JP2570793Y2 - リールシート - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、釣り竿に対してリール
を装着するためのリールシートのシートベースに固定さ
れる固定フードと、シートベースのネジ部に螺合するナ
ット部材の回動操作によって、竿軸芯方向に沿って移動
自在に構成された可動フードとを備えると共に、この可
動フードの端部をシートベースの径方向内方に屈曲させ
てフランジ部を形成し、このフランジ部の開口を前記ナ
ット部材外周の環状溝に係合して夫々を相対回動自在、
かつ、一体移動自在に構成して成るリールシートに関
し、詳しくは、フランジ部を環状溝に係合させる技術に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】上記のように構成されたリールシートと
して実公平４−３４６９２号公報に示されるものが存在
し、従来、この種のリールシートでは、環状溝の外周縁
を円形に成形し、又、フランジ部の開口形状を外周縁の
径より小径の円形に成形しており、夫々を係合させる場
合には、強力な力でフランジ部の開口が拡大する方向に
弾性変形させる手段（所謂、無理嵌め）を採っている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかし、前述のように
弾性変形を利用して係合を行うものでは、構造が単純で
小型で軽量なリールシートを得るという良好な面を有す
る反面、傷みを発生させず無理のない状態での係合を可
能にするという観点、及び、係合状態で夫々が確実に連
結状態を維持するという観点から、ナット部材の環状溝
の外周縁の径の値と、フランジ部の開口の径の値とを比
較的高い精度に仕上げねばならず製造に困難な面があ
る。特に、この種の可動フードではリールの脚部が挿入
される部位を該可動フードの一側部を径方向外方に張り
出す形状に成形するので、この成形の影響によっても、
該可動フードの開口径に高い精度を求めることが困難に
なっている。尚、この不都合を解消する目的で環状溝に
係合する部材をサークリップ等の止め輪型に構成する
等、可動フードと別個に形成することも考えられるが、
このような構造では部品数が増大するばかりで無く、可
動フードの大型化に繋がることから実現性が低いものと
なる。

【０００４】又、従来この種の可動フードでは高い精度
を求めるため、製造時の歩留りが悪く、係合後使用する
際には、環状溝の全周に対してフランジ部の開口内周が
接触するためナット部材の回動抵抗が大きく、特にスピ
ニングリールを装着する場合には、フード片側にのみ偏
った荷重が作用するために、一層スライド作動を行い難
い面があった。本考案の目的は、構造が単純で小型軽量
という従来からの良好な面を損なうこと無く、組立て時
には可動フードのフランジ部の開口をナット部材の環状
溝に対して出来るだけ容易に係合させると共に、環状溝
とフランジ部の開口との接触面積を小さくして、係合状
態では容易に分離せず、可動部材がスムースに作動する
リールシートを合理的に構成する点にある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本考案の特徴は冒頭に記
したように、固定フードと、移動自在に構成された可動
フードとを備え、この可動フードの端部のフランジ部の
開口を前記ナット部材外周の環状溝に係合して成るリー
ルシートであって、前記環状溝の外周縁の形状を前記竿
軸芯を中心とする円形、若しくは、略円形に成形し、
又、フランジ部の開口の形状を、該フランジ部の弾性変
形により前記環状溝の外周縁を通過可能な非円形に形成
して成る点にあり、その作用、及び、効果は次の通りで
ある。

【０００６】

【作用】上記特徴を例えば図１乃至図５に示すように構
成すると、フランジ部１０をナット部材５の環状溝１１
に係入させる場合には、夫々を係合方向に変位させるこ
とにより、フランジ部１０の開口１０Ａが弾性変形し
て、環状溝１１の外周縁１１Ａの形状に沿う形状となっ
た後、夫々が係合位置に達し、フランジ部１０の開口１
０Ａが弾性的に復元して環状溝１１への係入が完了する
ものとなり、本考案ではフランジ部１０の開口１０Ａを
非円形に成形しているので、この弾性変形時にはフラン
ジ部１０の開口縁のうち径方向の軸芯側に張り出した部
位（小径の部位）を竿軸芯Ｘに沿う方向に向けて比較的
容易に変形させてフランジ部１０、環状溝１１夫々の近
接方向への変位を可能にし、又、係合位置に達した後に
は、このように張り出した部位が弾性的に復元して環状
溝１１に深く係合するものとなる。つまり、本考案で
は、従来と同様の係合構造を採用するものの、フランジ
部１０の開口１０Ａの弾性的な拡径を比較的容易に行わ
せ得るので、この開口１０Ａの径と環状溝１１の外周縁
１１Ａの径との相対的な精度を、それほど高めずに済む
ものとなり、しかも、係合状態に達した後にはフランジ
部１０の開口１０Ａと環状溝１１の分離が困難なものと
なる。又、本考案を図５に示す如く、フランジ部１０の
開口形状を楕円形に成形した場合には、開口内周の凹凸
の量が小さくなり、張り出した部位（小径の部位）の局
部的な磨耗（ナット部材５の回動操作に起因する）を抑
制し、ナット部材５の円滑な回動操作を可能にする。

【０００７】

【考案の効果】従って、構造が単純で小型軽量という従
来からの良好な面を損なうこと無く、組立て時には可動
フードのフランジ部の開口をネジ材の環状溝に対して比
較的容易に係合させ得ると共に、係合状態では確実な連
結状態を維持して容易に分離しないリールシートが合理
的に構成されたのである。特に、フランジ部の開口を楕
円形に成形した場合には、長期に亘る使用によっても、
フランジ部と環状溝との係合を安定な状態に維持して良
好な使用感を現出するものとなる。更に、この考案では
フランジ部の開口とナット部材の環状溝との接触面積を
小さくできるため、リールを固定する際にナット部材の
回動操作を楽に行え、又、この固定時にはフランジ部の
端面の広い面が竿軸芯に沿う方向から、ナット部材に接
触するためリールに対する押付け力を発揮して、ガタツ
キ無く確実なリールの装着が可能となる。尚、このよう
に可動フードとナット部材とを係合した構造のもので
は、これらをシートベースから取外した状態で、可動フ
ード、ナット部材夫々を、あまり手間を掛けず容易に分
離し得るという効果も奏する。

【０００８】

【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明
する。図１及び図２に示すように、元竿１に外嵌する筒
状のシートベース２の前部位置に固設される固定フード
３と、該シートベース後部のネジ部４に螺合するナット
部材５の回動操作によって竿軸芯Ｘ方向に沿って移動自
在に構成された可動フード６とを備えてリールシートを
構成する。このリールシートではガラス繊維を混入した
ナイロン樹脂でシートベース２と固定フード３とを一体
成形し、これと同様の樹脂でナット部材５を形成し、
又、ステンレスの板材で可動フード６を形成し、この可
動フードの内面にナイロン樹脂製の中子６Ａを備えてい
る。

【０００９】図３に示すように、この中子６Ａにはシー
トベース２の外面に対し竿軸芯Ｘに沿って形成した溝７
に係合して可動フード６の回転を阻止する突片８を有
し、この溝７、及び、ネジ部４がシートベース２の成形
時に形成され、又、ナット部材５内周のネジ部５Ａと外
面のローレット状の滑り止め面５Ｂ夫々がナット部材５
の成形時に形成されている。尚、シートベース２は元竿
１の外面に接着固定され、このシートベース２の前部、
及び、後部の端面と元竿１との段差を樹脂９で埋めてい
る。図４に示すように、可動フード６の後端部をシート
ベース２の径方向内方に屈曲させてフランジ部１０を形
成し、このフランジ部１０の開口１０Ａをナット部材前
部の外周に形成した環状溝１１に係合して夫々を相対回
動自在、かつ、一体移動自在に連結してあり、このリー
ルシートでは、環状溝１１の外周縁１１Ａを直径値Ａの
円形に成形し、又、図５に示す如く、フランジ部１０の
開口１０Ａを、縦方向の開口値Ｂと、横方向の開口値Ｃ
とに差異を有する縦長の楕円形に成形し、更に、環状溝
１１の外周縁１１Ａの直径値Ａと縦方向の開口値Ｂとを
一致させ、これらより横方向の開口値Ｃを小さく（Ａ＝
Ｂ＞Ｃ）設定して、リールシートの組立て時にナット部
材５と可動フード６との連結操作を楽に行なえるよう構
成している。

【００１０】尚、環状溝１１の外周縁１１Ａの直径値Ａ
は２０数ミリメートルであり、これより０．６ミリメー
トル程度小さい値にフランジ部１０の開口１０Ａの横方
向の開口値Ｃを設定している。そして、このリールシー
トで組立て時には、フランジ部１０をナット部材５の環
状溝１１の方向に移動させることにより、フランジ部１
０の小径の部位（張り出した部位）が比較的良好に弾性
変形して、該開口１０Ａの拡径を楽に行わせて、環状溝
１１の外周縁１１Ａの形状に沿うと共に、この後、夫々
が係合位置に達した状態で、開口１０Ａの小径の部位
（張り出した部位）が弾性的な復元により環状溝１１に
深く係入して分離を抑制するものとなる。

【００１１】〔別実施例〕 本考案は上記実施例以外に、例えば、図６に示すよう
に、フランジ部１０の開口１０Ａを、径方向内方への張
り出し部を３箇所形成した非円形の形状に成形すること
が可能であり、又、径方向内方への張り出し部を４箇所
以上形成して実施することも可能である。又、本考案で
は、非円形に成形した開口の大径側の開口径を環状溝の
外周縁より小さくしてフランジ部の開口の全周を環状溝
に係入する形態に実施することも可能である。又、本考
案では竿材の外面に金型を配置し、インジェクションの
手段によって竿材の外面に対して直接樹脂を形成して竿
材と一体的にシートベースを形成するものに適用するこ
とも可能である。

【００１２】尚、実用新案登録請求の範囲の項に図面と
の対照を便利にするために符号を記すが、該記入により
本考案は添付図面の構成に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】リールシート部の側面図

【図２】リールシート部の断面図

【図３】可動フード部の縦断正面図

【図４】分離状態における可動フードとナット部材の一
部切欠き側面図

【図５】可動フードの背面図

【図６】別実施例の可動フードの背面図

【符号の説明】

２ シートベース ３ 固定フード ４ ネジ部 ５ ナット部材 ６ 可動フード １０ フランジ部 １０Ａ 開口 １１ 環状溝 １１Ａ 外周縁 Ｘ 竿軸芯

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートベース（２）に固定される固定フ
   ード（３）と、シートベース（２）のネジ部（４）に螺
   合するナット部材（５）の回動操作によって、竿軸芯
   （Ｘ）方向に沿って移動自在に構成された可動フード
   （６）とを備えると共に、この可動フード（６）の端部
   をシートベース（２）の径方向内方に屈曲させてフラン
   ジ部（１０）を形成し、このフランジ部（１０）の開口
   （１０Ａ）を前記ナット部材（５）外周の環状溝（１
   １）に係合して夫々を相対回動自在、かつ、一体移動自
   在に構成して成るリールシートであって、 前記環状溝（１１）の外周縁（１１Ａ）の形状を前記竿
   軸芯（Ｘ）を中心とする円形、若しくは、略円形に成形
   し、又、フランジ部（１０）の開口（１０Ａ）の形状
   を、該フランジ部（１０）の弾性変形により前記環状溝
   （１１）の外周縁（１１Ａ）を通過可能な非円形に形成
   して成るリールシート。