JP2553357B2 - アーチコンクリート施工用型枠支保工の支持装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、多径間連続アーチ橋等におけるアーチコン
クリートの施工に適用する型枠支保工の支持装置に関す
るものである。

〔従来の技術〕

アーチ橋のようなコンクリート構造物の構築にあたっ
てはその施工面、特に橋脚（橋台を含む）間にわたるア
ーチ形コンクリートの施工に必要な型枠支保工の施設が
大きな問題となる。水平形スラブの支保工の様に多数の
垂直な支柱によって型枠を支保するのみでできるのであ
れば簡単であるが、アーチ形の場合斜面部を有するもの
なので水平形スラブのように簡単ではない。型枠に加わ
るコンクリートの荷重はどのような場合でも型枠面に直
角な方向に作用するので、斜面部のアーチコンクリート
は支保工に対して垂直方向のみならず水平方向の荷重も
加えることになる。支保工支柱は普通垂直に立設される
から、アーチ支保工は水平方向に耐える構造を加えなけ
ればならない。これは必然的にトラス構造又はそれに類
似のものとなり、支保工は重構造物になって施工が繁雑
なものとなる。そして、アーチコンクリートのアーチ形
状が変われば、支保工はその都度その形状に合せて製作
し組立てることになるから、多くの日時と多大の資材を
要し莫大な経費がかかることになっていた。

本発明者は、かかる実状にかんがみ、特開昭62−1906
号、同62−78357号等の発明により、経済的で施工の容
易なアーチコンクリート型枠用支保工の開発を行なって
きた。この発明の支保工は、主杆と一対の側杆とによっ
て三角形の単位支保要素を形成し、その多数を互に主杆
の端部でピン結合するとともに、両側杆の連結部におい
て互に副杆により連結した構成としたもので、型枠を支
持するトラス構造の支保工が、強固でしかも組立て解体
が容易にできるとともに、副杆の長さだけを変更するだ
けでアーチの形状を変化させることができ、したがっ
て、各種の大きさやアーチ形状の異なるアーチコンクリ
ートの施工にも反復して適用することが可能となり、さ
らに、このアーチ形状の支保工骨組の両下端部を橋台、
橋脚上部に支承させる方式をとることにより、資材の節
減施工の簡易化のみならず、工期の短縮、信頼性の向上
等、施工全般にわたって大巾な改善が図れることになっ
た。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところで、径間の大きいアーチコンクリートの施工の
ような場合には、アーチ支保工に、コンクリートの打設
による大きな荷重が作用すると、アーチ支保工には第１
図矢印ｂ、ｂで示すように、その両下部を外方に開かせ
ようとする大きな力が働くことになる。そのため、多径
間連続アーチ橋のように、独立した橋脚間のアーチコン
クリートの施工では、従来のように、アーチ支保工の両
下端部を、ブラケットを介して橋脚に固定した構造であ
ると、アーチ支保工の外方に開く力が直接橋脚の上部を
外方へ押圧する力となって働き、橋脚に変形を生じさせ
ると共に、内部応力を発生させ、全径間の施工が完了し
たあともその変形や内部応力は施工過程において発生し
たものとして残留する。したがって、完成された状態以
後の荷重による変形や応力に加えてこの残留応力を考慮
してアーチ橋構造物は設計されなければならないことに
なり、そのことは、この構造形式の支保工の問題点とし
て指摘されることになってきた。

このようなアーチ支保工の外方への開きを防ぐため
に、第１図の11に示す様なつなぎ材をアーチ支保工の両
下端部間に張設することがなされるが、しかし、そのつ
なぎ材11は引張力を受けて伸長するので効果はあまり期
待できず、伸びの極めて少ないものにするには大断面の
部材を採用しなければならないので施工が困難化するば
かりでなく、経済的にも負担が増大するなど満足できる
結果は得られない。

本発明は、上述のようなアーチ支保工における問題点
を解決するためになされたもので、アーチ支保工の外開
きの力によるアーチ構造物への影響を防止することので
きる、アーチ型枠支保工の支持装置を提供しようとする
ものである。

〔問題点を解決するための手段〕

次に、本発明装置の構成について、実施例に対応する
図面を参照して説明すると、本発明は、主杆５と一対の
側杆６、６とを結合して三角形に形成した支保要素７の
多数を互に各主杆５、５の端部において連結８、８し、
各支保要素７における両側杆６、６の連結部間を主杆５
より短かく形成した副杆９、９により互に連結して、ア
ーチ形架構の支保工４を形成し、その両端部間につなぎ
材11を張設すると共に、前記支保工の両端部にある主杆
5,5の端末部の一方または両方に滑動台12を取付けて、
橋脚1,1の上部に取付けたブラケット3,3上に載架し、前
記端末部の一方をブラケット３に結合し他方をブラケッ
ト３に対し橋脚1,1の列設方向に滑動可能とし、また
は、端末部の両方をブラケット3,3に対し橋脚1,1の列設
方向に滑動可能として支持したことを特徴とするもので
ある。

〔実施例〕

以下、本発明装置の実施例について、図面を参照して
説明する。

図において１、１はアーチコンクリート２を打設する
に先立って所定の間隔をおき立設された橋脚で、その上
部対向面には、アーチ形の型枠支保工４を支持するため
のブラケット３、３が取付けられている。

型枠支保工４は、主杆５の両端部に側杆６、６の各一
端部を結着し、それら側杆６、６の他端部を互いに結着
して三角形に架構した支保要素７を形成し、これを単位
構成部材として、その多数を互に主杆５、５の端部にお
いてピン８により結合し、各支保要素７、７における側
杆６、６の相互結着個所間を互に主杆５より短い副杆
９、９によってピン結合10、10して、全体としてアーチ
形のトラス架構体に形成する。

このアーチ形架構体の形成される彎曲の大きさは副杆
９の長さによって決定されることになる。したがって、
アーチ形の型枠支保工４は、副杆９の長さだけを変えて
やれば、その彎曲度は自在に変更してやることができ、
また、アーチの弧長の変化に対しても、各支保要素７単
位に自在に増減できるので、規格化された部材を使用し
て複雑な形状、寸法のアーチ型枠に自由に対応できるこ
とになる。

そして、このアーチ形架構体の両端に位置する支保要
素７、７の結合ピン10、10間にはつなぎ材11が張設され
ている。また、同支保要素７、７の各端末部には、ロー
ラ13、13を有する滑動台12、12がそれぞれピン14、14に
より取付けられ、型枠支保工４は、その滑動台12、12を
介してブラケット3,3上に載架され、橋脚１、１の列設
方向に滑動可能な状態で支持されている。

なお、型枠支保工４の一方の端部は、例えば従来のよ
うに、ブラケット１に対してピン結合され、他方の端部
だけを滑動可能としても差支えない。また、この滑動可
能とした構成は、この実施例のようなローラ13、13によ
ることに限定されるものではなく、例えば主杆５の端末
部とブラケット３との間に油脂や樹脂などの滑材や変形
の容易なゴム等の弾性材や緩衝材を介在させてもよく、
要するに、主杆５の端末部がブラケット３に対して移動
自在に載置されるものであればよい。

前記アーチ形型枠支保工４は、アーチコンクリート２
の奥行き方向に所要の間隔をおいて複数並設し、互に適
宜な手段により結合する。そして、その上には、バタ材
16を多数並列して横バタ材（図示を略す）により適宜連
結し、バタ材16の外側にせき板17を取付けて形成したア
ーチ形型枠15が載架され、その両端部の所要の長さｌを
除いて、主杆５、５にネジ杆18、18により固定される。

本発明支保工を使用した型枠施工にあたっては、図示
のようにアーチ形型枠15の両端部をそれぞれ橋脚１、１
の上端部に添接する。この場合、その溶接個所は図示の
ように橋脚１にアンカーボルト19で固定するなどの処理
をするのが望ましい。

型枠15の架設後は、図示を略したが、外型枠を架設
し、それら両型枠間にコンクリートを打設する。その場
合、コンクリートはアーチの下部から上部へと打設を進
めて行くことになるが、コンクリート打設のごく初期の
段階を除いては、コンクリートの荷重を受ける型枠支保
工４には、矢印ｂ、ｂのように外方へ開こうとする力が
働くことになる。この力に対して、アーチ形の架構自体
とつなぎ材11が抵抗することになるが、つなぎ材11は引
張力を受けて伸びが生じ、その分だけ型枠支保工４はそ
の両下端部を外方に開く状態に変形する。この変形によ
って型枠支保工４の下端部はブラケット３上を矢印Ｃの
ように滑動することになる。この滑動は、型枠支保工４
の変形にともなう橋脚１上部への押圧力を発生させない
効果を生む。なお、型枠支保工４の下端部が滑動するこ
とにより、それと橋脚１との間隔が挟められることにな
るが、支保工４に架設の型枠15の端部に相当の長さにわ
たり支保工４に固定されていない部分ｌをつくることに
よって、その型枠部分ｌの有する弾性でこの変位により
生ずる問題を解消することができる。

〔発明の効果〕

以上説明したように、本発明の装置は、主杆と一対の
側杆とを結合して三角形に形成した支保要素の多数を互
に各主杆の端部において連結し、各支保要素における両
側杆の連結部間を主杆より短かく形成した副杆により互
に連結して、アーチ形架構の支保工を形成し、その両端
部間につなぎ板を張設すると共に、前記支保工の両端部
にある主杆の端末部の一方または両方に滑動台を取付け
て、橋脚の上部に取付けたブラケット上に載架し、前記
端末部の一方をブラケットに結合し他方をブラケットに
対し橋脚の列設方向に滑動可能とし、または、端末部の
両方をブラケットに対し橋脚の列設方向に滑動可能とし
て支持した構成のものであるから、アーチコンクリート
打設によって生じる型枠支保工両下端の外方への変位
は、ブラケット上を滑動して変位するので、橋脚上部を
押圧して橋脚を変形させたり、橋脚に内部応力をおこさ
せたりすることがなくなり、多径間連続アーチ橋の設計
に、施工中に発生する荷重を考慮する必要がないことに
なる。

よって、両下端部を橋脚上部に設けたブラケットに支
承されたアーチ形架構体形式の経済性、信頼性にすぐれ
た支保工の問題点を解消した効果は甚大である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明装置の一実施例を示す正面図、第２図は
同要部の拡大正面図である。 １……橋脚、２……アーチコンクリート ３……ブラケット、４……型枠支保工 ５……主杆、６……側杆 ７……支保要素、９……副杆 11……つなぎ材、12……滑動台 15……アーチ形型枠、18……ネジ杆

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】主杆と一対の側杆とを結合して三角形に形
   成した支保要素の多数を互に各主杆の端部において連結
   し、各支保要素における両側杆の連結部間を主杆より短
   かく形成した副杆により互に連結して、アーチ形トラス
   架構の支保工を形成し、その両端部間につなぎ材を張設
   すると共に、前記支保工の両端部にある主杆の端末部の
   一方または両方に滑動台を取付けて、橋脚の上部に取付
   けたブラケット上に載架し、前記端末部の一方をブラケ
   ットに結合し他方をブラケットに対し橋脚の列設方向に
   滑動可能とし、または、端末部の両方をブラケットに対
   し橋脚の列設方向に滑動可能として支持したことを特徴
   とする、アーチコンクリート施工用の型枠支保工。