JP2592161B2 - 量子干渉トランジスタ - Google Patents

量子干渉トランジスタ

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、電子のアハラノフ・ボーム(Aharanov−Bo
hm;A−B)効果を用いた量子干渉トランジスタ(Quantu
m Interference Transistor:QUIT)の特性を改良する構
成に関するものである。
<従来の技術> 従来の静電A−B効果を用いたQUITの構成について、
第5図を参照して説明する。この第5図(a)は従来構
造のQUITの平面図であり、第5図(b),(c)はそれ
ぞれ同図(a)のA−A′,B−B′断面図である。この
第5図(b)から分るように、ソース電極21とドレイン
電極22の間に形成されたGaAsチャンネル層23は、分離膜
27上に、AlGaAsの分離層24を介した積層構成で2つのチ
ャンネル層23a,23bに分離されている。更に、この分離
層24上に形成したGaAsチャンネル層23の上にAlGaAsの分
離膜25を介してn+GaAsゲート電極26を形成した構成であ
る。
以上の構成のQUITの動作は、原理的には次のようにな
っている。このソース電極21からチャンネル層を進行す
る電子波はゲート部で分離層24により2つに分割され、
その一方はゲート電極26による静電ポテンシャルによっ
て電子波の位相が変調され、ドレイン電極付近で2つの
電子波が合流して、干渉するのでその電子波間に位相差
がない同相のときドレイン電流は極大になり、それが逆
相のとき極小になる。
以上のようにゲート電圧の制御により相互コンダクタ
ンスの変調が可能なことから、上記構成によりトランジ
スタ動作が可能になる。
上記の構成からQUITは、極めて、低い消費電力で高速
動作するデバイスとして期待され、更にその動作の特性
から種々の分野へ応用が考えられている。
<発明が解決しようとする課題> しかし上記のQUITも現在はそのドレイン電流の変調特
性が悪く、ドレイン電流の最大と最小の差がよくても10
%程度にとどまっていた。この変調特性が悪い原因とし
て次のことが考えられる。
即ち、前記のQUITの動作で説明したようにA−B効果
によりドレイン電流を100%近く変調するためには、前
記の2つに分離されたチャンネル中の電子波にそのチャ
ンネル中で、散乱などによる位相の乱れを生じさせない
ことが必要である。
以上のためにチャンネル長も充分短くすると共に、電
子波の横方向への拡がりを押えるため、チャンネル幅も
充分狭くした量子細線化を行ない電子波がチャンネルの
ドレイン方向のみに波動成分をもち、その位相が乱れな
いようにしておく必要がある。
しかし、この細線化には、加工精度の問題から加工損
傷が避けられない反応性イオンエッチング(RIE)等の
異方性エッチングによる微細加工技術を用いていた。従
って、第5図(c)にQUITのチャンネル方向に対し垂直
な断面を示したチャンネル幅を量子細線化の効果がでる
50nm程度迄RIEで加工すると、そのチャンネルの側面28
a,28bには加工による結晶欠陥ができてその結晶欠陥に
よりチャンネルの電子波が散乱され、位相を乱すことに
なる。従って、チャンネル中の電子波に位相の乱れが生
じるのでドレイン近辺で合流した2つのチャンネルの電
子波は干渉性が低くなり、その結果としてQUITの変調特
性を低くしていた。
本発明は従来のQUITがもつ問題点を解消し静電A−B
効果による高い変調特性のQUITを提供することを目的と
している。
<課題を解決するための手段> 本発明では、上記の目的を達成するため、QUITのチャ
ンネル細線化加工によりそのチャンネルの両側面に生じ
た加工での結晶欠陥によるチャンネル中の電子波の散乱
を避けるため、細線化加工をしたチャンネルの両側面に
電極を形成して、その電極にチャンネルの中央に向って
空乏層を拡げる電圧を印加しておくものである。以上で
形成された空乏層によりQUITのチャンネルは細線化され
たチャンネルの中央部のみを電子波が流れることにな
り、その電子波は細線化加工による結晶欠陥の影響は受
けなくなり、チャンネル中の電子波の位相は乱れなくな
る。
<作 用> 以上で説明したように、本発明はチャンネル中の電子
波の位相を乱す主要因であった。チャンネル細線化加工
によって生じた結晶欠陥,表面準位,微小凹凸の影響を
受けないチャンネルの形成ができると共に、チャンネル
を加工精度以上に細くした量子化細線の形成を図ること
ができ、チャンネル中で干渉性が低下しない、特性のよ
いQUITを得ることができる。
<実施例> 以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
第1図に示したのは、本発明による静電A−B効果の
QUITの基本構造を示す一実施例である。この第1図
(a)は実施例のQUITの平面図で、この図のQUITのチャ
ンネルに垂直なA−A′断面と、チャンネルに沿ったB
−B′断面図を、この第1図の(b)と(c)に示し
た。この第1図から分るように、本実施例のQUITは、従
来のものと同じ動作原理である。
上記の本発明の実施例のチャンネル沿ったその中央部
の断面図を示した第1図(b)は、従来例で示した第5
図(b)と同じである。この実施例では、第1図(c)
に示した断面構成のように、半絶縁性GaAs基板10に形成
されている。このGaAs基板10にAlGaAs層17、GaAs層13
a、AlGaAs層14、GaAs層13b、AlGaAs層15、及びn+GaAs層
16が順次積層された構成である。但し、以上のうちAlGa
As層14は、第1図(b)に示したように、ゲート電極16
と積層になる部分のみチャンネル部のGaAs層13を2つの
チャンネル層であるGaAs層13a及び13bに分離する埋込み
層になっている。従ってソース電極11からの電子は一度
チャンネル層13aと13bに分割されて通った後、ドレイン
電極12に流れ込む。又、本発明の特徴である空乏層の形
成でチャンネル幅を狭窄して細線化する空乏層電極19a
及び19bは、第1図(a),及び(c)に示したように
チャンネルの両側面に形成されている。この空乏層電極
19a及び19bによりチャンネル部の側面から負バイアスを
印加することで、第1図(a)又は(c)に示した空乏
層18a及び18bがそれぞれ拡がって、チャンネルの量子細
線がバイアス電圧値により形成されると共に、構造的に
もチャンネル形成の加工での結晶欠陥による電子波の散
乱源には空乏層の形成で電子が流れなくなるので、電子
波の位相が乱されることがなくなり、QUITの特性向上を
図ることになる。
続いて、上記実施例のQUITの製造工程について説明す
る。先ず第2図に示したように半絶縁性GaAs基板10に、
MBE(分子線成長法)又は、MOCVD(有機金属気相成長
法)などによりアンドープAlGaAs層17を250nm、n−GaA
s層13a(Siドープ、2×1016cm-3)を20nm、アンドープ
AlGaAs層14を20nmの膜厚にして順次積層を成長させる。
次に、第3図に示したように、第2図で示した最上層
のAlGaAs層14を選択的にエッチングして電子分離層14を
成形した上、更に、n−GaAs層13b(Siドープ、2×10
16cm-3)を20nm、アンドープAlGaAs層15を50nm、n+−Ga
As層16′(Siドープ、5×1018cm-3)を200nmの膜厚に
して積層して成長させる。続いて、第4図(a)に平面
図を示したようにQUITを形成する部分以外は、前記第2
図と第3図で説明した成長層を、RIE等で除去した上、
更に最上層のn+−GaAs層16′をA−B効果の静電ポテン
シャルを印加するゲート電極16の形状に加工している。
この第4図(a)のA−A′断面図とB−B′断面図
を、それぞれ同図の(b)と(c)に示している。更に
続いて、第1図(a)と(b)に示されたソース領域11
とドレイン領域12をSiイオンの選択的注入と、その活性
化熱処理によって形成する。次に、成形したチャンネル
の両側面にAl等のショットキ接合を形成する金属膜を蒸
着し空乏層電極19a及び19bを形成する。最後にソース1
1,ドレイン12及びゲート16に図示しないオーミック接合
を形成するAu−Ge系などの金属の蒸着と合金化熱処理及
びリード線のボンディングなどでQUITの作製が完了す
る。
なお、以上で説明した空層乏電極部にはショットキー
接合を用いたが、pn接合のゲートにしてもよい。即ち、
実施例のチャンネル部の両側面にp層をイオン注入法で
形成し、チャンネル部との間にpn接合を形成し、形成し
たp層上に作製した電極19a及び19bによって、前記のpn
接合に逆バイアスを印加することでそのpn接合からの空
乏層をチャンネル中央の方向に拡げることで、チャンネ
ルの量子細線化を行なうものである。
以上実施例での説明からも分るように、本発明は、チ
ャンネルの微細化加工によって生じた結晶の欠陥部を空
乏層化することで、チャンネル内の電子波に影響させな
い構成にすると共に、チャンネル幅をバイアスの電圧値
によって任意に制御することで、QUITの特性を向上させ
るものである。
<発明の効果> 以上で説明したように、本発明による静電A−B効果
のQUITはチャンネル形成による結晶欠陥に影響されない
よう空乏層に挟まれて細線化されたチャンネルの中央部
を電子が走行するので、チャンネル中で電子波が散乱さ
れないからドレイン部での電子波の干渉がより完全に行
なわれる。
従って、ドレイン電流変調特性がよいQUITにすること
ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のQUITの基本的な実施例の構成図、第2
図,第3図及び第4図は実施例のQUITの製造工程を示す
図、第5図は従来のQUITの構成図である。 10……基板、11,21……ソース、12,22……ドレイン、1
3,23……チャンネル層、14,24……分離層、15,17,25,27
……分離膜、16,26……ゲート電極、18……空乏層、28
……チャンネル側面、19……空乏層電極。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分離層を介した積層構成で2つに分離した
    部分のチャンネル部上に、上層のチャンネルの電子波の
    位相を制御する静電ポテンシャルを印加するゲート電極
    を設けると共に、前記積層構成のチャンネル部の両側面
    に電圧印加による空乏層の形成でチャンネル幅を細線化
    する空乏層電極を設けたことを特徴とする量子干渉トラ
    ンジスタ。
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