JP3673433B2 - 圧電トランス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子機器に用いられるACアダプタやDC−DCコンバータ、およびノートパソコン、携帯用端末等に使用される液晶ディスプレイ用のバックライト冷陰極管のインバータ等に用いられる圧電トランスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化に関し、電源回路の小型化は重要な課題の一つであり、電源回路内の高周波による小型化が図られている。
【0003】
従来のスイッチング電源では、変圧器として電磁誘導を原理とする電磁トランスを用いるが、高周波下での電磁トランスは、ヒステリシス損、渦電流損および表皮効果による損失が増大するという問題があった。
【0004】
さらに、電磁トランス自身の小型化、薄型化は、巻線の極細線多数巻による銅損、磁気結合の低下および漏れ磁束の増加を招き、いずれも電源回路の効率を大きく下げる原因となっていた。さらにまた、巻線による電磁ノイズの発生などの問題があった。
【0005】
一方、圧電トランスは圧電効果を原理とし、電磁トランスと比べて、小型化してもエネルギー密度が高く、かつ巻線を用いないため電磁ノイズが少ないなどの長所がある。
【0006】
図5に、従来のローゼン型圧電トランスを示す。このローゼン型圧電トランスは、長板状圧電板1の長手方向のほぼ半分を1次側とし、厚み方向に電極2、3が形成され、長手方向の残るほぼ半分を2次側とし、端面に電極4が形成されて構成されている。1次側は厚み方向に分極され、2次側は長手方向に分極されている。圧電トランスの1次側は圧電板1の制動容量が大きいため低インピーダンスであり、2次側は制動容量が小さいため高インピーダンスである。
【0007】
そして、2次側の電極4と1次側の電極2(あるいは3)との間に負荷抵抗を接続し、圧電トランスの1次側の電極2、3間に、圧電板1の長さで決まる圧電トランスの共振周波数あるいはその近傍の周波数の交流電圧を印加すると、逆圧電効果により長さ方向に強い機械的振動を励起し、これにより電極4に圧電効果によって電荷が発生し、2次側の電極4と1次側の電極2(あるいは3)間に電圧が得られる。
【0008】
このローゼン型圧電トランスは、2次側の制動容量にもよるが、一般に使用される範囲として、負荷抵抗が10KΩ以上の高インピーダンスであれば、昇圧用の圧電トランスとして、一方、負荷が10KΩ未満の低インピーダンスであれば降圧用の圧電トランスとして動作する。
【0009】
一方、負荷抵抗を1次側の電極対2、3間に接続し、圧電トランスの2次側の電極4を入力とし、電極4と電極2(あるいは3)に共振周波数あるいはその近傍の周波数の交流電圧を印加すると、負荷抵抗が高インピーダンスであれば昇圧用の圧電トランスとして、低インピーダンスであれば降圧用の圧電トランスとして動作する。
【0010】
しかしながら、上記ローゼン型圧電トランスにおいて、1次側を入力とし、2次側を出力とした場合、2次側の電極4の面積が狭いため、電極4に現れる電荷量が少なく、高出力電流を得ることは困難であった。
【0011】
また電極4と電極2(あるいは3)との距離が長いため、圧電トランスの出力側の容量が小さく、出力インピーダンスが高い。そのため、負荷を接続した場合、高出力電力が得られる負荷はおのずと高いものに制限されてしまうという問題があった。即ち、例えば、ノートパソコン等の電子機器に用いられるアダプタ用電源の場合、負荷が低インピーダンスのため、従来のローゼン型圧電トランスでは高出力電力を得ることができず、アダプタ用電源として用いることができないという問題があった。
【0012】
一方、上記圧電トランスにおいて、2次側を入力とし、1次側を出力とすると、出力側電極面積は広くなるが、電極4と電極2(あるいは3)との距離が長いため、入力インピーダンスが高くなり、圧電トランス入力部での損失が大きく、高出力電力を得ることができない。また、入力インピーダンスを下げるため電極4の面積を広げると、圧電トランス自体が大型化してしまい、圧電トランスの持つ小型という利点を損なうという問題があった。
【0013】
さらに、上記従来のローゼン型圧電トランスでは、電極4を持つため、単一の磁器からなる圧電板1を長手方向と厚み方向の異なる2方向に分極する必要があり、そのため、分極方向が異なる界面付近で分極に伴う大きな応力が発生し、使用中に圧電板1が損傷したり破壊するなど信頼性が低いという問題があった。
【0014】
また、単一の磁器に方向が異なる2種類の分極を施す必要があるため、製造が困難であるという問題があった。さらに、圧電板1の長手方向の分極作業は高電圧を印加する必要があるため、作製時のトランス破壊および作製時における作業の危険性が増大するという問題があった。
【0015】
そこで、ローゼン型圧電トランスの問題点を解決するために、特開平5−160460号公報には、均一に分極させた圧電セラミック板を用いることにより機械的Q値を向上させるとともに、分極方向又はそれに垂直な方向のいずれかに電極を形成して目的に応じた特性を得るようにした圧電トランスが提案されている。又、特開平6−338641号公報には、板厚方向に一様に分極させた圧電磁器板の上下の両主面それぞれに幅方向に分割してp個の電極を形成し、一方の主面にある電極を1個おきに入力電極又は出力電極とし、幅方向p次モードの共振周波数近傍の周波数で励振して駆動する圧電トランスが提案されている。これらの公報に開示された圧電トランスは、いずれも圧電基板が全体に均一に分極されていて容易に作成することができ、歪みや応力の集中が無く信頼性の高いものである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平5−160460号公報に開示された圧電トランスは、伝送効率などのある特性の向上だけを目的とするものであるし、また、特開平6−338641号公報に開示された圧電トランスは、高周波数化を目的とするものであり、いずれも電極配置が使用する圧電基板の振動モード、特に基本波モードに対して最適化されていないので、出力側の負荷が小さい場合には大出力電流を取り出せず、高出力電力が得られない。更に、特開平6−338641号公報に開示された圧電トランスは、使用する振動モードが高次モードであるために、基本波モードを利用する場合に比べて高電力化、高効率化の度合いが低い。これは一般に、高次モードでは実効的な電気機械結合係数が次数nに反比例して小さくなることと、近接した次数のモードの共振がスプリアスとなることによる(平成3年オーム社発行「弾性波素子技術ハンドブック」125頁)。
【0017】
それ故、本発明の課題は、低負荷時に高出力電力が得られ、かつ大出力電流を取り出すことが可能であり、磁器端面に入出力電極を形成する必要がなく、入出力とグランド電極の分極方向が同一のため容易に作製できる小型の圧電トランスを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
その課題を達成するために、本発明の圧電トランスは、厚さ方向に分極され両主面が長方形状の圧電基板と、その圧電基板の第一の主面に形成されたグランド電極と、第二の主面を幅方向に2等分し長さ方向に延在する中心線を軸として対称配置となるように第二の主面に該主面の長さ方向に所定間隔をおいて形成された3個の入出力用分割電極とを具備するとともに、それら分割電極のうち両側の電極を入力側分割電極又は出力側分割電極、中央の電極を出力側分割電極又は入力側分割電極とし、主面の幅方向に対して縦振動することを特徴とする。また、厚さ方向に分極され両主面が長方形状の圧電基板と、その圧電基板の第一の主面に形成されたグランド電極と、第二の主面を幅方向に2等分し長さ方向に延在する中心線を軸として対称配置となるように第二の主面に該主面の幅方向に所定間隔をおいて形成された3個の入出力用分割電極とを具備するとともに、それら分割電極のうち両側の電極を入力側分割電極又は出力側分割電極、中央の電極を出力側分割電極又は入力側分割電極とし、主面の幅方向に対して縦振動し、圧電基板の主面の幅方向に半周期となるような振動で作動することを特徴とする。
【0019】
本発明の作用を圧電トランスが降圧用であって両側の各電極が入力側分割電極、中央の電極が出力側分割電極の場合を例にして説明する。
【0020】
本発明の圧電トランスでは、両側の入力側分割電極−グランド電極間に、圧電基板の主面の幅方向に対して縦振動する振動(以下、幅方向縦振動ということもある)であり、例えば基本波の共振周波数近傍の周波数の交流電圧を入力すれば、電気機械結合係数k’31をもって圧電基板に幅方向縦振動の基本波が励振され、再び電気機械結合係数k’31をもって、中央の出力側分割電極−グランド電極間に入力電圧と同じ周波数の出力電圧が発生する。なお、昇圧用圧電トランスの場合は、入出力の関係が逆となる以外は同様である。
【0021】
幅方向縦振動の電気機械結合係数k’31は一般的に長さ方向振動の電気機械結合係数k31よりも大きいが、本発明の圧電トランスは、幅方向縦振動を利用するために、長さ方向の振動モードを利用する従来のローゼン型圧電トランスに比べると、エネルギー伝送を行う場合においては、高効率化・高電力化が可能となる。
【0022】
また、圧電トランスの出力側の制動容量をCd2 、圧電トランスの共振周波数をfr、負荷抵抗をRLとした場合、ローゼン型圧電トランスと比較して、同形状において電極面積を広く取れるためCd2 を大きな値とでき、frに関しても、幅方向縦振動を用いるため大きな値にできる。最大電力を取れる負荷抵抗、すなわちインピーダンス整合となる負荷抵抗RL' は、RL' =1/(2πfrCd2 )で決定されるので、本発明の圧電トランスは、従来のローゼン型圧電トランスと比べて、低インピーダンスにおいて高出力電力を得ることができる。
【0023】
さらに、圧電基板の両主面に入出力・グランド電極を形成し単一方向に分極処理を行うため、製造が容易である。また、圧電基板の厚さ方向に分極するため分極処理用の印加電圧を低くすることができる。また、分極方向が単一であるため、圧電セラミックス以外の圧電性単結晶を圧電基板として使用することもできる。また、圧電基板には分極域に分極方向が異なる領域が接するような界面が存在しないため、駆動時に大きな応力の集中による圧電基板の破損・破壊の恐れがなく信頼性が向上する。
【0024】
しかも、本発明の圧電トランスでは、3個の入出力用分割電極が第二の主面を幅方向に2等分し長さ方向に延在する中心線を軸として対称配置となるように形成されている。このため、上記のように幅方向縦振動で基本波を用いると、圧電基板の主面の中央部が振動の節となる。従って、この振動の節の部分で圧電基板を保持すれば、圧電基板の幅方向縦振動モードの基本波を妨げずに固定することができる。また、この振動の節は、出力側分割電極とグランド電極にも形成されることから、振動の節を利用して外部回路と接続することもできる。一般に、基本波の電気機械結合係数は高次モードの電気機械結合係数に比べて大きいことから、基本波を利用することのできる本発明の圧電トランスは、高次モードを利用したトランスと比較すると材料の持つ特性を充分に発揮でき、高効率化・高電力化が可能となる。
【0025】
本発明の圧電トランスは、グランド電極を、圧電基板の他側主面に形成された3個の分割電極とそれぞれ対向した3個のグランド分割電極から構成することにより、3個の分割電極とそれぞれ対向するグランド分割電極同士を分離して絶縁することもでき、グランド電極を共通化することによる不具合を解消できる。
【0026】
本発明の圧電トランスは、分割電極の配列方向にかかわらず幅方向縦振動するものであるから、前記分割電極が主面の長さ方向に所定間隔をおいて形成されるときは、振動の節はそれら分割電極の全てを通過する中心線上に存在し、前記分割電極が主面の幅方向に所定間隔をおいて形成されるときは中央の分割電極のみ通過する中心線上に存在することとなる。
【0027】
前記グランド電極は、第一主面の全面に形成されていてもよいし、分割形成されていても良い。分割形成する場合、第一の主面を幅方向に2等分し長さ方向に延在する中心線を軸として対称配置となるように個々の入出力用分割電極と同一方向に分割された3個のグランド分割電極で構成すると好ましい。こうすることで入出力間を絶縁するだけでなく、入出力用分割電極と同様に振動の節を利用して保持及び接続することができるからである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
【0029】
第1実施形態の圧電トランスは、図1に示すように、厚さ方向に分極され主面が長方形状の圧電基板11と、該圧電基板11の上側主面に形成された3個の分割電極12、13、14と、圧電基板11の下側主面に形成されたグランド電極15とから構成されている。
【0030】
3個の分割電極12、13、14は、圧電基板11の上側主面の幅方向全長に亘って且つ長さ方向(長辺方向)に所定間隔Lを置いて形成されており、グランド電極15は下側主面の全面に形成されている。
【0031】
3個の分割電極12、13、14のうち、両側の分割電極12、14が入力側分割電極12、14(一次側電極)とされ、中央の分割電極13が出力側分割電極13(二次側電極)とされている。分割電極12、13、14は、一辺が圧電基板11の上側主面の短辺と同一長さとされ、他辺が上側主面の長辺の長さの約1/3の長さとされており、分割電極12、13、14は接触しないように、長辺方向に僅かな間隔Lを置いて形成されている。
【0032】
本発明の圧電トランスは、例えば、セラミックスからなる圧電基板11に、3個の分割電極12、13、14およびグランド電極15を形成した後、分割電極12、13、14と、グランド電極15間に直流の高電界を印加して分極処理する。
【0033】
分割電極12、13、14、グランド電極15は、例えば、Ag粉末とガラスからなるペーストをスクリーン印刷・焼成して形成しても良い。また、蒸着、スパッタ等の手法を用いて形成しても良い。また、Ag以外の導電性材料を用いても良い。
【0034】
本発明の圧電トランスでは、入力側分割電極12、14とグランド電極15間に、圧電基板11の主面の幅方向xに縦振動する基本波の共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を印加すれば、圧電横効果の電気機械結合係数k'31 をもって圧電基板11が幅方向縦振動の基本波で励振され、再び圧電効果の電気機械結合係数k'31 をもって出力側分割電極13とグランド電極15間に入力電圧と同じ周波数の周波数の電圧が発生する。このとき、出力電圧は負荷抵抗や駆動周波数に依存する。
【0035】
即ち、入力側分割電極12、14とグランド電極15間に、圧電基板11の幅方向に縦振動する基本波の共振周波数近傍の周波数を持つ交流電圧を印加すると、図1に示したように、圧電基板11の主面の幅方向(短辺方向)に半周期となるような振動(基本波)が生じ、つまり、短辺方向に伸縮する振動が生じ、この振動が中央の出力側分割電極13とグランド電極15間の圧電基板11に伝達され、出力側分割電極13とグランド電極15間に入力電圧と同じ周波数の電圧が発生する。
【0036】
そして、このような幅方向縦振動で基本波を用いると、圧電基板11の主面の短辺の中央部が振動の節Aとなり、この振動の節Aの部分で圧電基板11を保持すれば、圧電基板11の幅方向縦振動モードの基本波を妨げずに固定することができる。この振動の節Aは、出力側分割電極13とグランド電極15にも形成されることから、振動の節Aを利用して外部回路と接続することができる。圧電基板11を保持する部分としては、振動の節Aであって各電極12、13、14の中央が特に望ましい。
【0037】
さらに、本発明の圧電トランスは幅方向縦振動モードを利用しており、一般に主面が長方形状の圧電基板11の幅方向縦振動の電気機械結合係数k'31 は、圧電基板11の長さ方向振動の電気機械結合係数k31よりも大きいため、より高電力化・高効率化を図ることができる。
【0038】
また、本発明の圧電トランスは分極方向が単一方向であるために、ローゼン型圧電トランスと比較して、基板の長さ方向の分極処理の必要がないため、比較的低電圧の直流電圧で分極でき、製造工程を簡略化でき、製造工程における安全性を向上できる。
【0039】
本発明の圧電トランスは、圧電横効果の電気機械結合係数k'31 をもって交流の入力電圧を機械的な振動に変換し、再び圧電横効果の電気機械結合係数k'31 をもって交流の出力電圧に変換するために、エネルギー伝送の高効率化・高電力化を図るために、圧電材料としては、電気機械結合係数k'31 の大きな材料が望ましい。特にPZT系の圧電セラミックス材料が望ましい。また、単結晶材料を利用することも可能である。
【0040】
次に第2実施形態の圧電トランスを説明する。図2は第2実施形態の圧電トランスを示す斜視図、図3はその結線図、図4は同圧電トランスの変位を示す分布図である。
【0041】
3個の分割電極22、23、24は、圧電基板21の上側主面の長さ方向全長に亘って且つ幅方向(短辺方向)に所定間隔Dを置いて形成されており、一辺が圧電基板21の上側主面の長辺と同一長さとされ、他辺が上側主面の短辺の長さの約1/3の長さとされている。その他の点では第1実施形態と同形同質であり、グランド電極25は、ここでも下側主面の全面に形成されている。従って、3個の分割電極22、23、24のうち、両側の分割電極22、24が入力側分割電極22、24(一次側電極)とされ、中央の分割電極23が出力側分割電極23(二次側電極)とされている。
【0042】
この第2実施形態においても基本波モードを利用する場合、圧電基板21の幅方向の中点が振動の節となる。ただし、分割電極の配列方向が第1実施形態と直交していることから、第1実施形態では振動の節が3個の分割電極の全てを通過する中心線上に存在するのに対し、第2実施形態では同じ中心線が中央の分割電極のみ通過することとなる。
【0043】
尚、上記2つの実施形態では、グランド電極15、25を全面電極、つまり、入出力用分割電極12、13、14、22、23、24全部に共通のグランド電極15、25とした例について説明したが、本発明では上記例に限定されるものではなく、グランド電極を、3個の分割電極とそれぞれ対向した3個のグランド分割電極から構成しても良い。この場合には、入出力間を絶縁することができ、回路形成を自由に行うことができる。
【0044】
又、上記2つの実施形態は、いずれも降圧用であるが入出力の関係を逆にする、すなわち二次側を入力、一次側を出力とすることにより、昇圧用とすることができる。
【0045】
【実施例】
−実施例1−
先ず、PZT系材料からなり、長さ30mm、幅4.5mm、厚さ0.4mmの圧電基板を作製し、銀とガラスを主成分とする電極ペーストを、圧電基板の両表面に塗布し、焼き付けることにより、図1に示すような、分割電極およびグランド電極を有する圧電トランスを作製した。分割電極は、主面の長さ方向の辺が9mm、主面の幅方向の辺が4.5mmであり、分割電極間の間隔Lは1.5mmとした。
【0046】
この後、150℃のシリコンオイル中で1.6kV/mmの電場を印加し、10分間分極を行い、圧電基板の厚み方向に分極した。
【0047】
そして、図1に示したように、圧電トランスの入力側分割電極(1次側電極)を入力とし、出力側分割電極(2次側電極)を出力として、この出力側分割電極に種々の負荷抵抗RLを接続した。入力電圧は関数発生器を用い振幅5Vの正弦波を入力側分割電極に印加、出力側分割電極からの出力電圧(V)を検出し、出力電流(mA)、出力電力(mW)を求め、結果を表1に記載した。
【0048】
また、比較のため、同様の作製プロセスにて、図5に示すようなローゼン型圧電トランスを作製した。ここで、圧電基板の形状は長さ30mm、幅4.5mm、厚み1.0mmとし、電極は、1次側電極を片側端部から中央部まで15mmで、両面に一様となるよう塗布し、2次側電極については端面部に形成した。1次側電極を入力とし、2次側電極を出力として、この2次側電極に種々の負荷抵抗RLを接続し、上記と同様、入力電圧は関数発生器を用い振幅5Vの正弦波を1次側電極に印加して、2次側電極からの出力電圧(V)を検出し、出力電流(mA)、出力電力(mW)を求めた。測定した結果を表1に記載した。
【0049】
【表1】
Figure 0003673433
【0050】
この表1から、本発明の圧電トランスでは、負荷抵抗が10Ωでも出力電圧として0.512Vの出力電圧が発生しており、ゲイン(=出力電圧/入力電圧)は0.1024であった。この結果より、負荷抵抗が10Ω程度と小さい場合においても高電圧、高電流、高電力を得ることができ、低負荷時に充分使用できることが判る。よって、本発明の圧電トランスでは、出力側に大電流を得ることが可能で、かつ、低負荷時に出力電力を大きくとることができ、しかもトランス形状は小型であり、分極が一方向のため製造も容易であることが明白である。
【0051】
一方、比較例では、負荷抵抗が10Ωでは出力電圧を測定できず、比較例品では、低負荷では使用できないことが判る。また、負荷抵抗10KΩで出力電力は44.4mWとなり、高負荷抵抗において、出力電力が高い値を示した。
【0052】
また、本発明のトランスは、負荷抵抗が10Ωの場合のゲインが0.1024であるため、負荷抵抗10Ω、入力電圧30Vの場合には、出力電圧3.072V、出力電力0.945Wとなり、低負荷で高電力が取り出せることが判る。
【0053】
−実施例2−
分割電極の形状及び寸法において、主面の長さ方向の辺が30mm、主面の幅方向の辺が1.2mmであり、分割電極間の間隔Dは0.45mmとした以外は、実施例1と同形同質の図2に示す圧電トランスを試作した。
【0054】
実施例1と同様に一次側を入力、二次側を出力とし、実施例1と同一条件で変圧比、出力電流、出力電力を求めた。測定結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
Figure 0003673433
【0056】
この表2からも本発明の圧電トランスは、出力側に大電流を得ることが可能で、且つ低負荷時に大電力を得ることができることが明らかである。
【0057】
尚、表1および表2から理解されるように、低負荷時に大電力を得るという点から、分割電極が主面の長さ方向に所定間隔をおいて形成された図1の圧電トランスの方が、分割電極が主面の幅方向に所定間隔をおいて形成された図2の圧電トランスよりも望ましい。また、電極取り出しという点からも、即ち、図2の圧電トランスでは、振動の節以外の分割電極22、24にリード線等を接続する必要があるため、図1の圧電トランスの方が図2の圧電トランスよりも望ましい。
【0058】
【発明の効果】
本発明の圧電トランスでは、入力側分割電極−グランド電極間に、圧電基板の主面の幅方向に対して縦振動する基本波の共振周波数近傍の周波数の交流電圧を入力すれば、電気機械結合係数k'31 をもって圧電基板に幅方向縦振動の基本波が励振され、再び電気機械結合係数k'31 をもって出力側分割電極−グランド電極間に入力電圧と同じ周波数の出力電圧が発生し、従来のローゼン型圧電トランスと比較して、大出力電流を取り出せ、低負荷時に高出力電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の圧電トランスを示す説明図である。
【図2】第2実施形態の圧電トランスを示す斜視図である。
【図3】第2実施形態の圧電トランスの結線図である。
【図4】第2実施形態の圧電トランスの変位を示す分布図である。
【図5】従来の圧電トランスを示す説明図である。
【符号の説明】
11、21 圧電基板
12、14、22、24 入力側分割電極
13、23 出力側分割電極
15、25 グランド電極

Claims (7)

  1. 厚さ方向に分極され両主面が長方形状の圧電基板と、その圧電基板の第一の主面に形成されたグランド電極と、第二の主面を幅方向に2等分し長さ方向に延在する中心線を軸として対称配置となるように第二の主面に該主面の長さ方向に所定間隔をおいて形成された3個の入出力用分割電極とを具備するとともに、それら分割電極のうち両側の電極を入力側分割電極又は出力側分割電極、中央の電極を出力側分割電極又は入力側分割電極とし、主面の幅方向に対して縦振動することを特徴とする圧電トランス。
  2. 圧電基板の主面の幅方向に半周期となるような振動で作動する請求項1に記載の圧電トランス。
  3. 厚さ方向に分極され両主面が長方形状の圧電基板と、その圧電基板の第一の主面に形成されたグランド電極と、第二の主面を幅方向に2等分し長さ方向に延在する中心線を軸として対称配置となるように第二の主面に該主面の幅方向に所定間隔をおいて形成された3個の入出力用分割電極とを具備するとともに、それら分割電極のうち両側の電極を入力側分割電極又は出力側分割電極、中央の電極を出力側分割電極又は入力側分割電極とし、主面の幅方向に対して縦振動し、圧電基板の主面の幅方向に半周期となるような振動で作動することを特徴とする圧電トランス。
  4. 降圧用である請求項1〜3のいずれかに記載の圧電トランス。
  5. 前記グランド電極は、第一主面の全面に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の圧電トランス。
  6. 前記グランド電極は、第一の主面を幅方向に2等分し長さ方向に延在する中心線を軸として対称配置となるように個々の入出力用分割電極と同一方向に分割された3個のグランド分割電極から構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の圧電トランス。
  7. 負荷抵抗1kΩ以下の低負荷用である請求項1〜6のいずれかに記載の圧電トランス。
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