JP2537615B2 - 車体フロア部構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、自動車の車体フロア部構造に関するもの
で、特に、ハニカムサンドイッチ構造のフロアパネルを
備えた車体フロア部構造に関するものである。

（従来の技術） 一般に、自動車のフロア部は、車体の前後あるいは左
右方向に延びるサイドシルやクロスメンバ等の強度部材
と、その間に設置されるフロアパネルとによって構成さ
れている。そのフロアパネルは、特に車室の床面を形成
する部分においては、車体振動に伴って面振動を発生す
ることのないようにしなければならない。また、そのフ
ロアパネルには、フロア部全体の振動の抑制及び車室内
に伝えられる騒音の遮断という大きな役割も求められて
いる。

そこで、通常は、フロアパネルにクロスメンバ等の補
強部材やメルシートあるいはインシュレータ等の遮音材
を取り付けて、その剛性を高めるとともに遮音性の向上
を図るようにしている。

しかしながら、そのような補強部材や遮音材を取り付
けると、どうしても車体重量が増大してしまう。また、
補強部材やメルシート等が取り付けられている部位と他
の部位との間に制振及び遮音効果の差が生じるという問
題もある。

このようなことから、実開昭57−130772号公報、実開
昭57−133479号公報等に示されているように、フロアパ
ネルを、上面板と下面板との間にハニカムコアを挟んだ
ハニカムサンドイッチ構造のパネルとすることが考えら
れている。そのようなハニカムパネルは、軽量でありな
がら極めて剛性が高く、遮音性にも優れている。したが
って、そのようなハニカムパネルを用いることにより、
フロアパネルを大面積の平面状のものとすることが可能
となる。

ところで、そのようなハニカムパネルは、単純なスポ
ット溶接やボルト締め等によっては他部材と結合するこ
とができない。したがって、自動車のフロアパネルをハ
ニカム構造とする場合には、それを周囲のサイドシルや
クロスメンバ等にどのように結合するかが問題となる。
その結合が強固になされなければ、ハニカム構造のフロ
アパネルを用いたことによる制振及び遮音効果が十分に
発揮されなくなってしまう。

そこで、上記実開昭57−130772号公報に示されたもの
では、フロアパネルの上面板及び下面板をそれぞれサイ
ドシルと一体に成形するようにしている。また、実開昭
57−133479号公報に示されたものでは、サイドシルに水
平突出部を設け、フロアパネルの上、下面板間にその突
出部を嵌合させるようにしている。

（発明が解決しようとする問題点） しかしながら、前者のようにフロアパネルとサイドシ
ルとを一体とするものでは、車体組立時に同時にハニカ
ム構造のフロアパネルを形成することが必要となる。す
なわち、車体組立工程に、ハニカムコアと上、下面板と
を接着あるいは溶着する工程を組み込むことが必要とな
る。そのためには、車体組立ラインを大幅に変更しなけ
ればならない。

一方、後者のようにハニカム構造のフロアパネルをサ
イドシルの突出部に嵌合させるものでは、フロアパネル
をあらかじめ成形しておき、それを車体に組み付ければ
よいので、上述のような問題は解消されると考えられる
が、ハニカムパネルは極めて剛性が高いので、周縁部を
そのような突出部に嵌合させるということはほとんど不
可能である。

また、そのようにあらかじめ成形されたフロアパネル
を車体に組み付ける場合、その組み付けは、車体枠組の
完了後に行われるようにすることが望まれるが、ハニカ
ム構造のフロアパネルの場合には、大面積のものとされ
るので、単純にそのような手順とすることはできない。
すなわち、フロアパネルを上方から組み付けるようにし
ようとすると、そのフロアパネルを車室床面位置の上方
に搬送することが必要となるが、ピラーやルーフ等が組
み付けられた後の車体枠組内部に大面積のフロアパネル
を搬入することは難しい。

本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであ
って、その目的は、あらかじめ成形されたハニカムサン
ドイッチ構造のフロアパネルを、車体に確実かつ容易
に、しかも車体枠組の構成後においても組み付けること
ができるようにすることである。

（問題点を解決するための手段） この目的を達成するために、本発明では、ハニカムサ
ンドイッチ構造のフロアパネルに、その上面板の周縁部
を上方に折曲して上部接合フランジを形成するととも
に、その下面板の周縁部をほぼ水平に延出させて下部接
合フランジを形成し、そのフロアパネルが取り付けられ
る開口の周囲を形成する車体強度部材の側面部にフロア
パネルの上部接合フランジを接合するとともに、その車
体強度部材のほぼ水平な底面部にフロアパネルの下部接
合フランジを接合するようにしている。

（作用） このように構成することにより、フロアパネルは、そ
の上、下面板がともに車体強度部材に接合されるので、
十分な結合強度が得られるようになる。しかも、そのフ
ロアパネルは、車体下方から開口に嵌合させることによ
って組み付けることができるので、車体枠組の完了後に
おいても容易にその組み付け作業を行うことができるよ
うになる。

（実施例） 以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。

図は、本発明による車体フロア部構造の一実施例を示
すもので、第１図はその左右方向の垂直断面図であり、
第２図はその平面図である。

第２図から明らかなように、自動車の車室部分のフロ
ア部には、その左右両側に、前後方向に延びるサイドシ
ル1,1が設けられるとともに、その中央に、前後方向に
延びるセンタトンネル２が設けられている。これらサイ
ドシル１及びセンタトンネル２は、その前後両端におい
て、それぞれ左右方向に延びるフロントクロスメンバ３
及びミドルクロスメンバ４により互いに連結されてい
る。

第１図に示されているように、サイドシル１は、アウ
タパネル５とインナパネル６とを互いに接合することに
よって形成される中空閉断面形状のものとされている。
そして、その車内側の側面部1aは、下端からほぼ垂直上
方、あるいはやや車内側に向かって傾斜して延びるもの
とされている。また、その底面部1bは、側面部1aの下端
から車外側に向かってほぼ水平に延びるものとされてい
る。

一方、センタトンネル２は、トンネルパネル７と、そ
の両側下部に取り付けられるセンタフレーム8,8とによ
り構成されている。トンネルパネル７は下方に開いたチ
ャンネル状のもので、その両側縁部は上方に折曲され、
それによって接合フランジ7aが形成されている。また、
センタフレーム８は上方に開いたチャンネル状のもの
で、その車外側の側面部上端縁がトンネルパネル７の接
合フランジ7aに接合され、中央側の側面部上端縁がトン
ネルパネル７の内面に接合されるようになっている。こ
うして、トンネルパネル７とセンタフレーム８とによっ
て、センタトンネル２の両側部が中空閉断面形状に形成
されるようになっている。センタトンネル２の両側面部
2a,2a、すなわちセンタフレーム８の車外側の側面部
は、下端から垂直上方、あるいは車外側に向かってやや
傾斜して延びるものとされている。また、センタトンネ
ル２の底面部2b,2b、すなわちセンタフレーム８の底面
部は、センタトンネル２の側面部2a下端から車体中央に
向かってほぼ水平に延びるものとされている。

フロントクロスメンバ３及びミドルクロスメンバ４も
中空閉断面形状のものとされ、それぞれ車体後方、車体
前方に面する側面部と、その側面部下端に連なるほぼ水
平な底面部とが設けられている。

このようにして、自動車の車室床面に相当する部分に
は、中空閉断面形状の車体強度部材であるサイドシル
１、センタトンネル２、フロントクロスメンバ３、及び
ミドルクロスメンバ４によって囲まれる大面積の開口９
が設けられている。その開口９の周囲は、それら車体強
度部材の側面部1a,2a,…によって形成されている。ま
た、車体強度部材の底面部1b,2b,…は、ほぼ同一面とな
るようにされている。

この開口９は、平板状のフロアパネル10によって閉塞
されるようになっている。そのフロアパネル10は、上面
板11と下面板12との間にハニカムコア13を挟んだハニカ
ムサンドイッチ構造のものとされている。それら上、下
面板11,12は金属薄板によって形成されている。また、
ハニカムコア13は、紙あるいは金属によって形成されて
おり、上、下面板11,12にそれぞれ接着あるいは溶着す
ることによって接合されている。

上面板11の周縁部は上方に折曲され、それによってフ
ロアパネル10の上部接合フランジ10aが形成されてい
る。また、下面板12の周縁部はほぼ水平に延出してお
り、その延出部によってフロアパネル10の下部接合フラ
ンジ10bが形成されている。そして、その上部接合フラ
ンジ10aが、開口９の周囲を形成するサイドシル１、セ
ンタトンネル２、フロントクロスメンバ３、及びミドル
クロスメンバ４の各側面部1a,2a,…に接合され、下部接
合フランジ10bがそれらの各底面部1b,2b,…に接合され
るようになっている。

このような車体フロア部構造を形成するときには、ま
ず、フロアパネル10を所定の形状に成形しておく。すな
わち、上面板11の周縁部を上方に折曲し、開口９に嵌合
し得る形状に形成する。また、下面板12を開口９よりや
や大きく形成する。そして、これら上、下面板11,12間
にハニカムコア13を挟んで接合する。このような加工
は、車体組立ラインとは別個に行う。

車体組立ラインにおいては、サイドシル１、センタト
ンネル２、フロントクロスメンバ３、及びミドルクロス
メンバ４等を接合し、更にサイドボデーやルーフ等を組
み付ける。そして、そのような車体枠組を終えた後、そ
の車体の下面側にフロアパネル10を搬入し、これを下方
から開口９に嵌め込む。それによって、そのフロアパネ
ル10の上下部接合フランジ10a,10bがサイドシル1,セン
タトンネル２等の側面部1a,2a,…及び底面部1b,2b,…に
それぞれ密着する。そこで、それらをそれぞれ接合す
る。その接合は、サイドシル１等に設けられたサービス
ホールを利用してスポット溶接によって行う。あるい
は、隅肉溶接等によってその結合を行うようにしてもよ
い。

このようにしてフロアパネル10を組み付けると、その
フロアパネル10は、その上下両部においてそれぞれサイ
ドシル１、センタトンネル２等の強度部材に接合される
ことになる。しかも、それらの接合部の面は互いにほぼ
直交している。したがって、そのフロアパネル10と周囲
の車体強度部材との結合強度は強力なものとなる。

また、フロアパネル10の周囲は、サイドシル１、セン
タトンネル２等の側面部1a,2a,…によって密封されるこ
とになる。したがって、上、下面板11,12間のハニカム
コア13部分に水等が浸入することは抑制されるようにな
る。その結果、ハニカムコア13が紙で形成されている場
合にも水に濡れて弱化する恐れがなくなるので、そのハ
ニカムパネルの端末部の処理も簡易化することができ
る。

そして、ほぼ水平なフロアパネル10の下面板12を、サ
イドシル１やセンタトンネル２等のほぼ水平な底面部1
b,2b,…にそのまま接合することにより、フロア部の下
面は、センタトンネル２の中央下部を除き全面にわたっ
て平面状となる。したがって、その空気抵抗が低減し、
自動車の空力性能が向上する。

更に、フロアパネル10の上面板11は、その周縁部がほ
ぼ垂直に折曲されているので、その曲げ剛性が高くなっ
ている。したがって、ハニカム構造のフロアパネル10
は、全体の剛性が著しく高くなり、極めて高い制振及び
遮音効果を発揮するものとなる。また、フロアパネル10
にそのような垂直に折曲した上部接合フランジ10aを設
けることにより、フロアパネル10の位置決めも容易とな
る。

フロアパネル10の上面板11の周縁部にそのような上部
接合フランジ10aを設け、センタトンネル２の側面部2a
上端と接合するようにすることにより、センタトンネル
２の両側部上面には溝14が形成されるが、その溝14は、
暖房用ヒータダクト15等を通す配管あるいは配管通路と
して利用するようにすればよい。

（発明の効果） 以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ハ
ニカムサンドイッチ構造のフロアパネルに、その上面板
の周縁部を上方に折曲して形成した上部接合フランジ
と、下面板の周縁部をほぼ水平に延出させて形成した下
部フランジとを設け、その上部接合フランジを車体強度
部材の側面部に接合するとともに、下部接合フランジを
その車体強度部材の底面部に接合するようにしているの
で、あらかじめ別個に成形されたフロアパネルを、車体
組立ラインにおいて車体強度部材に結合することが可能
となる。しかも、そのフロアパネルは、車体下方から組
み付けることができるので、車体枠組を終え、更に車体
部品等の取り付けを完了した後に組み付けるようにする
こともできる。したがって、車体部品の取り付け作業等
も容易となる。

そのほか、フロアパネルに上方に折曲した上部接合フ
ランジを設けることにより、その組み付け時の位置決め
が容易になされるようになり、また、フロアパネルの下
面板を延出した下部接合フランジを車体強度部材の底面
部に接合することにより、車体下面が平面化されて空力
性能が改善されるなど、種々の効果を得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明による車体フロア部構造の一実施例を
示すもので、第２図のＩ−Ｉ線に沿う左右方向の垂直断
面図、 第２図は、その車体フロア部構造の概略平面図である。 １……サイドシル（車体強度部材） 1a……側面部、1b……底面部 ２……センタトンネル（車体強度部材） 2a……側面部、2b……底面部 ３……フロントクロスメンバ（車体強度部材） ４……ミドルクロスメンバ（車体強度部材） ９……開口、10……フロアパネル 10a……上部接合フランジ 10b……下部接合フランジ 11……上面板、12……下面板 13……ハニカムコア

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】上面板と下面板との間にハニカムコアを挟
   み、これらを互いに接合することによって形成されたハ
   ニカムサンドイッチ構造のフロアパネルと、 そのフロアパネルが取り付けられる開口の周囲を形成す
   る側面部、及びその側面部の下端に連なるほぼ水平な底
   面部を有する車体強度部材と、からなり、 前記フロアパネルが、その上面板の周縁部を上方に折曲
   して形成した上部接合フランジと、その下面板の周縁部
   をほぼ水平に延出させて形成した下部接合フランジとを
   有しており、 そのフロアパネルの上部接合フランジが前記車体強度部
   材の側面部に接合されるとともに、その下部接合フラン
   ジが前記車体強度部材の底面部に接合されている、車体
   フロア部構造。