JP2566580B2 - 炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体 - Google Patents
炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体Info
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Description
(産業上の利用分野) この発明は、高温強度,耐熱性,耐食性等に優れてい
ることが要求される部品の素材として利用され、例えば
自動車用エンジン部品の素材として好適に利用される炭
化珪素・窒化珪素質複合焼結体に関するものである。 (従来の技術) 炭化珪素(SiC)と窒化珪素(Si3N4)を主体とする従
来の複合焼結体としては、例えば、10〜72体積%SiCと
5〜65体積%Si3N4と5〜40体積%Siとからなる複合焼
結体(特開昭61-36176号公報)や、SiCとSi3N4を主体と
し且つ0.05〜50重量%の希土類酸化物を添加して焼結し
た複合焼結体(特開昭60-46973号公報)や、SiCとSi3N4
との混合粉末に周期律表第II,III,IV族の金属およびこ
れらの酸・炭化物を混合して焼結した複合焼結体(特開
昭58-91070号公報)などが国内特許公開公報に開示され
たものとしてあり、そのほか、Journal of American Ce
ramic Society 56(9)445 (1973)ではランゲが、ま
た同じく63(9-10)597 (1978)ではグレスコビッチが
それぞれ炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体の機械的特性
について報告したものがある。 (発明が解決しようとする問題点) しかしながら、従来の炭化珪素・窒化珪素質複合焼結
体では、焼結時に緻密化を優先するためにホットプレス
を採用する必要があったり、助剤を多量に添加する必要
があったりしたため、ホットプレスの使用により生産性
が低いものとなったり、多量の助剤添加により高温強度
の向上に限界があったりするという問題点を有してい
た。 (発明の目的) この発明は、上述した従来の問題点にかんがみてなさ
れたもので、ホットプレスを採用しなくとも常圧焼結に
より十分に緻密化して破壊靱性および強度にすぐれ、ま
た、多量の助剤を添加しなくともすむため高温強度が高
い炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体を提供することを目
的としているものである。
ることが要求される部品の素材として利用され、例えば
自動車用エンジン部品の素材として好適に利用される炭
化珪素・窒化珪素質複合焼結体に関するものである。 (従来の技術) 炭化珪素(SiC)と窒化珪素(Si3N4)を主体とする従
来の複合焼結体としては、例えば、10〜72体積%SiCと
5〜65体積%Si3N4と5〜40体積%Siとからなる複合焼
結体(特開昭61-36176号公報)や、SiCとSi3N4を主体と
し且つ0.05〜50重量%の希土類酸化物を添加して焼結し
た複合焼結体(特開昭60-46973号公報)や、SiCとSi3N4
との混合粉末に周期律表第II,III,IV族の金属およびこ
れらの酸・炭化物を混合して焼結した複合焼結体(特開
昭58-91070号公報)などが国内特許公開公報に開示され
たものとしてあり、そのほか、Journal of American Ce
ramic Society 56(9)445 (1973)ではランゲが、ま
た同じく63(9-10)597 (1978)ではグレスコビッチが
それぞれ炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体の機械的特性
について報告したものがある。 (発明が解決しようとする問題点) しかしながら、従来の炭化珪素・窒化珪素質複合焼結
体では、焼結時に緻密化を優先するためにホットプレス
を採用する必要があったり、助剤を多量に添加する必要
があったりしたため、ホットプレスの使用により生産性
が低いものとなったり、多量の助剤添加により高温強度
の向上に限界があったりするという問題点を有してい
た。 (発明の目的) この発明は、上述した従来の問題点にかんがみてなさ
れたもので、ホットプレスを採用しなくとも常圧焼結に
より十分に緻密化して破壊靱性および強度にすぐれ、ま
た、多量の助剤を添加しなくともすむため高温強度が高
い炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体を提供することを目
的としているものである。
(問題点を解決するための手段) この発明に係る炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体は、
炭化珪素と窒化珪素を主体とし、その他必要に応じて若
干の酸化物等の助剤を含む複合焼結体であって、前記窒
化珪素が針状のβ−Si3N4からなっていると共に、前記
炭化珪素が粒子状のβ−SiC単結晶からなっていて粒子
径が2〜30μmであることを特徴としているものであ
る。 この発明に係る炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体は、
上記したように炭化珪素(SiC)と窒化珪素(Si3N4)を
主体とするものであり、より望ましくは15〜35重量%Si
C-65〜85重量%Si3N4の範囲のものとするのがよく、そ
のほか必要に応じてY2O3,Al2O3などの酸化物系等の助剤
を適量、より望ましくは10〜18重量%程度含んでいても
よい。 そして、この発明に係る炭化珪素・窒化珪素質複合焼
結体は、前記したように、窒化珪素が針状のβ−Si3N4
からなるものであり、炭化珪素が粒子状のβ−SiC単結
晶からなるものであって、β−SiC単結晶粒子と針状の
β−Si3N4マトリックスとがガラス質助剤で結合された
複合焼結体からなっているものである。 前記針状のβ−Si3N4は焼結後にその粒子径が0.3〜3.
0μm,粒子長が1〜6μm程度に成長しているものであ
り、粒子状のβ−SiC単結晶は焼結において変化しない
ものであって、SiC単結晶の粒子径が2μmよりも小さ
いと、細かなSiC単結晶粒子が針状のβ−Si3N4粒界に存
在し、破壊靱性KICおよび強度の向上に対する効果が小
さいものとなり、反対にSiC単結晶の粒子径が30μmよ
りも大きいと焼結が十分良好になされないため緻密な焼
結体が得られず、破壊靱性および強度とも良好なものと
ならないので、SiC単結晶の粒子径は2〜30μmとする
必要がある。 そして、SiC単結晶粒子と針状に成長したβ−Si3N4マ
トリックスとが助剤のガラスで結合された複合焼結体に
おいて、前記β−Si3N4の粒子径が0.3〜3.0μm程度,
粒子長が1〜6μm程度の針状粒に成長しており、この
針状粒子長の約0.3〜30倍、すなわち前述の2〜30μm
の粒子径をもつSiC単結晶粒子が混合した結晶相である
ようにすれば、常圧焼結によって破壊靱性および強度に
すぐれた焼結体が得られるようになる。 (実施例) 次に、この発明の実施例を比較例とともに説明する
が、これらの結果は第1表にまとめて示してある。 実施例1 この実施例1では、α−Si3N4粉末(シュタルク製)8
5重量%に、Y2O3粉末(信越化学製)10重量%とAl2O
3(アルコア製)5重量%とを添加してボールミル内に
装入し、分散媒としてエタノールを加えて96時間ボール
ミル混合した。 この混合後に、分級により調製した平均粒径2.0μm
のβ−SiC単結晶粒子20体積%を加えてボールミルにて2
4時間再混合し、ロータリーエバポレータにて乾燥し
た。 続いて、乾燥後の粉末を210μm以下となるまでほぐ
してふるい分けし、金型による予備成形を行った。この
予備成形は金型を用いて500Kg/cm2の加圧力でプレス成
形することにより行った。 この予備成形後の成形体に対し静水圧プレス(CIP)
により4000Kg/cm2の加圧力で再加圧して成形体を得たの
ち、この成形体を常圧焼結炉内に挿入し、N2 1気圧下,1
700℃,1時間の条件で常圧焼結を行った。 次いで、得られた焼結体の密度を測定したところ、3.
30であり、理論密度比では99.1%であって、ほぼ焼結体
密度としての限界値が得られた。また、硬さにおいても
Hv1630とかなり大きな値を示した。 この製造工程においては、前記混合粉末が焼結の際の
昇温過程で液相焼結を生ずる。すなわち、1700℃付近に
おいて原料のα−Si3N4がβ−Si3N4に相転移し、このβ
−Si3N4が針状化して成長する。一方、同じ原料であるS
iCはこの温度では変化せず、単結晶のままである。した
がって、1700℃で1時間保持した後には、β−SiC単結
晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤のガラ
ス(Y2O3‐Al2O3)で結合された複合焼結体となる。 この複合焼結体において、β−Si3N4の粒子径は0.3〜
3.0μm程度,粒子長は1〜6μm程度の針状粒子に成
長している。そして、この針状粒子長の約0.33〜2倍の
粒子径(すなわち2.0μm)をもつβ−SiC単結晶粒子が
混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となっている。 次に、このようにして得た焼結体の常温および高温
(1300℃)での曲げ強度および破壊靱性を次の要領で測
定した。 (曲げ強度) 第1図に示すように、h=3mm、b=4mm、L1=35mmの
試料1をl1=30mmの支持体2,3で支え、JIS 3点曲げ試験
に準じて、荷重速度を0.5mm/minとして加圧子4により
荷重を加え、次式により破壊強度を求めた。 (破壊靱性、KIC) 第2図(a)に示すW=4mm、B=3mm、L2=35mmの試
料5にシェブロンノッチ6を設け、第2図(b)に示す
ようにl2=10mmの支持体7,8とl3=30mmの支持体9,10と
で支え、荷重速度を0.05mm/minとして荷重を加え、シェ
ブロンノッチ4点曲げ試験を行って破壊強度の最大値
(Pmax)を求め、次式に従って破壊靱性KIC値を算出し
た。 但し、Yminは形状から決まる定数であり、FEM(有限要
素法)で計算した。 この結果、常温での曲げ強度は85Kgf/mm2,破壊靱性K
ICは 高温での曲げ強度は51Kgf/mm2であるという優れた値を
示し、緻密でかつ破壊時のクラック進展を妨げる微構造
のものとなっており、硬さも大きいため耐粒子衝突特性
にも優れたものとなっていた。 実施例2 この実施例2では、β−SiC単結晶粒子径が10.0μm
であるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪
素・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この実施例2で得られた複合焼結体においても、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の長さの針状粒子に成長したβ−Si3N4に対して約1.7
〜10倍の粒子径(すなわち、10.0μm)をもつβ−SiC
単結晶粒子が混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となっ
ていた。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.31であり、理論密度比では99.4%と著しく高い
値を示した。また、焼結体の機械的強度を測定したとこ
ろ、常温での曲げ強度は89Kgf/mm2,破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は50Kgf/mm2であるという優れた値を
示し、緻密でかつ破壊時のクラック進展を妨げる微構造
のものとなっていた。 実施例3 この実施例3では、β−SiC単結晶粒子径が30.0μm
であるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪
素・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この実施例3で得られた複合焼結体においても、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の長さの針状粒子に成長したβ−Si3N4に対して約5
〜30倍の粒子径(すなわち、30.0μm)をもつSiC単結
晶粒子が混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となってい
た。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.30であり、理論密度比では99.1%とかなり高い
値を示した。また、焼結体の機械的強度を測定したとこ
ろ、常温での曲げ強度は91Kgf/mm2,破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は55Kgf/mm2であるという優れた値を
示した。 比較例1 この比較例1では、SiC単結晶粒子を用いないほかは
実施例1と同様にしてN2 1気圧下,1700℃,1時間の条件
による常圧焼結を行って窒化珪素質焼結体を作成した。 この比較例1で得た焼結体はβ−Si3N4よりなる結晶
相をもっており、この焼結体の密度を測定したところ、
3.32であり著しく高い値を示したが、この焼結体の機械
的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は72Kgf/mm
2と比較的高い値を示したものの、破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は24Kgf/mm2とかなり低い値を示し
た。 比較例2 この比較例2では、SiC単結晶粒子を用いず、85重量
%のα−Si3N4粉末と15重量%のY2O3‐Al2O3粉末とを用
いてホットプレスにより窒化珪素質焼結体を作成した。 この比較例2で得た焼結体はβ−Si3N4よりなる結晶
相ともっており、この焼結体の密度を測定したところ、
3.31であり、かなり高い値を示したが、この焼結体の機
械的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は77Kgf/
mm2と比較的高い値を示したものの、破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は31Kgf/mm2とかなり低い値を示し
た。 比較例3 この比較例3では、β−SiC単結晶粒子径が0.4μmで
あるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪素
・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この比較例3で得られた複合焼結体においては、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の針状粒子に成長したβ−Si3N4の針状粒界に約0.067
〜0.4倍の粒子径(すなわち、0.4μm)をもつ細かなSi
C単結晶粒子が存在しているβ−Si3N4・β−SiC結晶相
となっていた。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.31であり、著しく高い値を示したが、この焼結
体の機械的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は
72Kgf/mm2と比較的高い値を示したものの破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は35Kgf/mm2となかり低い値を示し
た。 比較例4 この比較例4では、β−SiC単結晶粒子径が44.0μm
であるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪
素・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この比較例4で得られた複合焼結体においても、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の針状粒子に成長したβ−Si3N4に対して約7.3〜44倍
の粗大な粒子径(すなわち、44.0μm)をもつβ−SiC
単結晶粒子が混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となっ
ていた。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.15であり、比較的高い値を示したが、この焼結
体の機械的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は
53Kgf/mm2,破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は31Kgf/mm2といずれも低い値を示し
た。
炭化珪素と窒化珪素を主体とし、その他必要に応じて若
干の酸化物等の助剤を含む複合焼結体であって、前記窒
化珪素が針状のβ−Si3N4からなっていると共に、前記
炭化珪素が粒子状のβ−SiC単結晶からなっていて粒子
径が2〜30μmであることを特徴としているものであ
る。 この発明に係る炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体は、
上記したように炭化珪素(SiC)と窒化珪素(Si3N4)を
主体とするものであり、より望ましくは15〜35重量%Si
C-65〜85重量%Si3N4の範囲のものとするのがよく、そ
のほか必要に応じてY2O3,Al2O3などの酸化物系等の助剤
を適量、より望ましくは10〜18重量%程度含んでいても
よい。 そして、この発明に係る炭化珪素・窒化珪素質複合焼
結体は、前記したように、窒化珪素が針状のβ−Si3N4
からなるものであり、炭化珪素が粒子状のβ−SiC単結
晶からなるものであって、β−SiC単結晶粒子と針状の
β−Si3N4マトリックスとがガラス質助剤で結合された
複合焼結体からなっているものである。 前記針状のβ−Si3N4は焼結後にその粒子径が0.3〜3.
0μm,粒子長が1〜6μm程度に成長しているものであ
り、粒子状のβ−SiC単結晶は焼結において変化しない
ものであって、SiC単結晶の粒子径が2μmよりも小さ
いと、細かなSiC単結晶粒子が針状のβ−Si3N4粒界に存
在し、破壊靱性KICおよび強度の向上に対する効果が小
さいものとなり、反対にSiC単結晶の粒子径が30μmよ
りも大きいと焼結が十分良好になされないため緻密な焼
結体が得られず、破壊靱性および強度とも良好なものと
ならないので、SiC単結晶の粒子径は2〜30μmとする
必要がある。 そして、SiC単結晶粒子と針状に成長したβ−Si3N4マ
トリックスとが助剤のガラスで結合された複合焼結体に
おいて、前記β−Si3N4の粒子径が0.3〜3.0μm程度,
粒子長が1〜6μm程度の針状粒に成長しており、この
針状粒子長の約0.3〜30倍、すなわち前述の2〜30μm
の粒子径をもつSiC単結晶粒子が混合した結晶相である
ようにすれば、常圧焼結によって破壊靱性および強度に
すぐれた焼結体が得られるようになる。 (実施例) 次に、この発明の実施例を比較例とともに説明する
が、これらの結果は第1表にまとめて示してある。 実施例1 この実施例1では、α−Si3N4粉末(シュタルク製)8
5重量%に、Y2O3粉末(信越化学製)10重量%とAl2O
3(アルコア製)5重量%とを添加してボールミル内に
装入し、分散媒としてエタノールを加えて96時間ボール
ミル混合した。 この混合後に、分級により調製した平均粒径2.0μm
のβ−SiC単結晶粒子20体積%を加えてボールミルにて2
4時間再混合し、ロータリーエバポレータにて乾燥し
た。 続いて、乾燥後の粉末を210μm以下となるまでほぐ
してふるい分けし、金型による予備成形を行った。この
予備成形は金型を用いて500Kg/cm2の加圧力でプレス成
形することにより行った。 この予備成形後の成形体に対し静水圧プレス(CIP)
により4000Kg/cm2の加圧力で再加圧して成形体を得たの
ち、この成形体を常圧焼結炉内に挿入し、N2 1気圧下,1
700℃,1時間の条件で常圧焼結を行った。 次いで、得られた焼結体の密度を測定したところ、3.
30であり、理論密度比では99.1%であって、ほぼ焼結体
密度としての限界値が得られた。また、硬さにおいても
Hv1630とかなり大きな値を示した。 この製造工程においては、前記混合粉末が焼結の際の
昇温過程で液相焼結を生ずる。すなわち、1700℃付近に
おいて原料のα−Si3N4がβ−Si3N4に相転移し、このβ
−Si3N4が針状化して成長する。一方、同じ原料であるS
iCはこの温度では変化せず、単結晶のままである。した
がって、1700℃で1時間保持した後には、β−SiC単結
晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤のガラ
ス(Y2O3‐Al2O3)で結合された複合焼結体となる。 この複合焼結体において、β−Si3N4の粒子径は0.3〜
3.0μm程度,粒子長は1〜6μm程度の針状粒子に成
長している。そして、この針状粒子長の約0.33〜2倍の
粒子径(すなわち2.0μm)をもつβ−SiC単結晶粒子が
混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となっている。 次に、このようにして得た焼結体の常温および高温
(1300℃)での曲げ強度および破壊靱性を次の要領で測
定した。 (曲げ強度) 第1図に示すように、h=3mm、b=4mm、L1=35mmの
試料1をl1=30mmの支持体2,3で支え、JIS 3点曲げ試験
に準じて、荷重速度を0.5mm/minとして加圧子4により
荷重を加え、次式により破壊強度を求めた。 (破壊靱性、KIC) 第2図(a)に示すW=4mm、B=3mm、L2=35mmの試
料5にシェブロンノッチ6を設け、第2図(b)に示す
ようにl2=10mmの支持体7,8とl3=30mmの支持体9,10と
で支え、荷重速度を0.05mm/minとして荷重を加え、シェ
ブロンノッチ4点曲げ試験を行って破壊強度の最大値
(Pmax)を求め、次式に従って破壊靱性KIC値を算出し
た。 但し、Yminは形状から決まる定数であり、FEM(有限要
素法)で計算した。 この結果、常温での曲げ強度は85Kgf/mm2,破壊靱性K
ICは 高温での曲げ強度は51Kgf/mm2であるという優れた値を
示し、緻密でかつ破壊時のクラック進展を妨げる微構造
のものとなっており、硬さも大きいため耐粒子衝突特性
にも優れたものとなっていた。 実施例2 この実施例2では、β−SiC単結晶粒子径が10.0μm
であるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪
素・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この実施例2で得られた複合焼結体においても、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の長さの針状粒子に成長したβ−Si3N4に対して約1.7
〜10倍の粒子径(すなわち、10.0μm)をもつβ−SiC
単結晶粒子が混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となっ
ていた。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.31であり、理論密度比では99.4%と著しく高い
値を示した。また、焼結体の機械的強度を測定したとこ
ろ、常温での曲げ強度は89Kgf/mm2,破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は50Kgf/mm2であるという優れた値を
示し、緻密でかつ破壊時のクラック進展を妨げる微構造
のものとなっていた。 実施例3 この実施例3では、β−SiC単結晶粒子径が30.0μm
であるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪
素・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この実施例3で得られた複合焼結体においても、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の長さの針状粒子に成長したβ−Si3N4に対して約5
〜30倍の粒子径(すなわち、30.0μm)をもつSiC単結
晶粒子が混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となってい
た。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.30であり、理論密度比では99.1%とかなり高い
値を示した。また、焼結体の機械的強度を測定したとこ
ろ、常温での曲げ強度は91Kgf/mm2,破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は55Kgf/mm2であるという優れた値を
示した。 比較例1 この比較例1では、SiC単結晶粒子を用いないほかは
実施例1と同様にしてN2 1気圧下,1700℃,1時間の条件
による常圧焼結を行って窒化珪素質焼結体を作成した。 この比較例1で得た焼結体はβ−Si3N4よりなる結晶
相をもっており、この焼結体の密度を測定したところ、
3.32であり著しく高い値を示したが、この焼結体の機械
的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は72Kgf/mm
2と比較的高い値を示したものの、破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は24Kgf/mm2とかなり低い値を示し
た。 比較例2 この比較例2では、SiC単結晶粒子を用いず、85重量
%のα−Si3N4粉末と15重量%のY2O3‐Al2O3粉末とを用
いてホットプレスにより窒化珪素質焼結体を作成した。 この比較例2で得た焼結体はβ−Si3N4よりなる結晶
相ともっており、この焼結体の密度を測定したところ、
3.31であり、かなり高い値を示したが、この焼結体の機
械的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は77Kgf/
mm2と比較的高い値を示したものの、破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は31Kgf/mm2とかなり低い値を示し
た。 比較例3 この比較例3では、β−SiC単結晶粒子径が0.4μmで
あるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪素
・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この比較例3で得られた複合焼結体においては、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の針状粒子に成長したβ−Si3N4の針状粒界に約0.067
〜0.4倍の粒子径(すなわち、0.4μm)をもつ細かなSi
C単結晶粒子が存在しているβ−Si3N4・β−SiC結晶相
となっていた。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.31であり、著しく高い値を示したが、この焼結
体の機械的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は
72Kgf/mm2と比較的高い値を示したものの破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は35Kgf/mm2となかり低い値を示し
た。 比較例4 この比較例4では、β−SiC単結晶粒子径が44.0μm
であるものを用いたほかは実施例1と同様にして炭化珪
素・窒化珪素質複合焼結体を作成した。 この比較例4で得られた複合焼結体においても、β−
SiC単結晶粒子と針状のβ−Si3N4マトリックスとが助剤
のガラスで結合されたものとなっており、1〜6μm程
度の針状粒子に成長したβ−Si3N4に対して約7.3〜44倍
の粗大な粒子径(すなわち、44.0μm)をもつβ−SiC
単結晶粒子が混合したβ−Si3N4・β−SiC結晶相となっ
ていた。 次に、このようにして得た焼結体の密度を測定したと
ころ、3.15であり、比較的高い値を示したが、この焼結
体の機械的強度を測定したところ、常温での曲げ強度は
53Kgf/mm2,破壊靱性KICは 高温での曲げ強度は31Kgf/mm2といずれも低い値を示し
た。
以上説明してきたように、この発明に係る炭化珪素・
窒化珪素質複合焼結体は、炭化珪素と窒化珪素を主体と
する複合焼結体であって、前記窒化珪素が針状のβ−Si
3N4からなっていると共に、前記炭化珪素が粒子状のβ
−SiC単結晶からなっていて粒子径が2〜30μmである
単結晶β−SiC・β−Si3N4微構造のものであるため、生
産性の低いホットプレスによらなくとも常圧焼結によっ
て十分に緻密化したものとなっており、多量の助剤を添
加しないため、強度とくに高温強度が高く破壊靱性KIC
にも著しく優れており、とくに自動車用エンジン部品な
どのような機械的および熱的に苛酷な条件で使用される
部品の素材として好適なものであるという著大なる効果
がもたらされる。
窒化珪素質複合焼結体は、炭化珪素と窒化珪素を主体と
する複合焼結体であって、前記窒化珪素が針状のβ−Si
3N4からなっていると共に、前記炭化珪素が粒子状のβ
−SiC単結晶からなっていて粒子径が2〜30μmである
単結晶β−SiC・β−Si3N4微構造のものであるため、生
産性の低いホットプレスによらなくとも常圧焼結によっ
て十分に緻密化したものとなっており、多量の助剤を添
加しないため、強度とくに高温強度が高く破壊靱性KIC
にも著しく優れており、とくに自動車用エンジン部品な
どのような機械的および熱的に苛酷な条件で使用される
部品の素材として好適なものであるという著大なる効果
がもたらされる。
第1図は曲げ強度の測定要領を示す斜視図、第2図
(a)は破壊靱性の測定用試料を示す斜視図、第2図
(b)は破壊靱性の測定要領を示す正面図である。
(a)は破壊靱性の測定用試料を示す斜視図、第2図
(b)は破壊靱性の測定要領を示す正面図である。
Claims (1)
- 【請求項1】炭化珪素と窒化珪素を主体とする複合焼結
体であって、前記窒化珪素が針状のβ−Si3N4からなっ
ていると共に、前記炭化珪素が粒子状のβ−SiC単結晶
からなっていて粒子径が2〜30μmであることを特徴と
する炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62162414A JP2566580B2 (ja) | 1987-07-01 | 1987-07-01 | 炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62162414A JP2566580B2 (ja) | 1987-07-01 | 1987-07-01 | 炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS649872A JPS649872A (en) | 1989-01-13 |
JP2566580B2 true JP2566580B2 (ja) | 1996-12-25 |
Family
ID=15754146
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62162414A Expired - Lifetime JP2566580B2 (ja) | 1987-07-01 | 1987-07-01 | 炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2566580B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE69004735T2 (de) * | 1989-05-10 | 1994-05-11 | Ngk Insulators Ltd | Siliciumnitrid-Sinterkörper und Verfahren zu ihrer Herstellung. |
JP2730245B2 (ja) * | 1990-01-29 | 1998-03-25 | 日産自動車株式会社 | 炭化珪素・窒化珪素質複合焼結体の製造方法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US3890250A (en) * | 1973-03-14 | 1975-06-17 | Norton Co | Hot pressed silicon nitride containing finely dispersed silicon carbide or silicon aluminum oxynitride |
JPS63185862A (ja) * | 1987-01-29 | 1988-08-01 | 住友電気工業株式会社 | セラミツクス複合体の製造法 |
-
1987
- 1987-07-01 JP JP62162414A patent/JP2566580B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS649872A (en) | 1989-01-13 |
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