JP2899735B2 - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、プレス加工された打
抜き保持器を有する転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種転がり軸受においては、プ
レス加工により成形された後バレル研磨処理の施された
保持器が使用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
転がり軸受を使用した場合、特に高温真空環境下でオイ
ルやグリースを使用しない無潤滑仕様では、発塵量が多
く、クリーンルームなどにおいては雰囲気を汚染すると
いう問題があった。また、発生した摩耗粉により転動体
や軌道面に傷が付くという問題があった。
【0004】そこで、この発明の発明者等は、上記の問
題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プレス加工
により成形された後バレル研磨処理が施されただけで
は、保持器におけるプレス加工のさいのシャーリング面
になおもばりが存在しており、使用時に軌道輪および/
または転動体と摺接することにより上記ばりから摩耗粉
が発生し、これにより発塵量が多くなることを見出だし
てこの発明を完成したのである。
【0005】この発明の目的は、上記問題を解決し、発
塵量の少ない転がり軸受を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明による転がり軸
受は、打抜き保持器を有する転がり軸受であって、保持
器における軌道輪および/または転動体と摺接する面の
表面粗さが、軌道面の表面粗さと同程度になされている
ものである。
【0007】上記において、保持器の上記面の表面粗さ
を、軌道面の表面粗さと同程度にするには、たとえば複
合電解研磨処理を施すことにより行われる。複合電解研
磨処理は、砥粒による擦過と、電解研磨による金属溶出
とを併用して行う研磨方法である。
【0008】また、保持器の上記面の表面粗さを、軌道
面の表面粗さと同程度にするには、たとえば複合化学研
磨処理を施すことにより行われる。複合化学研磨処理
は、砥粒による擦過と、化学研磨による金属溶出とを併
用して行う研磨方法である。
【0009】複合電解研磨処理および複合化学研磨処理
は、プレス加工後のバレル研磨処理の後に、またはバレ
ル研磨処理に代えて行われる。
【0010】
【作用】保持器における軌道輪および/または転動体と
摺接する面の表面粗さが、軌道面の表面粗さと同程度に
なされていると、使用時に軌道輪および/または転動体
と摺接した場合の発塵量が少なくなる。すなわち、軌道
面の表面粗さは、転動体との接触によっても発塵量が少
なくなるように設定されており、保持器における軌道輪
および/または転動体と摺接する面の表面粗さが、軌道
面の表面粗さと同程度になされていると、発塵量が少な
くなる。
【0011】
【実施例】以下、この発明の実施例を、図面を参照して
説明する。なお、全図面を通じて同一物および同一部分
には同一符号を付して説明を省略する。
【0012】実施例1 この実施例は図1および図2に示すものである。図1は
玉軸受の全体構成を示し、図2はその保持器を示す。
【0013】図1において、玉軸受(1) は、内輪(2)
と、外輪(3) と、波形打抜き保持器(4) と、保持器(4)
に保持された複数の玉(5) とよりなる。
【0014】内外両輪(2)(3)および玉(5) はそれぞれ、
たとえばSUS440Cなどのステンレス鋼や、Si3
4 などのセラミックスで形成される。保持器(4) は、
たとえばSUS304などのステンレス鋼で形成され
る。玉軸受(1) は、高温、真空環境下で好適に使用され
るように、オイルやグリースなどの潤滑剤は用いない無
潤滑仕様である。保持器(4) の玉案内面であるポケット
(7) の内周面(7a)の表面粗さは、内外両輪(2)(3)の軌道
面(2a)(3a)の表面粗さと同程度のRZ 0.2μm以下と
なされている。また、保持器(4) が内輪案内形式の場合
には、保持器(4)の案内面(4a)である内周面、および内
輪(2) の保持器案内面(2b)もこれと同程度の表面粗さと
なされていることが好ましい。
【0015】図2に示すように、保持器(4) は2つの保
持器構成部品(4A)(4B)からなる。保持器構成部品(4A)(4
B)はプレス加工により形成されたものであり、その内外
両周面がプレス加工のさいのシャーリング面である。各
保持器構成部品(4A)(4B)には、バレル研磨処理が施さ
れ、その後ポケット(7) の内周面(7a)となる面、および
案内面(4a)となる内周面に、複合電解研磨処理または複
合化学研磨処理が施されている。なお、バレル研磨処理
は必ずしも必要としない。そして、2つの保持器構成部
品(4A)(4B)がリベット(6) で固定されている。
【0016】次に、上記玉軸受(1) を用いて行った具体
的実験例を、比較実験例とともに説明する。
【0017】具体的実験例1 SUS440C製の内外両輪(2)(3)および玉(5) と、S
US304製の波形打抜き保持器(4) とからなる無潤滑
仕様の玉軸受(1) を用意した。保持器(4) を構成する保
持器構成部品(4A)(4B)の案内面(4a)となる内周面、およ
びポケット(7)の内周面となる面にはプレス加工後にバ
レル研磨処理および複合電解研磨処理を施しておき、保
持器(4) におけるポケット(7) の内周面(7a)および案内
面(4a)の表面粗さをRZ 0.2μmとしておいた。
【0018】そして、大気中のクラス10のクリーンベ
ンチ内において、回転速度:200rpm、ラジアル荷
重2.9N、温度:室温、時間:20時間の条件で発塵
試験を行い、0.1cfあたりの粒子径0.3μm以上
の発塵量を計測した。その結果、64810個であっ
た。
【0019】具体的実験例2 保持器構成部品(4A)(4B)の内周面に、複合電解研磨処理
に代えて複合化学研磨処理を施したこと、および保持器
(4) におけるポケット(7) の内周面(7a)および案内面(4
a)の表面粗さをRZ 0.4μmとしたことの他は、上記
具体的実験例1と同様の玉軸受(1) を用意し、上記具体
的実験例1と同様の条件で発塵試験を行って0.1cf
あたりの粒子径0.3μm以上の発塵量を計測した。そ
の結果、82682個であった。
【0020】 比較実験例 保持器構成部品の内周面にバレル研磨処理だけを施し
て、保持器におけるポケットの内周面および案内面の表
面粗さがRZ 0.5μmである玉軸受を用意した。そし
て、上記具体的実験例1と同様の条件で発塵試験を行っ
て0.1cfあたりの粒子径0.3μm以上の発塵量を
計測した。その結果、3641252個であった。
【0021】実施例2 この実施例は図3および図4に示すものである。図3は
玉軸受の全体構成を示し、図4はその保持器を示す。
【0022】図3において、玉軸受(10)は、上記実施例
1と同様無潤滑仕様であり、たとえばSUS304など
のステンレス鋼で形成された冠形打抜き保持器(11)を備
えている。そして、保持器(11)が内輪(2) により案内さ
れるようになっており、その内向きフランジ(11a) の内
周面が案内面(11b) となっている。図4に示すように、
保持器(11)の内向きフランジ(11a) 先端の案内面(11b)
、および保持器(11)のポケット(12)の内周面(12a) の
表面粗さが、それぞれ内外両輪(2)(3)の軌道面(2a)(3a)
の表面粗さと同程度のRZ 0.2μm以下となされてい
る。案内面(11a)および内周面(12a) は、保持器(11)を
プレス加工したさいのシャーリング面にあたる部分であ
る。この実施例においても、内輪(2) の保持器案内面(2
b)もこれと同程度の表面粗さとなされていることが好ま
しい。
【0023】保持器(11)の案内面(11b) およびポケット
(12)の内周面(12a) の表面粗さを上記のようにするため
に、保持器(11)には、プレス加工が施された後バレル研
磨処理が施され、さらに案内面(11b) およびポケット(1
2)の内周面(12a) に複合電解研磨処理または複合化学研
磨処理が施されている。
【0024】上記2つの実施例の玉軸受において、内輪
の保持器案内面および保持器の案内面を、それぞれ固体
潤滑剤からなる皮膜で被覆して使用することがある。こ
の場合にも、これらの面の表面粗さが、内外両輪の軌道
面と同程度となされていると、固体潤滑剤皮膜の膜厚を
薄くすることが可能になる。
【0025】なお、上記2つの実施例においては、保持
器は内輪に案内されるようになっているが、外輪に案内
されるようになっていてもよい。また、保持器の形状は
上記の波形および冠形に限られない。さらに、この発明
は、ころ軸受にも適用される。
【0026】
【発明の効果】この発明の転がり軸受によれば、上述の
ように、使用時の発塵量を減少させることができる。し
たがって、クリーンルームなどにおいても雰囲気を汚染
するのを抑制できる。しかも、発生した摩耗粉に起因す
る転動体や軌道面の傷付きを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1を示す断面図である。
【図2】実施例1の保持器の一部分を示す図である。
【図3】この発明の実施例2を示す断面図である。
【図4】実施例2の保持器の一部分を示す図である。
【符号の説明】
1 玉軸受 2 内輪 2a 保持器案内面 4 保持器 4a 案内面 5 玉 7a ポケット内周面 10 玉軸受 11 保持器 11b 案内面 12 ポケット内周面
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16C 33/44 F16C 33/38 F16C 33/62

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 打抜き保持器を有する転がり軸受であっ
    て、 保持器における軌道輪および/または転動体と摺接する
    面の表面粗さが、軌道面の表面粗さと同程度になされて
    いる転がり軸受。
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