JP2570668B2 - 電歪セラミック材料体およびその分極操作方法 - Google Patents

電歪セラミック材料体およびその分極操作方法

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JP2570668B2 JP20892287A JP20892287A JP2570668B2 JP 2570668 B2 JP2570668 B2 JP 2570668B2 JP 20892287 A JP20892287 A JP 20892287A JP 20892287 A JP20892287 A JP 20892287A JP 2570668 B2 JP2570668 B2 JP 2570668B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、電歪セラミック材料体およびその分極操
作方法に関するもので、特に、1個の一体的な電歪セラ
ミック材料体自身によって、縦効果による振動によって
屈曲モードの変形を行なわせるための改良、およびその
ような電歪セラミック材料体を得るための分極操作方法
に関するものである。
[従来の技術] 従来、リレー、ファン、ポンプ、VTRのトラッキン
グ、等の分野において、電歪効果を利用して屈曲モード
の変形を行なわせるアクチュエータが用いられている。
典型的には、このようなアクチュエータとしては、横効
果電歪材料板を金属板と貼り合わせたユニモルフ構造を
もって構成されたものや、2枚の電歪材料板を、金属板
を介して貼り合わせたバイモルフ構造をもって構成され
たものが知られている。
ところで、特定のセラミック材料が電歪効果を示すこ
とが発見されてから久しいが、このような電歪セラミッ
ク材料は、単に焼成されただけの段階では、全体として
電歪効果を示さない。なぜなら、単に焼成されただけの
段階にあるセラミック材料中の自発分極は、グレイン・
スケールで見たとき、グレインやドメインの構造によっ
て、あらゆる方向を向いており、これら自発分極の方向
が互いに相殺されるためである。
そこで、電歪セラミック材料体を、前述したようなア
クチュエータとして用いる場合には、予め高電界を印加
し、分極方向を一方向に揃えるための分極操作を実施し
なければならない。
[発明が解決しようとする問題点] しかしながら、通常の分極操作を行なった場合、電歪
セラミック材料体に与えられる分極の態様は、当該材料
全体として実質的に一様である。したがって、このよう
な電歪セラミック材料体に駆動電圧を印加しても、一定
の方向に延び縮みする振動しか生じない。すなわち、1
個の電歪セラミック材料体単独では、これを屈曲させる
ことができない。そのため、前述したような屈曲モード
の変形を行なうアクチュエータを構成する場合には、必
ず、電歪セラミック材料体に対して、金属板または別の
電歪セラミック材料体および金属板を組合わせたユニモ
ルフ構造またはバイモルフ構造としなければならない。
このように、従来のユニモルフ構造またはバイモルフ
構造のアクチュエータは、必ず、セラミック材料と金属
との接着を伴う。そして、この接着が起因して、次のよ
うな問題点を引き起こしている。
まず、金属とセラミック材料との熱膨張率の差のた
め、温度変化のみによって、変形を生じさせることがあ
る。このような変形は、駆動用の電圧の印加とは無関係
に生じるものであるので、変形量に対する精度の低下を
招くことになる。
また、屈曲モードの変形を生じさせている間、接着層
付近に応力が集中し、これによって、電歪セラミック材
料体に割れを発生させたり、金属板と電歪セラミック材
料体との間で剥離を生じさせたりすることがある。
また、1個のアクチュエータについての接着部分にお
ける接着強度ばかりでなく、複数個のアクチュエータ相
互間における全体としての接着強度も均一にすることは
困難である。そのため、機械的強度が極端に小さいアク
チュエータが得られたり、変位量が極端に小さいアクチ
ュエータが得られたりすることがある。このように、特
性のばらつきが大きく現われると、実際にアクチュエー
タを使用する場面において、予め特性を個々に把握しな
ければならず、その使用にあたっての予備的操作に対し
て煩雑さを招いている。
また、接着に用いる接着剤の有する温度特性により、
アクチュエータの特性も変化する。特に、アクチュエー
タの使用上限温度が接着剤の特性によって決まってしま
い、アクチュエータの使用範囲を限定する結果も招いて
いる。
なお、前述したバイモルフ構造のアクチュエータと実
質的に同様の原理で作動するアクチュエータとして、内
部電極を形成した上で一体焼結されたセラミック材料か
らなるものも提案されている。しかしながら、この場合
には、内部電極として、セラミックの焼成温度に耐え得
る貴金属を用いなければならず、このことが、コスト上
昇を招くことになる。
そこで、この発明は、コスト上昇を招くことがないば
かりでなく、機械的にも熱的にも信頼性が高く、アクチ
ュエータとしての使用に適した、電歪セラミック材料体
を提供しようとするものである。
また、この発明は、上述したような要望を満たし得る
電歪セラミック材料体を有利に得るための分極操作方法
を提供しようとするものである。
[問題点を解決するための手段] この発明に係る電歪セラミック材料体は、厚み方向に
所定の距離を隔てながら互いに逆方向に向く1対の主面
を備え、全体として現われる分極の方向は前記主面の延
びる方向と実質的に平行に向くようにされるとともに、
一体焼結されたセラミックス材料からなるものである。
このような電歪セラミック材料体は、駆動用の電圧が印
加されたとき、それ自身で、縦効果の屈曲モードの変形
を生じさせるものであるが、このような屈曲モードの変
形を可能にするため、当該電歪セラミック材料体は、そ
の少なくとも一部において前記厚み方向に見たとき、全
体としての分極配向の度合および全体としての分極方向
の少なくとも一方が、前記厚み方向を分割する第1およ
び第2の領域において互いに異ならされている。
上述したような一体焼結されたセラミック材料からな
る電歪セラミック材料体において、その分極の態様を、
厚み方向を分割する第1および第2の領域において互い
に異ならさせるための分極操作方法としては、電歪セラ
ミック材料体に対して与えられる温度条件によって分極
容易性が異なる性質を利用する第1の方法と、一旦分極
処理された電歪セラミック材料体に対して、キュリー点
以上の高温を与えれば脱分極される性質を利用する第2
の方法とがある。
第1および第2の方法のいずれにおいても、厚み方向
に所定の距離を隔てながら互いに逆方向に向く1対の主
面を備え、かつ分極操作により電歪効果が付与される一
体焼結されたセラミック材料からなる電歪セラミック材
料体が用意されることは共通している。
第1の方法では、次に、前記電歪セラミック材料体の
少なくとも一部において、前記厚み方向を分割する第1
および第2の領域のうち第1の領域に対して、第1の領
域が第2の領域より高温となる温度差を与えながら、第
1の電界を前記主面の延びる方向に印加し、それによっ
て、前記第1の領域の全体としての分極配向の度合およ
び全体としての分極方向の少なくとも一方を前記第2の
領域とは異なるように変化させるステップが実施され
る。
この第1の方法において、前記第1の電界を印加すべ
き前記電歪セラミック材料体としては、次の2種類を含
む可能性がある。その第1は、第1の電界を印加するス
テップを実施する前の段階では、特定の分極方向を有し
ていない電歪セラミック材料体である。この場合、好ま
しくは、第2の領域が第1の領域より高温となる温度差
を与えながら、前記第1の電界とは異なる方向であって
前記主面の延びる方向に向く第2の電界を第2の領域に
与えるステップがさらに実施される。他方、前述した第
1の電界を印加すべき電歪セラミック材料体の第2の種
類は、前記少なくとも一部において、前記厚み方向全体
にわたり、前記第1の電界とは異なる方向であって前記
主面の延びる方向に向く第2の電界が前もって印加され
ており、それによって、前記第2の電界が印加された部
分全体としての分極方向が前記主面の延びる方向に既に
向けられているものである。
この発明に係る第2の方法では、前述した電歪セラミ
ック材料体を対象として、 (1) 前記電歪セラミック材料体の少なくとも一部で
あって前記厚み方向全体にわたり、前記主面の延びる方
向に向く電界を印加し、それによって、前記電界が印加
された部分全体としての分極方向を前記主面の延びる方
向における一方向に向けるステップと、 (2) 前記全体としての分極方向が前記一方向に向け
られた部分を有する前記電歪セラミック材料体の、前記
厚み方向を分割する第1および第2の領域のうち、前記
第1の領域にのみキュリー点以上の高温を与え、それに
よって、前記第1の領域の全体としての分極配向の度合
を変化させるステップと、 を備えることが特徴である。
[発明の作用および効果] この発明に係る電歪セラミック材料体によれば、主面
の延びる方向と実質的に平行に、全体として現われる分
極方向が向けられながら、その厚み方向を分割する第1
および第2の領域において、全体としての分極配向の度
合および全体としての分極方向、といった全体としての
分極の態様が互いに異ならされている。したがって、こ
のような電歪セラミック材料体に対して、分極方向に向
く所定の駆動用の電圧を加えたとき、伸縮の度合または
方向を第1および第2の領域において互いに異ならせる
ことができる。そのため、当該電歪セラミック材料体を
単独で用いるだけで屈曲モードの変形を行なうアクチュ
エータを構成することができる。
このようにアクチュエータを単独で構成できる電歪セ
ラミック材料体は、接着部分を有しないため、接着剤の
使用または接着層の存在に起因する従来の問題点をすべ
て解消することができる。すなわち、駆動用電圧を印加
しないときにも温度変化により変形を起こすという不都
合が解消される。また、変形を生じさせるときに接着層
付近に応力が集中し、それによって、電歪セラミック材
料体に割れを発生させたり、金属板と電歪セラミック材
料体との間で剥離を生じたりする、といった問題点も解
消される。さらに、電歪セラミック材料体は、一体焼結
されるため、機械的強度が高められ、また、そのような
機械的強度のばらつきも低減させることができる。ま
た、変形または変位特性においても、製品間におけるば
らつきを抑えることができるとともに、変形または変位
特性の経時的変化あるいは変形または変位の繰返しによ
るこのような特性の劣化も小さくすることができる。ま
た、使用温度範囲が、接着剤等によって限定されること
がなくなるので、より広い範囲、すなわちより高温にま
で使用温度範囲を拡げることができる。
したがって、この発明に係る電歪セラミック材料体
を、アクチュエータとして用いた場合、高い信頼性を得
ることができる。
また、この発明に係る電歪セラミック材料体の分極操
作方法によれば、内部電極を用いることなく、一体焼結
されたセラミック材料からなる電歪セラミック材料体に
おける、その厚み方向を分割する第1および第2の領域
において、各々の全体としての分極態様を互いに異なら
せることができる。したがって、内部電極の形成に起因
するコスト上昇がなく、また、このように特殊な分極態
様をもつ電歪セラミック材料体を能率的に得ることがで
きる。
なお、この発明に係る分極操作方法において、互いに
異なる方向に向く第1および第2の電界を加え、結果と
して、電歪セラミック材料体の厚み方向を分割する第1
および第2の領域での分極方向が互いに異なっている場
合、とりわけ、第1および第2の領域における分極方向
が互いに逆である場合には、このような電歪セラミック
材料体を用いて構成されたアクチュエータの、駆動用電
圧の大きさに対する変形または変位量を大きく得ること
ができる。
[実施例] 第1図ないし第5図を参照して、この発明に係る電歪
セラミック材料体およびその分極操作方法の一実施例に
ついて説明する。
まず、第2図に示すように、厚み方向に所定の距離を
隔てながら互いに逆方向に向く1対の主面1および2を
備える電歪セラミック材料体3が用意される。この電歪
セラミック材料体3は、後で説明する分極操作により電
歪効果が付与される性質を有する電歪セラミック材料か
ら一体焼結されて得られたものである。電歪セラミック
材料体3は、この段階では、自発分極の方向は全くラン
ダムである。
次に、第3図に示すように、電歪セラミック材料体3
の厚み方向を分割する第1および第2の領域4および5
のうち、第1の領域4において、複数個の点線の矢印6
が示すように、分極方向が主面1,2の延びる方向と実質
的に平行に向くように、分極処理が施される。このよう
な分極処理は、たとえば第4図に概略的に示すような装
置をもって実施される。
第4図において、分極処理装置7は、加熱ベース8を
備える。加熱ベース8には、図示しないが、ヒータまた
は加熱媒体を通すパイプ、等が内蔵されている。加熱ベ
ース8上には、電歪セラミック材料体3が、たとえば、
その第1の領域4を下側にした状態で置かれる。このよ
うな電歪セラミック材料体3の両側には、たとえば導電
性ゴムからなる接触片9および10がそれぞれ配置され
る。接触片9および10は、電歪セラミック材料体3の半
分の厚みを有し、したがって、第1の領域4の相対向す
る各端面にのみ接触する。たとえば、電歪セラミック材
料体3の厚みが100〜200μmとすれば、接触片9および
10の厚みは50〜100μmに選ばれる。接触片9および10
の各々の外側に向く端面に接触するように、分極用端子
11および12がそれぞれ配置される。分極用端子11および
12は、互いに近づくようにばね手段13および14によって
付勢されており、これによって、分極用端子11、接触片
9、電歪セラミック材料体3、接触片10および分極用端
子12の各々の間での接触が確実に保たれるようにされ
る。
第4図に示した状態において、電歪セラミック材料体
3の第1の領域4は、加熱ベース8により、80〜150℃
の温度に加熱されながら、第2の領域5は冷却される。
このように、電歪セラミック材料体10を厚み方向に見た
とき、第1の領域4が第2の領域5より高温となる温度
差が与えられる。そして、この状態を保持しながら、分
極用端子11および12間に電圧が印加され、これによっ
て、接触片9および10を介して、実質的に第1の領域4
のみに電界が印加される。この電界は、主面1,2の延び
る方向と実質的に平行に向いている。この電界によっ
て、第1の領域4において、矢印6で示した方向の分極
処理が施される。このとき、第2の領域5にあっては、
冷却されているので、たとえ接触片9および10間に印加
された電圧の影響を受けたとしても、特定の方向の分極
を生じることが防止される。このようにして、第3図に
示したように、第1の領域4のみが矢印6で示す方向に
分極された電歪セラミック材料体3が得られる。
次に、第1図に示すように、電歪セラミック材料体3
の第2の領域5における分極処理が実施される。第2の
領域5においては、全体としての分極方向は、点線の矢
印15で示すように、第1の領域4と平行であるが逆向き
とされている。このように、第2の領域5における分極
処理を施すため、再び第4図に示した分極処理装置7が
用いられる。すなわち、第4図において、電歪セラミッ
ク材料体3は、180度反転した状態で配置され、接触片
9および10が第2の領域5に接触する状態としながら、
分極用端子11および12から電界が印加される。このと
き、この電界は、前述した第1の領域4に与えられた電
界とは逆の方向に向くことになる。したがって、第1図
に示したように、第1および第2の領域4および5が互
いに平行であるが逆向きの分極方向を示す電歪セラミッ
ク材料体3が得られる。
第5図には、第1図のように得られた電歪セラミック
材料体3に1対の駆動用電極16および17が付与された状
態が示されている。1対の駆動用電極16および17間に駆
動用電圧を印加したとき、第1および第2の領域4およ
び5の伸縮態様が逆になるため、当該電歪セラミック材
料体3には縦効果に基づく屈曲モードの変形が生じる。
なお、第4図に示すように、電歪セラミック材料体3
において、冷却される側の領域、たとえば第2の領域5
の分極態様に変化を生じさせないまま、加熱される側に
ある領域、たとえば第1の領域4に対してのみ分極処理
を施すことを可能にするための条件としては、分極用端
子11および12間に印加される電界強度、第1の領域4と
第2の領域5との間の温度差、分極操作時間、等がパラ
メータとなり、また、電歪セラミック材料体3を構成す
るセラミック材料によって左右される。
次に、この発明の他の実施例について説明する。
まず、電歪セラミック材料体3における第1および第
2の領域4および5における分極態様について言えば、
第1図に示すように、互いに逆向きの分極方向6および
15を有していることが、屈曲モードの変形量を大きくで
きる点で有利である。しかしながら、たとえば、第3図
に示すように、第1の領域4においてのみ、全体として
電歪効果を示すように特定の分極方向6を有しており、
第2の領域5においては、特定の分極方向を有さず、し
たがって全体として電歪効果を示さないものであって
も、変形量は少ないものの、たとえばアクチュエータと
しての使用が可能である。したがって、第3図に示した
電歪セラミック材料体3もまた、この発明の実施例であ
ると言える。
第3図に示した電歪セラミック材料体3から派生し
て、次のような実施例もこの発明の範囲内に入るもので
ある。たとえば、第3図において、第2の領域5におい
ては、特定の方向に全体として分極されているものの、
第1の領域4に比べて、相対的に分極配向の度合が小さ
くされた実施例も可能である。この場合、第2の領域5
における分極方向は、分極方向6と同じ方向であっても
逆の方向であってもよい。
上述したような第3図に示した実施例から派生して得
られる他の実施例のうち、第1の領域4と第2の領域5
との各分極態様において、分極方向が同じでありながら
分極配向の度合に差がある実施例は、たとえば、第6図
に示した装置を用いて得ることができる。第6図におい
て、電歪セラミック材料体3aは、加熱ヘッド18と冷却ヘ
ッド19とによって挾まれた状態とされている。このよう
に、両ヘッド18および19間に挾まれる電歪セラミック材
料体3aには、前もって、次のような処理が施されてい
る。すなわち、電歪セラミック材料体3aの厚み方向全体
にわたり、主面1a,2aの延びる方向に向く電界を印加
し、それによって、分極方向を主面1a,2aの延びる方向
における一方向に向けるような処理が施されている。な
お、この分極方向は、第6図の矢印20に対応している。
このように処理された電歪セラミック材料体3aが、加熱
ヘッド18と冷却ヘッド19との間に挾まれた状態とされ
る。この状態において、電歪セラミック材料体3aの厚み
方向を分割する第1および第2の領域4aおよび5aのう
ち、第1の領域4aにのみキュリー点以上の高温が与えら
れる。これによって、第1の領域4aにおいてのみ脱分極
が生じ、第1の領域4aの全体としての分極配向の度合が
変化する。この第1の領域4aに対する脱分極操作におけ
る、加熱温度または時間等を制御することにより、脱分
極を部分的に生じさせたり、完全に脱分極したりするこ
とができる。前者の場合には、第1および第2の領域4a
および5aにおける分極方向が同じであるが、分極配向の
度合が第1の領域4aにおいて第2の領域5aにおけるより
も小さい電歪セラミック材料体3aが得られる。後者の場
合には、第1の領域4aにおいては電歪効果を示さず、第
2の領域5aにおいてのみに矢印20で示す分極方向をもつ
電歪効果を示す電歪セラミック材料体3aが得られる。
また、第1図に示した電歪セラミック材料体3のよう
に、第1の領域4と第2の領域5とにおいて、それぞれ
矢印6および15で示すように、互いに逆の分極方向を示
すものは、前述した第2図ないし第4図を参照しながら
説明した以外の方法によっても得ることができる。すな
わち、第4図を参照しながら説明すると。分極処理装置
7に適用される電歪セラミック材料体3として、厚み方
向全体にわたり、矢印6とは逆の方向に向く分極方向を
示すように分極処理されたものが用いられる。言い換え
ると、電歪セラミック材料体3は、分極処理装置7に適
用される前にあっては、第1の領域4においても第2の
領域5においても、全体として矢印6とは逆の分極方向
を示すように処理されている。このような電歪セラミッ
ク材料体3を、第4図に示すような態様で分極処理装置
7に適用すると、第1の領域4においてのみ矢印6で示
すように分極方向が逆転し、第2の領域5においては、
前に与えられていた分極態様が維持される。したがっ
て、第1図に示すような分極態様を有する電歪セラミッ
ク材料体3を得ることができる。なお、この場合、分極
処理時における電界強度、加熱温度、時間、等を制御す
ることにより、第1および第2の領域4および5におけ
るそれぞれの分極方向6および15を互いに逆にしながら
も、分極配向の度合を互いに異ならせることも可能であ
る。
なお、この発明において、電歪セラミック材料体の厚
み方向を分割する第1および第2の領域の双方に、特定
の分極方向が全体として現われる場合、前述したよう
に、各々の分極方向が平行であることには限定されな
い。たとえば、第7図に示すように、電歪セラミック材
料体21の厚み方向を分割する第1および第2の領域22お
よび23のそれぞれに現われる分極方向は、矢印24および
25で示すように、互いに直交する方向に向いていてもよ
い。要するに、この発明では、第1および第2の領域22
および23において、分極方向24および25が、主面27の延
びる方向に実質的に平行でありながら、互いに平行では
なく、単に互いに異ならされている実施例も包含するも
のである。
また、この発明に係る電歪セラミック材料体は、その
少なくとも一部において厚み方向に見たとき、全体とし
ての分極配向の度合および全体としての分極方向の少な
くとも一方が、厚み方向を分割する第1および第2の領
域において互いに異ならされていながら、全体として現
われる分極の方向が電歪セラミック材料体の主面の延び
る方向と実質的に平行に向くようにされていることが条
件であり、厚み方向と直交する方向すなわち主面の延び
る方向に関しては、分極態様が同一であってもどのよう
に変化していても、この発明の範囲を定める上では無関
係である。たとえば、電歪セラミック材料体の主面の延
びる方向における一部分をとらえたとき、そこにおいて
は、厚み方向を分割する第1および第2の領域において
分極態様が全く同一であってもよいことになる。
また、この発明で用いられる電歪効果を示すセラミッ
ク材料として、特に具体例を挙げなかったが、従来から
周知の電歪セラミック材料をこの発明に適用できること
はもちろんである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の一実施例となる電歪セラミック材
料体3を示す斜視図である。第2図は、第1図の電歪セ
ラミック材料体3を得るために用意される未だ分極処理
が施されていない電歪セラミック材料体3を示す斜視図
である。第3図は、第2図の電歪セラミック材料体3に
対して、第1の領域4においてのみ分極処理を施した状
態を示すとともに、この発明の他の実施例となる電歪セ
ラミック材料体3を示す斜視図である。第4図は、第3
に示した電歪セラミック材料体3を得るための分極処理
装置7を図解的に示す。第5図は、第1図に示した電歪
セラミック材料体3に駆動用電極16および17を形成した
状態を示す斜視図である。第6図は、この発明のさらに
他の実施例を説明するための図であって、電歪セラミッ
ク材料体3aの第1の領域4aに対して脱分極操作を実施し
ている状態を示す。第7図は、この発明のさらにに他の
実施例となる電歪セラミック材料体21を示す斜視図であ
る。 図において、1,1a,2,2a,26,27は主面、3,3a,21は電歪セ
ラミック材料体、4,4a,22は第1の領域、5,5a,23は第2
の領域、6,15,24,25は分極方向を示す矢印、7は分極処
理装置、8は加熱ベース、9,10は接触片、11,12は分極
用端子、18は加熱ヘッド、19は冷却ヘッドである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安藤 陽 京都府長岡京市天神2丁目26番10号 株 式会社村田製作所内 (72)発明者 植村 克博 京都府長岡京市天神2丁目26番10号 株 式会社村田製作所内

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】厚み方向に所定の距離を隔てながら互いに
    逆方向に向く1対の主面を備え、全体として現われる分
    極の方向は前記主面の延びる方向と実質的に平行に向く
    ようにされるとともに、一体焼結されたセラミック材料
    からなる、電歪セラミック材料体であって、 その少なくとも一部において前記厚み方向に見たとき、
    全体としての分極配向の度合および全体としての分極方
    向の少なくとも一方が、前記厚み方向を分割する第1お
    よび第2の領域において互いに異ならされていることを
    特徴とする、電歪セラミック材料体。
  2. 【請求項2】前記第1および第2の領域は、ともに、前
    記主面の延びる方向と実質的に平行に向く全体としての
    分極方向を有するとともに、各々の分極方向が、互いに
    平行であるが逆向きとされている、特許請求の範囲第1
    項記載の電歪セラミック材料体。
  3. 【請求項3】前記第1および第2の領域は、それぞれの
    全体としての分極配向の度合が互いに異ならされてい
    る、特許請求の範囲第1項記載の電歪セラミック材料
    体。
  4. 【請求項4】前記第1の領域は全体として電歪効果を示
    さず、他方、前記第2の領域は全体として電歪効果を示
    す、特許請求の範囲第3項記載の電歪セラミック材料
    体。
  5. 【請求項5】厚み方向に所定の距離を隔てながら互いに
    逆方向に向く1対の主面を備え、かつ分極操作により電
    歪効果が付与される一体焼結されたセラミック材料から
    なる電歪セラミック材料体に分極操作する方法であっ
    て、 前記電歪セラミック材料体の少なくとも一部において、
    前記厚み方向を分割する第1および第2の領域のうち第
    1の領域に対して、第1の領域が第2の領域より高温と
    なる温度差を与えながら、第1の電界を前記主面の延び
    る方向に印加し、それによって、前記第1の領域の全体
    としての分極配向の度合および全体としての分極方向の
    少なくとも一方を前記第2の領域とは異なるように変化
    させるステップを備える、電歪セラミック材料体の分極
    操作方法。
  6. 【請求項6】前記第1の電界を印加すべき前記電歪セラ
    ミック材料体は、前記第1の電界を印加するステップを
    実施する前の段階では、特定の分極方向を有さず、前記
    第1の電界の印加により、前記第1の領域に全体として
    の分極方向が現われるようにされる、特許請求の範囲第
    5項記載の電歪セラミック材料体の分極操作方法。
  7. 【請求項7】前記第2の領域が前記第1の領域より高温
    となる温度差を与えながら、前記第1の電界とは異なる
    方向であって前記主面の延びる方向に向く第2の電界を
    前記第2の領域に与えるステップをさらに備える、特許
    請求の範囲第5項または第6項記載の電歪セラミック材
    料体の分極操作方法。
  8. 【請求項8】前記第2の電界の方向は、前記第1の電界
    の方向とは逆である、特許請求の範囲第7項記載の電歪
    セラミック材料体の分極操作方法。
  9. 【請求項9】前記第1の電界を印加すべき前記電歪セラ
    ミック材料体には、前記少なくとも一部において、前記
    厚み方向全体にわたり、前記第1の電界とは異なる方向
    であって前記主面の延びる方向に向く第2の電界が前も
    って印加されており、それによって、前記第2の電界が
    印加された部分全体としての分極方向が前記主面の延び
    る方向に既に向けられている、特許請求の範囲第5項記
    載の電歪セラミック材料体の分極操作方法。
  10. 【請求項10】前記第2の電界の方向は、前記第1の電
    界の方向とは逆である、特許請求の範囲第9項記載の電
    歪セラミック材料体の分極操作方法。
  11. 【請求項11】厚み方向に所定の距離を隔てながら互い
    に逆方向に向く1対の主面を備え、かつ分極操作により
    電歪効果が付与される一体焼結されたセラミック材料か
    らなる電歪セラミック材料体に分極操作する方法であっ
    て、 前記電歪セラミック材料体の少なくとも一部であって前
    記厚み方向全体にわたり、前記主面の延びる方向に向く
    電界を印加し、それによって、前記電界が印加された部
    分全体としての分極方向を前記主面の延びる方向におけ
    る一方向に向け、 前記全体としての分極方向が前記一方向に向けられた部
    分を有する前記電歪セラミック材料体の、前記厚み方向
    を分割する第1および第2の領域のうち、前記第1の領
    域にのみキュリー点以上の高温を与え、それによって、
    前記第1の領域の全体としての分極配向の度合を変化さ
    せる、 各ステップを備える、電歪セラミック材料体の分極操作
    方法。
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