JP2019044955A - グリース封入転がり軸受 - Google Patents

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航平 神谷
英之 筒井
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Abstract

【課題】高温での耐久性と耐冷時異音特性とを兼ね備えた転がり軸受を提供することを目的とする。
【解決手段】転がり軸受1は、自動車用電装補機に用いられ、外周に内輪軌道面2aを有する内輪2と、内周に外輪軌道面3aを有する外輪3と、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間を転動する複数の転動体4と、該転動体4の周囲に封入されたグリース7とを備え、グリース7の基油が、エーテル油を主成分とし、内輪軌道面2a、外輪軌道面3a、および転動体4の転動面から選ばれる少なくとも1つの表面に、DLC、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、またはフッ素樹脂の非粘着性被膜8を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、超低温から高温までの広い温度範囲で使用され、かつ、高速回転で使用されるグリース封入転がり軸受に関する。特に、自動車用電装補機に使用されるグリース封入転がり軸受に関する。
例えば、自動車用電装補機には、グリースが封入された転がり軸受が組み込まれており、このグリース封入転がり軸受は、例えば−40℃〜180℃の温度範囲で使用される。グリース封入転がり軸受において、高温での耐久性を重視した場合には、耐熱性の高い油を基油としたグリースが用いられる。しかしながら、耐熱性の高い油は流動点も高く、低温下では固化するため、そのような低温下でグリース封入転がり軸受を作動させると、作動時に異音(以下、冷時異音という)が発生する問題がある。
従来、このような冷時異音を低減するための対処が種々検討されており、例えば、特許文献1には、流動点の低い油を主成分とした基油を用いたグリースを封入した転がり軸受が提案されている。
特開2006−249271号公報
しかしながら、一般に流動点の低い油は冷時異音の低減には適しているが、その反面、酸化しやすいという性質がある。そのため、特に自動車用電装補機のような高速回転の環境下では、流動点の低い油が酸化した結果、局所的な発熱が大きくなり、早期に潤滑不良となるおそれがある。それ故、冷時異音を低減しつつ、高温での耐久性にも優れる転がり軸受が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高温での耐久性と耐冷時異音特性とを兼ね備えた転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明のグリース封入転がり軸受は、自動車用電装補機に用いられ、外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有する外輪と、上記内輪軌道面と上記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体と、該転動体の周囲に封入されたグリースとを備えるグリース封入転がり軸受であって、上記グリースの基油が、エーテル油を主成分とし、上記内輪軌道面、上記外輪軌道面、および上記転動体の転動面から選ばれる少なくとも1つの表面に、DLC、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、またはフッ素樹脂の被膜を有することを特徴とする。
上記転動体を保持する保持器を有さないことを特徴とする。上記エーテル油が、アルキルジフェニルエーテル油であることを特徴とする。また、上記エーテル油は、40℃における動粘度が20〜90mm2/sで、流動点が−30℃以下であることを特徴とする。
−20℃以下の温度条件における上記グリースの上記被膜に対する粘着力が、同温度条件における上記グリースの軸受鋼に対する粘着力の80%以下であることを特徴とする。
上記自動車用電装補機が、ファンカップリング装置、オルタネータ、アイドラプーリ、テンションプーリ、電磁クラッチ、またはコンプレッサであることを特徴とする。
本発明のグリース封入転がり軸受は、グリースがエーテル油を主成分とする基油を用いるので、高温での耐久性に優れる。また、内輪軌道面、外輪軌道面、および転動体の転動面から選ばれる少なくとも1つの表面に、DLC、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、またはフッ素樹脂の被膜を有するので、冷時異音を低減させることができる。このため、高温での耐久性と耐冷時異音特性とを兼ね備えた転がり軸受を得ることができる。
また、保持器を有さないので、軸受内部の接触部が減少し、冷時異音の抑制に一層効果的である。エーテル油がアルキルジフェニルエーテル油であるので、高温での耐久性に優れる。また、このアルキルジフェニルエーテル油が、40℃における動粘度が20〜90mm2/sであり、流動点が−30℃以下であるので、冷時異音を抑制しつつ、高速回転の環境下においても潤滑性を良好に保つことができる。
−20℃以下の温度におけるグリースの被膜に対する粘着力が、同温度条件における同グリースの軸受鋼に対する粘着力の80%以下であるので、冷時異音を低減させることができる。
自動車用電装補機であるファンカップリング装置、オルタネータ、アイドラプーリ、テンションプーリ、電磁クラッチ、またはコンプレッサにグリース封入軸受を適用する場合、高速回転の環境下や幅広い温度環境下で使用されることになる。本発明のグリース封入転がり軸受は、高温での耐久性と耐冷時異音特性とを兼ね備えているので、これらの用途に好適に利用できる。
本発明のグリース封入転がり軸受の一例を示す一部断面図である。 本発明のグリース封入転がり軸受の他の例を示す一部断面図である。 図1の転がり軸受を用いたアイドラプーリの断面図である。 冷時異音試験の測定結果を示す図である。 粘着力の測定結果を示す図である。
本発明の転がり軸受は自動車用電装補機に用いられる。自動車用電装補機に用いられる転がり軸受は、−40℃〜180℃といった広い温度範囲で使用されるため、高温耐久性や低温性などが要求される。また、該転がり軸受を低温下で使用する際には、冷時異音が問題となる。本発明における冷時異音は、低温下で発生する異音全般(ジャリ音やHOOT音)を対象とする。特に、始動時のわずかな時間において発生する物体が剥がれるような音であるジャリ音を対象とする。この冷時異音は、転がり軸受の使用温度が低温になればなるほど、発生する可能性が高くなる。
本発明の転がり軸受は、内輪、外輪、転動体を軸受部材として備えてなり、これら軸受部材の所定の位置に、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、二硫化モリブデン(MoS2)、二硫化タングステン(WS2)、またはフッ素樹脂からなる被膜(以下、「非粘着性被膜」ともいう)を有することを特徴とする。
本発明の転がり軸受の一例を図1に基づいて説明する。図1はグリースが封入されている転がり軸受(深溝玉軸受)の一部断面図である。転がり軸受1は、外周面に内輪軌道面2aを有する内輪2と内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。これら複数の転動体4は、保持器5に保持されている。シール部材6が外輪3に固定されており、少なくとも転動体4の周囲にグリース7が封入されている。この転がり軸受1は、内輪2の外周面(内輪軌道面2aを含む)と、外輪3の内周面(外輪軌道面3aを含む)に、上述の非粘着性被膜8が形成されている。
上述した冷時異音の発生は、軸受内部の接触部におけるグリースの粘着力を加振力とした系の自励振動が原因と推測される。低温下では、この接触部において高粘弾性となったグリースを粘着剤として接触部間における物体同士が相対運動することになる。この場合、一般的なグリース封入転がり軸受においては転動体と軌道輪、または転動体と保持器といった接触面が互いに離れる瞬間に、グリースは引張荷重を受け内部に弾性エネルギーを蓄積するとともに、破断する際にその蓄積したエネルギーを放出する。それが転動体や軌道輪、保持器に与える加振力となり、振動と音の発生に繋がると考えられる。
本発明の転がり軸受1は、内輪軌道面2aおよび外輪軌道面3aに非粘着性被膜8を有するので、低温時において、グリースと軌道面との界面が弱い力で剥離し、強い加振力が発生しない。その結果、冷時異音を低減することができる。非粘着被膜としては、グリースとの非粘着性が高い被膜であれば、様々な結晶状態のものでもよい。また、非粘着被膜には、DLC、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ素樹脂以外に、バインダ成分を配合できる。なお、非粘着性被膜は、グリースの粘着力によって脱落し難い被膜であることが好ましい。
非粘着性被膜に用いられるDLCは、構造的にはダイヤモンドとグラファイトが混ざり合った両者の中間構造を有するものである。DLCは、ダイヤモンドと同等に硬度が高く、耐摩耗性、固体潤滑性、熱伝導性、化学安定性等に優れる。DLC膜を形成する方法には周知の方法を用いることができ、例えば、アンバランスドマグネトロンスパッタリング、アークイオンプレーティング、プラズマCVDなどを例示できる。また、非粘着性被膜としてDLC膜を用いる場合は、DLC膜と軸受部材との密着性を高めるため、DLC膜と軸受部材との間に、クロム、タングステン、チタン、タングステンカーバイト、シリコンのうち少なくとも一つ以上の元素を含む中間層を設けることが好ましい。
非粘着性被膜に用いられるフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体樹脂、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン)共重合体樹脂、FEP(パーフルオロエチレン−プロペン)共重合体樹脂、PVDFF(ポリビニリデンフルオライド)樹脂、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン−エチレン)共重合体樹脂などが挙げられる。
非粘着性被膜として、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、またはフッ素樹脂を用いる場合は、単一素材からなる被膜であってもよく、また、非粘着性を損なわなければ樹脂やケイ酸ナトリウムなどをバインダとして含む複合材からなる被膜であってもよい。また、二硫化モリブデン膜、二硫化タングステン膜、またはフッ素樹脂膜を形成する方法には、周知の方法を用いることができ、例えば、ショット処理(原料粉末をエアーで対象面に高速噴射する処理)、スパッタリング、分散液での塗装などを例示できる。
非粘着性被膜の膜厚(DLC膜の場合は中間層も含めた膜厚)は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では測定や膜厚の管理が困難であり、1.0μmを超えると膜厚の不均一さが軌道面や転動面の真円度不良に繋がり易くなる。
本発明の転がり軸受に封入されるグリースは、エーテル油を含む基油と増ちょう剤とから構成される。エーテル油としては、例えば、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルトリフェニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油などが挙げられる。これらの中でも、高温での耐久性の点から、アルキルジフェニルエーテル油が好ましい。 アルキルジフェニルエーテル油としては、モノアルキルジフェニルエーテル油、ジアルキルジフェニルエーテル油、ポリアルキルジフェニルエーテルなどが挙げられる。
特に、エーテル油の中でも、40℃における動粘度が20〜150mm2/sであり、流動点が−20℃以下のエーテル油が好ましく、40℃における動粘度が20〜90mm2/sであり、流動点が−30℃以下のエーテル油がより好ましい。
上記基油は、エーテル油のみからなるか、または、エーテル油と他の基油との混合物である。エーテル油と混合する油として、例えば、高度精製油、鉱油、エステル油、合成炭化水素油(PAO油)、シリコーン油、フッ素油およびこれらの混合油などを使用できる。なお、エーテル油と混合する油においても、その動粘度範囲と流動点は上記範囲内であることが好ましい。本発明の基油はエーテル油を主成分として含むので、エーテル油の含有量は、基油(混合油)全体に対して50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。特に、エーテル油のみからなる基油(エーテル油100%)とすることが好ましい。
これらを考慮して、グリースに用いられる基油としては、例えば、アルキルジフェニルエーテル油のみを用い、該アルキルジフェニルエーテル油の40℃における動粘度が20〜90mm2/sであり、流動点が−30℃以下であることが特に好ましい。
上記基油は、グリース全体に対して60〜90質量%含有することが好ましい。基油の含有量が60質量%未満では、寿命低下のおそれがあり、90質量%をこえると、相対的に増ちょう剤量が少なくなり、グリース化が困難になるおそれがある。
グリースに用いられる増ちょう剤は、特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けんなどが、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、他のポリウレア化合物、ジウレタン化合物などが挙げられる。
上記増ちょう剤は、グリース全体に対して10〜40質量%含有することが好ましい。より好ましくは、グリース全体に対して10〜20質量%とする。増ちょう剤の含有量が10重量%未満では、増ちょう効果が少なくなり、40重量%をこえると、相対的に基油量が少なくなり寿命低下のおそれがある。
グリースの混和ちょう度(JIS K 2220)は、200〜350の範囲にあることが好ましい。ちょう度が200未満である場合は、油分離が小さく潤滑不良となるおそれがある。一方、ちょう度が350をこえる場合は、グリースが軟質で軸受外に流出しやすくなり好ましくない。
また、グリースには、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、イオウ系、リン系化合物などの摩耗防止剤、多価アルコールエステルなどの防錆剤、二硫化モリブデン、グラファイトなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤などが挙げられる。
上述したように、冷時異音の発生は、軸受内部の接触部におけるグリースの粘着力を加振力とした系の自励振動が原因と推測されるため、低温下におけるグリースと接触部との粘着力が小さいことが好ましい。粘着力を小さくすることで、グリースに蓄積されるエネルギーを低減することができる。例えば、−20℃以下の温度下において、非粘着性被膜を有さない場合よりも非粘着性被膜を有する場合で粘着力の低くなるグリースを用いることが好ましい。具体的な数値として、本発明のグリースは、−20℃以下の温度下において、非粘着性被膜に対する粘着力が、25N以下であることが好ましく、20N以下であることがより好ましい。その結果、低温下においてグリースと非粘着性被膜の間は弱い力で剥離するため、強い加振力が発生せず、冷時異音の低減に寄与する。言い換えると、−20℃以下の温度におけるグリースの非粘着性被膜に対する粘着力が25N以下となるように、グリースおよび非粘着性被膜を選択するとよい。
図1において、転がり軸受1は、転がり軸受1の軌道面、つまり内輪2の内輪軌道面2aおよび外輪3の外輪軌道面3aに非粘着性被膜8を有する構成としたが、これに代えて、転がり軸受1が、転動体4の表面、つまり転動面に非粘着性被膜8を有する構成としてもよい。この構成においても、軸受部材間における接触部の粘着力を低減できる。すなわち、低温時において、グリースと転動面との界面が弱い力で剥離し、強い加振力が発生しないため、冷時異音の発生を抑制することができる。また、非粘着性被膜8は、内輪2の内輪軌道面2a、外輪3の外輪軌道面3a、および転動体4の転動面から選ばれる少なくとも1つの表面に形成されていればよい。よって、上述した以外の具体的構成として、例えば、転がり軸受1の軌道面および転動体4の転動面のいずれにも非粘着性被膜を形成してもよい。
また、図1において転がり軸受1は保持器5を有する構成としたが、転がり軸受1が保持器を有さない構成としてもよい。図2は、保持器なしの構成の転がり軸受(深溝玉軸受)の一部断面図である。図2の転がり軸受1’における保持器以外の軸受構成は、図1の転がり軸受と同様である。冷時異音は、軸受内部の接触部で発生するため、図2のように保持器を有さない構成とすることで、転動体と保持器の接触面で発生する粘着力に伴う加振力をなくすことができる。また、保持器のポケット面の背面などに付着している高粘弾性なグリースが軌道面に飛散することに伴う接触面の粘着力の増大や持続力強化もなくすことができる。そのため、保持器を有さない構成とすることで、加振力を一層低減させ、ひいては冷時異音の低減により効果的である。
また、転がり軸受において、転動体の数は特に限定されないが、該転動体の数を、同径サイズの転がり軸受の通常の数よりも減らすことができる。例えば、外径サイズ30mm〜50mmの軸受では通常は6〜8個の転動体が用いられるところ、その転動体の数を3〜5個にすることができる。この場合、転動体の転動面の面積が減少するため、軸受部材間における接触面の粘着力を低減できる。なお、転動体の数を通常よりも減らす場合、軸受寿命を考慮して、転がり軸受が小型でかつ荷重が小さい軸受に適用することが好ましい。例えば、転がり軸受の外径サイズが40mmで、ラジアル荷重200Nの転がり軸受に適用できる。
ここで、玉軸受の基本動定格荷重Crを算出するLundberg-Palmgrenの理論に基づく関係式によると、玉数Zの指数は2/3となっている。例えば、玉数が7個の玉軸受において玉数を4個にした場合、基本動定格荷重Crは玉数7の場合に比べ、理論上4(2/3)/7(2/3)倍(約0.69倍)となる。例えば、後述する実施例において、玉数7個の転がり軸受6203の基本動定格荷重Crは9600Nである。これに対して、玉数を4個にした場合、基本動定格荷重Crは6610Nとなるが、使用荷重であるラジアル荷重200Nに対して十分大きいため軸受寿命への影響はほとんどない。
本発明の転がり軸受を適用する自動車用電装補機の例を図3に示す。図3は駆動ベルト用テンショナーとして使用されるアイドラプーリの構造の断面図である。このプーリは、鋼板プレス製のプーリ本体11と、プーリ本体11の内径に嵌合された単列の転がり軸受1とで構成される。プーリ本体11は、内径円筒部11aと、内径円筒部11aの一端から外径側に延びたフランジ部11bと、フランジ部11bから軸方向に延びた外径円筒部11cと、内径円筒部11aの他端から内径側に延びた鍔部11dとからなる環体である。内径円筒部11aの内径には、図3に示す転がり軸受1の外輪3が嵌合され、外径円筒部11cの外径にはエンジンによって駆動されるベルトと接触するプーリ周面11eが設けられている。このプーリ周面11eをベルトに接触させることにより、プーリがアイドラとしての役割を果たす。
なお、本発明の転がり軸受1は、アイドラプーリ以外にも、ファンカップリング装置、オルタネータ、テンションプーリ、電磁クラッチまたはコンプレッサなどの自動車用電装補機に用いられる。また、図1〜図3では転がり軸受として玉軸受について例示したが、本発明の転がり軸受は、任意の形式の軸受とできる。
(1)冷時異音試験
冷時異音試験では、自動車用電装補機の駆動ベルト用テンショナーを想定し、転がり軸受としては、NTN社製6203、軸受すきまが0〜−0.010mm(ゼロから負すきま)の軸受を使用した(図1参照)。このうち、実施例1〜7では軸受部材に非粘着性被膜を有する軸受を使用し、比較例1〜4では非粘着性被膜を有さない軸受を使用した。また、実施例1〜7および比較例1、3、4では、グリースとして、基油がアルキルジフェニルエーテル油(40℃における動粘度が65mm2/s、流動点が−42.5℃)であり、増ちょう剤が脂環式ジウレア化合物であり、該増ちょう剤をグリース全体(基油+増ちょう剤)に対して15質量%含むものを用いた。比較例2では、グリースとして、基油がPAO油(40℃における動粘度が30mm2/s、流動点が−55℃)であり、増ちょう剤が脂環式ジウレア化合物であり、該増ちょう剤をグリース全体(基油+増ちょう剤)に対して20質量%含むものを用いた。また、実施例1〜7および比較例1、3、4のグリースのちょう度は280であり、比較例2のグリースのちょう度は235である。なお、軸受へのグリース封入量は0.5gである。実施例および比較例の各非粘着性被膜について以下に示す。
実施例1の軸受を取り付けた状態のプーリの断面図は、図3に示すとおりである。冷時異音の測定は、−50℃の低温槽で一定時間冷却した軸受付きプーリを、低温槽から取り出してから常温の試験機に取り付け、軸受温度が−40℃になった時点で、ラジアル荷重200Nの一定荷重下で運転を開始し、開始から10秒間の音圧を測定する方法とした。回転速度は停止状態から7500min-1までを30秒間で加速した。冷時異音の評価にはA特性フィルタ処理後の音圧の実効値(音圧実効値)を用いた。結果を図4に示す。
(2)粘着力試験
グリースと各材質(非粘着性被膜を含む)との粘着性を確認するために、実施例1〜4および比較例1〜2の各材質からなる板材とシム(金属の薄いフィルム)を用いて粘着力を測定した。粘着力の測定は、グリースを塗布した板材にシムを密着させ、それを−50℃の低温槽で一定時間冷却した後、常温の試験機に取り付け、板材が−40℃になった時点でシムを板材から引きはがし、引きはがす際の最大荷重を測定する方法とした。結果を図5に示す。
板材:寸法 Φ50mm×7mm、材質SUJ2(軸受鋼、以下同じ)
シム:寸法 10mm×100mm×0.01mm、材質SUS304
グリース塗布部の寸法:10mm(シムの幅)×20mm
測定速度:1m/s(シムを引きはがす際の速度)
実施例1
軸受の軌道面および上記板材の表面に、クロムとタングステンカーバイトを中間層としたDLC膜をアンバランスドマグネトロンスパッタリングによって形成した。DLC膜および中間層の膜厚は1.0μmであった。成膜した軸受を用いて冷時異音試験を実施し、成膜した板材を用いて粘着力試験を実施した。なお、軸受は、実施例7および比較例4を除き、転動体(玉)が7個のものを使用した。
実施例2
軸受の軌道面および上記板材の表面に、二硫化モリブデン膜をショット処理によって形成した。膜厚は0.5μmであった。成膜した軸受を用いて冷時異音試験を実施し、成膜した板材を用いて粘着力試験を実施した。
実施例3
軸受の転動体(玉)および上記板材の表面に、二硫化タングステン膜をショット処理によって形成した。膜厚は0.3μmであった。成膜した軸受を用いて冷時異音試験を実施し、成膜した板材を用いて粘着力試験を実施した。
実施例4
軸受の軌道面および上記板材の表面に、PTFE樹脂膜をマグネトロンスパッタリングによって形成した。膜厚は0.8μmであった。成膜した軸受を用いて冷時異音試験を実施し、成膜した板材を用いて粘着力試験を実施した。
実施例5
軸受の軌道面に、クロムとタングステンカーバイトを中間層としたDLC膜をアンバランスドマグネトロンスパッタリングによって形成した。DLC膜および中間層の膜厚は1.0μmであった。DLC膜を有し、かつ、保持器を有さない軸受(図2参照)を用いて冷時異音試験を実施した。
実施例6
軸受の軌道面および軸受の転動体(玉)に、二硫化タングステン膜をショット処理によって形成した。膜厚は0.3μmであった。成膜した軸受を用いて冷時異音試験を実施した。
実施例7
軸受の軌道面に、クロムとタングステンカーバイトを中間層としたDLC膜をアンバランスドマグネトロンスパッタリングによって形成した。DLC膜および中間層の膜厚は1.0μmであった。DLC膜を有し、かつ、転動体(玉)の数が4個の軸受を用いて冷時異音試験を実施した。
比較例1
非粘着性被膜を有さない軸受を用いて冷時異音試験を実施し、非粘着性被膜を有さない板材を用いて粘着力試験を実施した。
比較例2
グリースの基油として、低温流動性の良いPAO油を用いた以外は、比較例1と同様にして各試験を実施した。
比較例3
非粘着性被膜を有さず、かつ、保持器を有さない軸受を用いて冷時異音試験を実施した。
比較例4
非粘着性被膜を有さず、かつ、転動体(玉)の数が4個の軸受を用いて冷時異音試験を実施した。
図4より、軌道面および転動面の少なくともいずれかに非粘着性被膜を有する軸受の場合(実施例1〜7)は、非粘着性被膜を有さない軸受の場合(比較例1)に比べて、冷時異音を抑制することができた。また、実施例1および実施例5より、転がり軸受の保持器をなくすことで、冷時異音がより抑制された。このことから、転動体と保持器の接触部におけるグリースの粘着力も冷時異音に影響することが分かった。すなわち、非粘着性被膜と、保持器を有さない構成とを組み合わせることは、冷時異音の抑制に一層効果的である。また、軌道面および保持器と接触する玉自体の数を減らすことで、冷時異音が小幅に低減することが分かった(比較例1、比較例4)。ただし、玉の数を減らした効果は限定的であるため、軌道面の非粘着性被膜とを組み合わせることでより良い冷時異音の低減効果が得られた(実施例7)。
また、図4および図5の結果より、低温下におけるグリースの粘着力を低減させると、冷時異音も低減することが分かった。図5より、表面に非粘着性被膜を有する板材の場合(実施例1〜4)は、非粘着性被膜を有さない板材、つまり表面がSUJ2の板材の場合(比較例1)に比べて、グリースの粘着力が80%以下となった。ここで、比較例2は、低温流動性のよいPAO油を基油とするグリースを用いているため、該粘着力は小さく、冷時異音が低減されている。しかしながら、このPAO油は流動点が低く酸化しやすいため、高温での耐久性に懸念がある。一方、実施例1〜7のグリースの基油であるエーテル油は高温での耐久性に優れる。
また、二硫化モリブデン(実施例2)および二硫化タングステン(実施例3)では、表層の脱落現象により粘着力は著しく低くなったが、冷時異音はそれほど低下しなかった。これは高粘弾性のグリースが運転時に非粘着性被膜をかきとり、部分的に基材が露出したためと考えられる。以上のように、本発明の転がり軸受は、高温での耐久性と耐冷時異音特性とを兼ね備えているので、低温から高温までの幅広い温度範囲での使用に適している。
本発明の転がり軸受は、高温での耐久性と耐冷時異音特性とを兼ね備えているので、低温から高温までの幅広い温度範囲で使用される軸受として広く使用される。特に、自動車用電装補機であるファンカップリング装置、オルタネータ、アイドラプーリ、テンションプーリ、電磁クラッチ、またはコンプレッサに適用するグリース封入転がり軸受として好適である。
1、1’ 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
8 非粘着性被膜
11 プーリ本体

Claims (6)

  1. 自動車用電装補機に用いられ、外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体と、該転動体の周囲に封入されたグリースとを備えるグリース封入転がり軸受であって、
    前記グリースの基油が、エーテル油を主成分とし、
    前記内輪軌道面、前記外輪軌道面、および前記転動体の転動面から選ばれる少なくとも1つの表面に、DLC、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、またはフッ素樹脂の被膜を有することを特徴とするグリース封入転がり軸受。
  2. 前記転動体を保持する保持器を有さないことを特徴とする請求項1記載のグリース封入転がり軸受。
  3. 前記エーテル油が、アルキルジフェニルエーテル油であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のグリース封入転がり軸受。
  4. 前記エーテル油は、40℃における動粘度が20〜90mm2/sで、流動点が−30℃以下であることを特徴とする請求項3記載のグリース封入転がり軸受。
  5. −20℃以下の温度条件における前記グリースの前記被膜に対する粘着力が、同温度条件における前記グリースの軸受鋼に対する粘着力の80%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のグリース封入転がり軸受。
  6. 前記自動車用電装補機が、ファンカップリング装置、オルタネータ、アイドラプーリ、テンションプーリ、電磁クラッチ、またはコンプレッサであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載のグリース封入転がり軸受。
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