JP2554467Y2 - 膜体の接続構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、張力が作用する膜体同
志を大きな結合力をもって接続するための接続構造に関
する。

【０００２】

【従来の技術】近年、ドーム等の無柱構造となった大空
間施設の屋根を膜屋根として構築するものが出現してい
る。この膜体の接続構造は大空間施設を取り囲む外壁の
上端部を、防水性の可撓膜で形成された膜体で覆うよう
になっている。前記膜屋根は、施設内部に空気を注入す
ることによりインフレート（膨脹）し、このインフレー
ト状態で中央部が膨出したドーム状の屋根が構成され
る。

【０００３】ところで、前記膜屋根は大空間施設を連続
して覆う必要があることからその面積は著しく大きくな
り、従って、この膜屋根を構成する膜体は、複数の膜片
を互いに接続してその全体が形成されるようになってい
る。このとき、前記膜片同志の接続は、例えば実公平２
−２４８５７号公報（Ｅ０４Ｈ １５／５４）に開示さ
れるように接続金具を介して行われる。即ち、前記接続
金具は、膜片の接続端部間に跨がって膜体の両側に配置
される内，外側の押え金物を備え、これら両側の押え金
物を適宜間隔をもって配置されるボルト，ナットを介し
て締め付ける構成となっている。そして、膜片の接続端
部同志が前記押え金物間に挟着されることにより、膜体
に大きな張力が作用した場合にも接続部分が容易に分離
してしまうのを防止できるようになっている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
従来の膜体の接続構造にあっては、各膜片を接続するた
めの接続金具に設けられる内，外側押え金物は、通常、
金属で形成されることから、この接続金具の重量が大き
くなり、延いては、膜屋根自体が著しく重くなってしま
う。このため、上述したように膜屋根をインフレートさ
せるために、施設内部に空気を注入して加圧するが、こ
の加圧力をより高める必要があり、送風機の大型化が余
儀無くされてしまう。

【０００５】また、前記内，外側押え金物はボルト，ナ
ットを介して適宜間隔をもって締め付けられ、この締付
部分近傍においては膜片と押え金物との間は高い液密機
能が得られるが、締付部分から離れる箇所では液密性が
低下され、雨水などが侵入してしまう恐があるという課
題があった。

【０００６】そこで、本考案はかかる従来の課題に鑑み
て、膜体に作用する張力よっても容易に分離しない結合
力を備え、かつ、その接続部分をより軽量化すると共
に、その全長に亘って高い液密性を発揮することができ
る膜体の接続構造を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに本考案は、互いに接続しようとする膜体の接続端部
同志を重合すると共に、この重合部分を接続方向に連続
して固着し、この固着した接続端部同志の先端部を紐体
に巻回する一方、一端部に前記接続端部の重合部分を紐
体の巻回部分を含めて開閉可能に掴持する受容部と、他
端部に圧入部材を嵌合する嵌合溝と、中間部に開閉時の
支点となる支点部とを一体に設けた弾性部材からなる固
定部材を設け、この固定部材を介して膜体の接続端部間
を固定する構成とする。

【０００８】

【作用】以上の構成により本考案の膜体の接続構造にあ
っては、膜体の接続端部同志を重合し、この重合部分を
連続して固着することにより、この固着部分によって接
続部分の液密性をその全長に亘って保持することができ
る。また、前記重合部分の先端部に紐体を巻回して固定
部材の一端部に設けた受容部に掴持すると共に、他端部
に設けた嵌合溝に圧入部材を嵌合することにより、この
圧入部材の嵌合により押し開かれる拡開力は中間部に設
けた支点部を支点として、前記受容部の閉塞力として作
用する。このため、前記圧入部材を嵌合することによ
り、固定部材は前記重合部分を強い閉塞力で掴持すると
共に、この重合部分に巻回した紐体が受容部内で係止さ
れて、膜片は容易に受容部から抜脱されるのを防止する
ことができる。従って、前記膜体に大きな張力が作用し
た場合にも、重合部が固着されていることと、前記固定
部材に大きな閉塞力をもって掴持されていることによ
り、膜片同志の分離が防止される。また、前記固定部材
は弾性部材により形成されているため、その軽量化を達
成することができる。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の実施例を図に基づいて詳細に
説明する。図１から図３は本考案にかかる膜体の接続構
造の一実施例を示し、図１は本考案が適用される屋根膜
を用いた大空間施設の断面を示す概略構成図、図２は図
１中Ａ−Ａ線に対応した固定部材の取付状態を示す拡大
断面図、図３は固定部材の取り付け途中を示す図２に対
応した拡大断面図である。

【００１０】即ち、図１に示した大空間施設は人工スキ
ー場１０として用いたもので、両側に図中紙面直角方向
に連続する外壁１２，１２が構築され、これら外壁１
２，１２の上端部間に膜屋根１４が張架される。そし
て、前記外壁１２，１２および膜屋根１４で構成される
大空間部１６の床面１８は、これら外壁１２，１２の延
設方向に連続して傾斜され、この傾斜された床面１８に
人工雪を積もらせてゲレンデを構成し、その積雪上を滑
走できるようになっている。

【００１１】前記膜屋根１４は、図１中実線状態では大
空間部１６の内部に空気が注入されてインフレートされ
た状態を示し、また、２点鎖線状態では内部の空気圧が
排除されてデフレートされた状態を示す。前記膜屋根１
４は外壁１２，１２の上端部間に架設される複数の図外
のケーブルで支持される。また、前記外壁１２，１２の
外側には機械室２４およびリフト室２６が設けられ、機
械室２４には空調機，人工造雪機およびスノーガン等が
設置される。

【００１２】前記膜屋根１４を構成する膜体３０は、図
２に示したように複数の膜片３０ａ，３０ａを互いに接
続することによりその全体が構成される。これら膜片３
０ａ，３０ａの接続は、それぞれの接続端部３０ｂ，３
０ｂ同志を互いに重合すると共に、この重合部分３０ｃ
を接着剤３２を介して接続方向に連続して固着する。そ
して、前記接続方向に沿って連続する紐体３４を用意
し、前記固着した重合部分３０ｃの先端部をこの紐体３
４に巻回し、この接続端部３０ｂ，３０ｂ同志を、固定
部材３６を介して固定するようになっている。

【００１３】前記固定部材３６はゴム等の弾性部材によ
り一体に成形され、一端部（図２中下端部）に前記重合
部分３０ｃを紐体３４の巻回部分を含めて開閉可能に掴
持する受容部３６ａと、他端部（同図中上端部）に圧入
部材３８を嵌合する嵌合溝３６ｂと、中間部に開閉時の
支点となる支点部３６ｃとが設けられ、前記受容部３６
ｂの拡開状態（図３参照）では全体的に略Ｈ状の断面形
状を成している。尚、前記固定部材３６は、自然状態で
は前記受容部３６ａが閉塞された状態となっている。

【００１４】前記受容部３６ａは、自然状態で前記接続
端部３０ｂ，３０ｂの紐体３４の巻回部分を含めた外側
形状に略沿った空間部形状に形成される。また、前記嵌
合溝３６ｂは蟻溝状に形成されると共に、前記圧入部材
３８をこの嵌合溝３６ｂの内側形状に略沿った断面形状
として形成し、この圧入部材３８の幅を嵌合溝３６ｂよ
り若干大きめに形成してある。そして、前記受容部３６
ｂで前記接続端部３０ｂ，３０ｂの重合部分３０ｃを覆
った後、この圧入部材３８を嵌合溝３６ｂ内に圧入する
ようになっている。

【００１５】以上の構成により本実施例の屋根膜１４に
あっては、膜片３０ａ，３０ａの接続端部３０ｂ，３０
ｂ同志を重合して、この重合部分３０ｃを接着剤３２を
介して膜片３０ａ，３０ａの接続方向に連続して固着し
たので、当該接続部分の液密性をその全長に亘って保持
することができる。

【００１６】一方、前記固定部材３６は、図３に示した
ように嵌合溝３６ｂの外側両端部に拡開力Ｆ1 を加える
ことにより、支点部３６ｃを支点として受容部３６ａを
拡開させることができる。そして、このように拡開され
た受容部３６ａ内に前記接続端部３０ｂ，３０ｂの重合
部分３０ｃを嵌合し、その後前記拡開力Ｆを解除するこ
とにより、受容部３６ａはこの重合部分３０ｃを掴持す
る。

【００１７】次に、前記受容部３６ａで前記接続端部３
０ｂ，３０ｂの重合部分３０ｃを掴持した状態で、前記
嵌合溝３６ｂに圧入部材３８を圧入する。すると、図２
に示したように圧入部材３８の嵌合により嵌合溝３６ｂ
には拡開力Ｆ2 が発生し、この拡開力Ｆ2 は中間部に設
けた支点部３６ｃを支点として、前記受容部３６ａの閉
塞力Ｆ3 として作用する。

【００１８】このように、前記圧入部材３８を嵌合する
ことにより、固定部材３６は前記接続端部３０ｂ，３０
ｂの重合部分３０ｃを強い閉塞力Ｆ3 をもって掴持する
ことができる。このとき、この重合部分３０ｃに巻回し
た紐体３４が受容部３６ａ内で係止されるため、膜片３
０ａ，３０ａは受容部３６ａから容易に抜脱されるのを
防止することができる。

【００１９】従って、前記膜体３０ａに大きな張力が作
用した場合にも、前記重合部分３０ｃが接着剤３２によ
り固着されていることと、前記固定部材３６に大きな閉
塞力Ｆ3 をもって掴持されていることにより、膜片３０
ａ，３０ａ同志の分離を防止することができる。

【００２０】また、前記固定部材３６はゴム等の弾性部
材により形成されているため、その著しい軽量化を達成
し、延いては、屋根膜１４自体の軽量化を可能にするこ
とができる。従って、屋根膜１４のインフレート時に必
要とされる施設内部の過圧力を低く設定することがで
き、延いては、送風機の小型化を達成することができ
る。

【００２１】尚、本実施例では膜屋根１４に本考案を適
用した場合を開示したが、これに限ることなく一般の膜
体の接続に本考案を適用できることはいうまでもない。

【００２２】

【考案の効果】以上説明したように本考案の膜体の接続
構造にあっては、膜体の接続端部同志を重合し、この重
合部分を連続して固着したので、この固着部分によって
接続部分の液密性をその全長に亘って確実に保持するこ
とができる。

【００２３】また、前記固着した接続端部同志の先端部
を紐体に巻回し、この巻回部分を含めて接続端部の重合
部分を固定部材の一端部に設けた受容部で掴持する一
方、他端部に設けた嵌合溝に圧入部材を嵌合することに
より、この圧入部材による拡開力を中間部に設けた支点
部を支点として前記受容部の閉塞力として作用させるこ
とができる。従って、前記受容部に大きな閉塞力が作用
することと、重合部分に巻回した紐体がこの受容部内で
係止されることにより、前記接続端部を確実に固定する
ことができる。このため、前記膜体に大きな張力が作用
した場合にも、重合部が固着されていることと相俟って
接続部分の分離を防止することができる。

【００２４】更に、前記固定部材を弾性部材により形成
したので、その軽量化を達成することができるという各
種優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案が適用される屋根膜を用いた大空間施設
の断面を示す概略構成図である。

【図２】本考案の一実施例を示す図１中Ａ−Ａ線に対応
する固定部材の取付状態の拡大断面図である。

【図３】本考案の一実施例を示す固定部材の取り付け途
中の図２に対応した拡大断面図である。

【符号の説明】

１０ 人工スキー場（大空間施設） １２ 外壁 １４ 膜屋根 ３０ 膜体 ３０ａ 膜片 ３０ｂ 接続端部 ３０ｃ 重合部分 ３２ 接着剤 ３４ 紐体 ３６ 固定部材 ３６ａ 受容部 ３６ｂ 嵌合溝 ３８ 圧入部材

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 互いに接続しようとする膜体の接続端部
   同志を重合すると共に、この重合部分を接続方向に連続
   して固着し、この固着した接続端部同志の先端部を紐体
   に巻回する一方、一端部に前記接続端部の重合部分を紐
   体の巻回部分を含めて開閉可能に掴持する受容部と、他
   端部に圧入部材を嵌合する嵌合溝と、中間部に開閉時の
   支点となる支点部とを一体に設けた弾性部材からなる固
   定部材を設け、この固定部材を介して膜体の接続端部間
   を固定することを特徴とする膜体の接続構造。