JP2565877Y2 - 車両用ディスクブレーキのキャリパボディ取付け構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、連結ボルトによってキ
ャリパボディを車体に連結する車両用ディスクブレーキ
のキャリパボディ取付け構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年の車両では、ディスクブレーキのキ
ャリパボディをアルミニウム合金等の軽金属で形成し
て、車体のバネ下重量を軽減するほか、車体側のキャリ
パ取付け部分に軽金属を用いて同様の効果を図るように
したものがある。これらキャリパボディと車体とは、デ
ィスクロータの一側面で、キャリパボディの車体取付け
部と車体のキャリパ取付け部のどちらか一方の取付け部
をディスクロータに近接して配設し、他方の取付け部を
これに重ね合わせ、取付けボルトによって連結してい
る。この取付けボルトは、前記両取付け部がディスクロ
ータに近接して配置されていることから、ディスクロー
タ側からは差込めず、反ディスクロータ側よりねじ込ん
で両取付け部を連結している。この時、ディスクロータ
側に配設される取付け部に軽量なアルミニウム合金等を
用いた場合に、取付けボルトはこれよりも硬質な鋼鉄で
形成されるので、この取付けボルトで締結されると、雌
ねじ孔のねじ山が損傷したり、緩みの原因となってい
た。

【０００３】このため、例えば実公平４−３１３５号公
報では、軟質金属で形成されたキャリパボディの車体取
付け部をディスクロータ側に配設し、該車体取付け部に
形成されたブッシュ取付け孔に、前記取付け部よりも硬
質の材料で形成されたブッシュを圧入し、このブッシュ
に形成された雌ねじ孔に取付けボルトを螺着することに
よってキャリパボディを車体に取付けたものがある。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかし上述のもので
は、ブッシュをブッシュ取付け孔へ圧入するため、ブッ
シュ取付け孔の拡がりによって取付け部が変形し、取付
け部に余分な応力が生じて損傷する虞があった。また、
車体取付け部とキャリパ取付け部とが異種金属で形成さ
れていると、両取付け部の接合面に電蝕を生じることが
ある。

【０００５】そこで本考案は、キャリパボディの車体取
付け部と車体のキャリパボディ取付け部のうち、ディス
クロータ側に配設された一方の取付け部が、取付けボル
トより軟質の材料で形成されていた場合、該一方の取付
け部に余分な応力をかけることなくブッシュを装着する
と共に、該ブッシュに形成される雌ねじ孔の剛性を確保
し、さらに両取付け部が異種金属で形成される場合でも
接合面の電蝕を安価に防止することができる車両用ディ
スクブレーキのキャリパボディ取付け構造を提供するこ
とを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め本考案の車両用ディスクブレーキのキャリパボディ取
付け構造の第１の構成では、車体のキャリパ取付け部と
キャリパボディの車体取付け部とを重ね合わせて、ディ
スクロータの一側面に近接して配置し、これら取付け部
を反ディスクロータ側よりねじ込まれる取付けボルトに
て連結するキャリパボディの取付け構造であって、前記
取付けボルトの先端雄ねじ部と螺合する雌ねじ孔を備え
たディスクロータ側の一方の取付け部が、前記取付けボ
ルトよりも軟質の材料で形成された車両用ディスクブレ
ーキのキャリパボディ取付け構造において、前記ディス
クロータ側の一方の取付け部に、反ディスクロータ側に
開口するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔よりも大径で
ディスクロータ側へ開口するブッシュ取付け孔とを連設
し、該ブッシュ取付け孔に、前記取付けボルトと同等以
上の硬度を有し、且つ内側に雌ねじ孔を形成したブッシ
ュを遊嵌すると共に、前記両取付け部の間に、爪片を有
する板状のリテーナを介装して、該リテーナの爪片を前
記ブッシュに係合させ、反ディスクロータ側の取付け部
から前記ボルト挿通孔へ差込まれた前記取付けボルトの
雄ねじ部を、前記ブッシュの雌ねじ孔に螺合して、キャ
リパボディを車体に取付けすることを特徴とし、また第
２の構成では、第１の構成で示すリテーナを不導体で形
成したことを特徴としている。

【０００７】

【作用】上記の第１の構成では、ブッシュが、ディスク
ロータ側の取付け部に形成されたブッシュ取付け孔に遊
嵌されるので、ブッシュ取付け時及び取付けボルト締結
時に、ディスクロータ側の取付け部に余分な応力が加わ
らない。また、ブッシュは、取付けボルトと同等以上の
硬度を有するので、ブッシュに形成される雌ねじ孔の剛
性が確保される。さらに、ボルト挿通孔と該ボルト挿通
孔より大径のブッシュ取付け孔とが一方の取付け部に連
設されることより段部が形成され、この段部とリテーナ
に形成された爪片とによってブッシュの抜止めが図られ
る。

【０００８】さらに、上記第２の構成により、異種金属
で形成された両取付け部では、不導体で形成されたリテ
ーナによって接合面の電蝕が防止される。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説
明する。

【００１０】ディスクブレーキ１は、ディスクロータ２
の両側部に分割されたキャリパ半体３ａ，３ｂのシリン
ダ孔４，４にピストン５，５を対向して設けたピストン
対向型で、キャリパボディ３は、キャリパ半体３ａ，３
ｂの両側部を、それぞれ２本の連結ボルト６，６で連結
して構成される。

【００１１】キャリパ半体３ａ，３ｂの間には、一対の
摩擦パッド７，７がディスクロータ２を挟んで対向配置
されている。摩擦パッド７は、ディスクロータ２の側面
と摺接するライニング７ａと、ハンガーピン８に保持さ
れる裏板７ｂとから成っており、裏板７ｂの上部にはハ
ンガーピン８が差込まれるピン孔７ｃが穿設されてい
る。

【００１２】キャリパボディ３は、ディスクロータ２の
外側を跨ぐブリッジ部３ｃに天井開口部３ｄが設けられ
ており、前記摩擦パッド７，７は、この天井開口部３ｄ
を挟んでブリッジ部３ｃに横架されるハンガーピン８を
ピン孔７ｃ，７ｃに挿通して、ディスク軸方向へ移動可
能に吊持されている。また、一方のキャリパ半体３ａの
ディスク内周側の両端には、矩形の車体取付け部３ｅ，
３ｅが突設されており、キャリパボディ３は、この車体
取付け部３ｅ，３ｅと、車体９に形成されたキャリパ取
付け部９ａ，９ａとを取付けボルト１０で連結して、車
体９に取付けられる。

【００１３】キャリパボディ３の各車体取付け部３ｅ
は、ディスクロータ２に近接して設けられ、その中央に
は反ディスクロータ側に開口するボルト挿通孔３ｆと、
該ボルト挿通孔３ｆよりも大径でディスクロータ側へ開
口するブッシュ取付け孔３ｇとが連設されており、この
ブッシュ取付け孔３ｇにブッシュ１１が遊嵌される。ま
た、各車体取付け部３ｅのディスクロータ側面には段部
３ｈが形成されている。

【００１４】キャリパボディ３を構成するキャリパ半体
３ａ，３ｂには、アルミニウム合金等の軟質な軽金属が
用いられ、キャリパ取付け部９ａと取付けボルト１０及
びブッシュ１１には、これよりも硬質な鋼鉄類が用いら
れる。

【００１５】ブッシュ１１は、ブッシュ取付け孔３ｇに
遊嵌される円筒部１１ａと、該円筒部１１ａの一端側に
一体形成される、前記段部３ｈと略同一の矩形の鍔部１
１ｂとから成っており、円筒部１１ａの内側には、取付
けボルト１０の先端に形成された雄ねじ部１０ａに螺着
される雌ねじ孔１１ｃが形成されている。また、鍔部１
１ｂの外面には、矩形の係合溝１１ｄが形成されてい
る。

【００１６】車体９に形成されたキャリパ取付け部９
ａ，９ａは、前記ボルト挿通孔３ｆ，３ｆに連通するボ
ルト挿通孔９ｂ，９ｂが穿設され、車体取付け部３ｅ，
３ｅの反ディスクロータ側にリテーナ１２を介して重ね
合わされる。

【００１７】リテーナ１２は、全体が不導体で形成され
ており、前記車体取付け部３ｅ，３ｅを覆う矩形の介装
部１２ａと、該介装部１２ａの対向する側面より突設す
る２つの爪片１２ｂ，１２ｂとにより成り、前記介装部
１２ａの中央にはボルト挿通孔１２ｃが穿設されてい
る。爪片１２ｂ，１２ｂは、介装部１２ａの側面から一
側方へ対向して突出し、その先端を向き合うように介装
部１２ａ方向へ曲げ戻して係合部１２ｄ，１２ｄとして
いる。

【００１８】上述のように形成された両取付け部３ｅ，
９ａの取付けは、まず車体取付け部３ｅに形成されたブ
ッシュ取付け孔３ｇに、ブッシュ１１の円筒部１１ａを
挿入して、円筒部１１ａの先端部を、ボルト挿通孔３ｆ
とブッシュ取付け孔３ｇとの段部３ｉに付き当て、鍔部
１１ｂを段部３ｈに当接させる。キャリパ取付け部９ａ
の反ディスクロータ側に車体取付け部３ｅをリテーナ１
２を介して重ね合わせる。リテーナ１２の爪片１２ｂ，
１２ｂを車体取付け部３ｅの側面に添わせ、先端の係合
部１２ｄをブッシュ１１の係合溝１１ｄに係合させて、
ブッシュ１１を抜止めする。取付けボルト１０をキャリ
パ取付け部９ａのボルト挿通孔９ｂより、リテーナ１２
のボルト挿通孔１２ｃに差し込み、該ボルト１０先端の
雄ねじ部１０ａを、ブッシュ１１の雌ねじ孔１１ｃに螺
着する。ブッシュ１１は、鍔部１１ｂが車体取付け部３
ｅの段部３ｈと当接しているので、取付けボルト１０を
ねじ込む際に共回りしない。

【００１９】本実施例はこのように、キャリパボディ３
の車体取付け部３ｅが、ブッシュ１１を介して、取付け
ボルト１０によってキャリパボディ取付け部９ａに取付
けられるが、ブッシュ１１は取付けボルト１０と同じ硬
度を有しているので、ブッシュ１１に形成された雌ねじ
孔１１ｃは、取付けボルト１０で締付されても破損する
虞がない。またブッシュ１１は、車体取付け部３ｅのブ
ッシュ取付け孔３ｇに遊嵌されているので、車体取付け
部３ｅに余分な応力をかけずにブッシュ１１の取付け
や、取付けボルト１０の締結を行うことができる。ま
た、リテーナ１２の爪片１２ｂがブッシュ１１の鍔部１
１ｂに形成された係合溝１１ｄに係合されているので、
ブッシュ１１の抜止めが図られている。さらに、アルミ
ニウム合金製の車体取付け部３ｅと鋳鉄製のキャリパボ
ディ取付け部９ａとの間に介装されるリテーナ１２を不
導体で形成しているので、これら取付け部３ｅ，９ａ間
の電蝕を有効に防止することができ、特に、ブッシュ１
１を抜止めするリテーナ１２を利用して電蝕防止が図れ
るのでコスト的効果が高い。

【００２０】尚、本考案は、上述の実施例のようにピス
トン対向型に限らず、どの様なタイプのディスクブレー
キにも適用できる。また、本考案は、少なくともキャリ
パボディと車体のいずれか一方の取付け部が連結ボルト
よりも軟質であることを要件とし、軟質の取付け部は連
結ボルトを反ディスクロータ側から差込む関係上、ディ
スクロータ側に配置する。

【００２１】また、ブッシュの形状は特に本実施例に限
るものではなく、円筒部の一側面をフラットに形成すれ
ばブッシュの回り止めが図れる。

【００２２】

【考案の効果】上述のように本考案は、車体のキャリパ
取付け部とキャリパボディの車体取付け部とを重ね合わ
せて、ディスクロータの一側面に近接して配置し、これ
ら取付け部を反ディスクロータ側よりねじ込まれる取付
けボルトにて連結するキャリパボディの取付け構造であ
って、前記取付けボルトの先端雄ねじ部と螺合する雌ね
じ孔を備えたディスクロータ側の一方の取付け部が、前
記取付けボルトよりも軟質の材料で形成された車両用デ
ィスクブレーキのキャリパボディ取付け構造において、
前記ディスクロータ側の一方の取付け部に、反ディスク
ロータ側に開口するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔よ
りも大径でディスクロータ側へ開口するブッシュ取付け
孔とを連設し、該ブッシュ取付け孔に、前記取付けボル
トと同等以上の硬度を有し、且つ内側に雌ねじ孔を形成
したブッシュを遊嵌すると共に、前記両取付け部の間
に、爪片を有する板状のリテーナを介装して、該リテー
ナの爪片を前記ブッシュに係合させ、反ディスクロータ
側の取付け部から前記ボルト挿通孔へ差込まれた前記取
付けボルトの雄ねじ部を、前記ブッシュの雌ねじ孔に螺
合して、キャリパボディを車体に取付けするので、前記
ディスクロータ側の一方の取付け部を軟質の材料して
も、該取付け部に余分な応力をかけることなくブッシュ
を装着することができ、さらにブッシュに形成する雌ね
じ孔の剛性を確保することができる。

【００２３】また、前記リテーナを不導体で形成するこ
とにより、両取付け部が異種金属で形成されていても、
上述の取付け構造を利用して両取付け部間の電蝕を、安
価で有効に防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の一実施例を示す取付けボルトと両取
付け部とリテーナ及びブッシュの分解斜視図

【図２】 図４のII−II断面図

【図３】 図４のIII −III 断面図

【図４】 本考案の一実施例を示すディスクブレーキの
正面図

【符号の説明】

１…ディスクブレーキ ２…ディスクロータ ３…キャリパボディ ３ａ，３ｂ…キャリパ半体 ３ｃ…ブリッジ部 ３ｅ…車体取付け部 ３ｆ…ボルト挿通孔 ３ｇ…ブッシュ取付け孔 ３ｈ…段部 ３ｊ…段部 ６…連結ボルト ７…摩擦パッド ９…車体 ９ａ…キャリパ取付け部 ９ｂ…ボルト挿通孔 １０…取付けボルト １０ａ…雄ねじ部 １１…ブッシュ １１ａ…円筒部 １１ｂ…鍔部 １１ｃ…雌ねじ孔 １１ｄ…係合溝 １２…リテーナ １２ａ…介装部 １２ｂ…爪部 １２ｃ…ボルト挿通孔 １２ｄ…係合部

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 車体のキャリパ取付け部とキャリパボデ
   ィの車体取付け部とを重ね合わせて、ディスクロータの
   一側面に近接して配置し、これら取付け部を反ディスク
   ロータ側よりねじ込まれる取付けボルトにて連結するキ
   ャリパボディの取付け構造であって、前記取付けボルト
   の先端雄ねじ部と螺合する雌ねじ孔を備えたディスクロ
   ータ側の一方の取付け部が、取付けボルトよりも軟質の
   材料で形成された車両用ディスクブレーキのキャリパボ
   ディ取付け構造において、前記ディスクロータ側の一方
   の取付け部に、反ディスクロータ側に開口するボルト挿
   通孔と、該ボルト挿通孔よりも大径でディスクロータ側
   へ開口するブッシュ取付け孔とを連設し、該ブッシュ取
   付け孔に、前記取付けボルトと同等以上の硬度を有し、
   且つ内側に雌ねじ孔を形成したブッシュを遊嵌すると共
   に、前記両取付け部の間に、爪片を有する板状のリテー
   ナを介装して、該リテーナの爪片を前記ブッシュに係合
   させ、反ディスクロータ側の取付け部から前記ボルト挿
   通孔へ差込まれた前記取付けボルトの雄ねじ部を、前記
   ブッシュの雌ねじ孔に螺合して、キャリパボディを車体
   に取付けすることを特徴とする車両用ディスクブレーキ
   のキャリパボディ取付け構造。
2. 【請求項２】 前記リテーナを不導体で形成したことを
   特徴とする請求項１記載の車両用ディスクブレーキのキ
   ャリパボディ取付け構造。