JP2579798B2 - ころがり軸受 - Google Patents

ころがり軸受

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はころがり軸受に関し更に詳述すれば軌道輪と
転動体とを導電状態にしたころがり軸受に関するもので
ある。
〔従来の技術〕
半導体回路を備える機器においては静電気はデータ、
素子の破壊を惹起する。例えば複写機においてはその可
動部に多数のころがり軸受を用いているが、その回転に
伴い静電気を発生するので、これに因る不都合を回避す
るために導電性のグリースを用いて内外の軌道輪及び転
動体を導電状態としたころがり軸受を用い、軌道輪の一
方を接地電位とすることで静電気を逃がすようにしてい
る。上記導電性のグリースはカーボンブラックを多量に
含有することにより導電性を得ているものが多い(例え
ば特開昭47−21402号、特開昭57−3897号)。
〔発明が解決しようとする課題〕
この従来の導電性のころがり軸受においては使用の当
初は所期の導電性を示すものの、経時的に導電性が低下
していく。これはグリースは当初軌道輪の軌道面と転動
体との接触面間に十分に存在し、これらの間の導電性が
確保されるものの、時間の経過と共にグリースが接触面
間から排除され、保持器、シール部材に付着することと
なっていくことによると考えられる。このように接触面
間から排除されたグリースが再度接触面間へ入り難いの
は、この種グリースの稠度が低いことに因ると考えられ
る。即ちグリースには一般に増稠剤としてカーボンブラ
ックが含有せしめられているが、導電性グリースではカ
ーボンブラック含有量が導電性を高めるために著しく多
くそのために稠度が低く接触面間から排除されたグリー
スはこの接触面間へ戻り難い性質を示す。もっとも油分
は接触面間へ供給されるので潤滑機能にさほどの低下は
ないがそれ故に導電性はより一層低下する。
これを解決するためにカーボンブラックの量を低下さ
せて稠度が高いグリースを用いることも行われている
が、導電性能が低いことは否めず、また導電性の経時的
低下は避けられない。
本発明は斯かる従来の問題点を解決するためになされ
たものであり、適切な稠度、導電性を有するグリースを
配してあり、しかもこれが軌道輪と転動体との接触部へ
滞留なく供給される構成とすることにより長期に亘って
高い導電性を維持できるころがり軸受を提供することを
目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明に係るころがり軸受は、保持器によって保持さ
れた転動体を案内する1対の軌道輪間にカーボンブラッ
クを含んで導電性を有する潤滑用のグリースを配し、シ
ール部材によってこれを封じてあるころがり軸受におい
て、前記グリースは稠度250〜350の範囲内にあり、また
前記軌道輪、保持器及びシール部材のうちの少なくとも
一つに前記グリースを前記軌道輪の軌道面へ案内するグ
リース案内手段を備えることを主たる特徴とする。
またたこれに加えて軌道輪、保持器及びシール部材の
少なくとも一つに前記グリースの付着を妨げる排油手段
を備えることをも特徴としている。
ここにグリース案内手段とは軌道輪の軌道面周縁部に
設けた凹部、保持器のポケット周縁部に設けた凹部、又
はシール部材の軸受内部側周面に形成した凹部である。
また排油手段とは軌道輪の肩部に形成した排油性の被
膜、排油性材で構成された保持器若しくはシール部材そ
れ自体又は保持器若しくはシール部材の軸受内部側表面
に形成された排油性の被膜である。
〔作用〕 稠度が250〜350であることによりグリースの流動性が
確保されると共に所要の導電性も確保できる。
また軌道輪、保持器及びシール部材の少なくとも一つ
に設けたグリース案内手段の存在により軌道面へカーボ
ンブラックを含んだままのグリースが導かれ、転動体と
の接触が導電性を保って行われることになる。
更に排油手段を備えるものにあっては軌道輪、保持
器、シール部材にグリースが付着し難くなりその分軌道
輪へグリースが入り易くなる。これにより長期に亘って
導電性が維持される。
〔実施例〕
以下本発明をその実施例を示す図面に基づいて詳述す
る。
第1図は軌道輪にグリース案内手段を設けてある玉軸
受の実施例を示している。図において1,2は内,外輪を
示し、両者間にボール3を配してあり、これを保持器4,
4で保持してあり、内,外輪間にグリースを満たした状
態でシール部材5を内,外輪間に渡してある。この実施
例の構造上の特徴は内輪1の軌道面1aでボール3よりも
大きな半径としてあり、ボール3と軌道面1aとの間の隙
間6をグリース案内手段としているのである。軌道曲率
をボール曲率とほぼ同じとし、軌道肩部と軌道面1aに向
かって傾斜する凹溝を設けてもよい。
グリースとしては前述のように稠度250〜350の範囲の
ものを用いる。250より小さい場合は流動性に欠け軌道
面への案内が困難である。またカーボンブラックが少な
いことによる低導電性の問題もある。逆に350より大で
あると過剰流動性のためにグリースが軸受外へ流出する
ことになる。
次にグリースの組成について説明する。
基油としては鉱油又はエステル油、フッ素油若しくは
ポリグリコール油等の合成油のグリース原料を用いる。
粘度は40℃で5〜80cStのものが好適である。5より低
い場合は流動性が大きすぎ80より高いと流動性が不足す
る。
導電性物質増稠剤としてのカーボンブラック直径が1
μm以下のものが好ましく含有量は5〜40重量%であ
る。5%以下では導電性が不足し、40%以上では流動性
が低下する。またグリース中には軸受内部での機械的撹
拌による硬化,流動性低下を防止するためにリチウムス
テアレート系の硬化防止剤を0.2〜5%程度添加するの
がよい。0.2%以下では所期の流動性維持硬化が得られ
ず、5%より多い場合は導電性を阻害する。
更にDBPC等の酸化防止剤も添加してよい。表1に好適
なグリース組成例を示す。
第2図は保持器4,4にグリース案内手段を設けた場合
の実施例を示している。内輪1には前述のようなボール
3より大きい径の軌道面を設けてもよいが、この例では
ボール3の直径と整合する直径の軌道面1aを設けてい
る。
外輪2、シール部材5の構造は第1図の実施例と同様
であるが、保持器4の形状が相違する。即ち内,外輪1,
2側の端部が内,外輪1,2の軸端部側へ開いたフランジ形
状となっており、この部分とボール3周面との間にグリ
ースが溜まり、ボール3の転動に伴ってそれが内,外輪
1,2の軌道面へ案内されていくのである。
第3,4図は保持器4に設けるグリース案内手段の他の
実施例を示し、第3図のものは外輪側にのみフランジを
形成している。勿論、内輪側にのみ設けてもよい。
第4図は特にフランジを設けずに保持器4の端部を軸
受半径方向の面としたものであり、この端面とボール3
との間にグリース溜まりが形成される。この構成のもの
は従来の保持器を示す第5図と比較すれば相異が明らか
である。即ち従来の保持器4はボールの半径方向の端面
を有していたのであり、斯かる構成ではグリース溜まり
は形成されず、従って軌道面へのグリース案内は行われ
ない。
第6図はころ軸受に適用した場合の実施例を示し、こ
ろ30の保持器の内,外輪側の端部をころ30の軸端面に非
接触となるように屈曲させてある。これによりグリース
溜まりが形成されここから軌道面へグリースが案内され
ることになる。
この屈曲部は内,外輪側の一方に設けることとしても
よい。
第7図は同じくころ軸受に適用した場合の実施例を示
し保持器4のころ30対面側の端部に軸受外方側へ広がる
テーパ面を設けたものであり、ここにグリース溜まりが
形成される。このテーパ面も内,外輪側のいずれか一方
に設けることとしてもよい。
第8図はスラスト型の玉軸受に適用した実施例を示
し、保持器4は第2図に示したものと同様、軌道軸10,2
0側端部にフランジを有している。
第9図は第3図に示すものと同様、端面を軌道軸10,2
0の軸長方向に平行な面としたものである。
次にシール部材5にグリース案内手段を設けた実施例
を示す。
第10図はシール部材5の内輪1側端部、つまり内周端
をボール3側へ鈍角状に屈曲してなるものである。換言
すればシール部材5に保持器4に対向する凹部、つまり
グリース溜まりを形成している。これによりグリースは
ボール3又は内輪1の軌道面側へ案内されることにな
る。
第11図はシール部材5の外輪2側端部を略直角に屈曲
してなるものであり、これと内輪1側リップ部とで形成
される凹部、つまりグリース溜まりから軌道面へグリー
スが案内される。
第12図はボール3と略同曲率の凹部を設けたシール部
材15を示し、ここにグリースを溜まらせそれを軌道面へ
案内させる。
以上の如き構造のものに用いるグリースは第1図の実
施例について示したものと同様のものを用いればよいこ
とは言うまでもない。
またこれらの実施例を組合せて2以上のグリース案内
手段を設けることとしてもよいことは勿論である。
而して次に排油手段について説明する。上述した如き
保持器4、シール部材5それ自体を排油性樹脂で構成
し、又は排油性樹脂でその表面を被覆することで排油手
段が構成されることになる。この樹脂としてはPTFE,ETF
E等のフッ素樹脂を用いるのが好適である。被覆は焼付
又は塗布による。
第13図は内輪に排油手段を設けた例を示し、その肩
部、つまり軌道面1aの周縁部に排油性樹脂の被覆1bを行
っている。
〔効果〕
第14図は本発明の効果を示すグラフである。図におい
てAは本発明品(第10図の構造のものに表1の1の組成
のグリースを混入しているもの)、Bは従来構造の軸受
に表1の1の組成のグリースを混入したもの、Cは一般
的軸受(使用グリースの組成を表2に示す)につき夫々
内,外輪間の抵抗の経時変化を調べたものであり、本発
明の品が長期に亘って低い抵抗値(高い導電性)を示
す。
以上のように本発明による場合は長時間に亘って高い
導電性を示すころがり軸受が実現できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のころがり軸受の第1実施例を示す断面
図、第2図は本発明のころがり軸受の第2実施例を示す
断面図、第3図は本発明のころがり軸受の第3実施例を
示す断面図、第4図は本発明のころがり軸受の第4実施
例を示す断面図、第5図は従来の保持器を備える玉軸受
の断面図、第6図は本発明のころがり軸受の第5実施例
を示す断面図、第7図は本発明のころがり軸受の第6実
施例を示す断面図、第8図は本発明のころがり軸受の第
7実施例を示す断面図、第9図は本発明のころがり軸受
の第8実施例を示す断面図、第10図は本発明のころがり
軸受の第9実施例を示す断面図、第11図は本発明のころ
がり軸受の第10実施例を示す断面図、第12図は本発明の
ころがり軸受の第11実施例を示す断面図、第13図は本発
明のころがり軸受の第12実施例を示す断面図、第14図は
本発明の効果を示すグラフである。 1……内輪、2……外輪、3……ボール、4……保持
器、5……シール部材、30……ころ、40,50……軌道輪

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】保持器によって保持された転動体を案内す
    る1対の軌道輪間にカーボンブラックを含んで導電性を
    有する潤滑用のグリースを配し、シール部材によってこ
    れを封じてあるころがり軸受において、 前記グリースは稠度250〜350の範囲内にあり、また前記
    軌道輪、保持器及びシール部材のうちの少なくとも一つ
    に前記グリースを前記軌道輪の軌道面へ案内するグリー
    ス案内手段を備えることを特徴とするころがり軸受。
  2. 【請求項2】前記軌道輪、保持器及びシール部材のうち
    の少なくとも一つに前記グリースの付着を妨げる排油手
    段を備える請求項1記載のころがり軸受。
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