988A JP 2594340 B2 JP2594340 B2 JP 2594340B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はナチュラルチーズ又はプロセスチーズを主原
料とし、これと水及び融解塩並びに所望により各種添加
物、例えば、牛乳由来の蛋白質、調味料及び香料、とを
用いて融解調製したチーズ融解物にトランスグルタミナ
ーゼを作用させることを特徴とする加熱による融解変形
性(易融性)及び曳糸性を適度に併有する又は加熱によ
る融解変形の生じない(耐熱保型性)、歯切れの良好な
カマボコ様の組織を有するチーズフードの製造法に関す
る。
(従来技術と問題点) 従来法で製造されたプロセスチーズは、そのほとんど
が蛋白質のナトリウムパラカゼイネート化が生じている
ため、オーブン等で加熱しても不融であり、適度な流動
性を望まれる用途(ハンバーグやピザパイなど)には不
向きであるという欠点があった。また、ナチュラルチー
ズでは熱により過度な変型、融解してしまうため、上記
用途には適さないというのが現状であった。近年では、
易融性のプロセスチーズに関する研究が行なわれていた
が、融解性は改善されても曳糸性を有さないものが通常
であって、チーズに関する嗜好調査では、チーズ独特の
チーズ臭あるいは食用時の粘着性がチーズ嗜好が低い要
因のひとつともなっており、チーズ消費の延びを妨げる
結果となっている。
又、近年チーズを水産練製品、ハンバーグ、その他各
種調理食品に利用し、粘着性及び風味の向上などが行な
われている。しかし、この場合のチーズは一般に熱によ
って変形し、融解してしまう傾向にある。それゆえに、
製品形態によっては、商品価値の高いものとは言えなか
った。また、熱により融けないものであっても食感的に
付着性があり、歯に付着しやすいというものであった。
(発明が解決しょうとする課題) 本発明は、上述したごとき問題点を解決しようとした
ものであり、加熱による融解変形性及び曳糸性を併有す
るチーズフード及び耐熱保型性を有するとともに食感的
に従来のチーズ様組織とは異なった歯切れのよいチーズ
フードを製造するための方法及びそのようにして製造さ
れるチーズフードを提供することを目的とするものであ
る。
(問題を解決するための手段、発明の効果) 本発明は、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズを主
原料とし、これと水及び融解塩並びに所望により各種添
加物とを用いて融解調製したチーズ融解物を必要に応じ
て加熱殺菌、冷却してチーズフードを製造する際、チー
ズ融解物にトランスグルタミナーゼ(以下、TGaseと略
記することがある。)を作用させると、この作用条件に
より得られるチーズフードの特性を変えることができ
て、チーズフードに所望の易融性及び曳糸性を同時に容
易に付与し又は所望の耐熱保型性を容易に付与すること
ができることを見出し、この知見に基づいて完成された
ものである。
因みに、従来、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズ
を主原料としてチーズフードを製造する際にTGaseを使
用した例はない。
なお、本発明において、易融性とはオーブンなどを用
いた加熱の際に比較的容易に溶融(メルトダウン)を生
じとろける性質、曳糸性とはオーブンなどを用いた加熱
の際に糸を曳く性質、及び耐熱保型性とはオーブンなど
を用いた加熱の際に、溶融(メルトダウン)を生じるこ
となく、そのままの形態を保持する性質である。
以下、本発明の方法について詳しく説明する。
以上のように、TGaseの作用条件を変えることにより
得られるチーズフードの特性を変えることができるので
あるが、一般的に、TGaseをより少量でより短時間作用
させるなど、より温和に作用させると易融性及び曳糸性
を併有するチーズフードが得られ、反対により強く作用
させると耐熱保型性に優れたチーズフードが得られる。
チーズフードに所望の特性を付与するためのTGaseの
具体的作用条件は、当業者であれば、以下に説明すると
ころを考慮して予備的実験をすることにより、極めて容
易に定めることができる。
本発明において用いられる原料チーズとしては、広範
囲な種類のチーズを使用することができ、未熟なものか
ら熟成度の進んだ、例えば、ゴーダチーズ、チェダーチ
ーズなどのナチュラルチーズ及びプロセスチーズを用い
得る。
融解塩は、各種リン酸塩、クエン酸などの1種を単用
又は2種以上を併用することは、従来周知のナチュラル
チーズ及びプロセスチーズを主原料としてチーズフード
を製造する場合と同様である。
所望により添加する各種添加物としては、これまた従
来法でチーズフードを製造する場合と同様で、牛乳由来
の蛋白質、調味料、香料などを挙げることができる。
原料チーズ、融解塩、所望による各種添加物、及び水
を、例えば乳化可能な容器に投入して混合する。
融解塩は、原料チーズ1重量部に対し、1〜3重量
%、好ましくは2〜2.5重量%、使用する。融解塩の使
用量が少な過ぎると乳化不良やかたい組織となり、多過
ぎると軟質組織や溶融塩に由来する薬品臭の原因とな
る。各種添加物は、従来法におけると同様で、これは通
常香り、及び味を付与する目的で食品を加える場合は製
品固型分の1/6以内、乳に由来しない各成分については
最終製品重量の10%以内とする。
原料チーズ及び添加水は、チーズフードに付与したい
特性により若干異なる。加熱による易融性及び曳糸性を
付与したいときは、チーズ融解物における乳固形分が35
重量%以上、好ましくは35〜40重量%で乳蛋白質量が13
重量%以上、好ましくは13〜20重量%となるように原料
チーズを選び、添加水量を選ぶ。乳固形分及び乳蛋白質
量が前記範囲外では加熱時に易融性及び曳糸性は呈しな
い。耐熱保型性を付与したいときは、チーズ融解物にお
ける乳固形分が40重量%以上、好ましくは40〜45重量%
で乳蛋白質量が15重量%以上、好ましくは15〜20重量%
となるように原料チーズを選び、添加水量を選ぶ。乳固
形分及び乳蛋白質量が前記範囲外では適正な耐熱保型性
を有さず、歯切れの不良な組織となる。
次いで、混合物は、例えば前記容器を温水加熱するこ
とにより、例えば85℃まで加熱して撹拌乳化してチーズ
が完全に融解したチーズ融解物とする。
チーズ融解物にトランスグルタミナーゼを作用させる
には、次のようにする。
本発明で使用するトランスグルタミナーゼは、特に起
源を問わず、例えばモルモットの肝臓から分離したもの
(以下、MTGaseと略記することがある)、微生物が産生
するもの(以下、BTGaseと略記することがある)を挙げ
ることができる。前者のMTGaseは、例えば、特開昭58−
14964号に記載の方法で調製することができる。後者のB
TGaseは、新規酵素であって、本発明者の一部が発明者
として関与した発明(特願昭62−165067)に係わるもの
で、その酵素特性、製造法等については別項に記載す
る。
TGaseの使用量は、チーズに付与したい特性により異
なる。加熱による易融性及び曳糸性を付与したいとき
は、チーズ融解物中の蛋白1g当り5〜20u、好ましくは
8〜13uである。
TGaseの使用量が少なすぎると曳糸性の低下、軟質組
織となる。多くなると所望の易溶性及び曳糸性が得られ
ずに耐熱保型性が生ずるようになる。耐熱保型性を付与
したいときは、12u以上、好ましくは13〜15uである。TG
aseの使用量が多過ぎると、非常に硬く歯切れが不良で
塊が口腔内に残るような組織となる。
TGaseを、例えば少量の水に溶解して、上記使用量で
前記チーズ溶融物に均一に分散混合する。TGaseがMTGas
eのように特定物質依存性の場合は、その物質をTGaseに
共存させることはもちろんである。分散混合の際は、TG
aseの使用温度を考慮して、チーズ融解物の温度は40〜6
0℃、好ましくは45〜50℃、例えば50℃まであらかじめ
降温しておく。
TGaseを均一に分散混合したチーズ融解物は、必要に
応じて迅速に容器に充填成型し、例えば温水により上記
温度に保持してTGaseを作用させる。酵素反応時間は所
望のチーズフードの特性により異なり、加熱による易融
性及び曳糸性を付与したいときは20〜120分間、好まし
くは25〜60分間であり、耐熱保型性を所望のときは1時
間以上、好ましくは1〜3時間である。
TGaseを上のようにして作用させたチーズ融解物は、
ついで酵素を失活させ同時に殺菌する。これは、例えば
沸騰水を使用して例えば80℃以上で30分間保持すること
により行うことができる。
殺菌後のものは、必要に応じて容器に充填成型し、例
えば冷水槽又は冷蔵庫を使用して、放冷してチーズフー
ド製品とする。
このようにして得られた製品中、加熱により易融性及
び曳糸性を併有するチーズフードは、加熱に対し良好な
メルトダウン性(易融性)に示し、かつ非常に滑らかな
曳糸性を呈するものである。更に、室温状態において、
咀嚼時の歯切れが通常のナチュラルチーズやプロセスチ
ーズに比べ良好であり、口腔内に付着しにくいという性
質も有している。しかも、調味処理により、呈味上多様
性のある製品を提供する事も可能である。
一方、耐熱保型性を付与されたチーズフードは、加熱
に対する保型性が良好であり、トランスグルタミナーゼ
を利用した凝固物であるため、従来のチーズ組織とは異
なった歯切れの良好な性質を有するものである。また、
上述したごとき製品組織が魚肉蛋白質を主原料とする
「カマボコ」に非常に類似しているが、カマボコと比較
して高カルシウム、低ナトリウムであり、また、ビタミ
ンAを多量に含み、高エネルギーな製品となり得る。さ
らに、本発明では、調味処理により呈味上多様性のある
製品を提供することも可能である。
なお、本発明の易融性及び曳糸性を併有するチーズフ
ードの曳糸性については、本発明者の研究では、乳蛋白
質を多く含む製品は、曳糸性を呈する温度域(曳糸温度
帯)が高温側になる傾向にあり、同一の成分の場合は、
酵素の添加量が多いものもまた曳糸性を呈する温度域が
高温化する事が判明した。つまり、成分の調整により酵
素活性を変動させるとき、低い活性の時は高温域、高い
活性の時は低温域となる。また、一方、酵素の添加量で
酵素活性を変動させるとき、低い活性の時は低温域、高
い活性の時は高温域という具合に良好な曳糸性を示す温
度域が変わるのである。反応時間も、曳糸性に影響を及
ぼす要因の一つとして留意すべき部分である。前述の如
く、本発明は、良好なメルトダウン性と曳糸性の出現を
目的とし、効果的にトランスグルタミナーゼを作用せし
める諸条件を設定すべく行なったものであり、本発明の
諸条件により弾力性の強い、油分離の生じない糸状とな
る。
(新規トランスグルタミナーゼBTGase) (1)トランスグルタミナーゼとその由来 トランスグルタミナーゼ(TGase)は、ペプチド鎖内
にあるグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基のアシ
ル転移反応を触媒する酵素である。このTGaseは、アシ
ル受容体としてタンパク質中のリジン残基のε−アミノ
基が作用すると、分子内及び分子間にε−(γ−Glu)
−Lys架橋結合が形成される。また水がアシル受容体と
して機能するときは、グルタミン残基が脱アミド化され
グルタミン酸残基になる反応を進行させる酵素である。
TGaseのこのような性質により、TGaseを用いてタンパ
ク含有溶液又はスラリーをゲル化させることができる。
TGaseは、これまでモルモット肝由来のもの(MTGas
e)などの動物由来のものが知られているが、動物由来
のものは、安価にまた大量に入手するのが困難であり、
タンパク質をゲル化するときは酵素濃度および基質濃度
を共に高くする必要があり、またCa2+依存性であるので
用途が制限される。
本発明で使用できる新規トランスグルタミナーゼ(BT
Gase)は、微生物、例えば、ストレプトベルチシリウム
属の菌により産生されるものであるが、微生物由来のTG
aseについての報告は現時点ではない。
本発明で使用できる微生物由来のBTGaseは安価に供給
され、かつ精製も容易であるので実用性が大である。ま
た、BTGaseを用いることにより、カルシウム非存在下又
カルシウム存在下のいずれでも酵素(BTGase)濃度及び
基質濃度が非常に低いところで品質の優れたゲル化物を
製造できるという利点がある。
(2)BTGaseの製造 BTGaseを産生する微生物は、例えば、ストレプトベル
チシリウム・グリセオカルネウム(Streptoverticilliu
m griseocarneum)IFO 12776、ストレプトベルチシリウ
ム・シナモネウム・サブ・エスピー・シナモネウム(St
reptoverticillium cinnamoneum sub sp.cinnamoneum)
IFO 12852、ストレプトベルチシリウム・モバラエンス
(Streptoverticillium mobaraense)IFO 13819等があ
げられる。
これら微生物を培養し、トランスグルタミナーゼを取
得するための培養法及び精製法等は次の通りである。
培養形態としては、液体培養、固体培養いずれも可能
であるが、工業的には深部通気撹拌培養を行うのが有利
である。又、使用する培養源としては、一般に微生物培
養に用いられる炭素源、窒素源、無機塩及びその他の微
量栄養源の他、ストレプトベルチシリウム属に属する微
生物の利用出来る栄養源であれば全て使用出来る。培地
の炭素源としては、ブドウ糖、ショ糖、ラスターゲン、
グリセリン、デキストリン、澱粉等の他、脂肪酸、油
脂、有機酸などが単独で又は組合せて用いられる。窒素
源としては、無機窒素源、有機窒素源のいずれも使用可
能であり、無機窒素源としては硝酸アンモニウム、硫酸
アンモニウム、尿素、硝酸ソーダ、塩化アンモニウム等
が挙げられる。又、有機窒素源としては大豆、米、トウ
モロコシ、小麦などの粉、糠、脱脂粕をはじめコーンス
ティープリカー、ペプトン、肉エキス、カゼイン、アミ
ノ酸、酵母エキス等が挙げられる。無機塩及び微量栄養
素としては、リン酸、マグネシウム、カリウム、鉄、カ
ルシウム、亜鉛等の塩類の他ビタミン、非イオン界面活
性剤、消泡剤等の菌の生育やBTGaseの産生を促進するも
のであれば必要に応じて使用出来る。
培養は好気的条件で、培養温度は菌が発育しBTGaseが
産生する範囲であれば良く、好ましくは25〜35℃であ
る。培養時間は、条件により異なるが、BTGaseが最も産
生される時間まで培養すれば良く、通常2〜4日程度で
ある。
BTGaseは液体培養では培養液中に溶解されており、培
養終了後培養液より固形分を除いた培養ろ液より採取さ
れる。
培養ろ液よりBTGaseを精製するには、通常酵素精製に
用いられるあらゆる方法が使用出来る。
例えば、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコ
ール等の有機溶媒による処理、硫安、食塩等により塩
析、透析、限外ろ過法、イオン交換クロマトグラフィ
ー、吸着クロマトグラフィー、ゲルろ過、吸着剤、等電
点分画等の方法が使用出来る。又、これらの方法を適当
に組合せる事によりBTGaseの精製度が上る場合は適宜組
合せて行う事が出来る。これらの方法によって得られる
酵素は、安定化剤として各種の塩類、糖類、蛋白質、脂
質、界面活性剤等を加え或いは加えることなく、限外ろ
過濃縮、逆浸透濃縮、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥の
方法により液状又は固形のBTGaseを得ることが出来る。
BTGaseの活性測定はベンジルオキシカルボニル−1−
グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質とし
てCa2+非存在下で反応を行い、生成したヒドロキサム酸
をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯を形成させ525nmの吸収
を測定し、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め活性を
算出する。
BTGase活性は、特に記載しないかぎり以下に記載する
方法により測定した。
〈活性測定法〉 試薬A 0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH6.0) 0.1Mヒドロキシルアミン 0.01M還元型グルタチオン 0.03Mベンジルオキシカルボニル−L−グルタミニルグ
リシン 試薬B 3N−塩酸 12%−トリクロロ酢酸 5%FeCl3・6H2O(0.1N−HClに溶解) 上記溶液の1:1:1の混合液を試薬Bとする。
酵素液の0.05mlに試薬A0.5mlを加えて混合し37℃で10
分間反応後、試薬Bを加えて反応停止とFe鎖の形成を行
った後525nmの吸光度を測定する。対照としてあらかじ
め熱失活させた酵素液を用いて同様に反応させたものの
吸光度を測定し、酵素液との吸光度差を求める。別に酵
素液のかわりにL−グルタミン酸γ−モノヒドロキサム
酸を用いて検量線を作成し、前記吸光度差より生成され
たヒドロキサム酸の量を求め、1分間に1μモルのヒド
ロキサム酸を生成する酵素活性を1単位とした。
(3)BTGaseの酵素特性 上にようにして得られる精製BTGase、即ちストレプト
ベチシリウム・モバランスIFO 13819のトランスグルタ
ミナーゼ(BTG−1と命名)、ストレプトベルチシリウ
ム・グリセオカルネウムIFO 12776のトランスグルタミ
ナーゼ(BTG−2と命名)、ストレプトベルチシリウム
・シナモネウム・サブ・エスピー・シナモネウムIFO 12
852のトランスグルタミナーゼ(BTG−3と命名)につい
ての酵素化学的性質は次の通り。
a) 至適pH: 基質としてベンジルオキシカルボニル−L−グルタミ
ニルグリシンとヒドロキシルアミンを使用した場合、37
℃、10分反応で、BTG−1の至適pHは6〜7にあり、BTG
−2の至適pHは6〜7付近にあり、BTG−3の至適pHは
6〜7付近にある。
b) 至適温度: 基質としてベンジルオキシカルボニル−L−グルタミ
ニルグリシンとヒドロキシルアミンを使用した場合、pH
6、10分反応で、BTG−1の至適温度は55℃付近であり、
BTG−2の至適温度は45℃付近であり、BTG−3の至適温
度は45℃付近にある。
c) pH安定性: 37℃、10分間処理で、BTG−1はpH5〜9で安定であ
り、BTG−2はpH5〜9で安定であり、BTG−3はpH6〜9
で安定である。
d) 温度安定性: pH7で10分間処理では、BTG−1は40℃では88%活性が
残存し、50℃では74%活性が残存し、BTG−2は40℃で
は86%活性が残存し、50℃では56%活性が残存し、BTG
−3は40℃で80%活性が残存し、50℃では53%活性が残
存する。
e) 基質特異性: 各BTGaseを用い、各種合成基質とヒドロキシルアミン
との反応を調べた。いずれのBTGaseも合成基質がベンジ
ルオキシカルボニルアスパラギニルグリシン、ベンジル
オキシカルボニルグルタミン、グリシルグルタミニルグ
リシンの場合反応しない。しかし合成基質がベンジルオ
キシカルボニルグルタミニルグリシンの場合の反応性は
最も高い。この時の各種合成基質濃度は5mMとした。結
果は表−1に示される。
なお、表−1中のCBZはベンジルオキシカルボニル基
の略であり、Glnはグルタミニル基の略であり、Glyはグ
リシル基の略であり、Aspはアスパラギニル基の略であ
る。
f) 金属イオンの影響: 活性測定系に1mM濃度になるように各種金属イオンを
加えて影響を調べた(結果は表−2に示される)。いず
れのBTGaseもCu2+、Zn2+により活性が阻害される。
g) 阻害剤の影響: 各阻害剤を1mMになるように加え、25℃、30分放置
後、活性を測定した(結果は表−3に示される)。いず
れのBTGaseもパラクロロマーキュリー安息香酸(PCMBと
略する)、N−エチルマレイミド(NEMと略する)、モ
ノヨード酢酸により活性が阻害される。
表−3中PMSFはフェニルメチルスルホニルフルオライ
ドの略である。
h) 等電点: アンホライン等電点電気泳動により求めたところ、BT
G−1の等電点pIは9付近であり、BTG−2の等電点pIは
9.7付近であり、BTG−3の等電点pIは9.8付近である。
i) 分子量: SDSディスク電気泳動法より求めたところ、BTG−1の
分子量は約38,000であり、BTG−2の分子量は約41,000
であり、BTG−3の分子量は約41,000である。
j) MTGaseとの比較: 次にBTGaseとモルモット肝由来のトランスグルタミナ
ーゼ(MTGase)との性質を比較する。尚、MTGaseは、特
開昭58−149645号に記載された方法で調製した。
表−4には各酵素化学的性質の比較を、表−5にはCa
2+の活性に及ぼす影響を示す。表−4および表−5より
明らかのように従来主として研究されているMTGaseと放
線菌由来のBTGaseとには酵素化学的性質において種々の
差が見られ、特に温度安定性、分子量、等電点、基質特
異性に差が見られる。また、Ca2+の存在下及び非存在下
においてもBTGaseは作用する点等でもMTGaseとは明らか
な差がみられる。従って、BTGaseの各酵素はMTGaseとは
その性質を異にするものと考えられる。
(4)BTGaseの製造例 a) BTG−1の製造 ストレプトベルチシリウム・モバラエンスIFO 13819を
培地組成ポリペプチトン0.2%、グリコース0.5%、リン
酸二カリウム0.2%、硫酸マグネシウム0.1%からなる培
地(pH7)200mlに接種し、30℃、48時間培養し、得られ
た種培養液をポリペプトン2.0%、ラスターゲン2.0%、
リン酸二カリウム0.2%、硫酸マグネシウム0.1%、酵母
エキス0.2%、消泡剤としてアデカノール、(商品名、
旭電化社製品)0.05%からなる培地20(pH7)に加え3
0℃で3日間培養後ろ過し、培養液18.5得た。このも
のの活性は、0.35u/mlである。
培養液を塩酸でpH6.5に調整し、予め0.05Mリン酸緩衝
液(pH6.5)で平衡化しておいたCG−50(商品名、オル
ガノ社製品)のカラムに通した。この操作でトランスグ
ルタミナーゼは吸着された。さらに同緩衝液で不純蛋白
質を洗い流した後、さらに0.05〜0.5Mの同緩衝液の濃度
勾配をつくり、通液して溶出液を分画回収し、比活性の
高い分画を集めた。電導度を10ms以下になるように希釈
後ブルーセファロースのカラムに通した。この操作でト
ランスグルタミナーゼは吸着された。更に0.05Mリン酸
緩衝液(pH7)で不純蛋白質を洗い流した後、0〜1Mの
食塩濃度勾配をつくり通液して溶出液を回収し比活性の
高い画分を集めた。UF6000膜を使い濃縮し、0.5Mの食塩
を含む0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で緩衝液を用いて平衡
化させた。
得られた濃縮液を同緩衝液で予め平衡化しておいてセ
ファデックスG−75(ファルマシアファインケミカル社
製)を含むカラムに通し、同緩衝液を流して溶出液を分
画した。この結果活性画分は単一のピークとして溶出さ
れた。このものの比活性は、培養ろ液に対し625培であ
り、回収率は47%であった。
b) BTG−2の製造 BTG−1の場合と同様にして、ストレプトベルチシリ
ウム・グリセオカルネウルIFO 12776を30℃で3日間培
養後ろ過し、培養液19を得た。このものの活性は0.28
u/mlであった。
BTG−1の場合と同様な方法で酵素を精製して、SDSデ
ィスク電気泳動で単一の酵素をえた。
c) BTG−3の製造 BTG−1の場合と同様にして、ストレプトベルチシリ
ウム・シナモネウム・サブ・エスピー・シナモネウムIF
O 12852を30℃で3日培養後ろ過し、培養液18.5を得
た。このものの酵素活性は0.5u/mlであった。
BTG−1の場合と同様な方法で酵素を精製して、SDSデ
ィスク電気泳動で単一の酵素を得た。
以下、本発明を実施例により更に説明する。
実施例1 原料チーズ(熟成9ケ月チューダーチーズ)に加水
し、乳固形分40.3%、乳蛋白質量15.8%に調整し、融解
塩(JCHA−S9、ヘキストジャパン製のリン酸塩混合物)
を原料チーズに対し2.5重量%添加後、80℃に加熱撹拌
融解した。
その後、50℃に降温して融解チーズに対しトランスグ
ルタミナーゼBTG−1(比活性2.95u/mg)を水に溶解し
たものを11u/g蛋白質の活性となるように添加混合し、
引きつづき50℃にて30分間撹拌反応させた。
その後85℃で30分間の殺菌処理により反応を停止し、
冷却してチーズフード製品を得た。
比較のために、トランスグルタミナーゼを使用しなか
った以外はまったく同様にしてチーズフードを製造した
(対照)。
得られた製品は、ビーカー内に100g採取し、湯煎にて
品温を測定しながらその糸の曳く状態を肉眼にて調査し
た。その結果、本発明のチーズフードは明らかに曳糸性
を呈する時の品温は下限が50℃、上限が72℃であったの
に対し、対照のチーズフードは全く曳糸性を呈さなかっ
た。メルトダウン性においても、本発明のチーズフード
はすみやかであり、非常に滑めらかなものであったのに
対し、対照のチーズフードは速やかな融解性を示すが、
強い加熱により適度の融解に伴ない粘度の低下が著しく
なった。
実施例2〜14 これらの実施例は、実施例1に記載のチーズフードの
製造方法に準拠してチーズフードを製造したものであっ
て、重要な製造条件と得られた製品の物性を表1にまと
めて示す。
これらの実施例において得られた製品についても、実
施例1に記載したと同様の手順でメルトダウン性(易融
性)及び曳糸性を調べたところいずれも良好なものであ
った。
なお、実施例4,5,7,8,10及び11は所望添加物としてカ
ゼインを添加した例である。
実施例15 原料チーズ(熟成9ケ月チュダーチーズ)に加水し、
乳固形分40.3%、乳蛋白質量15.8%に調整し、融解塩
(JOHA−S9)を原料チーズに対し2.5重量%添加後、80
℃に加熱融解した。
その後50℃にて冷却して融解チーズに対しトランスグ
ルタミナーゼBTG−1(比活性2.95u/mg)を15u/g蛋白質
の活性となるように添加混合したものを容器内に充填成
型し、同温度で2時間酵素反応させた。
その後85℃で30分間の殺菌処理により、反応を停止
し、冷却してチーズフード製品を得た。
比較のために、トランスグルタミナーゼを使用しなか
った以外は全く同様にしてチーズフードを製造した(対
照)。
得られた製品は、1辺30mmの立方体に切り、10片はビ
ーカー内での湯煎(80℃、30分)、もう10片はろ紙上で
のオーブン加熱(180℃、15分)における底面の広がり
むら耐熱保型性を調べた。その結果、本発明のチーズフ
ードは底面の広がりは全く観られず、保型性は良好であ
ったのに対し、対照のチーズフードは融解や、油分離を
生じた。また、組織については、本発明のチーズフード
は、カマボコないしハンペン様のものであり、分離やダ
レは生じなかったし、耐冷凍性についても、冷凍後の組
織は、冷凍しないものと同一であったのに対し、対照の
チーズフードは水分離を生じ、凍結水となりチーズ表面
に付着した状態であった。
実施例16〜20 これらの実施例は、実施例15に記載のチーズフードの
製造方法に準拠してチーズフードを製造したものであっ
て、重要な製造条件と得られた製品の物性を実施例15の
それらとともに表2にまとめて示す。
これらの実施例において得られた製品についても、実
施例15に記載したと同様の手順で耐熱保型性を調べたと
ころ弾力のある良好な保型性を示した。
なお、実施例17は、所望添加物としてカゼインを添加
した例である。
なお、表2において、耐熱保型性における評価でのA
は、80℃で30分、180℃で15分の加熱条件で十分に保型
性を有するランクであり、耐 性における評価でのAは、−80℃で3日間保存後の組織
状態が良好であるランクである。
因みに、実施例15で得られたチーズフード100gの栄養
分析を日本食品成分表に基づき原料チーズの値から算出
して行ない、これを蒸しカマボコ、ハンペン及びチーズ
のそれらと比較できるように表3に示した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野中 雅彦 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1番1号 味の素株式会社中央研究所内 (72)発明者 本木 正雄 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1番1号 味の素株式会社中央研究所内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ナチュラルチーズ又はプロセスチーズに水
    及び融解塩を加えて融解調製した、乳固形分35重量%以
    上で乳蛋白質量13重量%以上のチーズ融解物にトランス
    グルタミナーゼを作用させることを特徴とするチーズフ
    ードの製造法。
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