JP4443707B2 - 圧電アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバ用接合装置、磁気ヘッド加工用ダイシング装置、半導体用露光装置のXYステージ等に装着される圧電アクチュエータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の圧電アクチュエータは、基台に固定され、複数の圧電素子を直列に連結して形成した圧電素子列と、前記基台に固着され、前記圧電素子列を密封させ、該素子に圧縮力を与えるキャップと、を備えている。
【0003】
この圧電素子列に電圧を印加すると、該各圧電素子は伸長し、半球体を介して出力部材を押圧する。また、各圧電素子の印加電圧をゼロにすると、該圧電素子は元の長さに戻る。伸縮時、各圧電素子はキャップにより予圧を受けているので、出力部材に引っ張り力が加わっても圧電素子がこの引っ張り力の影響を受けることはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の圧電アクチュエータには、次の様な問題がある。
(1)圧電素子は分極処理をしなければならないが、従来例では、分極処理した後に該圧電素子にキャップを嵌着し、圧縮力を加えている。しかし、圧電素子を分極する際には、該圧電素子は一度伸びるので、無負荷の状態で行うと割れてしまうことがある。
【0005】
(2)前記圧電素子列の側面には、各圧電素子に電気を伝える内部リード電極が固定されているが、各圧電素子が伸縮すると、該内部リード電極がそれに同調して伸縮しないため該電極が破損することがある。
【0006】
(3)圧電素子の接合部は、接着剤により接着されているが、接着剤の使用量により各接合部が均一に接着されないことがある。そのため、製造工程の中において各圧電素子に偏った力が加わり、該圧電素子を破損させることがある。
【0007】
(4)圧電アクチュエータの最大変位量は、その全長の0.1%程度であるので、大きな出力を必要とする場合には、圧電素子の数を増やさなければならない。しかし、圧電素子の数を増やすと、該アクチュエータが大きくなるとともにコストも高くなる。
【0008】
この発明は上記事情に鑑み、圧電素子の破損を防止するとともに、小型でも大きな変位が得られる様にすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、複数の圧電素子を直列に連結して形成した圧電素子列と、該圧電素子列の側面に固着され、前記各圧電素子に電気を伝える内部リード電極と、該圧電素子列に装着され、各圧電素子に圧縮力を加える予圧ばねと、を備えた圧電アクチュエータであって:
前記内部リード電極は、素子接合対応部が半円状に湾曲したばね部になっている金属板であり、接着剤で接着されて一体化している前記圧電素子列の各圧電素子は、予圧ばねの圧縮力を受けながら分極処理されることを特徴とする。
【0010】
この発明の圧電素子は、内部電極層と比誘電率3000未満の圧電体層とが交互に積層された積層体であり、該積層体の側面には応力緩和層が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明の隣り合う内部電極層の縁辺は、互いに齟齬していることを特徴とする。この発明の隣り合う内部電極層における角に対応した部位は、曲線で構成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明の予圧ばねは、板状のばね材で方形状に形成され、圧電素子列の両端に圧接する頭部と底部、及び該両部を連結する胴部からなり、該胴部にはばね部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この発明は、予圧ばねの頭部にボ−ルジョイントの半球体が固着され、該半球体が、前記圧電素子列を密封するキャップ頭部の受部に内接していることを特徴とする。
【0014】
この発明の内部リード電極は、ばね板により形成されていることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前記目的を達成するため研究を重ね種々の実験を試みた。その結果、次のことがわかり、この知見に基いて本発明を完成したのである。
(1)圧電素子の分極処理は、予圧をかけた状態で行うと圧電素子が破損しないこと。
【0016】
(2)圧電素子に電気を伝える内部リード電極は、素子結合応部にばね部が形成された金属板を用いると、内部リード電極が破損しないこと。
(3)各圧電素子の接合部の接着面積をそれぞれ等しくすると、特性バラツキのない安定した製造が可能となること。
【0017】
(4)比誘電率3000未満の圧電体層を用い、積層体の側面部分に応力緩和層を設けると、アクチュエータの最大変位量が従来より大幅に大きくなること。
【0018】
【実施例】
この発明の第1実施例を図1〜図3により説明する。圧電アクチュエータSは、基台1に固定された圧電素子列2と、該圧電素子列2に被せられた予圧ばね3と、該基台1に固定され、前記圧電素子列2を密封するキャップ5と、該圧電素子列2の側面2sに設けられ、各圧電素子2aに電気を伝える内部リード電極10と、を備えている。
【0019】
この圧電素子2aは圧電、電歪、などの素子を指称するが、この圧電素子2aとして、例えば、プラスとマイナスの内部電極が交互に積層され、圧電セラミック電極が一体焼成され、圧電素子側面の内部リード電極で直列に連結した積層型圧電素子が用いられる。 この圧電素子2aを変位方向に複数直列に連結して一体化したものを圧電素子列2と称する。この圧電素子列2の圧電素子2aの個数等は必要に応じて適宜選択される。
【0020】
隣り合う圧電素子2aは、接合部2bを介して連結されている。この接合部2bの接合面2cには、その全面にわたり接着剤(図示しない)が塗布されている。この接着剤として、例えば、ショア硬度60度以下のエポキシ系接着剤を用いるが、圧電素子2aを連結する際に、該素子の変位を阻害しない伸縮性を有するものが好ましい。
【0021】
内部リード電極10は、金属板であり、圧電素子列2の側面2sに半田付けされる。この金属板10は、細帯状に形成され、各圧電素子2aの接合部2bに対応する部分、即ち、素子接合対応部はばね部10sとなっている。このばね部10sは、半円状に湾曲し、変形し易い様になっている。この金属板10として、例えば、リン青銅等のばね部材が用いられている。
【0022】
この内部リード電極10は、板状のため半田ゴテからの伝熱が良く、半田付け作業が容易であるとともに、金型での打ち抜き製造が可能であり、コストダウンを図ることができる。
【0023】
又、金属板10をセラミック等の圧電素子に半田付けすることにより、両者の熱膨張率の差により圧電素子2aに圧縮力を加えることができる。
【0024】
予圧ばね3は、板状のばね材で長方形状に形成され、圧電素子列2に圧着する頭部3aと底部3b、及び該両部3a、3bを連結する胴部3cと、を備えている。
【0025】
胴部3cの中間部は、く字状のばね部3sが設けられているが、このばね部3sの形状や大きさ、ばね定数等は必要に応じて適宜変更される。
この胴部3cの長さは、圧電素子2の長さより少し短く形成されているが、その長さは、ばね力を考慮して適宜決定される。底部3bは間隔をおいて対向する一対の係止片3e、3fからなるが、この間隔は必要に応じて適宜選択される。
【0026】
なお、この予圧ばね3は、圧電素子2に圧縮力を加えるためのものであり、その機能を有する限り形状は特に限定されない。
【0027】
この様に、圧電素子列2に予圧ばね3を装着し、各圧電素子2aに所定の圧縮力を与えた状態で該圧電素子2に高い直流電圧、例えば、3kv/mmを印加し、分極処理する。そうすると、無負荷で分極処理する場合に比べ圧電素子の割れを減少させることができる。
【0028】
予圧ばね3の頭部3aには、ボールジョイントの半球体7が設けられ、この半球体7はキャップ5の円弧状受部5aに嵌着されている。
【0029】
このボールジョイントを用いることにより、次の様な効果を得ることができる。(1)圧電素子列を組み込むときに位置決めが容易となる。
(2)キャップ5の受部の形状として、円弧状のみならず、円錐形、V字形など多種類を採用できる。そのため、必要に応じてその形状を選択できるので、受部の加工が容易となる。
(3)外部曲げ応力が緩和されるので、圧電素子の破損を防止することが出来る。
【0030】
このキャップ5は、金属製であり、その頭部5cは蛇腹ばねとなっており、又、その底部5bは基台1の本体部1aに溶接5Yされ、圧電素子列2を密封している。
【0031】
キャップ5の受部5aは、出力部材11に圧接しているが、この出力部材11には、前記受部5aに対応する円弧状受部11aが形成されている。
この受部11aは、必ずしも円弧状に形成する必要はなく、例えば、逆V字状又は円錐状に形成しても良い。
なお、図に於いて12は、リード線13をシールするハーメチック端子(ガラス端子)、2n,2mは圧電素子2aの保護部、をそれぞれ示す。
【0032】
この実施例の作動について説明する。
圧電素子列2に所定の電圧、例えば、140Vを印加すると、該圧電素子列2は予圧ばね3の圧縮力に打ち勝ちながら矢印A方向に伸長する。
【0033】
この時、内部リード電極10のばね部10Sが素子の変位を阻止しない程度にて伸長し、圧電素子の伸長に伴って内部リード電極10に加わる引っ張り力は吸収されるので、該電極10自身に無理な力が加わることはない。また、圧電素子2aの接合部2bの接合面2cが、全面にわたって接着されているので、接合面2cでのクラックが発生しない。更に、接着不良が発生せず、製造中の不良も少なくなる。
【0034】
圧電素子列2の伸長により半球体7を介して出力部材11が矢印A方向に移動し、図示しない被移動物を同方向に微動させる。
この出力部材11の移動に伴いキャップ5は伸びるが、頭部5aの蛇腹ばねは、予圧ばね3のばね部3Sより軟らかいばね定数に設定されているので、出力部材11の円滑な移動を阻害する程度の大きな抵抗となることはない。
【0035】
圧電素子列2の印加電圧をゼロにすると、該圧電素子列2は元の位置に戻る。この時圧電素子2aは予圧ばね3により圧縮力、即ち、予圧を受けているので、出力部材11に該圧縮力より小さな引っ張り力が加わっても、圧電素子2aがこの引っ張り力の影響を受けることはない。また、この時、接合部2bに引っ張り力がかかっても、圧電素子2aの接合部2bの接合面2cが、全面にわたって接着されているので、接合面2cでのクラックが発生しない。
【0036】
出力部材11に加わる引っ張り力が前記圧縮力より大きな場合は、キャップ5に形成されている受部5aと圧電素子列2に固着されている半球体7とが離れる。そのため、圧電素子2aに引っ張り力が加わることはない。
【0037】
圧電アクチュエータSに圧電素子2の伸縮方向Aと異なる方向、例えば、矢印A1方向からの力が加わると、該力はキャップ5を変位させるが、ボールジョイントの半球体7とキャップ5の受部5a及び該受部5aと出力部材11の受部11a、により吸収されるので、圧力素子列2に曲げ応力が伝達されることはない。
【0038】
この発明の第2実施例を図4、図5により説明するが、図1〜図3と同じ図面符号はその名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は次の通りである。
(1)予圧ばね3の胴部3cに形成されているばね部23sが、半円弧状であること。
【0039】
(2)キャップ5の頭部23aにボールジョイントの半球体27が固定されていること。
(3)出力部材11に、前記半球体27の受部21aが設けられており、この受部21aが逆V字状であること。
【0040】
(4)各圧電素子の接合部2bの接合面2cが、その中央に円形状に形成された同一面積の接着剤塗布部22cを有し、この接着剤塗布部22cの全範囲にわたり接着剤が塗布されること。
(5)内部リード電極10のばね部20sが、左湾曲部20Lと、その反対向の右湾曲部20Rとから構成されていること。
【0041】
この発明の第3実施例を図6〜図8により説明するが、この実施例と第1実施例との相違点は次の通りである。
(1)圧電素子2aが、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛などの様な比誘電率3000未満の圧電材料を用いて構成された圧電体層31と内部電極層32(負極32a及び正極32b)とが交互に積層された、積層体である積層型圧電素子であること。 この積層体の側面には、隣り合う前記圧電体層31によって挟まれ、かつ、前記圧電体層31よりも弾性率の小さな応力緩和層35が設けられている。前記隣り合う内部電極層32の縁辺32X,32Yが互いに齟齬し、重ならないようになっている。
(2)内部電極層32に連結される内部リード電極10は、そのばね部30Sが波形状に形成されていること。
【0042】
(3)実験によると、この積層型圧電素子を用いたアクチュエータは、従来例に比べ1.5倍の変位量が得られた。
又、応力緩和部35を設けるとともに、内部電極層32の縁辺32X,32Yを互いに齟齬させたので、該圧電素子に電圧を印加した際、積層体の側面部や内部に問題となるような応力が発生しない。
【0043】
特に、圧電体層31の圧電歪みは負極32a或いは正極32bの縁辺近傍から圧電体層31の端に向かって徐々に減少していくので、内部応力は分散・緩和される。そのため、アクチュエータは長時間使用しても故障しない。
【0044】
この発明の第4実施例を図9により説明するが、この実施例と第3実施例との相違点は次の通りである。
(1)略直方体の積層体の角が面取りされ、積層体の側面同志が交差して出来る角に対応した部分が曲面41cになっていること。
【0045】
(2)圧電体層41は、比誘電率が3000未満の圧電材料を用いて構成されていること。
(3)内部電極層42における角に対応する部位が曲線42cで構成され、負極42a及び正極42bの角に丸味を持たせたこと。なお、両極42a、42bは同一形状である。
(4)実験によると、この実施例においても前記実施例と同様の効果が得られた。
【0046】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成したので、次のような顕著な効果を奏する。
(1)予圧ばねにより圧縮力をかけながら圧電素子の分極処理を行うので、該圧電素子の割れを少なくすることができる。
【0047】
(2)内部リード電極は、ばね部を有する金属板なので、圧電素子の変位の際、このばね部が伸縮する。そのため、該圧電素子に無理な力がかからないので、破損事故の発生を防止することが出来る。
(3)各圧電素子の接合部の接着面積は、等しく形成されているので、各接着面は均一な力を受ける。そのため、接着面でのクラック発生を防止できる。
【0048】
(4)積層型圧電素子は、比誘電率3000未満の圧電材料を用いて形成するので、従来例に比べ1.5倍の変位量を得ることが出来る。そのため、この圧電素子を組み込んだ圧電アクチュエータは、その全長の30%を短縮できるので、小型化することが出来る。この小型化により製造コストが低減し製品のコストダウンを図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す断面図である。
【図2】圧電素子の拡大平面図である。
【図3】内部リード電極の拡大図の一部を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す断面図である。
【図5】圧電素子の拡大平面図である。
【図6】本発明の第3実施例の圧電素子を示す正面図の一部を示す図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図の一部を示す図である。
【図8】図8(a)は、負極の内部電極層を印刷した圧電体層の拡大平面図である。
図8(b)は、正極の内部電極層を印刷した圧電体層の拡大平面図である。
【図9】本発明の第4実施例を示す拡大平面図で、図8に相当する図である。
【符号の説明】
1 基台
2 圧電素子列
2a 圧電素子
3 予圧ばね
5 キャップ
7 半球体
10 内部リード電極
Claims (7)
- 複数の圧電素子を直列に連結して形成した圧電素子列と、該圧電素子列の側面に固着され、前記各圧電素子に電気を伝える内部リード電極と、該圧電素子列に装着され、各圧電素子に圧縮力を加える予圧ばねと、を備えた圧電アクチュエータであって:
前記内部リード電極は、素子接合対応部が半円状に湾曲したばね部になっている金属板であり、
接着剤で接着されて一体化している前記圧電素子列の各圧電素子は、予圧ばねの圧縮力を受けながら分極処理されることを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 圧電素子は、内部電極層と比誘電率3000未満の圧電体層とが交互に積層された積層体であり、該積層体の側面には応力緩和層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
- 隣り合う内部電極層の縁辺は、互いに齟齬していることを特徴とする請求項2記載の圧電アクチュエータ。
- 隣り合う内部電極層における角に対応した部位は、曲線で構成されていることを特徴とする請求項2記載の圧電アクチュエータ。
- 予圧ばねは、板状のばね材で方形状に形成され、圧電素子列の両端に圧接する頭部と底部、及び該両部を連結する胴部からなり、該胴部にはばね部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
- 予圧ばねの頭部にボ−ルジョイントの半球体が固着され、該半球体が、前記圧電素子列を密封するキャップ頭部の受部に内接していることを特徴とする請求項5記載の圧電アクチュエータ。
- 内部リード電極は、ばね板により形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
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