JP2542826Y2 - 電動式遊戯機の球発射用ソレノイド - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、移動子の電磁的運動を
利用して球を打つ電動式遊戯機の球発射用ソレノイドに
関し、特にパチンコ機の球発射装置として最適な球発射
用ソレノイドに関する。

【０００２】

【従来の技術】移動子の電磁的運動を利用して球を打つ
電動式遊戯機の球発射用ソレノイドは、一般に中空のボ
ビンと、ボビン上に設けたコイルと、ボビンの中空部分
に移動可能に挿通した磁性移動子とを備える。例えば、
実開昭６０−３７３７０号公報、「遊戯機の球発射装
置」に開示のソレノイドは、中空円筒状の固定子磁極
（ボビンに相当）にコイルを設け、ボビン内に移動可能
に移動子を挿通したものである。このソレノイドによる
球の弾発は、コイルに励磁電流を流し、移動子に磁界を
与えて、移動子を動かし、移動子に取付けた弾球槌（心
棒に相当）の先端の衝突バネで球を弾くことにより行わ
れる。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、電動式
遊戯機の代表格であるパチンコ機で上記のようなソレノ
イドによって球を打ち、鉛直方向の打球通路からパチン
コ台の上部まで球を到達させるには、重力に抗して球を
打ち上げなければならず、これには相当な力を要する。
この力を移動子の運動量で賄うためには、コイルの巻数
を多くし、コイルに流す励磁電流も多くする必要があ
る。このため、必然的にソレノイドが大型になる。

【０００４】又、パチンコ機の球発射装置は、その構造
上、パチンコ台の右下隅に設置してあり、上記の如きソ
レノイドを主体として構成される。一般にパチンコ機に
組み込む球発射装置は、移動子が持つ運動エネルギーを
球に直接与えるのではなく、テコの原理を応用して球を
間接的に打ち出している。例えば、「く」の字状の部材
を用いて移動子の直線運動を揺動運動に変換し、この部
材の揺動によって球を打つ形態を採るのが一般的であ
る。このため、球発射装置が複雑になり、その規模が大
きくなる。

【０００５】しかし、パチンコ機では、球発射装置を右
下隅の限られたスペースに組み込まなければならず、ソ
レノイドやソレノイドを主体とする球発射装置が大型に
なることは好ましくない。特に、球発射方向（上下方
向）のスペースに余裕がないので、球発射方向における
球発射装置の長さを可及的に短くするのが望ましい。こ
のため、小スペースに収まる大きさの、十分な打球力が
得られるソレノイドが強く要求されている。

【０００６】これに加えて、大型のソレノイドでは移動
子の運動に多くの電流が費やされる。特に、パチンコ機
に限らず最近の遊戯機は電動式の部分が多く、電飾も一
層豪華になりつつある。このため、省エネルギーの意味
からも電力消費量をできるだけ抑えることも要望されて
いる。従って、本考案の目的は、小型で電力消費量が少
なくても十分な打球力が得られると共に、取付スペース
が小さい電動式遊戯機の球発射用ソレノイドを提供する
ことにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本考案の電動式遊戯機の球発射用ソレノイドは、中
空のボビンと、ボビン上に設けたコイルと、ボビンの中
空部分に移動可能に挿通した磁性移動子と、一端をボビ
ンの外方に突出させて他端を移動子の前端部に固定した
心棒とを備えるソレノイドであって、移動子にその後端
部から前端部まで延びる空洞部を設け、心棒を打球動作
開始位置まで引き戻すための引張部材を移動子の空洞部
内に収容・配置したことを特徴とするものである。

【０００８】本考案のソレノイドでは、移動子が空洞部
を有するので、空洞部を持たない同一サイズの移動子に
比べて移動子が軽くなり、移動子の運動速度が十分に大
きくなる。この結果、移動子によって得られる打球力が
強くなる。又、空洞部を持たない同一サイズの移動子よ
りも同じ打球力を得るのに小型でよいから、電力消費も
少なくなる。しかも、打球後の心棒を元の位置まで引き
戻す引張部材を移動子の空洞部内に収容・配置してある
ので、ソレノイドがコンパクトになる。特に、球発射方
向の長さが短くなり、ソレノイドの取付スペースが小さ
くなる。

【０００９】更に、引張部材を連結したＬ字状の引張部
材調節具を備えるソレノイドでは、調節具が球発射方向
に移動自在であるため、調節具の位置を変えることで引
張部材の引張力を調整することができる。このことに関
して付言するなら、この種のソレノイドで得られる打球
力の調整は、ソレノイドに係る電気回路の可変抵抗器に
よって行うのが通常である。各種電動式遊戯機では、そ
の仕様上、電気回路に使用する可変抵抗器の最大及び最
小抵抗値は一定であり、ソレノイドに対する電圧の印加
時間も一定である。一方、ソレノイド自体は機械部品で
構成されているため、各構成部品の品質にばらつきがあ
り、各ソレノイドによって性能に差が生ずる。このた
め、電気回路に性能差がなくても、ソレノイドの打球力
が不定になる。しかし、引張部材を連結した引張部材調
節具を有するソレノイドであれば、機械部品の品質に多
少差異があっても、調節具によってそれを補正すること
ができるため、打球力が一定しないという問題点が解決
される訳である。なお、引張部材としては調節具との連
係からコイルバネを用いるのが望ましい。

【００１０】本考案のソレノイドにおいて、移動子は或
る程度まで軽量化されればよいのであるが、移動子がス
ムーズに運動するように、移動子の中心と空洞部の中心
が一致するように、即ち移動子と空洞部が同心円上に位
置するように、移動子に空洞部を設けるのが好ましい。

【００１１】上記空洞部を移動子に設けることで、移動
子が軽くなるわけであるが、無制限に軽量化すればよい
というものでもない。つまり、移動子を軽くするほど移
動子の運動速度が増すが、その代わりに打球力が弱くな
るので、移動子の重さと運動速度によって得られる移動
子の打球力が最強になるような条件（コイルに流す励磁
電流の通電時間、移動子の重さ等）を適宜選定すること
が重要である。

【００１２】又、移動子の態様として、空洞部を設ける
ことに加えて、移動子の外周を摩擦の小さいプラスチッ
ク等で覆ったり、移動子を含油金属により成形したり、
又はプラスチックにフェライトや粉末磁性材を混入した
もので移動子を作製したりするのも好適である。但し、
移動子の軽量化に伴って、移動子の強度が低下すること
が問題となる場合は、空洞部に軽量のプラスチックを充
填して、補強すればよい。

【００１３】

【実施例】以下、本考案の電動式遊戯機の球発射用ソレ
ノイドを実施例に基づいて説明する。図１にその一実施
例を示す。この実施例のソレノイドは、中空円筒状のボ
ビン１と、ボビン１に設けたコイル２と、ボビン１の中
空部分に移動可能に挿通した円柱状の磁性移動子３と、
一端をボビン１の外方に突出させて他端を移動子３に固
定した管状の心棒４とを備える。

【００１４】移動子３は当該移動子と同心の円柱状空洞
部５を有し、これにより移動子３は中空円筒状を呈す
る。移動子３の先端はテーパ状部３ａとなり、テーパ状
部３ａの先細部３ｂに、軽い非磁性金属又はプラスチッ
クからなる心棒４の他端が螺子等によって固定されてい
る。心棒４は、ボビン１の中空部分を通り、一端がボビ
ン１の外方に突出する長さを持ち、移動子３と一体に運
動する。心棒４の先端には、球に直接接触して球を弾く
弾発バネ６を被せてあると共に、心棒のボビン１からの
抜けを防止するためのストッパとして作用するＥリング
７を付設してある。

【００１５】コイル２はボビン１と共に磁性金属からな
る外枠８、９で覆われ、移動子３を移動させる磁気回路
が構成される。ボビン１の中空部分の一端内周面には、
移動子３を当該中空部分の中心線に沿って容易に位置決
めできるようにすると共に、移動子３との摩擦を軽減す
る摩擦の非常に小さい非磁性円筒状の軸受としての案内
部材１０が取付けられる。但し、この案内部材１０はボ
ビン１を摩擦の非常に小さいプラスチック等からなる場
合は不要である。ボビン１の中空部分の他端内周面に
は、移動子３のテーパ状部３ａに対応する形状を持つ磁
性円筒状の当接部材１１が取付けられ、当接部材１１は
移動子３の運動を止める作用を有する。当接部材１１の
内周面には、心棒４のＥリング７に係合すると共に、摩
擦の非常に小さい軸受としての機能を果たす係止部材１
２を取付けてある。更に、移動子３の先細部３ｂが当接
部材１１に衝突する時に発する音を小さくするために、
消音作用を有するポリウレタン・シート１２を先細部３
ｂの端面に付設してある。

【００１６】移動子３の空洞部５には、心棒４を打球動
作開始位置まで引き戻すための引張部材として引張バネ
１３を配置してあり、引張バネ１３の一端が心棒４の端
部内に設けたピン１４に係止される。引張バネ１３の他
端は、矢印ａ方向（球発射方向）に移動自在に螺子１６
によって外枠８に取付けたＬ字状の引張バネ調節具１５
に連結される。調節具１５の外枠８に対する取付位置は
螺子１６を緩めて調節具１５を動かすことで変えること
ができ、これにより引張バネ１３の復元力を調整する。
移動子３の矢印ｂ方向に動く力は引張バネ１３の復元力
よりも勝り、コイル２への励磁電流が切れた瞬間に移動
子３が引張バネ１３によって矢印ｃ方向に後退する。

【００１７】このように構成したソレノイドを実際にパ
チンコ機の球発射装置としてパチンコ機に設置するに
は、図２に示すように、例えばＬ字状の金具２０を外枠
８に接着剤等によって接合し、金具２０をパチンコ台の
右下隅の所定位置に螺子２１によって固定する。勿論、
パチンコ機では、ソレノイドを鉛直方向（パチンコ台の
上下方向）に配置し、球を鉛直方向に打ち上げる。

【００１８】次に、ソレノイドがパチンコ球を打ち出す
作用について述べる。まず、図１に示すソレノイドは、
心棒４が引張バネ１３によって矢印ｃ方向に最大限に引
き戻された状態である。この状態では、心棒４のＥリン
グ７と係止部材１２が係合する。又、心棒４の先端の弾
発バネ６から手前にある球発射位置には球３０が用意さ
れる。ここでコイル２に励磁電流を流すと、磁界が移動
子３に加わり、移動子３と心棒４は矢印ｂ方向に一体に
動き始める。

【００１９】更に心棒４が矢印ｂ方向に移動すると、弾
発バネ６が球３０に衝突する直前の状態になる。この時
に、心棒４の速度はほぼ最高になっており、球３０に与
える衝撃力（打球力）もほぼ最強である。次の瞬間に
は、球３０が弾発バネ６によって矢印方向に打ち出され
る。打球後も心棒４は矢印ｂ方向に若干移動するが、直
ちに移動子３の先細部３ｂが当接部材１１に突き当たる
ため、移動子３は矢印ｂ方向に最大限に動いたところで
止まる。先細部３ｂが当接部材１１に衝突する時、両者
間にシート１２が介在しているため、衝突音はかなり小
さくなり、シート１２が良好な雑音対策となる。

【００２０】この時点で励磁電流を切れば、磁界が無く
なるのと同時に、移動子３は引張バネ１３によって矢印
ｃ方向に引き戻され、Ｅリング７が係止部材１２に係合
する状態、即ち図１の状態に復帰する。これに併せて、
球発射位置に次の球が用意され、移動子３と心棒４は次
の打球動作の開始を待つ。かかる打球動作を繰り返すこ
とで、パチンコ球が次々に弾かれる。ここに、本考案の
ソレノイドでは、移動子３が空洞部５を有するので、空
洞部５を設けない同一サイズの単なる円柱状移動子に比
べて、移動子３は相当軽量である。このため、移動子３
の運動速度は円柱状移動子に比して大きく、弾発バネ６
が球を打つ力も強い。しかも、同等の打球力を得るに
は、同一サイズの円柱状移動子よりも小型のソレノイド
でよい。

【００２１】又、心棒４を引き戻すための引張バネ１３
を移動子３の空洞部５内に収容・配置してあるため、そ
の分だけソレノイドをコンパクト化できる上に、特に球
発射方向におけるソレノイドの長さを短くすることがで
きる。更に、引張バネ調節具１５を備えているので、各
ソレノイドの性能に差があって打球力に強弱が生じて
も、調節具１５の取付位置を変えて引張バネ１３の復元
力を調整することで、ソレノイドの打球力を一定にする
ことができる。

【００２２】

【考案の効果】本考案の電動式遊戯機の球発射用ソレノ
イドは、以上説明したように移動子が空洞部を有するの
で、空洞部を持たない同じサイズの円柱状移動子を用い
た場合に比べて、移動子の運動速度が大きく、移動子の
運動によって得られる打球力が遙に強い。

【００２３】このため、円柱状移動子を用いた場合に得
られる打球力と同等の打球力を得るには、ソレノイドは
小型で済む。しかも、小型化されるので、電力消費量も
少なく、経済的である。心棒を引き戻すための引張部材
を移動子の空洞部内に収容・配置してあるので、ソレノ
イドがコンパクトになる。特に、球発射方向におけるソ
レノイドの長さが短縮されるので、ソレノイドの取付ス
ペースが小さくなる。

【００２４】又、引張部材を連結したＬ字状の引張部材
調節具を備えたソレノイドでは、個々のソレノイドの性
能差によって異なる打球力を、調節具の取付位置を変え
て引張部材の引張力を調整することによって一定にする
ことができるだけでなく、引張部材の調整を簡素な構造
で実現できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例に係るソレノイドの縦断面図
である。

【図２】図１のソレノイドをパチンコ台の所定位置に固
定した時の状態を示す図である。

【符号の説明】

１ 中空のボビン ２ コイル ３ 磁性移動子 ４ 心棒 ５ 空洞部 １３ 引張バネ（引張部材） １５ 引張バネ調節具 ３０ 球（パチンコ球）

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】中空のボビンと、ボビン上に設けたコイル
   と、ボビンの中空部分に移動可能に挿通した磁性移動子
   と、一端をボビンの外方に突出させて他端を移動子の前
   端部に固定した心棒とを備えるソレノイドであって、移
   動子にその後端部から前端部まで延びる空洞部を設け、
   心棒を打球動作開始位置まで引き戻すための引張部材を
   移動子の空洞部内に収容・配置したことを特徴とする電
   動式遊戯機の球発射用ソレノイド。
2. 【請求項２】前記ボビンを包囲する外枠と、この外枠に
   球発射方向に移動自在に取付けられたＬ字状の引張部材
   調節具とを備え、この調節具に前記引張部材を連結した
   ことを特徴とする請求項１記載の電動式遊戯機の球発射
   用ソレノイド。