JP2559332Y2 - オーバーロックミシンにおける糸調子の設定装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、オーバーロックミシ
ンに付設されている針糸、上ルーパー糸、下ルーパー糸
等の各糸調節器を１軸の回転駆動により行い、選択され
た縫い方毎に各糸に設定すべき張力調節を一斉にできる
ようにするとともに、簡単な構造で各糸毎の設定張力の
微調節をできるようにしたことを特長とするものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来オーバーロックミシンの張力設定装
置には、例えば特開昭６２−２７９９６号公報のように
複数の糸調節器を一斉に作動させて、それぞれの糸調節
器における糸調節皿の圧接力を同時に所定の圧力に調節
できるようにしたものがある。

【０００３】また、例えば特開平２−２５５１７６号公
報のように、複数の糸調節器を一斉に作動させて、各糸
調節器ごとに設定された張力を生じさせるようにすると
ともに、各糸調節器毎に微調整装置を付設し、この微調
整装置を操作して設定張力をさらに個別に微調整できる
ようにしたものがある。

【０００４】また、本出願人の先願実開平２−７５０７
４号公報のように、選択した縫い方とその縫い方に使用
する糸のテンション値を液晶表示するようにしたものも
ある。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】一般にオーバーロック
ミシンには、本縫ミシンと異なって、上針糸用の他に上
ルーパー糸用、下ルーパー糸用の糸調節器が付設されて
いる。また、上針糸用の糸調節器には右針用と左針用の
糸調節器が付設されているものもある。これらの各糸調
節器に張力を調節される糸は、使用者が選択した縫い方
によってそれに応じた張力を設定する必要がある。

【０００６】前記先願公報のミシンを除く従来一般のオ
ーバーロックミシンは、ミシンに添えられている表を見
ながら各糸の糸調節器を手動操作して、その縫い方に指
示されている表示に従った張力設定を行うようにしてい
るが、例えば前記先願の特開昭６２−２７９９６号公報
のように、各糸調節器毎の張力設定を１軸の回転駆動に
より行うようにした装置がある。この装置では調節駆動
軸から各糸調節器に伝達される調節量の割合が一定に固
定されていたので、糸調節器間で設定張力の比を変えた
り、使用する縫糸に応じて張力の度合い変えようとする
場合には利用できず、適正な張力設定がし難いという不
便があった。

【０００７】この点、特開平２−２５５１７６号公報の
張力調節装置は、一斉に所定の設定張力を各糸調節器に
生じさせる設定装置とは別に微調整装置を備えているの
で、使用者が各糸調節器の設定張力を個別に変えること
ができ、適当に所望の張力調整を行える利点がある。し
かしながら、この先願には微調整装置の構造が複雑でコ
スト高になるという欠点がある。以上のことから本考案
が解決しようとする課題は、オーバーロックミシンの各
糸調節器を一斉に設定張力を生じさせる調節と個別に微
調整できるようにしたこの種の糸調子の設定装置の構造
を簡単化してコストダウンできるようにすることにあ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】そこで本考案は、オーバ
ーロックミシンの各糸調子軸３上に進退自在に設けられ
て、糸調子ばね４と係合して糸調子皿５の押圧を加減す
るように備えられた糸調節子６と、各糸調節子６の進退
方向に沿って移動可能に設けられ、それぞれが係合する
糸調節子６を糸調子ばね４に抗して張力設定位置に保持
するように備えられた作動子７と、上記各作動子７の一
端にそれぞれ連なり、オーバーロックミシンの縫い方に
応じた位置に作動子７を移動させる移動手段１２と、こ
の各移動手段１２を介して前記各作動子７を連結して、
選定された縫い方に応じた張力設定位置に各糸調節子６
を一斉に移動せしめる１本の回転軸１４とを備え、前記
各糸調節子６は、一方の端面で前記作動子７と接する筒
形に形成され、前記各作動子７は、一端を前記作動子移
動手段１２に係合するリンクによって形成され、該作動
子７の他端を、各糸調節器２の手動調節リング９に設け
た溝カム１０と係合させ、前記回転軸１４の回転による
各糸調節子６の一斉移動とは別に、上記手動調節リング
９の回転により作動子７の他端を移動せしめて張力設定
位置にある糸調節子６を個別に進退させ、それによって
前記糸調子皿５を付勢する糸調子ばね４のばね圧を微調
整できるように構成したことを特徴とするオーバーロッ
クミシンにおける糸調子の設定装置を提供するものであ
る。

【０００９】

【作用】本考案糸調子の設定装置は、回転軸１４を回転
させると、各作動子移動手段１２が一斉に作動して、該
移動手段１２に設定してある各種の縫い方から選択され
た縫い方の位置へ作動子７を移動させ、それに追従して
各糸調節子６が糸調子軸３上を進退し、作動子移動手段
１２と作動子７とにバックアップされて各糸調節子６が
定められた位置に固定されることにより、選択された縫
い方に応じた圧力で糸調子ばね４が糸調子皿５を付勢
し、各糸調節器２は、個別にその縫い方に設定されてい
る糸張力に一斉に自動調整される。

【００１０】また、定められた設定張力位置で糸調子ば
ね４の反発力に抗して糸調子軸３上の糸調節子６をそれ
ぞれバックアップしている作動子７は、各作動子７の他
端に連なる手動調節リング９の回転により糸調節子６の
バックアップ位置を進退させ、糸調節器２に設定されて
いる張力を個別に微調整することができる。

【００１１】以上のようにして一斉張力設定と個別の微
調整を、糸調節器２の一側に備えた作動子７に兼用させ
るようにした本考案によれば、糸調節器の一側に一斉張
力設定用の張力設定装置を設け、他側に個別の張力微調
整用の装置を付設して、各糸調子器２の両側から張力調
節を行うようにした前記従来装置（特開平２−２５５１
７６号公報の張力調節装置）に比べて装置全体の構造が
簡単になり、部品点数が減じて組立の手数も省け、この
種の装置のコストダウンができる。

【００１２】また、本装置によれば、微調整操作を行っ
た後も糸調子軸３上において糸調子ばね４に付勢される
糸調節器２の設置位置は変わらない。そのために縫い糸
を通過させる糸調子器２のテンション位置が一定してス
ムーズな縫製ができる。本考案は以上のようにして前記
の課題を解消したものである。

【００１３】

【実施例】以下に本発明の実施例を図面について説明す
る。図において、１はミシンＭの上部の面板ｍの内側に
固定されるブラケット、２は糸調子軸３をブラケット１
に片持ち支持させて面板ｍの前面に沿って横に配置され
る図示左側から左針糸用、右針糸用、上ルーパー糸用、
下ルーパー糸用の計４個の糸調節器、４は糸調子軸３上
で糸調節器２を付勢する糸調子ばね、５は糸調子ばね４
をばね受けする糸調子皿、６は各糸調子軸３に糸調子ば
ね４の背後から嵌合して、糸調子皿５の押圧を加減する
ように同軸３上にそれぞれ進退自在に設けた筒形の糸調
節子、７は各糸調節子６を糸調子ばね４に常時係合させ
るようにバックアップする揺動リンク式の作動子であ
る。

【００１４】各作動子７は、図示上端のピン８を、各糸
調節器２に手動操作可能に付設した手動調節リング９の
端面の溝カム１０に嵌め、下端のピン１１を円板形の作
動子移動手段１２の端面の溝カム１３に嵌合し、該作動
子移動手段１２の回転とともに上端のピン８を支点とし
て図１の前後方向（図２の左右方向）に揺動して糸調節
子６を進退させる。

【００１５】作動子移動手段１２の端面の溝カム１３
は、図２に示すように、軸心に対して一定角度毎に段階
的に遠近するエンドレスの溝を設けて、前記作動子７を
介して糸調節子６の進退に変換し、縫い方によって異な
る張力の差を各糸調節器２間に生じさせるように設定さ
れている。

【００１６】１４は、上記円板形の作動子移動手段１２
の軸心を挿通してそれぞれ固定し、両端をブラケット１
に軸受された回転軸、１５は回転軸１４の外端に連結さ
れて同軸１４を右回転、左回転するパルスモーター（ス
テッピングモーター）、１６は図３に示すように、ミシ
ンＭの面板ｍに表示した複数の縫図形、１７は各縫図形
１６の下方に設けた表示灯、１８は同じく面板ｍに設け
られて、パルスモーター１５を右回転または左回転させ
る左右一対のスイッチで、そのワンタッチ毎にパルスモ
ーター１５が一定回転し、それによって、前記糸調節子
６が選択された縫い方のテンション位置に移動したこと
を外部から確認できる。

【００１７】１９は、前記手動調節リング９をそれぞれ
回転自在に遊嵌して、上記回転軸１４と平行にブラケッ
ト１の上部に横架した支持軸で、支持軸１９上の各手動
調節リング９は、図３に示すようにミシンＭの面板ｍか
らその周面を臨出させて、個別に外部から手動調節操作
を可能にするように取り付けられる。

【００１８】以上のように構成したこの糸調子の設定装
置は、選定した縫図形１６の表示灯１７が点灯するまで
スイッチ１８を操作すると、回転軸１４と一体に各作動
子移動手段１２が一斉に一定角度ずつ回転し、作動子７
の揺動を介して糸調節子６が進退し、選択されたその縫
い方に設定されたテンションに各糸調節器２を一斉に自
動調節する。

【００１９】回転軸１４を駆動して一斉に各糸調節器２
にそれぞれ所定の張力を設定した各糸調節子６は、図２
に示すように、一端のピン８を手動リング９の溝カム１
０に嵌合させ、他端のピン１１を作動子移動手段１２の
溝カム１３に嵌合させた作動子７にそれぞれバックアッ
プされて所定の張力設定位置に固定されるが、個々の糸
調節器２に生ずるテンションを微調整したい場合には、
当該の糸調節器２の手動リング９を回転することにより
行うことができる。

【００２０】すなわち、図２に示す状態から手動リング
９を図示右回りに回転すると、軸心に対して遠近差を具
えた溝カム１０に誘導されてピン８の位置が右に移動
し、左に回転するとピン８が図示の位置から左へ移動す
る。

【００２１】そして、一斉の張力設定の際に支点になっ
た該ピン８は左右にその位置を変えることにより、作動
子７のバックアップ位置を図示左右に変える。作動子７
の変位に追従する糸調節子６が定められた設定位置から
若干左または右に移動することにより、糸調子皿５を付
勢する糸調子ばね４のばね圧が微調整される。

【００２２】なお、この実施例は、針糸用とルーパー糸
用の糸調節器２をすべてミシンＭの上部に配置して、１
個のブラケット１に所要の部材をまとめて組み込んでい
るが針糸用の糸調節器とルーパー糸用の糸調節器を上と
下に分けて配置し、それぞれに糸調節子、作動子、作動
子移動手段を付設して、一つの回転軸から伝動手段を用
いて分岐した連結軸にそれぞれ連結して、１軸で上下同
時に作動させるようにする場合もある。また、回転軸は
手動で回すようにすることもある。

【００２３】

【考案の効果】以上のように構成し、上記のように作動
するようにした本考案装置によれば、各糸調節器に一斉
に張力設定する機構と、個別にテンションを微調整する
機構とが糸調子軸上の作動子と糸調節子とを共通にして
用いられるので、前述のように、糸調節器を挟んで一側
に一斉に張力設定する機構を備え、他側に微調整する機
構を備えていた従来装置に比べて、その構造が簡単にな
り、この種の装置の部品点数を減らし組立を容易にして
製作費のコストダウンができる。

【００２４】また、本考案によれば、上記のように一斉
に張力設定する機構と張力を微調整する機構の糸調節器
に対する係合が一方の側からの係合となるので、微調整
の際にも各糸調節器の設置位置には移動がなく、縫糸の
走行の妨げにはならないという利点もある。本考案には
以上のような優れた効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本考案の実施例を示す一部切欠正面図

【図２】図２は実施例の一部切欠側面図

【図３】図３はミシンに取り付けた状態を示す正面図で
ある。

【符号の説明】 Ｍ ミシン ｍ 面板 １ ブラケット ２ 糸調節器 ３ 糸調子軸 ４ 糸調子ばね ５ 糸調子皿 ６ 糸調節子 ７ 作動子 ８ ピン ９ 手動調節リング １０ 溝カム １１ ピン １２ 作動子移動手段 １３ 溝カム １４ 回転軸 １５ モーター １６ 縫図形 １７ 表示灯 １８ スイッチ １９ 支持軸

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 オーバーロックミシンの各糸調子軸３上
   に進退自在に設けられて、糸調子ばね４と係合して糸調
   子皿５の押圧を加減するように備えられた糸調節子６
   と、各糸調節子６の進退方向に沿って移動可能に設けら
   れ、それぞれが係合する糸調節子６を糸調子ばね４に抗
   して張力設定位置に保持するように備えられた作動子７
   と、上記各作動子７の一端にそれぞれ連なり、オーバー
   ロックミシンの縫い方に応じた位置に作動子７を移動さ
   せる移動手段１２と、この各移動手段１２を介して前記
   各作動子７を連結して、選定された縫い方に応じた張力
   設定位置に各糸調節子６を一斉に移動せしめる１本の回
   転軸１４とを備え、前記各糸調節子６は、一方の端面で
   前記作動子７と接する筒形に形成され、前記各作動子７
   は、一端を前記作動子移動手段１２に係合するリンクに
   よって形成され、該作動子７の他端を、各糸調節器２の
   手動調節リング９に設けた溝カム１０と係合させ、前記
   回転軸１４の回転による各糸調節子６の一斉移動とは別
   に、上記手動調節リング９の回転により作動子７の他端
   を移動せしめて張力設定位置にある糸調節子６を個別に
   進退させ、それによって前記糸調子皿５を付勢する糸調
   子ばね４のばね圧を微調整できるように構成したことを
   特徴とするオーバーロックミシンにおける糸調子の設定
   装置。
2. 【請求項２】 前記作動子移動手段１２は、オーバーロ
   ックミシンの縫い方に応じた偏心を有する溝カム１３を
   設けた円板カムによって構成され、前記回転軸１４は、
   選定された縫い方に応じた張力設定位置に上記糸調節子
   ６を移動せしめるパルスモーター１５に連結されてお
   り、前記溝カム１０を設けた各手動調節リング９は、上
   記回転軸１４と平行に備えた支持軸１９に個別に回転可
   能に支持され、かつ、ミシンＭの面板ｍ外にその周面を
   手動操作可能に臨出させて備えられることを特徴とする
   請求項１のオーバーロックミシンにおける糸調子の設定
   装置。