JP2671871B2 - 圧電トランスとその製造方法 - Google Patents
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Description
造方法に関し、特に、入力電圧印加用電極および出力電
圧取出し用電極が圧電体の表面に設けられた構造の昇圧
用圧電トランスとその圧電トランス製造時の分極処理の
方法に関わるものである。
状の圧電体が長手方向に駆動部、発電部の二つの部分に
分けられた構造となっている。昇圧は、駆動部に設けた
入力電圧印加用電極に交流電圧を加えて圧電体全体に長
手方向の縦振動を発生させ、その圧電体の縦振動に応じ
て発電部に生じる電圧を外部に取り出すことにより、行
われる。このような昇圧用圧電トランスは、例えばテレ
ビジョンの偏向装置や複写機の帯電装置などのような高
電圧を必要とする装置内の電源回路用の高圧発生用変圧
素子として、これまで一般に用いられていた巻線型の電
磁トランスに代って用いられて、電源回路の小型化に寄
与することが期待される。
であるローゼン型圧電トランスの構造を示す。図6を参
照して、この圧電トランスでは、長板状の圧電体1が長
手方向に関して、低インピーダンスの駆動部10と高イ
ンピーダンスの発電部20の二つの部分に区分されてい
る。駆動部10は外部から電圧を入力する部分であっ
て、その上・下両面にはそれぞれのほぼ全面(但し、圧
電体の周辺部を細く残して)に、平面状の電極31T,
31Bが設けられている。この駆動部10は、図6中に
太い矢印50で示すように、予め圧電体1の厚さ方向に
分極させられている。一方、発電部20は昇圧された電
圧を取り出すための部分であって、圧電体1の長手方向
に垂直な端面にだけ電極32が設けられている。この発
電部20は、図6中に太い矢印51で示すように、予め
圧電体1の長手方向に分極させられている。
側の一対の電極31T,31Bの間に外部から交流電圧
einを印加すると、圧電体の駆動部10側の部分が圧電
横効果31モードにより長手方向に振動する。この振動
は発電部20側に伝達され、圧電体1全体に長手方向の
縦振動が生じる。発電部20ではこの圧電体の縦振動に
応じて、圧電縦効果33モードにより、端面電極32と
駆動部側の電極31Bとの間に出力電圧eout が発生す
る。
例として、この出願発明の譲受人と同一譲受人による特
願平6ー174417号に記載された圧電トランスを示
す。図7を参照して、この圧電トランスでも、長板状の
圧電体1が長手方向に、駆動部11と発電部21の二つ
の部分に分れている。駆動部11は入力電圧を印加する
部分である。その上面には二つの櫛形電極33T,34
Tが、互いに一方の歯(電極指)が相手の電極指の間に
入り込んで噛合せとなるような形状で、形成されてい
る。駆動部11の下面には上面の電極33T,34Tと
同様な一対の電極33B,34Bが、それぞれ電極33
T,34Tに対応する位置に設けられている。この駆動
部11は、図7中に細い矢印52,53で示すように、
予め圧電体の長手方向に、一つごとに逆向きになるよう
に分極させられている。一方、発電部21は昇圧電圧を
取り出すための部分であって、その上面には圧電体の幅
方向に亘る細長い短冊状電極35Tが設けられている。
発電部21の下面にも、上面の電極35Tに対応する位
置に、同一形状の電極35Bが形成されている。この発
電部21は、図7中に太い矢印51で示すように、予め
圧電体1の長手方向に分極させられている。
21側の四つの電極のうち、電極33T,33Bを同電
位とし、又、電極34T,34Bを同電位にして、二つ
の外部端子2A,2B間に外部から交流電圧einを印加
すると、圧電体の駆動部11側の部分が圧電縦効果33
モードにより長手方向に振動する。この振動は発電部2
1側に伝達され、圧電体1全体に長手方向の縦振動が生
じる。発電部21ではその圧電体の縦振動に応じて、圧
電縦効果33モードにより、二つの電極35T,35B
と駆動部側の電極33T,33Bとの間に出力電圧e
out が発生する。尚、以上の動作説明から明かなよう
に、図7に示す圧電トランスでは、駆動部11および発
電部21の表面に設けられた六つの電極のうち、上面側
の三つ或いは下面側の三つの電極だけでも、昇圧を行う
ことができる。
示したローゼン型圧電トランスの欠点を改善したもので
ある。すなわち、図6に示す圧電トランスでは、発電部
からの電圧取出しは、端面の電極32で行われる。この
端面電極32には必然的に、外部端子3Aとの接続部分
を設けなければならない。ところが、この端面電極32
の圧電体上の位置は振動の腹に当るところであり、振幅
が最大の位置である。このことから、外部端子3Aと端
面電極32との接続の信頼性が必ずしも確保されている
とは言えない。これに対し、図7に示す圧電トランスで
は、外部端子3Aと発電部の電極35T,35Bとの接
続位置は、圧電体の長手方向のどの位置ででも行うこと
ができる。つまり、圧電体の振動の節の位置で接続でき
る。
体の振動は、駆動部10での圧電横振動31モードによ
って発生する。ところが圧電効果による発生ひずみ量
は、一般に、横効果によるものよりも縦効果によるひず
み量の方が大きい。すなわち、図7に示す圧電トランス
の方が、より大きな昇圧比を得るのに適している。しか
も、図7に示す圧電トランスでは、半導体集積回路ある
いは膜集積回路において近年向上の著しい微細電極形成
技術を用いれは、櫛の歯(電極指)間の間隔を狭めてそ
の間の電界を高めることが容易である。これに対し、図
6に示す圧電トランスにおいて電界を高めるには、圧電
体の厚さを薄くしなければならないが、このような薄膜
化はトランスの機械的強度低下などの点で、容易ではな
い。このように、図7に示す圧電トランスは、外部端子
と電極との接続の信頼性、昇圧比の点で、図6に示す圧
電トランスよりも優れている。
ランスには必ず駆動部と発電部とが必要であり、且つ、
それらの部分は必ず、予め圧電体の長手方向または厚さ
方向に分極させられている。その分極は製造過程の分極
処理工程で、圧電体に分極すべき方向の電界を加え双極
子モーメントを生じさせることによって行われる。その
場合、双極子モーメントの発生の大きさつまり分極の程
度は加えた電界の強さと温度に依存し、電界が強いほど
分極が十分に行われる。又、温度が高ければ加えるべき
電界が低く済むことが知られている。そこで、圧電トラ
ンスに限らず例えば圧電アクチュエータのような、圧電
効果を利用する素子の製造における分極処理には、加熱
と電界印加とを併用して比較的低電界で分極させること
が、一般的に行われている。高電界での分極処理による
素子の特性劣化、作業時の危険性や放電防止の困難さな
どを避けるためである。又、素子を加熱するための媒体
としては、シリコーンオイルのような絶縁油が多用され
ている。絶縁油は絶縁性に優れていることから高電圧を
必要とする分極処理に適しており、また150℃程度の
高温が比較的容易に得られるからである。例えば特開昭
64ー14981号公報に開示されたモノモルフ素子で
は、100℃のシリコーンオイル中で、距離200μm
の電極間に400V(2kV/mm)の電圧(電界)を
加えて分極処理を行っている。前述した特願平6ー17
4417号による圧電トランスでは駆動部および発電部
の分極処理を、100℃の絶縁油中で4kV/mmの電
界を加えことにより行っている。更に、この出願発明の
譲受人と同一譲受人による特願平4ー27040号に記
載された圧電トランスでは、150℃の絶縁油中で駆動
部および発電部に1.5kV/mmの直流電界を加えて
分極処理している。
理は、圧電体のキュリー点やトランスの構造などにもよ
るが、およそ150℃程度に加熱した絶縁油中で数kV
/mmの電界を加え、且つ、駆動部および発電部とも同
一の条件で行うことが一般的である。その場合、電界の
印加は、通常、駆動部に設けられた入力電圧印加用電極
および発電部に設けられた出力電圧取出し用電極を利用
して行われる。例えば図6に示す圧電トランスにおいて
駆動部10を分極処理するには、上下二つの電極31
T,31B間に直流電圧を加える。発電部20の分極処
理のときは、駆動部側の二つの電極31T,31Bを同
電位にし、それら同電位の二つの電極と発電部側の端面
電極32との間に直流電圧を加える。又、図7に示す圧
電トランスにおいて発電部21を分極処理するときは、
駆動部側の上下四つの電極のうち発電部に近い二つの電
極33T,33Bを接続して同電位にし、又、発電部側
の上下二つの電極35T,35Bを同電位にする。そし
て、それぞれ同電位にした電極33T,33Bと電極3
5T,35Bとの間に直流電圧を加える。又、駆動部1
1を分極処理するときは、上記特開昭64ー14981
号公報に開示されたモノモルフ素子における櫛形電極部
分の分極処理と同様な方法で行う。すなわち、二つの電
極33T,33Bを同電位にし、他の二つの電極34
T,34Bを同電位にし、それぞれ同電位にした電極3
3T,33Bと電極34T,34Bとの間に直流電圧を
加える。
理方法に基づいて製造した圧電トランスでは、これを動
作させたとき圧電体にクラックが発生し易く、甚だしい
場合は破壊に至ることがある。又、特に図7に示す構造
の圧電トランスでは、十分な昇圧比が得られないという
問題が起る。以下に、図7に示す圧電トランスを例にと
って、その説明を行う。
述べる。図7に示す圧電トランスでは昇圧比を大きくす
るために、通常、発電部の電極35T(B)と駆動部の
電極33T(B)との電極間距離を、駆動部の電極33
T(B)と電極34T(B)との間の距離に比べて長く
設定する。駆動部11では低い入力電圧で大きなひずみ
を発生させるために、電極間距離を狭めて電界を高め、
一方、発電部21では高出力電圧を得るためるために、
圧電体のひずみ量つまり発生部21の長さを大きくする
必要があるからである。その結果、発電部21の分極を
飽和させるためには、駆動部側の電極33T(B)と発
電部側の電極35T(B)との間に十分高い電圧を加え
なければならないことになる。
に入力電圧印加用電極および出力電圧取出し用電極を形
成した構造の圧電トランスでは、圧電体のエッジ部での
電界集中による異常放電を避けるため、図7中に破線の
丸印で示すように、各電極を圧電体の縁面から多少引き
退げて内側に形成する。その場合、駆動部側の電極33
T(B)と発電部側の電極35T(B)との間に電圧を
印加すると、それら二つの電極が対向している部分は電
界が加わって圧電縦効果により長手方向にひずみを発生
するのに対し、図7中に破線の長円で囲った部分にはひ
ずみが生じないことになる。その結果、上記のひずみ発
生部分とひずみ非発生部分との境界に、ひずみ量に応じ
た大きな応力が発生することになる。そして、その応力
が大きいときは、圧電体に亀裂やクラックが発生するの
であるが、応力の大きさは、発電部21での発生ひずみ
量、つまり電極33T(B)と電極35T(B)との間
の電圧に依存する。従って、発電部21の分極処理時に
電極33T(B)と電極35T(B)と間に印加できる
直流電圧の高さには、クラック発生の観点から、制限が
加わることになる。
飽和させるために必要な電圧と、圧電体の破壊防止のた
めに加えられる電圧への制限との間の乖離を解消するに
は、前述したように、分極処理時の温度を高温にして電
圧を低下させることが有効である。しかしながら、絶縁
油を用いて加熱する従来の分極処理方法では、絶縁油の
加熱限界がたかだか200℃程度であることから、分極
処理の電圧を十分低下させることができない。従って、
圧電体のクラック発生の可能性が依然として残る、又
は、分極を十分飽和させることができないことになる。
電トランスにおける昇圧比について述べる。この構造の
圧電トランスの場合、駆動部11で必要な振動モードは
前述したように、電気機械結合係数k33を介した圧電縦
効果33モードである。ここで、駆動部11の分極処理
に際して電極33T(B)と電極34T(B)との間に
直流電圧を印加するという従来の分極方法では、分極に
よる電極指間の電界分布は、図8に示すような円弧状に
なる。このような円弧状の電界分布の場合、各電極指の
間の領域(一例として、図8中に、電極指40T3と電極
指40T4との間に破線の丸印61で囲って示す)では圧
電縦効果33モードが優勢であるが、電極指40T3の下
部に破線の丸印62で囲った領域では、圧電横効果31
モードが優勢である。これは、領域61では長手方向の
電界成分が大きく厚さ方向の電界成分は小いのに対し、
領域62では長手方向の電界成分に比べて厚さ方向の電
界成分が大きくなるからである。従って、櫛形電極を持
つ圧電トランスでは、圧電縦効果33モードが優勢な領
域61と圧電横効果31モードが優勢な領域62とが、
交互に存在していることになる。ところが、圧電縦効果
33モードによる振動と圧電横効果31モードによる振
動とは、逆位相である。すなわち、例えば、駆動電界が
加わって、圧電縦効果33モードが優勢な領域61では
圧電体が長手方向に延びようとするとき、これに隣接す
る圧電横効果31モードが優勢な領域62では圧電体が
長手方向に縮もうとする。その結果、本来昇圧に寄与す
る圧電縦効果33モードの振動が阻害されることにな
り、十分な昇圧比が得られなくなるのである。
よび出力電圧取出し用電極が圧電体の表面に設けられた
構造の圧電トランスを製造する方法であって、発電部の
分極処理に際して、圧電体にクラックなどを発生させる
ことなしに、分極を飽和させることのできる製造方法を
提供することを目的とするものである。
印加用電極として櫛形電極を用いた圧電トランスを製造
する方法であって、圧電横効果31モードの影響のな
い、昇圧比の大なる圧電トランスを製造する方法を提供
することである。
した構造の圧電トランスを提供することである。
製造方法は、長板状圧電体を長手方向に亘って駆動部及
び発電部の二部分に区分し、駆動部には入力電圧印加用
の一対の電極を設け、発電部には前記駆動部の一対の電
極の一方と対となって出力電圧を取り出すための電極を
設けて成る圧電トランスを製造する方法であって、駆動
部および発電部を分極処理する工程を含む圧電トランス
の製造方法において、前記駆動部及び発電部の分極処理
を、初めに発電部を含む部分を高温度、低電界で前記圧
電体の長手方向に分極させる第1の分極処理工程と、次
いで駆動部を含む部分を前記第1の分極処理工程におけ
るよりも低温度、高電界で分極させる第2の分極処理工
程の二段階で行うことを特徴とする。
長手方向に亘って駆動部及び発電部の二部分に区分さ
れ、発電部は、少くとも一方の主面上に圧電体の幅方向
に延びる短冊状の出力電圧取出し用電極を備えると共
に、前記圧電体の長手方向に分極されており、駆動部
は、少くとも一方の主面上に前記圧電体の幅方向に延び
る短冊状電極指が複数長手方向に配置されそれら複数の
電極指が一つおきに同電位になるように電気的に接続さ
れた構造の入力電圧印加用電極を備え、前記圧電体の長
手方向に垂直な端面には端面電極を備えると共に、前記
複数の電極指の間が一つ毎に互い違いに、前記圧電体の
長手方向逆向きに分極されている構造の圧電トランスで
ある。
を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施例に
よる圧電トランスの模式的斜視図である。本実施例は、
図6に示すローゼン型圧電トランスの基本構造に改良を
加え、発電部における出力電圧取出し用電極と外部端子
との接続の信頼性を向上させたものである。すなわち、
図1を参照して、本実施例では、長板状の圧電セラミッ
ク板1が駆動部10と発電部21の二つの部分に区分さ
れている。そして、駆動部10にはその上・下両面に平
面状電極31T,31Bが設けられている。これら二つ
の電極は互いに絶縁状態にあり、それぞれ電極31Tは
外部端子2Aに、電極31Bは外部端子2Bに接続され
ている。一方、発電部21にはその上・下両面に、圧電
セラミック板の幅方向に亘る細長い短冊状電極35T,
35Bが設けられている。これら発電部側の二つの電極
は互いに同電位になるように、共通の外部端子3Aに接
続されている。ここで、発電部の電極35T,35B
の、圧電セラミック板1の長手方向上の位置は、この圧
電トランスを動作させたときの縦振動の節に当る位置で
ある。従って、この圧電トランスが動作するとき、電極
35T,35Bと外部端子3Aとの接続点での振幅はゼ
ロであり、図6に示す従来のローゼン型のものよりも接
続の信頼性が高い。
A,2B間に外部から交流電圧を印加する。駆動部10
ではこの入力交流電圧により、電気機械結合係数k31を
介する圧電横効果31モードに基づいて、長手方向のひ
ずみが繰り返し発生する。この駆動部10の長手方向の
振動が発電部21に伝達され、その結果、圧電セラミッ
ク板1全体に長手方向の縦振動が発生する。発電部21
ではこの圧電セラミック板1の縦振動により、駆動部側
の電極31Bと発電部側の電極35T(B)との間つま
り二つの外部端子3B,3A間に、電気機械結合係数k
33を介する圧電縦効果33モードに基づいて電圧が発生
する。
する。先ず、PZT系の圧電性セラミック材料(商品
名;NEPEC8。(株)トーキン)を出発材料とし、
長さ28.0mm、幅10mm、厚さ1.0mmの圧電
セラミック板1を作製した。更に、駆動部側の平面状電
極31T,31B及び発電部側の短冊状電極35T,3
5Bを形成した。電極は、導電性の銀ペーストまたは銀
・パラジウムペーストを用いたスクリーン印刷によりパ
ターン形成し、焼成して形成した。
方向に分極処理した。先ず、発電部側の上下二つの電極
35T,35Bを導電性治具で挾持して短絡し、同様
に、駆動部側の上下二つの電極31T,31Bを治具で
挾持して短絡した後、圧電セラミック板を温度300〜
350℃の空気中に置き、二つの挾持治具間に、電界が
0.5〜0.7kV/mmとなるように直流電圧を加え
た。そして、電圧を加えた状態で温度を100℃以下に
まで下げた後、印加電圧を切った。発電部21はこの分
極処理により、図1中に太い矢印51で示す長手方向に
分極する。このような、分極すべき部分に高温状態で電
界を加え、その電界印加状態で降温する分極方法は、一
般に、電界冷却法と呼ばれている。
イル中で厚さ方向に分極処理した。先ず、発電部の分極
処理時に用いた電極挾持治具を取り外した後、駆動部側
の電極31T,31Bそれぞれに金属製プローブを押し
付け、圧電セラミック板を温度100〜200℃のシリ
コーンオイル中に入れた。そして、上述の二つのプロー
ブ間に、電界が2〜3kV/mmとなるように直流電圧
を印加した。駆動部21はこの分極処理で、図1中に太
い矢印50で示す厚さ方向に分極する。このような、分
極すべき部分に高温で電界を加え温度を保持する分極方
法は、一般に、高温分極法と呼ばれている。
トランスについて小振動特性を測定したところ、電気機
械結合係数k31は18.5〜19.5%、電気機械結合
係数k33は38.5〜39.5%であり、飽和分極時の
電気機械結合係数(k31=20%、k33=40%)とほ
ぼ一致した。又、本実施例の圧電トランス100個を連
続で240時間駆動したが、特性に異常が認められたも
のは1個もなかった。一方、本実施例と比較するため、
本実施例と同様にして電極31T,31B,35T,3
5Bを形成した圧電セラミック板を用い、発電部21お
よび駆動部10の分極処理温度を下げた比較例1の圧電
トランスを作製した。すなわち、発電部21を、温度3
00℃以下の空気中、電界0.5〜0.7kV/mmの
条件で分極処理し、駆動部10を、温度100℃以下の
シリコーンオイル中、電界2〜3kV/mmの条件で分
極処理した。この比較例1の圧電トランスの小振動特性
を測定したところ、電気機械結合係数k31は最大で16
%、電気機械結合係数k33は最大で36%であり、飽和
分極時の電気機械結合係数には及ばず、十分な昇圧比が
得られなかった。又、分極を飽和させるために比較例1
におけると同じ温度条件で印加する電界を高くし、空気
中においては電界0.7〜1.0kV/mm、シリコー
ンオイル中においては電界3.0〜3.5kV/mmで
分極処理した比較例2の圧電トランスについて小振動特
性を測定したところ、電気機械結合係数k31,k33とも
ほぼ飽和分極並みの値となった。しかし、この比較例2
の圧電トランス100個を連続で240時間駆動したと
ころ、約10%にクラックが発生し、特性に異常が認め
られた。
いた分極処理では、分極治具の変形や絶縁劣化、電極間
の異常放電など、実作業上に障害が生じた。又、温度2
00℃以上のシリコーンオイルを用いた分極処理では、
オイルの熱分解による絶縁劣化が起り、実用性に問題が
生じた。従って、空気中における分極処理は300〜3
50℃程度、シリコーンオイル中での分極処理は100
〜200℃程度の範囲で行うのが、実施の困難性に対す
る効果の比が高く、実用的であろう。
35T,35Bを発電部21の上・下両面に設けた構造
の圧電トランスについて説明したが、どちらか一方の電
極だけでも本実施例と同様の効果が得られること、更に
は、図6に示すような、出力電圧取出し用電極を発電部
の端面に設けた構造のローゼン型圧電トランスであって
も本発明の作用効果が何ら損われないことは、これまで
の説明から明かであろう。
明する。図2は、本発明の第2の実施例の完成後の模式
的斜視である。又、図3および図4は製造中の本実施例
の状態を示す斜視図である。本実施例は、図7に示す圧
電トランスと同様に、駆動部が圧電縦効果33モードで
圧電体を長手方向に縦振動させ、発電部がその縦振動に
応じて、圧電縦効果33モードに基づいて電圧を発生す
る構造の圧電トランスである。すなわち、図2を参照し
て、本実施例は、圧電セラミック板1が、駆動部12と
発電部21とに区分されており、その駆動部12の長手
方向に垂直な端面に端面電極32が設けられている点
が、図7に示す圧電トランスと、外見上、異っている。
この新しく設けられた電極32は製造工程の分極処理の
際にだけ使用されるものであり、従って、外部端子には
接続されていない。又、後述するように、駆動部側の二
つの櫛形電極33T,34Tの電極指間の、分極による
電界分布(同様に、櫛形電極33B,34Bの電極指間
の分極による電界分布)が、図7に示す圧電トランスに
おけるものとは異っている。
電トランスにおけると同様に、駆動部側の二つの外部端
子2A,2Bの間に交流電圧を印加する。これにより駆
動部12では、電気機械結合係数k33を介する圧電縦効
果33モードに基づいて、長手方向のひずみが繰り返し
発生する。この長手方向のひずみは発電部21に伝達さ
れ、その結果、圧電セラミック板1全体に長手方向の縦
振動が発生する。発電部21では、この圧電セラミック
板1の縦振動により、電気機械結合係数k33を介する圧
電縦効果33モードに基づいて、駆動部側の電極33T
(B)と発電部側の電極35T(B)との間、つまり二
つの外部端子3B,3Aの間に電圧が発生する。
する。先ず、第1の実施例におけると同様に、圧電材料
NEPEC8を用いて長板状の圧電セラミック板1を作
製した。長さ28.0mm、幅10.0mm、厚さ1.
0mmである。
銀・パラジウムペーストを用い駆動部12の上・下両面
に、櫛形電極の構成要素のうちの電極指40T1〜4
0T6,40B1〜40B6だけをスクリーン印刷した。又、
発電部21の上・下両面に短冊状電極35T,35Bを
スクリーン印刷した。更に、駆動部側の端面電極32
を、同様の導電性ペーストを用いてローラ転写で形成し
た。そして、それらパターン形成された電極要素および
電極を、同時に焼成した。
方向に同時に分極処理した。先ず、駆動部側の電極指の
うち発電部21に一番近い電極指40T1,40B1を導電
性の挾持治具で挟んで短絡させる。又、発電部側の二つ
の電極35T,35Bを同様の挾持治具で挟んで短絡さ
せる。更に、駆動部側の端面電極32に金属製プローブ
を押し付ける。その後、それら挾持治具およびプローブ
を取り付けた圧電セラミック板を温度300〜350℃
の空気中に置き、電極指40T1(40B1)と電極35T
(B)との間の電界および、電極指40T1(40B1)と
端面電極32との間の電界が0.5〜0.7kV/mm
となるように、上述の挾持治具およびプローブ間に直流
電圧を加えた。そして、電圧を加えた状態で温度を10
0℃以下にまで下げた後、印加電圧を切った。この分極
処理により、発電部21は図3中に太い矢印51で示す
長手方向に、また駆動部12は太い矢印54で示す長手
方向に、互いに逆向きに分極する。
部側の電極指40T1(40B1)〜40T6(40B6)の間
の分極を一つおきに反転させた。すなわち、図4中に細
い破線の矢印52BC,52DEで示すように、電極指40
T2(40B2)と電極指40T3(40B3)との間および、
電極指40T4(40B4)と電極指40T5(40B5)との
間の分極をこれまでとは逆向きに反転させた。先ず、こ
の前工程の分極処理時に用いた電極挾持治具を取り外し
た後、上下の電極指を、電極指40T2と電極指40B2、
電極指40T3と電極指40B3、電極指40T4と電極指4
0B4、電極指40T5と電極指40B5というように一組ず
つ独立に組み合せて、短絡させる。そして圧電セラミッ
ク板を温度100〜200℃のシリコーンオイル中に入
れて、電極指40T2(40B2)と電極指40T3(4
0B3)との間および、電極指40T4(40B4)と電極指
40T5(40B5)との間に、強度が2〜3kV/mmで
前回の分極処理とは逆向きの電界が加わるように、直流
電圧を印加した。駆動部12はこの分極処理で、各電極
指間が一つ毎に交互に長手方向逆向きに分極する。
0B1〜40B6を、交互に一つおきに電気的に接続し、櫛
形電極33T,34T,33B,34Bを形成した。
ンスについて小振動特性を測定したところ、発電部21
の電気機械結合係数k33は38.5〜39.5%であ
り、飽和分極時の電気機械結合係数k33(=40%)と
ほぼ一致した。駆動部12の電気機械結合係数k33につ
いては、電極間隔が狭いという構成上の理由から、3
5.5〜35.6%と発電部21におけるより小さな値
であった。
連続で240時間駆動したが、特性に異常が認められた
試料は一個もなかった。
と同様にして櫛形電極33T,34T,33B,34B
および発電部の電極35T,35Bを形成した圧電セラ
ミック板を用い、発電部21および駆動部12の分極処
理および駆動部12の分極反転の温度を下げた比較例3
の圧電トランスを作製した。すなわち、発電部および駆
動部の分極処理を、温度300℃以下の空気中、電界
0.5〜0.7kV/mmの条件で行い、駆動部12の
分極反転を、温度100℃以下のシリコーンオイル中、
電界2〜3kV/mmの条件で分極処理した。この比較
例3の圧電トランスについて小振動特性を測定したとこ
ろ、発電部21の電気機械結合係数k33は最大で36
%、駆動部12の電気機械結合係数k33は最大で33%
で、本実施例での結果には及ばず、十分な昇圧比が得ら
れなかった。特に、効率が10〜15%低下した。又、
分極を飽和させるために比較例3におけると同じ温度条
件で印加する電界を高くし、空気中においては電界0.
7〜1.0kV/mm、シリコーンオイル中においては
電界3.0〜3.5kV/mmで分極処理した比較例4
の圧電トランスについて小振動特性を測定したところ、
発電部の電気機械結合係数k33、駆動部の電気機械結合
係数k33とも、ほぼ本実施例並みの値となった。しか
し、この比較例4の圧電トランス100個を連続で24
0時間駆動したところ、櫛形電極の電極指先端から対向
する櫛形電極の間にクラックが発生し、約20%に特性
異常が認められた。
電トランスと同様の動作により昇圧するが、その昇圧比
はより大きなものになる。以下に、その説明を行う。本
実施例において、分極により生じる電界の圧電セラミッ
ク板中の分布は、図5に示す状態となる。図5におい
て、例えば電極指40T3とこれに隣接する電極指4
0T2,40T4に着目すると、電極指40T3と電極指40
T2との間の電界分布は円弧状であるが、一方、電極指4
0T3と電極指40T4との間では、圧電体の長手方向にほ
ぼ平行な電界分布である。これは、以下の理由による。
電極指40T3と電極指40T4との間は、最初に発電部の
分極処理と同時に長手方向に分極した部分であり、端面
電極32と発電部側の電極35T(B)との間に加えた
電圧により分極されている。したがって電界は、圧電セ
ラミック板の長手方向にほぼ平行に分布している。一
方、電極指40T3と電極指40T2との間は、後に反転分
極させた部分である。その反転分極処理に当っては、電
極指40T3と電極指40T2との間に電圧を印加する。し
たがって電界分布は、円弧状となる。
ける電界分布は、図8に示すように、全ての電極指間で
円弧状である。例えばある一つの電極指40T3とこれに
隣接する電極指40T2,40T4に着目すると、電極指4
0T2と電極指40T3との間の電界分布も、電極指40T3
と電極指40T4との間の電界分布も共に円弧状で、電極
指40T3を中心に分布状態が対称である。これは、従来
の圧電トランスにおいては、駆動部11(図7参照)を
分極処理する際に、櫛形電極33T(B)と櫛形電極3
4T(B)との間に電圧を印加するからである。この場
合には、各電極指間に交互に逆向きで同一の強度の電界
が加わることになり、分極による電界は、各電極指を出
発点または帰着点とする円弧が長手方向に連続した形状
の分布となる。
施例においては、電極指40T3と電極指40T2との間の
電界分布は円弧状であるが、電極指40T3と電極指40
T4との間では電界がほぼ長手方向に平行である。つま
り、この領域では厚さ方向の電界成分はゼロであり、し
たがって圧電横効果31モードによるひずみは全く発生
しない。このように、本実施例では、電極指40T3と電
極指40T4との間には圧電横効果31モードによるひず
み発生はなく、この部分は全領域に亘って圧電縦効果3
3モードが支配的である。これに対し従来の圧電トラン
スでは、電極指40T3と電極指40T4との間の電界分布
も円弧状である。従ってこの領域61では、その中心部
の極く狭い部分を除いて、厚さ方向の電界成分が存在す
ることになる。その厚さ方向の電界成分は、電極指に近
づくほど大きくなる。すなわち、圧電横効果31モード
のひずみが優勢になる。従って、図7に示す従来の圧電
トランスでは、電極指40T3と電極指40T4との間にも
圧電横効果31モードによるひずみ発生が存在し、縦効
果33モードによるひずみ発生を阻害していることにな
る。このような違いにより、トランスとしての昇圧比
は、本実施例の圧電トランスの方が従来の圧電トランス
よりも、大きい。
よび出力電圧取出し用電極を、駆動部および発電部の上
・下両面に設けた例について述べたが、それら電極がど
ちらか一方の面にのみ設けられている構造の圧電トラン
スであっても、本実施例と同様の効果が得られること、
更には、出力電圧取出し用電極を発電部の端面に設けた
構造のものであっても本発明の作用効果が何ら損われな
いことは、これまでの説明で明かであろう。
および発電部を分極処理する工程を含む圧電トランスの
製造方法において、初めに発電部を含む部分を高温度、
低電界での電界冷却法により圧電体の長手方向に分極さ
せ、次いで駆動部を含む部分を最初の分極処理における
よりも低温度、高電界での高温分極法により分極させる
というように、二段階で行っている。これにより本発明
によれば、発電部の分極に高い電界を加えなくても分極
をほぼ飽和させることができる。しかも高電界を加えな
いので、分極時の応力によるクラックの発生もなく、信
頼性の高い圧電トランスを得ることができる。
櫛形電極を用いた圧電トランスに対し、駆動部の長手方
向端面に新たに分極処理用の端面電極を設け、駆動部の
分極を、初めの分極処理で発電部の分極と同時に長手方
向に均一に分極させた後、2回目の分極処理で各電極指
間を一つおきに反転分極させている。これにより本発明
によれば、駆動部の圧電縦効果33モードによる振動発
生を阻害する圧電横効果33モードのひずみを抑制でき
るので、昇圧比の高い圧電トランスを提供できる。
式的斜視図である。
式的斜視図である。
状態を示す斜視図である。
状態を示す斜視図である。
極による電界分布を示す図である。
る。
ある。
電界分布を示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 長板状圧電体を長手方向に亘って駆動部
及び発電部の二部分に区分し、駆動部には入力電圧印加
用の一対の電極を設け、発電部には前記駆動部の一対の
電極の一方と対となって出力電圧を取り出すための電極
を設けて成る圧電トランスを製造する方法であって、駆
動部および発電部を分極処理する工程を含む圧電トラン
スの製造方法において、 前記駆動部及び発電部の分極処理を、初めに発電部を含
む部分を高温度、低電界での電界冷却法により前記圧電
体の長手方向に分極させる第1の分極処理工程と、次い
で駆動部を含む部分を前記第1の分極処理工程における
よりも低温度、高電界での高温分極法により分極させる
第2の分極処理工程の二段階で行うことを特徴とする圧
電トランスの製造方法。 - 【請求項2】 長板状圧電体を長手方向に亘って駆動部
及び発電部の二部分に区分して、駆動部の対向する二主
面上には入力電圧印加用の一対の電極を形成し、発電部
の少くとも一方の主面上には圧電体の幅方向に延びる短
冊状の出力電圧取出し用電極を設ける工程と、 前記発電部の出力電圧取出し用電極と前記駆動部の入力
電圧印加用電極との間に加熱状態で電圧を印加し、電界
冷却法により、発電部を前記圧電体の長手方向に分極さ
せる第1の分極処理工程と、 前記駆動部の入力電圧印加用の一対の電極間に前記第1
の分極処理工程におけるよりも低温で高電界を加え、高
温分極法により、駆動部を圧電体の厚さ方向に分極させ
る第2の分極処理工程とを含むことを特徴とする圧電ト
ランスの製造方法。 - 【請求項3】 長板状圧電体を長手方向に亘って駆動部
及び発電部の二部分に区分して、駆動部の少くとも一方
の主面上には圧電体の幅方向に延びる複数の短冊状電極
指を前記圧電体の長手方向に並ぶように形成し、駆動部
の前記圧電体の長手方向に垂直な端面には端面電極を形
成し、発電部の少くとも一方の主面上には前記圧電体の
幅方向に延びる短冊状の出力電圧取出し用電極を形成す
る工程と、 前記駆動部の複数の電極指のうち発電部に最近の電極指
と、前記発電部の出力電圧取出し用電極及び前記駆動部
の端面電極との間に加熱状態で電圧を印加し、電界冷却
法により、発電部及び駆動部を前記圧電体の長手方向に
互いに逆向きに分極させる第1の分極処理工程と、 前記駆動部の複数の電極指の間を一つおきに、前記第1
の分極処理工程におけるよりも低温、高電界で、高温分
極法により、逆向きに反転分極させる第2の分極処理工
程と、 前記駆動部の複数の電極指を一つおきに電気的に接続
し、電気的に二つの櫛形電極が互いに非接触で噛み合さ
れたと等価になるようにする工程とを含むことを特徴と
する圧電トランスの製造方法。 - 【請求項4】 請求項1、請求項2又は請求項3記載の
圧電トランスの製造方法において、 前記第1の分極処理工程を温度300乃至350℃の空
気中で行い、前記第2の分極処理工程を温度100乃至
200℃の絶縁油中で行うことを特徴とする圧電トラン
スの製造方法。 - 【請求項5】 長板状圧電体が長手方向に亘って駆動部
及び発電部の二部分に区分され、 発電部は、少くとも一方の主面上に圧電体の幅方向に延
びる短冊状の出力電圧取出し用電極を備えると共に、前
記圧電体の長手方向に分極されており、 駆動部は、少くとも一方の主面上に前記圧電体の幅方向
に延びる短冊状電極指が複数長手方向に配置されそれら
複数の電極指が一つおきに同電位になるように電気的に
接続された構造の入力電圧印加用電極を備え、前記圧電
体の長手方向に垂直な端面には端面電極を備えると共
に、前記複数の電極指の間が一つ毎に互い違いに、前記
圧電体の長手方向逆向きに分極されている構造の圧電ト
ランス。
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