JP2017057981A - 転がり軸受 - Google Patents

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Tomohiko Obata
智彦 小畑
藤原 宏樹
Hiroki Fujiwara
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Abstract

【課題】簡易な手段により、トルクへの悪影響を与えずに、低トルク化を含む潤滑特性の向上を図り得る転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受1は、軌道輪である内輪2および外輪3と、内・外輪間に介在する複数の転動体4と、転動体4を保持する保持器5と、軸受内空間に封入されるグリース13とを備えてなり、保持器5の内外径面に繊維を植毛してなる植毛部6を有し、植毛部6の形成面積当たりに占める繊維面積の割合が1%以上5%未満である。
【選択図】図1

Description

本発明は、潤滑油またはグリースで潤滑される転がり軸受に関する。
転がり軸受は、一般的に内輪、外輪、転動体、および保持器で構成されている。外部からの異物の侵入を防ぐためや、内部に封入した潤滑剤の流出を防ぐために、開口端部にシール部材が設けられる場合がある。軸受内部の潤滑は、油やグリースなどの潤滑剤により行われており、軸受の潤滑特性向上のために種々の工夫がなされている。
例えば、保持器に潤滑被膜を形成することによる潤滑特性向上技術として、特許文献1が提案されている。特許文献1には、高速・高荷重下でのスミアリング、焼付き、摩耗、ピーリングを防止するために、外方部材、内方部材、転動体などの表面に固体潤滑剤による所定の潤滑被膜がショットピーニング処理により形成された転動装置が記載されている(特許文献1参照)。また、潤滑剤や潤滑条件などを変更することによる潤滑特性向上技術として、特許文献2が提案されている。特許文献2には、耐剥離性、グリース漏れ性に優れ、かつ外輪回転軸受で使用しても早期焼付きを抑制できる軸受用グリース組成物として、所定のエステル油とジウレア化合物とを所定配合量で含むものが記載されている(特許文献2参照)。
その他、保持器の形状変更による潤滑特性向上技術として、特許文献3が提案されている。特許文献3には、軸受の回転トルク(以下、単に「トルク」ともいう)の低減を図るものとして、鋼板プレスにより形成された2枚の環状保持板で構成され、多角形状のポケット部などが形成された保持器を備えた深溝玉軸受が記載されている(特許文献3参照)。
特許第5045806号公報 特許第3330755号公報 特開2007−292195号公報
しかしながら、特許文献1の転動装置では、該装置を構成する部材における転動接触表面(軌道輪の軌道面や転動体自体の転動面)に潤滑被膜を形成するため、高い精度で該被膜の形成を行なう必要があり、製造コストも高くなる。また、特許文献2は封入グリースの改良により、潤滑特性を改善するものであるが、グリースのような半固体状潤滑剤を使用した場合は、潤滑剤に起因する攪拌抵抗のためにトルクが大きくなる。近年における自動車や産業用機器などに用いる転がり軸受では、省エネルギー化を図るため、十分な潤滑寿命を確保しつつ、トルクを低減することは重要な課題である。
この課題に対して、特許文献3のような特殊形状の保持器を用いることでトルクの低減を図り得る。また、グリース種を最適化することや、グリース封入量自体を減らすことでもトルクの低減を図り得る。しかし、これらは製造コストの増加や軸受寿命の低下にも繋がるため、軸受形状、グリース種、グリース封入量などを既存品から大きく変更せずに、潤滑特性向上(特にトルクの低減)を図る技術の開発が望まれている。
また、運転中において転動体表面に過多のグリースが付着する場合や、グリース保持構造の改良に起因する部材間の接触などによっても、トルクが大きくなるおそれがある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、簡易な手段により、トルクへの悪影響を与えずに、低トルク化を含む潤滑特性の向上を図り得る転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明の転がり軸受は、軌道輪である内輪および外輪と、この内・外輪間に介在する複数の転動体と、この転動体を保持する保持器と、軸受内空間に供給されるグリースまたは潤滑油からなる潤滑剤とを備えてなる転がり軸受であって、上記内輪、上記外輪、および上記保持器から選ばれる少なくとも1つの軸受構成部材において、上記潤滑剤と接触する表面に繊維を植毛してなる植毛部を有し、上記植毛部の形成面積当たりに占める上記繊維面積の割合が1%以上5%未満であることを特徴とする。特に、上記植毛部の繊維と、上記軸受構成部材の少なくとも1つが接触することを特徴とする。
上記植毛部が、上記保持器の内径面および/または外径面の一部または全面に形成されていることを特徴とする。また、上記植毛部が形成された面のうち、上記軌道輪の非軌道部と対向する領域の少なくとも一部には上記植毛部が形成されていないことを特徴とする。
上記植毛部が、上記保持器において上記転動体を保持するポケットのエッジ部の一部または全体に形成されていることを特徴とする。
上記繊維が合成樹脂繊維であることを特徴とする。
本発明の転がり軸受は、内輪、外輪、および保持器から選ばれる少なくとも1つの軸受構成部材において、潤滑剤と接触する表面に繊維を植毛してなる植毛部を有するので、植毛部にグリースや潤滑油が保持され、軸受形状や潤滑剤として既存のものを用いながら潤滑特性の向上が図れる。具体的には、グリース潤滑にあっては、グリースの撹拌およびせん断を抑制でき、低トルクかつ長寿命となる。また、グリース自体の軸受内での移動を抑制でき、グリース漏れも低減できる。油潤滑にあっては、グリース潤滑の場合より低トルクとなる。さらに、植毛部の形成面積当たりに占める上記繊維面積の割合が1%以上5%未満であるので、軸受構成部材と繊維とが接触する場合でも、摺動抵抗を低減でき、定常トルクの低減が図れる。
植毛部が、保持器の内径面および/または外径面に形成されているので、グリースなどの潤滑剤が植毛部に固着してせん断を受けることなく保持器と共に回転し、撹拌抵抗が生じない。また、この形態において、植毛部が形成された面のうち、軌道輪の非軌道部と対向する領域の少なくとも一部には該植毛部が形成されていないので、保持器の植毛部と、軌道輪の内外輪肩部との接触を防止でき、定常トルクの低減が図れる。
植毛部が、保持器において転動体を保持するポケットのエッジ部の一部または全体に形成されているので、この部分で転動体表面の過多なグリースを掻き取り、転動体と軌道輪間でグリースがせん断されることを抑制でき、定常トルクを低減できる。また、上記同様、このエッジ部の植毛部も形成面積当たりに占める繊維面積の割合が1%以上5%未満であるので、転動体との接触時にトルクを増加させにくい。さらに、この植毛部に保持されたグリースから転動体表面に油が供給されやすくなる。
植毛部の繊維が合成樹脂繊維であるので、油による膨潤や溶解などが生じにくく化学的に安定である。
本発明の一例に係る転がり軸受の一部断面図である。 図1における保持器の形態を示す一部斜視図などである。 保持器の他の形態を示す一部斜視図などである。 保持器の他の形態を示す一部斜視図である。 トルクの経時変化を示す図である。
本発明の転がり軸受の一例を図1に基づき説明する。図1は、本発明の転がり軸受として植毛部を有する冠形樹脂保持器を組み込んだ深溝玉軸受の一部断面図である。図1に示すように、転がり軸受1は、外周面に転走面2aを有する内輪2と、内周面に転走面3aを有する外輪3とが同心に配置される。内輪の転走面2aと外輪の転走面3aとの間に複数個の転動体4が介在して配置される。この複数個の転動体4が、冠形の保持器5により保持される。また、転がり軸受1は、内・外輪の軸方向両端開口部に設けられた環状のシール部材12を備え、内輪2と外輪3と保持器5とシール部材12とで構成される軸受内空間に封入されたグリース13によって潤滑される。この実施形態では、保持器5のグリース13と接触する表面(軸受内空間側表面)に繊維を植毛してなる植毛部6が形成されている。
図2に基づいて保持器5の詳細を説明する。図2(a)はこの保持器の一部斜視図であり、図2(b)はこの保持器の展開図である。図2(a)に示すように、冠形の保持器5は、環状の保持器本体7上に、軸方向一方側に開口して転動体を保持するポケット9と、隣接するポケット間でポケット9の開口側に形成される溝部11とを備える。より詳細には、環状の保持器本体7上に周方向に一定ピッチをおいて対向一対の保持爪8を形成し、その対向する各保持爪8を相互に接近する方向にわん曲させるとともに、その保持爪8間に転動体である玉を保持するポケット9を形成したものである。隣接するポケット9の縁に形成された相互に隣接する保持爪8の背面相互間に、保持爪8の立ち上がり基準面となる平坦部10が形成され、これら保持爪8と平坦部10とで溝部11が構成される。
図2(a)および図2(b)に示すように、保持器5の内径面(内輪側面)全体に、網掛け部分で示す植毛部6が形成されている。図示されていないが、外径面(外輪側面)も同範囲に植毛部が形成されている。保持器5の内外径面は、転動体である玉との接触表面ではない。また、保持器5の内外径面は、軸受外部に位置する表面ではなく、内輪と外輪と保持器とシール部材とで構成される軸受内空間側の表面であり、封入されたグリースと接触する表面である。さらに、この形態の保持器5は転動体案内であるため、内外径面は、軌道輪(図1の内輪2と外輪3)と接触しない面である。
グリースが植毛部に固着して保持され、せん断を受けることなく保持器と共に回転することで、撹拌抵抗が生じず、植毛部がない場合と比較して、トルクの低減が図れる。また、グリースは、せん断を受けると軟化して離油しやすくなり潤滑寿命が短くなるが、本発明では上記植毛部に保持され、せん断を受けにくく潤滑寿命の長寿命化が図れる。また、油潤滑とする場合、植毛部に潤滑油を吸収させれば、外部から油を供給することなく、軸受内部に十分な量の潤滑油を保持でき、かつ、グリース潤滑のように回転の抵抗となる半固体状の物質が存在しないため、より低トルクとなる。
植毛部は、短繊維を植毛して形成される。植毛方法としては、静電植毛と静電吹き付け植毛がある。静電植毛は、接着剤を塗布した基材を対電極とし、高電圧電極により静電界を作り、その静電吸引力で短繊維を飛翔させ接着剤に立毛させる方法である。静電吹き付け植毛は、この静電吸引力に加え、短繊維をエアーで強制的に飛ばしながら接着剤に植毛する方法である。この方法では、静電吸引力により短繊維の一方の端面から接着剤に突き刺さる際、エアーでその繊維が基材表面に対して傾き固定される。静電植毛の場合と比べ、一本の短繊維が広い範囲の基材表面を覆うため、基材表面の短繊維の本数が減少し、密度が下がる。なお、いずれの方法においても植毛後に乾燥工程・仕上げ工程などを行なう。
本発明における植毛部は、この静電吹き付け植毛により形成されている。これにより、植毛部の形成面積当たりに占める繊維面積の割合(繊維密度)を、静電植毛の場合よりも下げて、軸受構成部材と繊維との接触時のトルク増加を抑制している。
本発明では、植毛部の形成面積当たりに占める繊維面積の割合(繊維密度)が1%以上5%未満である。静電吹き付け植毛では、繊維が倒れているため、繊維の本数を数えることが難しい。このため、静電吹き付け植毛における繊維密度は、例えば、以下のような手順で算出する。
(1)まず、静電植毛の場合の繊維密度(%)の算出方法を説明する。顕微鏡により植毛部を観察し、植毛部の形成面積に占める繊維の本数を数え、以下の式により算出する。なお、下記式(A)において、(植毛部の繊維の本数×繊維の直径2×π / 4)が植毛部の形成面(接着面)における繊維部分の面積である。

静電植毛の繊維密度(%)=((植毛部の繊維の本数×繊維の直径2×π / 4)/ 植毛部の形成面積)×100 −−−(A)

(2)これを利用して静電吹き付け植毛の場合の繊維密度を算出する。同面積に対して同種の短繊維を用いて静電植毛したものと静電吹き付け植毛したものを用意する。次に、接着剤を溶剤で除去し、繊維のみを取り出す。静電植毛と静電吹き付け植毛した繊維のそれぞれの重量を測り、静電植毛に対する静電吹き付け植毛の比率を測定する。この比率に上記式(A)で求めた静電植毛の繊維密度を掛け、静電吹き付け植毛の繊維密度を算出する。

静電吹き付け植毛の繊維密度(%)=(静電吹き付け植毛の繊維重量/静電植毛の繊維重量)×静電植毛の繊維密度 −−−(B)
保持器の内外径面に植毛部を形成する場合、その円環の曲率により数値が異なる。曲率が小さいと密度は高くなる。静電吹き付け植毛の繊維密度は、静電植毛の繊維密度に対して、30〜50%程度低くなる。本発明において、上記繊維密度の好適範囲としては、1%〜3%である。
植毛に用いる短繊維としては、植毛用短繊維として使用可能であれば特に限定されず、例えば、(1)ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ビニロンなどの合成樹脂繊維、(2)カーボン繊維、グラスファイバーなどの無機繊維、(3)レーヨン、アセテートなどの再生繊維や、綿、絹、麻、羊毛などの天然繊維が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記の短繊維の中でも、油による膨潤や溶解などが生じにくく化学的に安定であり、均質な繊維を多量に生産することができ、安価に入手することができるため、合成樹脂の短繊維を用いることが好ましい。さらに、合成樹脂の中でも樹脂製の冠形保持器の材料として広く使用されているポリアミド樹脂を使用することで、軸受の使用条件を落とすことなく該軸受を使用することが可能である。
短繊維の形状としては、植毛部の形成箇所において、軸受機能に悪影響を与えるような他部材との干渉がない形状であれば特に限定されない。具体的な形状としては、例えば、長さ0.5〜2.0mm、太さ0.5〜50デシテックスのものが好ましい。
接着剤としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを主成分とする接着剤が挙げられる。例えば、ウレタン樹脂溶剤系接着剤、エポキシ樹脂溶剤系接着剤、酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤、ウレタン樹脂系エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂系エマルジョン接着剤、ポリエステル系エマルジョン接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
保持器5における植毛部の形成箇所については、図2に示す形態に限定されず、内径面のみ、外径面のみに形成する形態、その他の任意の箇所(例えば、図2の溝部11など)に形成してもよい。ただし、保持器5の転動体と接する箇所に植毛のための接着剤が付着しないことが望ましい。保持器5と転動体が接する箇所として、保持器5のポケット部9が挙げられる。例えば、ポケット部9に接着剤が付着すると、ポケット部9の形状が崩れ、転動体の拘束や転動体と接着剤の接触により転動体に傷が発生し得る。
図3に基づき、保持器の他の形態として植毛部の形成箇所が異なるものを説明する。図3は、図2と同様に、植毛部が形成された冠形樹脂保持器の一部斜視図と展開図である。図3(a)および図3(b)に示すように、保持器5の内径面において、内輪の軌道面に近接する領域5aに植毛部6が形成され、軌道輪の非軌道部である内輪の肩部に対向する領域5bには植毛部が形成されていない。また、図示されていないが、保持器5の外径面において、外輪の軌道面に近接する領域に植毛部が形成され、外輪の肩部に対向する領域には植毛部が形成されていない。この領域5bは、保持器本体7のポケット9の非開口側に位置し、軸方向に一定範囲を占めて円周方向に連続した領域であり、ポケット9に一部かかる範囲の領域である。領域5bに植毛部を形成すると、この植毛部と内輪肩部とが摺動する場合がある。本発明では、上述のように植毛部の繊維密度を低くすることで、トルクを低減させているが、当該領域の植毛部を形成しないことで、よりトルクを低減できる。
図4に基づき、保持器の他の形態を説明する。図4は、植毛部が形成された冠形樹脂保持器の一部斜視図である。図4(a)の保持器5は、植毛部6を図2の箇所に加えて、ポケット9のエッジ部9aにも形成したものである。ポケット9のエッジ部9aは、保持器5の内外径面とポケット9との境界部である。同様に、図4(b)の保持器5は、植毛部6を図3の箇所に加えて、ポケット9のエッジ部9aにも形成したものである。このエッジ部の植毛により、転動体の表面に付着しているグリースの全部または一部を掻き取り、転動体表面の過多なグリースを除去できる。転動体と植毛部との接触は、トルク増加に繋がる可能性もあるため、非接触もしくは、植毛の繊維先端のみを接触(軽接触)させることが好ましい。なお、このエッジ部の植毛部も形成面積当たりに占める繊維面積の割合が1%以上5%未満であるので、転動体との接触時にもトルクを増加させにくい。
図2〜図4に示す例は冠形保持器であるが、本発明の転がり軸受では、波型保持器やもみ抜き保持器などの保持器に植毛部を形成する形態としてもよい。また、保持器の材質については、金属材料や樹脂材料など、任意の材料を採用できる。保持器材質、短繊維材質などに合わせて上記接着剤種などを決定する。
図2〜図4に示す冠形保持器は樹脂製である。例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン46樹脂などのポリアミド樹脂を樹脂母材とし、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と、他の添加剤を配合した樹脂組成物を用いて、射出成形により製造される。
植毛部は、保持器以外に軌道輪やシール部材の表面に形成してもよい。いずれの部材に形成する場合も、転動体との接触表面以外で潤滑剤と接触する表面に形成する。また、1つの転がり軸受において、これを構成する複数の部材にそれぞれ植毛部を形成してもよい。
本発明の転がり軸受は、潤滑油またはグリースで潤滑される。これら潤滑剤(潤滑油・グリース)は軸受内空間に供給・封入され、転走面などに介在して潤滑がなされる。潤滑油としては、通常、転がり軸受に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン油、ポリ−α−オレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油などの炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、りん酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油などの非炭化水素系合成油などが挙げられる。これらの潤滑油は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
グリースとしては、通常、転がり軸受に用いられるグリースであれば特に制限なく用いることができる。グリースを構成する基油としては、上記の潤滑油が挙げられる。また、グリースを構成する増ちょう剤としては、例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物などのウレア系化合物、PTFE樹脂などのフッ素樹脂粉末が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、潤滑剤には、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、イオウ系、リン系化合物などの摩耗抑制剤、多価アルコールエステルなどの防錆剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイトなどの固体潤滑剤、エステル、アルコールなどの油性剤などが挙げられる。
潤滑剤の封入量は、所望の潤滑特性を確保できる範囲であれば特に限定されないが、軸受内空間における静止空間体積の50%〜80%(体積比率)程度とすることが好ましい。本発明では植毛部の形成により、グリースの撹拌抵抗の低減が図れるため、潤滑剤封入量を上記範囲としながらも、トルクの低減が図れる。
以上、各図などに基づき本発明の実施形態(深溝玉軸受(シール部材有))を説明したが、本発明の転がり軸受はこれらに限定されるものではない。例えば、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト円すいころ軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などの任意の転がり軸受に適用できる。また、これらの転がり軸受に対して、シール部材(シールド板)の有無は問わず適用でき、シール部材を有さない開放型であっても同様に、植毛部による潤滑油などの保持効果が得られる。
本発明の転がり軸受は、上述のとおり、植毛部の繊維密度を、静電植毛で形成した場合よりも低くしたことに特徴がある。また、このような転がり軸受を得るため、本発明の転がり軸受の製造方法は、その植毛部の形成方法に特徴がある。すなわち、軸受構成部材に植毛部を形成した転がり軸受の製造に際し、その植毛部の形成について、軸受構成部材における植毛部形成箇所である接着面に接着剤を塗布した後、帯電させた繊維をエアーなどの流体によって搬送することで該接着面に供給し、植毛部を形成している(静電吹き付け植毛)。
実施例1および実施例2
6204転がり軸受(深溝玉軸受)に使用可能な図4の形状の樹脂製冠形保持器を射出成形により製造した。樹脂材質は、ポリアミド66樹脂(ガラス繊維25体積%配合)である。実施例1は、この保持器の図4(a)に示す位置に、実施例2は、この保持器の図4(b)に示す位置に、それぞれ接着剤を塗布し、静電吹き付け植毛により、ポリアミド66樹脂の短繊維(繊維長0.8mm、太さ3.3デシテックス)からなる植毛部を形成した。ポケットのエッジ部の植毛部は、繊維先端がポケット空間にはみ出して転動体と接触する状態であった。植毛部の繊維密度は、上述の算出方法により2〜3%であった。この保持器を6204転がり軸受(深溝玉軸受)に組み込み、軸受内空間にグリース(リチウム石けん+エステル油)を静止空間体積比で70体積%封入し、シールド板で封止して試験軸受とした。得られた試験軸受を下記のトルク測定試験に供し、トルクの経時変化を調べた。
<トルク測定試験>
試験軸受を固定し、回転数3600rpm、室温(25℃)雰囲気、外輪にアキシャル荷重20Nを負荷してロードセルで拘束し、内輪回転として、軸受で発生するトルク(N・mm)を算出した。
比較例1および比較例2
6204転がり軸受(深溝玉軸受)に使用可能な図4の形状の樹脂製冠形保持器を射出成形により製造した。比較例1の保持器は、植毛部の形成を静電植毛により行なう以外の構成は、実施例1と同じである。また、比較例2の保持器は、植毛部の形成を静電植毛により行なう以外の構成は、実施例2と同じである。植毛部の繊維密度は、上述の算出方法により5%超であった。この保持器を6204転がり軸受(深溝玉軸受)に組み込み、軸受内空間にグリース(リチウム石けん+エステル油)を静止空間体積比で70体積%封入し、シールド板で封止して試験軸受とした。得られた試験軸受を実施例1と同じトルク測定試験に供し、トルクの経時変化を調べた。
図5にトルク測定試験の結果をそれぞれ示す。なお、図5において、横軸は運転時間(時間(h))を縦軸はトルク(N・mm)をそれぞれ示す。
図5に示すように、比較例1は、繊維と内輪肩部、繊維と転動体が接触しており定常トルクが7N・mm程度であった。一方で実施例1では同様の箇所で接触しているものの接触する短繊維の密度が低いため、定常トルクは3N・mm程度であった。比較例2では短繊維と転動体が接触しており、定常トルクが4N・mm程度であった。実施例2では短繊維の密度を下げ、接着面も減らすことで、2N・mm程度まで定常トルクを減少させることができた。
トルクの結果と密度の結果より、6204保持器において繊維密度を約50%低下させることで良好な定常トルクが得られた。このことから、静電植毛の密度から50%以下の密度では良好なトルク結果が得られると考えられる。
本発明の転がり軸受は、軸受形状として既存のものを用いながら、簡易な手段により、トルクへの悪影響を与えずに、低トルク化を含む潤滑特性の向上を図れるので、種々の用途における転がり軸受として広く利用できる。
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 植毛部
7 保持器本体
8 保持爪
9 ポケット
10 平坦部
11 溝部
12 シール部材
13 グリース

Claims (6)

  1. 軌道輪である内輪および外輪と、この内・外輪間に介在する複数の転動体と、この転動体を保持する保持器と、軸受内空間に供給されるグリースまたは潤滑油からなる潤滑剤とを備えてなる転がり軸受であって、
    前記内輪、前記外輪、および前記保持器から選ばれる少なくとも1つの軸受構成部材において、前記潤滑剤と接触する表面に繊維を植毛してなる植毛部を有し、
    前記植毛部の形成面積当たりに占める前記繊維面積の割合が1%以上5%未満であることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記植毛部の繊維と、前記軸受構成部材の少なくとも1つが接触することを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
  3. 前記植毛部が、前記保持器の内径面および/または外径面の一部または全面に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の転がり軸受。
  4. 前記植毛部が形成された面のうち、前記軌道輪の非軌道部と対向する領域の少なくとも一部には前記植毛部が形成されていないことを特徴とする請求項3記載の転がり軸受。
  5. 前記植毛部が、前記保持器において前記転動体を保持するポケットのエッジ部の一部または全体に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の転がり軸受。
  6. 前記繊維が合成樹脂繊維であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017188100A (ja) * 2016-03-31 2017-10-12 株式会社タニタ 画像形成装置、プログラム及び活動量計システム

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