JP2574939Y2 - 高所作業車のクレーン装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、高所作業車に備えられ
ているクレーン装置に関し、さらにはこのクレーン装置
の起伏作動装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】車体上に、伸縮、起伏等が自在なブーム
の先端に作業台を設けて配電工事等を行う高所作業車に
おいては、この作業台に配電工事等に必要な機器類を吊
り上げるためのクレーン装置が取り付けられているもの
がある。そして、このクレーン装置によって吊り上げら
れた機器類を電柱に取り付ける場合に、作業台に搭乗し
た作業者の作業環境の向上を図るとともに迅速な作業を
行うため、作業台の外部にマニピュレータを備え、作業
者が作業台の内部からそのマニピュレータを遠隔操作す
ることによって、電柱上における電設工事等を行えるよ
うにしたものがある。

【０００３】このような高所作業車においては、作業性
の向上を図るために作業台の前方にマニピュレータを備
えると共にクレーン装置も作業台の前方に備えているも
のがある。ここで、電柱において電設作業を行う場合に
は、高所作業車を道路に停車させた後に、ブームを伸長
させて作業台を電柱における作業位置まで移動させ、ク
レーン装置によって電設作業に必要な機器類を吊り上げ
る。そして、マニピュレータを操作することにより、吊
り上げた機器の電柱への取付作業等の電設作業を行う。

【０００４】ここで、クレーン装置を使用して吊上作業
を行った後に、電柱の家屋側における電設作業（家相作
業）を行う場合がある。この場合、クレーン装置が作業
台に対して一定の角度で固定されていると、作業台に対
してクレーン装置が突出した状態となるため、クレーン
装置が電柱あるいは電柱に配設された腕金等とクレーン
装置が干渉し、マニピュレータが家相作業を行う作業位
置まで届かなくなることがあった。そして、このような
場合に、クレーン装置が干渉しないようにするために
は、クレーン装置を起伏させて作業台より突出しないよ
うな構成とすることが考えられる。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】ここで、クレーン装置
を起伏自在な構成とするために、クレーン装置に起伏作
動用のモータあるいはシリンダを備え、クレーン装置の
起伏を行うようにすると作業台の重量が増加することと
なる。作業台の重量が増加するとブームの先端荷重が増
加することになり、ブーム伸長時に車体を転倒させる方
向に作用するモーメントが大きくなるため車体の安定性
が低下するという問題を生じる場合があった。

【０００６】本考案は、このような問題に鑑みてなされ
たものであり、ブームの先端荷重を増加させることな
く、作業台に備えられたクレーン装置の起伏作動を行う
とともに、クレーン装置の作業位置と格納位置を保持す
ることのできる高所作業車のクレーン装置を提供するこ
とを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本考案に係る高所作業車のクレーン装置は、ブー
ムの先端部に備えられた作業台に起伏、屈伸作動等が自
在なマニピュレータ装置を備え、格納位置と作業位置と
の間で起伏移動自在なクレーン装置が、予め定められた
角度以上に起仰した場合は格納位置を保持し、予め定め
られた角度以上に倒伏した場合は作業位置を保持するこ
とができる起伏角度保持装置とを有している。そして、
マニピュレータ装置のアームの作動によってクレーン装
置の起伏を行う。

【０００８】

【作用】このような高所作業車のクレーン装置では、別
途駆動装置を必要とせずに作業台に備えられたマニピュ
レータ装置のアームの作動によってクレーン装置を起伏
させ、クレーン装置を使用しない場合はクレーン装置を
格納状態に保持し、クレーン装置の使用時は作業位置を
保持することができる。

【０００９】

【実施例】以下本考案の好ましい実施例について図面を
参照しながら説明する。まず、本考案に係るクレーン装
置を備えた高所作業車について図１を参照しながら説明
する。この高所作業車１の車体２には、車体２に対して
旋回自在なブーム旋回台３が取り付けられており、この
ブーム旋回台３の上部にはブーム４が起伏自在に枢着さ
れている。このブーム４は、ブーム旋回台３に枢着され
た基端ブーム４ａ、および先端ブーム４ｂの複数のブー
ム部材からなりテレスコピックに（入れ子式に）構成さ
れている。そして、ブーム４の起伏作動は、基端ブーム
４ａと旋回台３の間に取り付けられたブーム起伏シリン
ダ５の作動により行われ、また、伸縮作動はブーム４に
内蔵されたブーム伸縮シリンダ（図示せず）の作動によ
り行われる。

【００１０】先端ブーム４ｂの先端部には、支持台６ａ
と操作室６ｂから構成される作業台６が取り付けられて
いる。この作業台６は、ブーム４の起伏にかかわらず常
に水平に保持されるとともに、ブーム４に対して旋回自
在となっている。また操作室６ｂの前方にはクレーン装
置１０が取り付けられている。このクレーン装置１０
は、操作室６ｂに取り付けられたクレーン支持台１１
と、クレーン支持台１１にに対して起伏自在なクレーン
アーム１２とからなる。そして、このクレーンアーム１
２の先端部に取り付けられたシーブ１７を介して吊上用
ロープ１４が垂下されている。吊上用ロープ１４の先端
には、配電工事用の機器類を引っ掛けるためのフックが
取り付けられ、この吊上用ロープ１４の他端はクレーン
装置１０に備えられたウインチ１３に掛け回されてい
る。そして、このウインチ１３によって吊上用ロープ１
４の巻き上げを行うことにより機器類を高所に吊り上げ
る。

【００１１】このクレーン装置１０は、図２に示すよう
に操作室６ｂに取り付けられるクレーン支持台１１と、
このクレーン支持台１１に対して軸１９ｂにより揺動自
在に枢着されるクレーンアーム保持部材１９が備えられ
ている。そして、クレーンアーム保持部材１９にはクレ
ーンアーム１２が着脱用ピン１９ａによって着脱自在に
備えられている。また、クレーン支持台１１には、クレ
ーンアーム１２が直立した状態（格納位置）でクレーン
支持台１１に対するクレーンアーム保持部材１９の回動
を止める格納位置用ストッパ１１ａが備えられ、クレー
ンアーム１２が格納位置から４５゜傾斜した状態（作業
位置）でクレーン支持台１１に対するクレーンアーム保
持部材１９の回動を止める作業位置用ストッパ１１ｂが
備えられている。

【００１２】クレーン支持台１１とクレーンアーム保持
部材１９の間には、クレーンアーム１２の傾斜角度が格
納位置から約２５．５゜傾斜した角度（デッドポイン
ト）Ｐ以下の場合にはクレーンアーム１２を格納位置に
付勢する付勢力を有し、デッドポイントＰ以上に傾斜し
た場合にはクレーンアーム１２を作業位置に付勢する付
勢力を有するエアーダンパ１８が備えられている。した
がって、上記の各ストッパ１１ａ、１１ｂおよびエアー
ダンパ１８からなる起伏角度保持装置により、クレーン
アーム１２は、格納位置または作業位置のいずれかの位
置で保持されることとなる。また、クレーンアーム１２
は、前記のようにクレーンアーム保持部材１９に対して
着脱が自在であるために、クレーン装置１０を必要とし
ない場合には、着脱用ピン１９ａを引き抜くことにより
クレーンアーム１２を取り外すことができる。これによ
り、クレーン装置１０の不使用時の作業効率の向上を図
ることができる。

【００１３】操作室６ｂの前方には、操作室６ｂに対し
て起伏、屈伸が自在に構成されたアーム部材１５ａと、
その先端に開閉自在かつ旋回自在に取付けられたグリッ
パ１５ｂとから構成されるマニピュレータ装置のアーム
１５が備えられている。そして、操作室６ｂに搭乗した
作業者は、ブーム４を起伏、伸長等させて任意の高所に
移動した後、マニピュレータ装置のアーム１５を操作室
６ｂ内から遠隔操作することにより所望の作業を行うこ
とができる。

【００１４】つぎに、上記のような構成の高所作業車を
使用して電柱上における家屋側の電設作業（家相作業）
を行う場合について説明する。まず、図１に示すよう
に、ブーム４を起仰、伸長させて作業台６を作業位置に
移動させる。そして、クレーン装置１０を使用して機器
類の吊り上げを行なった場合、エアーダンパ１８および
作業位置用ストッパ１１ｂの作用によりクレーンアーム
１２は、実線で示すような作業位置のまま保持される。
そして、クレーン装置１０による吊り上げ作業が終わっ
た後もクレーン装置１０が作業位置のまま保持されてい
ると、電柱２０あるいは電柱２０に配設された腕金２２
等にクレーンアーム１２が干渉し、腕金２２の家屋３０
側に取り付けられている碍子２１までマニピュレータ装
置のアーム１５が届かないため、家相作業を行うことが
できない。

【００１５】そこで、マニピュレータ装置のアーム１５
を遠隔操作することにより、クレーンアーム１２を作業
位置から起仰させるように上方へ押し上げる。そして、
クレーンアーム１２の起仰角度がデッドポイントＰを超
えた場合には、アーム１５によるクレーンアーム１２の
押し上げ操作をそれ以上行わなくても、エアーダンパ１
８の作用によりクレーンアーム１２は一点鎖線で示すよ
うに格納位置まで起仰し、格納位置用ストッパ１１ａに
より起仰が止まり格納位置が保持される。これにより、
クレーンアーム１２が腕金２２等と干渉することがなく
なり、家相作業を効率よく行うことができる。

【００１６】また、再度クレーン装置１０を使用する場
合など、格納位置にあるクレーンアーム１２を作業位置
に倒伏移動させる場合には、マニピュレータ装置のアー
ム１５によって、クレーンアーム１２を倒伏させるよう
に下方へ押し下げる。これにより、上記の場合とは逆に
倒伏角度がデッドポイントＰを超えた場合には、エアー
ダンパ１８の作用によりクレーンアーム１２は作業位置
まで倒伏し、作業位置用ストッパ１１ｂにより作業位置
で保持される。

【００１７】したがって、クレーンアーム１２の起伏作
動用のモータやシリンダを別途設けることなく、クレー
ンアーム１２の起伏作動をマニピュレータ装置のアーム
１５によって行うことができる。このため、ブーム４の
先端荷重を増加させることなく、家相作業を行う際に、
クレーン装置１０が必要な場合にのみ作業位置にクレー
ンアーム１２を位置させることができ、不必要な場合に
は電柱等に干渉することを防止できるため、作業効率の
向上を図ることができる。

【００１８】なお、上記の実施例においては、クレーン
アームを作業位置および格納位置に保持する起伏角度保
持装置の付勢手段としてエアーダンパを備えることとし
ているが、本考案はこのような実施例に限られるもので
はなく、付勢手段としてスプリング等を使用してもよ
い。また、クレーンアームが直立した状態を格納位置と
し、格納位置から４５゜傾斜した状態を作業位置とし、
その中間点をデッドポイントとしたが、これらの角度
は、クレーン装置および作業台の形状あるいは作業内容
等によって適宜変更するようにしてもよい。

【００１９】例えば、デッドポイントの位置を作業位置
と近づけることにより、クレーン装置を使用していない
にもかかわらず、クレーン装置が作業位置にあるまま作
業台を移動させたときにクレーン装置が障害物に接触し
た場合は、クレーン装置が格納位置に起仰することによ
りクレーン装置等の損傷を防止することもできる。

【００２０】

【考案の効果】以上のように、本考案に係る高所作業車
のクレーン装置は、ブームの先端部に備えられた作業台
に起伏、屈伸作動等が自在なマニピュレータ装置を備
え、このマニピュレータ装置のアームの作動によって格
納位置と作業位置との間でクレーン装置を起伏移動させ
る。そして、起伏角度保持装置により、予め定められた
角度以上に起仰した場合は格納位置を保持し、予め定め
られた角度以上に倒伏した場合は作業位置を保持する。
これにより、別途駆動装置を必要とすることなく、クレ
ーン装置の作業位置と格納位置との起伏が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るクレーン装置を備えた高所作業車
の側面図である。

【図２】本考案に係るクレーン装置の側面図である。

【符号の説明】

１ 高所作業車 ４ ブーム ６ 作業台 １０ クレーン装置 １１ クレーン支持台 １２ クレーンアーム １３ ウインチ １５ マニピュレータ １６ グリッパ ２０ 電柱 ３０ 家屋

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 平１−94398（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−126499（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B66F 9/00 - 11/04

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ブームの先端部に備えられた作業台と、 前記作業台に起伏、屈伸作動等が自在に備えられたマニ
   ピュレータ装置と、 前記作業台に備えられ、格納位置と作業位置との間で起
   伏移動自在なクレーン装置と、 前記クレーン装置の起伏角度が、予め定められた角度以
   上に起仰した場合は前記格納位置を保持し、予め定めら
   れた角度以上に倒伏した場合は前記作業位置を保持する
   ことができる起伏角度保持装置とを有する高所作業車の
   クレーン装置であって、 前記マニピュレータ装置のアームの作動によって前記ク
   レーン装置の起伏移動を行うことを特徴とする高所作業
   車のクレーン装置。