JP3706509B2 - 圧電トランス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に用いられるACアダプタやDC−DCコンバータ、およびノートパソコン、携帯用端末等に使用される液晶ディスプレイ用のバックライト冷陰極管のインバータ等に用いられる圧電トランスに関する。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化に関し、電源回路の小型化は重要な課題の一つであり、電源回路内の高周波化による小型化が図られている。
【0003】
従来のスイッチング電源では、変圧器として電磁誘導を原理とする電磁トランスを用いるが、高周波下での電磁トランスは、ヒステリシス損、渦電流損および表皮効果による損失が増大するという問題があった。
【0004】
さらに、電磁トランス自身の小型化、薄型化は、巻線の極細線多数巻による銅損、磁気結合の低下および漏れ磁束の増加を招き、いずれも電源回路の効率を大きく下げる原因となっていた。さらにまた、巻線による電磁ノイズの発生などの問題があった。
【0005】
一方、圧電トランスは圧電効果を原理とし、電磁トランスと比べて、小型化してもエネルギー密度が高く、かつ巻線を用いないため電磁ノイズが少ないなどの長所がある。
【0006】
図3に、従来のローゼン型圧電トランスを示す。このローゼン型圧電トランスは、長板状圧電板1の長手方向のほぼ半分を1次側とし、厚み方向に電極2、3が形成され、長手方向の残るほぼ半分を2次側とし、端面に電極4が形成されて構成されている。1次側は厚み方向に分極され、2次側は長手方向に分極されている。圧電トランスの1次側は圧電板1の制動容量が大きいため低インピーダンスであり、2次側は制動容量が小さいため高インピーダンスである。
【0007】
そして、2次側の電極4と1次側の電極2(あるいは3)に負荷抵抗を接続し、圧電トランスの1次側の電極2、3間に、圧電板1の長さで決まる圧電トランスの共振周波数あるいはその近傍の周波数の交流電圧を印加すると、逆圧電効果により長さ方向に強い機械的振動を励起し、これにより電極4に圧電効果によって電荷が発生し、2次側の電極4と1次側の電極2(あるいは3)間に電圧が得られる。
【0008】
このローゼン型圧電トランスは、2次側の制動容量にもよるが、一般に使用される範囲として、負荷抵抗が10KΩ以上の高インピーダンスであれば、昇圧用の圧電トランスとして、一方、負荷が10KΩ未満の低インピーダンスであれば降圧用の圧電トランスとして動作する。
【0009】
一方、負荷抵抗を1次側の電極2、3間に接続し、圧電トランスの2次側の電極4を入力とし、電極4と電極2(あるいは3)に共振周波数あるいはその近傍の周波数の交流電圧を印加すると、負荷抵抗が高インピーダンスであれば昇圧用の圧電トランスとして、低インピーダンスであれば降圧用の圧電トランスとして動作する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ローゼン型圧電トランスにおいて、1次側を入力とし、2次側を出力とした場合、2次側の電極4の面積が狭いため、電極4に表れる電荷量が少なく、高出力電流を得ることは困難であった。
【0011】
また電極4と電極2(あるいは3)との距離が長いため、圧電トランスの出力側の容量が小さく、出力インピーダンスが高い。そのため、負荷を接続した場合、高出力電力が得られる負荷はおのずと高いものに制限されてしまうという問題があった。
【0012】
即ち、例えば、ノートパソコン等の電子機器に用いられるアダプタ用電源の場合、負荷が低インピーダンスのため、従来のローゼン型圧電トランスでは高出力電力を得ることができず、アダプタ用電源として用いることができないという問題があった。
【0013】
一方、上記圧電トランスにおいて、2次側を入力とし、1次側を出力とすると、出力側電極面積は広くなるが、電極4と電極2(あるいは3)との距離が長いため、入力インピーダンスが高くなり、圧電トランス入力部での損失が大きく、高出力電力を得ることができない。また、入力インピーダンスを下げるため電極4の面積を広げると、圧電トランス自体が大型化してしまい、圧電トランスの持つ小型という利点を損なうという問題があった。
【0014】
さらに、上記従来のローゼン型圧電トランスでは、電極4を持つため、単一の磁器からなる圧電板1を長手方向と厚み方向の異なる2方向に分極する必要があり、そのため、分極方向が異なる界面付近で分極に伴う大きな応力が発生し、使用中に圧電板1が損傷したり破壊するなど信頼性が低いという問題があった。
【0015】
また、単一の磁器に方向が異なる2種類の分極を施す必要があるため、製造が困難であるという問題があった。さらに、圧電板1の長手方向の分極作業は高電圧を印加する必要があるため、作製時のトランス破壊および作製時における作業の危険性が増大するという問題があった。
【0016】
その解決策として、本出願人は、特願平11−212787号の圧電トランスを提示している。この圧電トランスは、図4に示すように、厚さ方向に分極され両主面が長方形状の圧電基板11と、該圧電基板11の片側主面に形成されたグランド電極15と、他側主面に形成され、かつ、主面の長さ方向に所定間隔を置いて形成された3個の分割電極とを具備するとともに、該3個の分割電極のうち両側の分極電極を入力側分割電極12、14、中央の分割電極を出力側分割電極13とし、主面の幅方向に対して縦振動するものである。
【0017】
しかしながら、更に大電力を得ようとした場合には、電極面積を増やす必要があり、形状を大きくした場合にはトランスの設置面積が大きくなるとともに、駆動周波数が低くなる為に、制御回路も大型化し、コンバータの小形化が難しくなるという問題があった。また、図4に示した圧電トランスを複数並列接続した場合には、駆動周波数は変更しなくてすむが、複数のトランスの共振周波数を全く同一にするのは製造上難しく、共振周波数の異なるトランスを複数同時に同一の周波数で駆動させた場合は、単独で駆動させた場合より効率が低下するという問題があった。
【0018】
本発明は、低負荷時に高出力電力が得られ、かつ大出力電流を取り出すことができる小型の圧電トランスを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電トランスは、内部電極層と圧電体層を交互に積層してなり両主面が長方形状の圧電基板の長さ方向に、電圧入力部、電圧出力部、電圧入力部の順で配置し、該電圧入力部および電圧出力部がそれぞれ内部電極層と圧電体層を交互に積層してなるとともに、前記圧電体層が積層方向に分極され、かつ前記内部電極層の上下に位置する圧電体層の分極方向が逆であり、主面の幅方向に対して縦振動することを特徴とする。
【0020】
このような構成を採用することにより、両側の電圧入力部の圧電体層に、圧電基板の主面の幅方向に対して縦振動する振動(以下、幅方向縦振動ということもある)が生じ、例えば基本波の共振周波数近傍の周波数の交流電圧を入力すれば、電気機械結合係数K’31をもって圧電基板の電圧入力部に幅方向縦振動の基本波が励振され、再び電気機械結合係数K’31をもって、中央の電圧出力部の圧電体層に入力電圧と同じ周波数の出力電圧が発生する。
【0021】
幅方向縦振動の電気機械結合係数は一般的に長さ方向の電気機械結合係数よりも大きいが、本発明の圧電トランスでは、幅方向縦振動を利用するために、長さ方向の振動モードを利用する従来のローゼン型圧電トランスに比べると、エネルギー伝送を行う場合においては、高効率化、高電力化が可能となる。
【0022】
また、圧電トランスの出力側の制動容量をCd2 、圧電トランスの共振周波数をfr、負荷抵抗をRLとした場合、ローゼン型圧電トランスと比較して、同形状において電極面積を広く取れるためCd2 を大きな値とでき、frに関しても、幅方向縦振動を用いるため大きな値にできる。
【0023】
最大電力を取れる負荷抵抗、すなわちインピーダンス整合となる負荷抵抗RL’は、RL’=1/(2πfrCd2 )で決定されるので、本発明の圧電トランスでは、従来のローゼン型圧電トランスと比べて、低インピーダンスにおいて高出力電力を得ることができる。
【0024】
また、圧電基板の厚さ方向に分極するため分極処理用の印加電圧を低くすることができる。また、分極方向が単一であるため、圧電セラミックス以外の圧電性単結晶を圧電基板として使用することもできる。また、圧電基板には分極域に分極方向が異なる領域が接するような界面が存在しないため、駆動時に大きな応力の集中による圧電基板の破損、破壊の恐れがなく信頼性が向上する。
【0025】
また、内部を積層構造にすることで、同じ設置面積で出力部の電極面積を広くすることができ、大電力電流が取り出せる。また、積層一体構造にすることで、全体が同一周波数で共振するため、単層構造のトランスを複数並列接続し、駆動させた時よりも高効率が可能となる。
【0026】
本発明の圧電トランスは、圧電基板の主面の幅方向に半周期となるような振動(基本波)で作動することが望ましい。これにより、一般に、基本波の電気機械結合係数は高次モードの電気機械結合係数に比べて大きいことから、基本波を利用した本発明の圧電トランスは、高次モードを利用したトランスと比較すると材料の持つ特性を充分に発揮でき、高効率化、高電力化が可能となる。
【0027】
また、電圧入力部、電圧出力部における圧電基板の両主面に、それぞれ入力部用外部電極、出力部用外部電極が形成されていることが望ましい。これにより、入力部用外部電極、出力部用外部電極を用いて、単一方向に分極処理を行うことができるため、製造が容易となる。また、振動の節が圧電基板の幅中央であって長さ方向に形成され、この振動の節に対応する外部電極の部分を固定したり、この部分にリード線等を接続することができる。
【0028】
さらに、電圧入力部および電圧出力部における内部電極層を同一平面上に形成することが望ましい。このような構成により、電圧入力部および電圧出力部における圧電体層の厚みが同一となり、圧電板の両面に電圧入力部および電圧出力部の内部電極となる電極層を形成した後、この電極層を形成した圧電板を複数層積層することにより作製でき、製造が容易となる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電トランスは、図1に示すように、両主面が長方形状の圧電基板17の長さ方向に、3層の圧電体層18と2層の内部電極層19とを交互に積層してなる電圧入力部21、電圧出力部22、電圧入力部23が順次形成されている。即ち、電圧入力部21、23は、圧電体層18aと内部電極層19aが交互に積層して構成され、電圧出力部22は、圧電体層18bと内部電極層19bが交互に積層して構成されている。
【0030】
そして、電圧入力部21、23および電圧出力部22における圧電体層18a、18bが積層方向に分極され、かつ内部電極層19a、19bの上下に位置する圧電体層18a、18bの分極方向が逆とされている。
【0031】
この圧電トランスは、主面の幅方向に対して縦振動するものであり、基本波モードで作動することが望ましい。また降圧用として機能することが望ましい。
【0032】
また、電圧入力部21、23、電圧出力部22における圧電基板17の両主面には、それぞれ入力部用外部電極31a、出力部用外部電極31bが形成されている。
【0033】
電圧入力部21、23および電圧出力部22における内部電極層19a、19bは同一平面上に形成されている。即ち、電圧入力部21、23および電圧出力部22における内部電極層19a、19b間の圧電体層18a、18bは同一厚みとされ、内部電極層19a、19bと入力部用外部電極31a、31bとの間の圧電体層18a、18bは同一厚みとされている。
【0034】
このような圧電トランスでは、図2に示すように、電圧入力部21、23及び電圧出力部22のそれぞれにおいて、それぞれを構成する各内部電極層19a、19bが一層置きに同電位になるように結線され、使用される。
【0035】
本発明の圧電トランスの製造方法について説明する。例えば、圧電体層としてPZT系圧電磁器材料を用い、また内部電極層としてAg/Pdを用い、PZT系圧電材料からなるグリーンシート上に、電圧入力部21、23及び電圧出力部22用の内部電極パターン形状にAg/Pdペーストをスクリーン印刷し、このような内部電極パターンが形成されたグリーンシートを2層積層し、その上に内部電極パターンが形成されていないグリーンシートを積層し、積層成形体を作製し、焼成し、圧電基板17を形成する。
【0036】
この後、図1に示したように、圧電基板17の側面に露出した内部電極層19a、19bの端部に、電気泳動法により一層おきの内部電極層19a、19bに交互に絶縁体としてのガラスを付着させた後、電圧入力部21、23および電圧出力部22の両主面に銀とガラスを主成分とする電極ペーストを塗布し、外部電極31a、31bを形成すると同時に、側面部に電極ペーストを塗布して焼き付け、外部電極31aと内部電極層19aとの導通、および外部電極31bと内部電極層19bとの導通をとる。この後、電圧入力部21、23及び電圧出力部22の電極間に直流の高電界を印加して分極処理する。
【0037】
外部電極31は、例えば、Ag粉末とガラスからなるペーストをスクリーン印刷し、焼成して形成してもよい。また、蒸着、スパッタ等の手法を用いて形成しても良い。また、Ag以外の導電性材料を用いても良い。
【0038】
尚、ここでは圧電磁器材料と内部電極材料としてPZT系圧電磁器材料およびAg/Pdを用いたが、圧電性を有する圧電磁器材料およびそれと一体焼成可能である電極材料であれば他の組み合わせでも良いことは言うまでもない。
【0039】
また、上記例では、圧電体層と内部電極層とを同時焼成した例について説明したが、焼成済の圧電体層と内部電極層とを交互に積層して形成しても良い。例えば、圧電板に導電性ペーストを塗布し、導電性ペーストが塗布された圧電板を積層して形成しても良い。
【0040】
本発明の圧電トランスでは、電圧入力部21、23の内部電極層19a間および内部電極層19aと外部電極31a間に、即ち圧電体層18aに、圧電基板17の主面の幅方向xに縦振動する基本波の共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を印加すれば、圧電横効果の電気機械結合係数K’31をもって圧電基板17が幅方向縦振動の基本波で励振し、再び圧電横効果の電気機械結合係数K’31をもって電圧出力部22の内部電極層19b間および内部電極層19bと外部電極31b間に、入力電圧と同じ周波数の電圧が発生する。このとき、出力電圧は負荷抵抗や駆動周波数に依存する。
【0041】
即ち、電圧入力部21、23の電極間に、圧電基板17の幅方向に縦振動する基本波の共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を印加すると、図1に示したように、圧電基板17の主面の幅方向(短辺方向)に半周期となるような振動(基本波)が生じ、つまり、短辺方向に伸縮する振動が生じ、この振動が中央の電圧出力部22に伝達され、電圧出力部22の電極間に入力電圧と同じ周波数の電圧が発生する。
【0042】
そして、このような幅方向縦振動で基本波を用いると、図1の一点鎖線で示すように、圧電基板17の主面の短辺の中央部が振動の節Aとなり、この振動の節Aの部分で圧電基板17を保持すれば、圧電基板17の幅方向縦振動モードの基本波を妨げずに固定することができる。特に、節Aで各電極の中央部を保持することが望ましい。
【0043】
さらに、本発明の圧電トランスは幅方向縦振動モードを利用しており、一般に主面が長方形状の圧電基板17の幅方向縦振動の電気機械結合係数K’31は、圧電基板17の長さ方向振動の電気機械結合係数K31よりも大きいため、より高電力化、高効率化を図ることができる。
【0044】
また、本発明の圧電トランスは分極方向が積層方向の単一方向であるために、ローゼン型圧電トランスと比較して、圧電基板17の長さ方向の分極処理の必要がないため、比較的低電圧の直流電圧で分極でき、製造工程を簡略化でき、製造工程における安全性を向上できる。
【0045】
本発明の圧電トランスは、圧電横効果の電気機械結合係数K’31をもって交流の入力電圧を機械的な振動に変換し、再び圧電横効果の電気機械結合係数K’31をもって交流の出力電圧に変換するために、エネルギー伝送の高効率化、高電力化を図るために、圧電材料としては、電気機械結合係数K’31の大きな材料が望ましい。特にPZT系の圧電セラミック材料が望ましい。また、単結晶材料を利用することも可能である。
【0046】
【実施例】
図1に示した圧電トランスをグリーンシート法により作製した。先ず、圧電磁器材料としてPZT系圧電磁器材料を用い、また内部電極材料としてAg/Pdを用い、PZT系圧電磁器材料からなるグリーンシート上に、Ag/Pdペーストをスクリーン印刷し、電圧入力部21、23、電圧出力部24の内部電極パターンを形成した。この内部電極パターンが形成されたグリーンシートを2枚積層し、その上に内部電極パターンが形成されていないグリーンシートを積層した後、焼成した。
【0047】
電圧入力部21、23、電圧出力部22はそれぞれ圧電体層18が3層、内部電極層19が2層交互に積層されて構成されており、各圧電体層18の厚さが0.4mmであった。焼成後、全体の長さ30mm、幅4.5mmに切断し、圧電基板17を作製した。
【0048】
内部電極層19a、19bの側面露出部に電気泳動法により一層おきに左右交互に絶縁体としてのガラスを付着させた後、電圧入力部21、23および電圧出力部22の両主面に銀とガラスを主成分とする電極ペーストを塗り、外部電極31a、31bを形成すると同時に、側面部に電極ペーストを塗布して焼き付けることにより、外部電極31と内部電極19の導通をとった。
【0049】
外部電極31a、31bおよび内部電極層19a、19bの寸法は、主面の長さ方向の辺が9mm、主面の幅方向の辺が4.5mmであり、外部電極31a、31b間の間隔、内部電極層19a、19b間の間隔は1.5mmとした。
【0050】
この後、190℃のシリコンオイル中で1.6kV/mmの電場を印加し、10分間分極を行い、圧電基板17の厚み方向に分極した。
【0051】
そして、図2に示したように、圧電トランスの電圧入力部21、23の外部電極31a(1次側電極)に入力用端子を接続し、電圧出力部22の外部電極31b(2次側電極)に出力用端子を接続し、この出力用端子に種々の負荷抵抗RLを接続した。入力電圧は関数発生器を用い振幅5Vの正弦波を入力側電極に印加し、出力用端子からの出力電圧(V)を検出し、出力電流(mA)、出力電力(mW)を求め、これらの結果を表1に記載した。
【0052】
比較例1として、図4の圧電トランスを作製した。先ず、PZT系材料からなり、長さ30mm、幅4.5mm、厚み0.4mmの圧電基板11を作製し、銀とガラスを主成分とする電極ペーストを、圧電基板11の両主面に塗布し、焼き付けることにより、図4に示すような、分割電極12、13、14およびグランド電極15を有する圧電トランスを作製した。分割電極12、13、14は、主面の長さ方向の辺が9mm、主面の幅方向の辺が4.5mmであり、分割電極12、13、14間の間隔は1.5mmとした。
【0053】
この後、190℃のシリコンオイル中で1.6kV/mmの電場を印加し、10分間分極を行い、圧電基板11の厚み方向に分極した。
【0054】
そして、図4に示したように、圧電トランスの入力側分極電極12、14(1次側電極)を入力とし、出力側分割電極13(2次側電極)を出力として、この出力側分割電極13に種々の負荷抵抗RLを接続した。入力電圧は関数発生器を用い振幅5Vの正弦波を入力側分割電極12、14に印加、出力側分割電極13からの出力電圧(V)を検出し、出力電流(mA)、出力電力(mW)を求め、結果を表1に記載した。また、比較例2として、この圧電トランスを3個並列接続したときの結果も表1に記載した。
【0055】
比較例3として、同様の作成プロセスにて、図3に示すようなローゼン型圧電トランスを作製した。ここで、圧電基板1の形状は長さ30mm、幅4.5mm、厚み1.0mmとし、電極は、1次側電極2、3を片側端部から中央部まで19mmで、両面に一様となるよう塗布し、2次側電極4については端面部に形成した。1次側電極2、3を入力とし、2次側電極4を出力として、この2次側電極4に種々の負荷抵抗RLを接続し、上記と同様、入力電圧は関数発生器を用い振幅5Vの正弦波を1次側電極2、3に印加して、2次側電極4からの出力電圧(V)を検出し、出力電流(mA)、出力電力(mW)を求めた。測定した結果を表1に記載した。
【0056】
【表1】
【0057】
この表1から、本発明の圧電トランスでは、負荷抵抗が10Ωでも出力電圧として1.53Vの出力電圧が発生しており、ゲイン(=出力電圧/入力電圧)は0.306であった。この結果より、負荷抵抗が10Ω程度と小さい場合においても高電流、高電力を得ることができ、低負荷時に充分使用できることが判る。よって、本発明の圧電トランスでは、出力側に大電流を得ることが可能で、かつ、低負荷時に出力電力を大きくとることができ、しかもトランス形状は小型であり、分極が一方向のため製造も容易であることが明白である。
【0058】
比較例1では、圧電トランス1個を駆動した場合には、負荷抵抗が10Ω程度と小さい場合においても高電流、高電力を得ることができるが、比較例2のように、図4の圧電トラスン3個を並列接続した比較例2の場合の電力は、本発明の圧電トランスの81.7%しか得られず、変換効率が低下する事がわかる。
【0059】
一方、比較例3では、負荷抵抗が10Ωでは出力電圧を測定できず、比較例では、低負荷において使用できないことが判る。尚、比較例3では、負荷抵抗10KΩで出力電力は44.4mWとなり、高負荷抵抗において、出力電力が高い値を示した。
【0060】
また、本発明の圧電トランスは、負荷抵抗が10Ωの場合のゲインが0.306であるため、負荷抵抗10Ω、入力電圧30Vの場合には出力電圧9.18V、出力電力4.214Wとなり、低負荷で高電力が取り出せることが判る。
【0061】
【発明の効果】
本発明の圧電トランスでは、電圧入力部の電極間に、圧電基板の主面の幅方向に対して縦振動する基本波の共振周波数近傍の周波数の交流電圧を入力すれば、電気機械結合係数K’31をもって圧電基板に幅方向縦振動の基本波が励振され、再び電気機械結合係数K’31をもって電圧出力部の電極間に入力電圧と同じ周波数の出力電圧が発生し、従来のローゼン型圧電トランスと比較して、大出力電流を取り出せ、低負荷時に高出力電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電トランスを示す斜視図である。
【図2】図1の圧電トランスに入出力端子を接続した状態を示す説明図である。
【図3】従来のローゼン型圧電トランスを示す斜視図である。
【図4】単板型圧電トランスを示す斜視図である。
【符号の説明】
17・・・圧電基板
18・・・圧電体層
19・・・内部電極層
21、23・・・電圧入力部
22・・・電圧出力部
Claims (5)
- 内部電極層と圧電体層を交互に積層してなり両主面が長方形状の圧電基板の長さ方向に、電圧入力部、電圧出力部、電圧入力部の順で配置し、該電圧入力部および電圧出力部がそれぞれ内部電極層と圧電体層を交互に積層してなるとともに、前記圧電体層が積層方向に分極され、かつ前記内部電極層の上下に位置する圧電体層の分極方向が逆であり、主面の幅方向に対して縦振動することを特徴とする圧電トランス。
- 電圧入力部、電圧出力部における圧電基板の両主面に、それぞれ入力部用外部電極、出力部用外部電極が形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電トランス。
- 電圧入力部および電圧出力部における内部電極層が同一平面上に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の圧電トランス。
- 圧電基板の主面の幅方向に半周期となるような振動で作動することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の圧電トランス。
- 降圧用であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載の圧電トランス。
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