JP2743677B2 - 膜体の接続構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、膜体の接続端部同志を
互いに接続するための接続構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、ドーム等の無柱構造となった大空
間施設等の構築物の屋根を膜屋根として構築するものが
出現している。この膜体の接続構造は大空間施設を取り
囲む外壁の上端部を、防水性の可撓膜で形成された膜体
で覆うようになっている。前記膜屋根は、施設内部に空
気を注入することによりインフレート（膨脹）し、この
インフレート状態で中央部が膨出したドーム状の屋根が
構成される。

【０００３】ところで、前記膜屋根は大空間施設を連続
して覆う必要があることからその面積は著しく大きくな
り、従って、この膜屋根を構成する膜体は、複数の膜片
を互いに接続してその全体が形成されるようになってい
る。このとき、前記膜片同志の接続は、例えば実開昭６
０−１３５４４８号公報（Ｅ０４Ｈ １５／２２）に開
示されるように接続金具を介して行われる。即ち、前記
接続金具は、膜片の接続端部間に跨がって配置される膜
保持板と、この膜保持板の両端部に配置される一対の押
え体とを備え、これら膜保持板と押え体との間に膜片の
接続端部を挟み込み、これら膜保持板と押え体との間を
適宜間隔をもって配置される多数のボルト，ナットを介
して互いに締め付ける構成となっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
従来の膜体の接続構造にあっては、接続金具を介して膜
片同志を接続するためには、上述したように多数のボル
ト，ナットを締め付ける必要があり、その接続作業が著
しく困難になってしまう。このため、従来の膜体の接続
構造を用いて大空間施設の膜屋根を構築しようとした場
合、工期の長期化が余儀無くされると共に、多くの労力
を要してしまうという課題があった。

【０００５】そこで、本発明はかかる従来の課題に鑑み
て、膜体同志の接続を簡単に、かつ、迅速に行うことが
できる膜体の接続構造を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに本発明は、幅方向両側に一対の平坦部を形成すると
共に、中央部に突出部を形成した繋ぎ部材と、繋ぎ部材
の一対の平坦部にそれぞれ両側部分で対向して突設され
ると共に、この繋ぎ部材の長さ方向に適宜間隔をもって
突設され、かつ、先端部に係止部が形成され、膜体の接
続端部を掛止する多数の掛止突起と、両端部に前記掛止
突起の係止部に係合される係合部がそれぞれ形成され、
この係合部が係止部に係合された状態で中央部が前記繋
ぎ部材の突出部に圧接されるばね部材と、を備え、前記
繋ぎ部材の両側の掛止突起に、互いに接続しようとする
膜体の接続端部をそれぞれ係止した状態で、両側の掛止
突起に跨がって前記ばね部材を係合することにより構成
する。

【０００７】また、前記ばね部材は、その両端部を折曲
形成して、前記掛止突起の先端を覆うカバー部を形成す
ることが望ましい。

【０００８】更に、互いに接続しようとする前記膜体の
接続端部外側から外側継手膜をそれぞれ分岐して設け、
これら外側継手膜を前記繋ぎ部材の外側部分を覆って互
いに接続することが望ましい。

【０００９】更にまた、互いに接続しようとする前記膜
体の接続端部内側から内側継手膜をそれぞれ分岐して設
け、これら内側継手膜を前記繋ぎ部材の内側部分を覆っ
て互いに接続することが望ましい。

【００１０】

【作用】以上の構成により本発明の膜体の接続構造にあ
っては、繋ぎ部材の幅方向両側に形成した一対の平坦部
からそれぞれ突出する掛止突起に、互いに接続しようと
する膜体の接続端部を掛止することにより、膜体同志を
互いに接続することができる。そして、前記掛止突起に
膜体を掛止した状態で、前記繋ぎ部材の両側部分で対向
される前記掛止突起にばね部材を係止することにより、
このばね部材で膜体が掛止突起から抜脱されるのを防止
することができる。また、前記ばね部材は両端の係合部
が前記掛止突起に係合された状態で、中央部が繋ぎ部材
の突出部に圧接されているので、このばね部材は掛止突
起に係合される方向の付勢力が常時作用されることによ
り、このばね部材の離脱が防止される。

【００１１】このように、本発明では膜体同志を接続す
る際、膜体の接続端部を前記掛止突起に嵌挿し、そし
て、この係止突起に前記ばね部材を係合することにより
膜体同志を接続することができる。従って、かかる膜体
の接続作業を簡単かつ迅速に行うことができる。

【００１２】また、前記ばね部材は、その両端部を折曲
形成して、前記掛止突起の先端を覆うカバー部を形成す
ることにより、膜体が風でフラッタリングされた場合等
にあって、この膜体が係止突起の先端に接触して破損さ
れるのを防止することができる。

【００１３】更に、互いに接続しようとする前記膜体の
接続端部外側から外側継手膜をそれぞれ分岐して設け、
これら外側継手膜を前記繋ぎ部材の外側部分を覆って互
いに接続することにより、これら外側継手膜により膜体
の接続部分を外側部分で閉止して、雨水等がこの接続部
分から侵入するのを防止することができる。

【００１４】更にまた、互いに接続しようとする前記膜
体の接続端部内側から内側継手膜をそれぞれ分岐して設
け、これら内側継手膜を前記繋ぎ部材の内側部分を覆っ
て互いに接続することにより、これら内側継手膜により
膜体の接続部分を内側部分で閉止して、内側の気密性を
著しく向上することができる。

【００１５】

【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて詳細に
説明する。図１から図５は本発明にかかる膜体の接続構
造の一実施例を示し、図１は本発明が適用される屋根膜
を用いた大空間施設の断面を示す概略構成図、図２は図
１中Ａ−Ａ線に対応した膜体の接続部分の拡大断面図、
図３は本発明に用いられる繋ぎ部材の斜視図、図４は本
発明に用いられるばね部材の平面図、図５はばね部材の
斜視図である。

【００１６】即ち、図１に示した大空間施設は屋内人工
スキー場１０として用いたもので、両側に図中紙面直角
方向に連続する外壁１２，１２が構築され、これら外壁
１２，１２の上端部間に膜屋根１４が張架される。そし
て、前記外壁１２，１２および膜屋根１４で構成される
大空間部１６の床面１８は、これら外壁１２，１２の延
設方向に連続して傾斜され、この傾斜された床面１８に
人工雪を積もらせてゲレンデを構成し、その積雪上を滑
走できるようになっている。

【００１７】前記膜屋根１４は、図１中実線状態では大
空間部１６の内部に空気が注入されてインフレート（膨
脹）された状態を示し、また、２点鎖線状態では内部の
空気圧が排除されてデフレート（収縮）された状態を示
す。前記膜屋根１４は外壁１２，１２の上端部間に架設
される複数の図外のケーブルで支持される。また、前記
外壁１２，１２の外側には機械室２４およびリフト室２
６が設けられ、機械室２４には空調機，人工造雪機およ
びスノーガン等が設置される。

【００１８】前記膜屋根１４を構成する膜体３０は、図
２に示したように複数の膜片３０ａを互いに接続するこ
とによりその全体が構成される。これら膜片３０ａ同志
の接続は、それぞれの膜片３０ａの接続端部間に跨がっ
て配置される繋ぎ部材３２を介して行われる。

【００１９】前記繋ぎ部材３２は帯状の金属板を折曲し
て形成され、幅方向両側に一対の平坦部３２ａが形成さ
れると共に、中央部を外側（内，外方向は大空間部１６
を中心とする方向で決定するものとする。）に膨出させ
て突出部３２ｂが形成される。前記一対の平坦部３２ａ
外側には、それぞれ繋ぎ部材３２の長さ方向（図２中紙
面直角方向）に適宜間隔をもって多数の掛止突起３４が
植設される。多数の掛止突起３４は、前記一対の平坦部
３２ａ間で互いに対を成すように対向配置されると共
に、これら掛止突起３４の先端部（図中上端部）には繋
ぎ部材３２の幅方向に折曲される係止部３４ａがそれぞ
れ形成される。

【００２０】一方、前記膜片３０ａの各接続端部は紐体
３６を巻回して折り返され、この折り返し部分が融着さ
れる等して二重に形成され、この折り返し部分には前記
掛止突起３４にそれぞれ対応して多数の鳩目３８が設け
られる。そして、これら鳩目３８を前記掛止突起３４に
嵌挿して掛止することにより、互いに接続しようとする
膜片３０ａ同志は、前記繋ぎ部材３２を介して接続され
ることになる。

【００２１】前記繋ぎ部材３２の両側に対向する前記掛
止突起３４間には、図４，図５に示したばね部材４０が
係合される。即ち、前記ばね部材４０は繋ぎ部材３２の
幅方向に延びる短冊状に形成され、その両端部には前記
掛止突起３４の係止部３４ａに係合される係合部４２が
形成される。この係合部は４２は、前記掛止突起３４の
軸径に対応する切欠幅をもってばね部材４０の中心部Ｏ
を中心として切欠かれる円弧状切欠部４２ａと、この円
弧状切欠部４２ａの前記中心部Ｏを中心とする一定回転
方向端部に形成され、前記係止部３４ａを挿通するため
の径方向切欠部４２ｂとをもって形成される。

【００２２】また、前記ばね部材４０の両端部は前記係
合部４２の外側方向を適宜間隔をもって覆うように折り
返して折曲形成され、この折り返し部分をもってカバー
部４２ｃが形成される。

【００２３】ところで、前記繋ぎ部材３２は一定長さを
有する帯状に形成されており、この繋ぎ部材３２を長さ
方向に互いに接続することにより、膜片３０ａの接続端
部に沿って連続して配置される。前記繋ぎ部材３２の接
続は、図３に示したように繋ぎ部材３２の接続端部間に
跨がって平坦部３２ａの内側に配置される連結板４４を
介して行われる。即ち、前記連結板４４の外側に植設し
た複数本のボルト４６を前記平坦部３２ａに挿通し、平
坦部３２ａの外側からこのボルト４６を座金４６ａを介
してナット４６ｂで締め付けるようになっている。

【００２４】また、本実施例では前記互いに接続しよう
とする膜片３０ａの接続端部外側に、それぞれ外側継手
膜４８の一端部を融着することにより、この外側継手膜
４８を分岐して設ける。そして、これら外側継手膜４８
を前記繋ぎ部材３２の外側部分を覆って配置し、それぞ
れの他端部を互いに接続するようになっている。

【００２５】更に、前記互いに接続しようとする膜片３
０ａの接続端部内側に、同様にして内側継手膜５０をそ
れぞれ分岐して設け、これら内側継手膜５０を前記繋ぎ
部材３２の内側部分を覆って互いに接続するようになっ
ている。

【００２６】以上の構成により本実施例の膜体の接続構
造にあっては、繋ぎ部材３２の幅方向両側の一対の平坦
部３２ａからそれぞれ突出する掛止突起３４に、膜片３
０ａの接続端部に設けた鳩目３８を掛止することによ
り、互いに接続しようとする膜片３０ａ同志が接続され
る。

【００２７】そして、前記掛止突起３４に前記鳩目３８
を掛止した状態で、繋ぎ部材３２の両側部分で対向され
る前記掛止突起３４間に跨がってばね部材４０を配置
し、このばね部材４０に形成された係合部４２の径方向
切欠部４２ｂを掛止突起３４の係止部３４ａに挿通す
る。この状態で前記ばね部材４０を図４中半時計回り方
向に回転することにより、前記係止部３４ａは前記係合
部４２の円弧状切欠部４２ａに係合される。このとき、
前記ばね部材４０の中央部は、枕板５２を介して繋ぎ部
材３２の突出部３２ｂに圧接してこのばね部材４０を弓
形に湾曲し、この時の付勢力が前記円弧状切欠部４２ｂ
を前記係止部３４ａに圧接する方向に作用するので、こ
のばね部材４０が掛止突起３４から離脱されるのを防止
することができる。

【００２８】従って、本実施例では上述したように膜片
３０ａ同志を接続するにあたって、膜片３０ａの接続端
部を繋ぎ部材３２の掛止突起３４に掛止し、そして、こ
の係止突起３４にばね部材４０を係合するという簡単な
操作で膜片３０ａ同志を接続することができる。従っ
て、かかる膜片３０ａ同志の接続作業が著しく簡単にな
り、このことに伴ってこの接続作業の迅速化が可能にな
ると共に、省力化を達成することができる。

【００２９】また、前記ばね部材４０は、その両端部に
カバー部４２ｃを形成して、前記掛止突起３４の先端を
覆うようになっているので、膜体３０が風でフラッタリ
ングされた場合等にあっても、この膜体３０が係止突起
３４の先端に接触した際の摩擦により破損されるのを防
止することができ、膜体３０の耐久性を向上することが
できる。

【００３０】更に、互いに接続しようとする膜片３０ａ
の接続端部外側から分岐した外側継手膜４８を、前記繋
ぎ部材３２の外側部分を覆って互いに接続したので、雨
水等が膜片３０ａの接続部分から侵入するのを防止する
ことができる。また、前記膜片３０ａの接続端部内側か
ら分岐した内側継手膜５０を、前記繋ぎ部材３２の内側
部分を覆って互いに接続したので、これら内側継手膜５
０により膜片３０ａの接続部分を膜体３０の内側部分で
閉止することができるため、大空間部１６内側の気密性
を著しく向上することができる。

【００３１】尚、以上述べた本実施例では膜屋根１４の
膜体３０に本発明を適用した場合を開示したが、これに
限ることなく一般の膜体の接続に本発明を適用できるこ
とはいうまでも無い。

【００３２】

【発明の効果】以上説明したように本発明の請求項１に
示す膜体の接続構造にあっては、繋ぎ部材の幅方向両側
に形成した一対の平坦部からそれぞれ突出する掛止突起
に、互いに接続しようとする膜体の接続端部を掛止して
膜体同志を互いに接続すると共に、掛止突起に膜体を掛
止した状態で前記掛止突起にばね部材を係止して、膜体
が掛止突起から抜脱されるのを防止するようにしたの
で、膜体同志の接続作業を簡単かつ迅速に行うことがで
き、延いては、大幅な省力化を達成することができる。

【００３３】また、本発明の請求項２にあっては、前記
ばね部材の両端部に、前記掛止突起の先端を覆うカバー
部を折曲形成したので、膜体が風でフラッタリングされ
た場合等にあって、この膜体が係止突起の先端に接触し
て破損されるのを防止し、もって、膜体の耐久性を向上
することができる。

【００３４】更に、本発明の請求項３にあっては、互い
に接続しようとする前記膜体の接続端部外側から外側継
手膜をそれぞれ分岐して設け、これら外側継手膜を前記
繋ぎ部材の外側部分を覆って互いに接続したので、これ
ら外側継手膜により膜体の接続部分を外側部分で閉止し
て液密性を向上し、雨水等がこの接続部分から侵入する
のを防止することができる。

【００３５】更にまた、本発明の請求項４にあっては、
互いに接続しようとする前記膜体の接続端部内側から内
側継手膜をそれぞれ分岐して設け、これら内側継手膜を
前記繋ぎ部材の内側部分を覆って互いに接続することに
より、これら内側継手膜により膜体の接続部分を内側部
分で閉止して、内側の気密性を著しく向上することがで
きるという各種優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用される屋根膜を用いた大空間施設
の断面を示す概略構成図である。

【図２】本発明の一実施例を示す図１中Ａ−Ａ線に対応
する部分の拡大断面図である。

【図３】本発明の一実施例に用いられる繋ぎ部材の斜視
図である。

【図４】本発明の一実施例に用いられるばね部材の平面
図である。

【図５】本発明の一実施例に用いられるばね部材の斜視
図である。

【符号の説明】

１０ 人工スキー場（大空間施設） １２ 外壁 １４ 膜屋根 ３０ 膜体 ３０ａ 膜片 ３２ 繋ぎ部材 ３２ａ 平坦部 ３２ｂ 突出部 ３４ 掛止突起 ３４ａ 係止部 ４０ ばね部材 ４２ 係合部 ４２ｃ カバー部 ４８ 外側継手膜 ５０ 内側継手膜

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 幅方向両側に一対の平坦部を形成すると
   共に、中央部に突出部を形成した繋ぎ部材と、 繋ぎ部材の一対の平坦部にそれぞれ両側部分で対向して
   突設されると共に、この繋ぎ部材の長さ方向に適宜間隔
   をもって突設され、かつ、先端部に係止部が形成され、
   膜体の接続端部を掛止する多数の掛止突起と、 両端部に前記掛止突起の係止部に係合される係合部がそ
   れぞれ形成され、この係合部が係止部に係合された状態
   で中央部が前記繋ぎ部材の突出部に圧接されるばね部材
   と、を備え、 前記繋ぎ部材の両側の掛止突起に、互いに接続しようと
   する膜体の接続端部をそれぞれ係止した状態で、両側の
   掛止突起に跨がって前記ばね部材を係合したことを特徴
   とする膜体の接続構造。
2. 【請求項２】 前記ばね部材の両端部を折曲形成して、
   前記掛止突起の先端を覆うカバー部を形成したことを特
   徴とする請求項１に記載の膜体の接続構造。
3. 【請求項３】 互いに接続しようとする前記膜体の接続
   端部外側から外側継手膜をそれぞれ分岐して設け、これ
   ら外側継手膜を前記繋ぎ部材の外側部分を覆って互いに
   接続したことを特徴とする請求項１または２に記載の膜
   体の接続構造。
4. 【請求項４】 互いに接続しようとする前記膜体の接続
   端部内側から内側継手膜をそれぞれ分岐して設け、これ
   ら内側継手膜を前記繋ぎ部材の内側部分を覆って互いに
   接続したことを特徴とする請求項１から３のいずれかに
   記載の膜体の接続構造。