JP2568403B2 - 自動二輪車の空冷装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、車輪ハブと、この車輪ハブに形成される
ブレーキディスクとを空冷するための装置に関する。

（従来の技術） 従来、自動二輪車における車輪の支承部には、車幅方
向に延びる軸心回りに回転自在となるよう車体フレーム
側に車輪ハブを支承させ、この車輪ハブの軸方向両端部
にそれぞれ外フランジを形成すると共に、これら両外フ
ランジにスポークを介してタイヤを支持させたものがあ
る。

また、上記車輪を制動させて、車両を制動可能とする
ディスクブレーキを備えたものがあり、これには、上記
軸心上で、上記両外フランジのうちのいずれか一方の外
フランジの車幅方向外面に対面するようブレーキディス
クを設け、このブレーキディスクを同上一方の外フラン
ジに取り付け、上記車体フレーム側にキャリパを取り付
けたものがある。

そして、ライダーが制動操作をすれば、上記キャリパ
が有する一対のパッドが、上記ブレーキディスクを挟み
付けこれの各外側面と摩擦係合して車輪が制動され、こ
れにより、車両が制動可能とされている。

（発明が解決しようとする問題点） ところで、車両の走行時、車輪ハブがその軸心回りに
回転するときの車体フレーム側に対する摩擦熱で、この
車輪ハブの温度は上昇傾向となる。また、上記制動時に
おける摩擦係合による摩擦熱で、上記ブレーキディスク
の温度も上昇傾向になると共に、この温度がこのブレー
キディスクを支持する上記一方の外フランジに伝達され
てこの外フランジの温度も上昇傾向となる。

このため、上記各外フランジを含む車輪ハブと、ブレ
ーキディスクとが高温になることを防止する上で、これ
らをそれぞれ十分に空気冷却させることが望まれる。

しかし、上記従来の技術における両外フランジ間の第
１空間はこれら両外フランジとスポークとで挟まれてお
り、このため、この第１空間における走行風の通風が阻
害され、よって、上記両外フランジを含む車輪ハブの空
気冷却が不十分になるおそれがある。

また、上記一方の外フランジとブレーキディスクとは
互いに接近して設けられており、これら両者の間の第２
空間は狭いため、この第２空間における走行風の通風も
阻害され、よって、上記一方の外フランジと共にブレー
キディスクの空気冷却も不十分になるおそれがある。

そこで、上記一方の外フランジに車幅方向に貫通して
上記第１、第２空間を連通させる通気孔を形成し、この
通気孔を通し、走行風の通風を促進させ、これにより、
両外フランジやブレーキディスクの空気冷却を向上させ
ることが考えられる。

しかし、上記したように外フランジに単に通気孔を形
成すると、この外フランジの強度が低下して、タイヤか
らの大きな負荷に抵抗できなくなるおそれがある。

（発明の目的） この発明は、上記のような事情に注目してなされたも
ので、両外フランジを含む車輪ハブとブレーキディスク
の空気冷却が十分になされるようにして、これらが高温
になることを効果的に抑制し、かつ、このようにした場
合でも、上記車輪ハブの強度が十分に確保されるように
することを目的とする。

（発明の構成） 上記目的を達成するためのこの発明の特徴とするとこ
ろは、車幅方向に延びる軸心17a回りに回転自在となる
よう車体フレーム２側に車輪ハブ18を支承させ、この車
輪ハブ18の軸方向両端部にそれぞれ外フランジ19,19を
形成すると共に、これら両外フランジ19,19にスポーク2
0を介してタイヤ21を支持させ、同上軸心17a上で、上記
両外フランジ19,19のうちのいずれか一方の外フランジ1
9の車幅方向外面に対面するようブレーキディスク27を
設け、このブレーキディスク27を同上一方の外フランジ
19に取り付けた自動二輪車において、上記一方の外フラ
ンジ19の外面にボス26を一体的に突設し、このボス26に
締結具30により上記ブレーキディスク27を取り付け、同
上一方の外フランジ19に車幅方向に貫通する通気孔31を
上記軸心17a回りの周方向で複数形成すると共に、隣り
合う上記通気孔31,31の間における上記一方の外フラン
ジ19の外面にそれぞれ羽根32を一体的に突設し、上記車
輪ハブ18の回転に伴い回転する上記羽根32が、空気流を
生じさせると共にこの空気流を上記通気孔31を通し上記
両外フランジ19,19間の第１空間36から上記一方の外フ
ランジ19とブレーキディスク27との間の第２空間37に導
くようにし、上記各羽根32の基部の回転方向前面を円弧
凹面33とし、上記軸心17a上に位置するリング38を上記
一方の外フランジ19の外面に一体的に突設し、このリン
グ38を上記各通気孔31の近傍でこれら通気孔31よりも外
フランジ19の径方向における内方に配設した点にある。

（実施例） 以下、この発明の実施例を図面により説明する。

第２図において、１は自動二輪車で、その車体フレー
ム２の前部にはフロントフォーク３が操向自在に支承さ
れ、このフロントフォーク３はその下端に前輪４を、上
端にハンドル５をそれぞれ支持している。一方、同上車
体フレーム２の後部には左右一対のリヤアーム7,7が上
下揺動自在に枢支され、このリヤアーム7,7の揺動端は
後輪８を支持している。

同上車体フレーム２にはエンジン11が取り付けられ、
上記後輪８はこのエンジン11によりチェーン伝動手段12
を介して回転駆動する（第２図中矢印Ｒ）。また、上記
後輪８の回転を制動可能とするディスクブレーキ13が設
けられる。その他、14は燃料タンク、15はシート、16は
チェーン伝動手段12のチェーンを緊張調整するチェーン
プラーである。

第１図、第３図および第４図において、上記リヤアー
ム7,7は、軸心17aが車幅方向に延びるボルト状の車軸17
を支持しており、この車軸17に前記後輪８が支承されて
いる。即ち、この後輪８は上記車体フレーム２側である
車軸17にその軸心17a回りに回転自在となるように支承
される車輪ハブ18を有している。この車輪ハブ18はその
軸方向両端部にそれぞれ形成される外フランジ19,19を
有し、この外フランジ19,19にスポーク20を介してタイ
ヤ21が支持されている。

上記車輪ハブ18の左方（自動二輪車１の進行方向前方
に向っての方向をいう。以下同じとする）で、上記車軸
17に回転体23が回転自在に支承され、この回転体23には
前記チェーン伝動手段12を構成する従動鎖車24がねじ止
めされると共に、同上回転体23がダンパゴム25を介して
左側の外フランジ19を回転させるようになっている。即
ち、エンジン11からの動力が上記チェーン伝動手段12を
介して回転体23に伝達されると、この回転体23はダンパ
ゴム25を介して後輪８を回転させる。そして、この場
合、車輪ハブ18と回転体23の一方から他方へ伝わろうと
する衝撃力はダンパゴム25で吸収され、円滑な動力伝達
が確保される。

前記ディスクブレーキ13は、上記両外フランジ19,19
のうちの一方（右側）の外フランジ19の車幅方向の外面
に上記軸心17a上で対面するブレーキディスク27を有し
ている。上記一方の外フランジ19の外面にはボス26が一
体的に突設され、このボス26に上記ブレーキディスク27
が締結具30によりねじ止めされ、これにより、上記一方
の外フランジ19の外面に上記ブレーキディスク27が取り
付けられている。また、同上ディスクブレーキ13は上記
リヤアーム７側に車軸17によりねじ止めされたキャリパ
28を有している。

上記キャリパ28は上記ブレーキディスク27を挟む一対
のパッド29,29を有しており、前記ハンドル５に設けた
図示しないブレーキレバーを操作すれば、上記両パッド
29,29が上記ブレーキディスク27を挟み付けて摩擦接合
し、これにより、後輪８の制動、つまり、車両の制動が
行われるようになっている。

上記構成において、一方の外フランジ19には上記軸心
17a回りの周方向で複数個所に車幅方向に貫通する通気
孔31が形成されている。また、上記一方の外フランジ19
の外面には、上記軸心17a回りの周方向で隣り合う上記
通気孔31,31間にそれぞれ羽根32が一体的に突設されて
いる。

そして、後輪８の回転に伴って、上記車輪ハブ18が第
３図と第４図中矢印Ｒで示した方向に回転するときに
は、この車輪ハブ18の回転に伴い回転する上記各羽根32
が、空気流を生じさせ、かつ、この空気流を上記各通気
孔31を通し上記両外フランジ19,19間の第１空間36から
上記一方の外フランジ19とブレーキディスク27との間の
第２空間37に向って各図中矢印A,A′で示すように導
く。

上記の場合、特に第４図で示すように各羽根32の基部
の回転方向前面は、上記一方の外フランジ19の径方向に
沿った視線でみて、円弧凹面33をなしている。

上記第２空間37内をブレーキディスク27側に向わされ
る空気流のうち、第１図中矢印Ａで示す一部の空気流
は、その遠心力で上記第２空間37から車輪ハブ18の径方
向外方に向って流れる。

また、同上第２空間37内をブレーキディスク27側に向
わされる空気流のうち、第１図中矢印Ａ′で示す他部の
空気流は、ブレーキディスク27に形成された他の通気孔
35を通って、車幅方向の外方に流れ、これにより、上記
ブレーキディスク27がより効果的に冷却される。

第１図と第３図において、上記軸心17a上で、上記一
方の外フランジ19の外面にリング38が一体的に突設され
ている。このリング38は、上記各通気孔31の近傍に配設
され、かつ、これら各通気孔31よりも外フランジ19の径
方向における内方に配設されている。上記リング38によ
って、上記各通気孔31を設けたことによる上記一方の外
フランジ19の強度低下が補填されている。

（発明の効果） この発明によれば、車輪ハブが有する両外フランジの
うちの一方の外フランジの外面にボスを一体的に突設
し、このボスに締結具により上記ブレーキディスクを取
り付けてある。

このため、上記ボスが上記一方の外フランジの外面か
ら突出していて走行風との接触面積が増える分、上記一
方の外フランジを含む車輪ハブは効果的に空気冷却され
る。

また、上記一方の外フランジに車幅方向に貫通する通
気孔を上記車輪ハブの軸心回りの周方向で複数形成する
と共に、隣り合う上記通気孔の間における上記一方の外
フランジの外面にそれぞれ羽根を一体的に突設し、上記
車輪ハブの回転に伴い回転する上記羽根が、空気流を生
じさせると共にこの空気流を上記通気孔を通し上記両外
フランジ間の第１空間から上記一方の外フランジとブレ
ーキディスクとの間の第２空間に導くようにしてある。

このため、上記一方の外フランジの通気孔を通し、両
外フランジ間の第１空間から、上記一方の外フランジと
ブレーキディスクとの間の第２空間に向っての通風が促
進される。しかも、この場合、羽根は外フランジの外面
から突出していて、走行風に十分接触して空気冷却の効
果が向上すると共に、上記通風は回転する上記羽根によ
って強制的に行われる。

よって、上記両外フランジを含む車輪ハブと、ブレー
キディスクは共に効果的に空気冷却されることから、各
種の摩擦熱で上記車輪ハブやブレーキディスクが高温に
なることは、より確実に抑制される。

また、上記各羽根の基部の回転方向前面を円弧凹面と
してある。

このため、上記羽根により空気流は円滑に生じさせら
れてブレーキディスク側に向わされる。よって、上記し
たように空気冷却が強制的に行われるものでありなが
ら、風切音の発生が抑制される。

更に、上記車輪ハブの軸心上で、上記一方の外フラン
ジの外面にリングを一体的に突設し、このリングを上記
各通気孔の近傍に配設してある。

このため、上記一方の外フランジに通気孔を形成した
ことによるこの外フランジの強度低下は、上記リングに
よって防止される。

よって、両外フランジを含む車輪ハブと、ブレーキデ
ィスクの空気冷却が十分になされると共に、上記車輪ハ
ブの強度が十分に確保される。

しかも、上記リングは上記通気孔よりも外フランジの
径方向における内方に配設してある。

このため、上記両外フランジ間の第１空間から、各通
気孔を通り上記一方の外フランジとブレーキディスクと
の間の第２空間に達した空気流が、その遠心力で上記第
２空間から車輪ハブの径方向外方に向うとき、この空気
流は上記リングに邪魔されることなく、上記外方に流れ
出ることとなる。

よって、上記したように一方の外フランジの強度を十
分に確保させるようリングを設けた場合でも、上記両外
フランジを含む車輪ハブとブレーキディスクの空気冷却
は効果的になされる。

【図面の簡単な説明】

図はこの発明の実施例を示し、第１図は第２図のＩ−Ｉ
線矢視断面図、第２図は自動二輪車の全体側面図、第３
図は第２図の部分拡大一部切欠図、第４図は第３図のIV
−IV線矢視断面図である。 １……自動二輪車、２……車体フレーム、８……後輪、
17……車軸、17a……軸心、18……車輪ハブ、19……外
フランジ、20……スポーク、21……タイヤ、27……ブレ
ーキディスク、31……通気孔、32……羽根、33……円弧
凹面、36……第１空間、37……第２空間、38……リン
グ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】車幅方向に延びる軸心回りに回転自在とな
   るよう車体フレーム側に車輪ハブを支承させ、この車輪
   ハブの軸方向両端部にそれぞれ外フランジを形成すると
   共に、これら両外フランジにスポークを介してタイヤを
   支持させ、同上軸心上で、上記両外フランジのうちのい
   ずれか一方の外フランジの車幅方向外面に対面するよう
   ブレーキディスクを設け、このブレーキディスクを同上
   一方の外フランジに取り付けた自動二輪車において、 上記一方の外フランジの外面にボスを一体的に突設し、
   このボスに締結具により上記ブレーキディスクを取り付
   け、同上一方の外フランジに車幅方向に貫通する通気孔
   を上記軸心回りの周方向で複数形成すると共に、隣り合
   う上記通気孔の間における上記一方の外フランジの外面
   にそれぞれ羽根を一体的に突設し、上記車輪ハブの回転
   に伴い回転する上記羽根が、空気流を生じさせると共に
   この空気流を上記通気孔を通し上記両外フランジ間の第
   １空間から上記一方の外フランジとブレーキディスクと
   の間の第２空間に導くようにし、上記各羽根の基部の回
   転方向前面を円弧凹面とし、上記軸心上に位置するリン
   グを上記一方の外フランジの外面に一体的に突設し、こ
   のリングを上記各通気孔の近傍でこれら通気孔よりも外
   フランジの径方向における内方に配設したことを特徴と
   する自動二輪車の空冷装置。