JP2533623Y2 - クラッチ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、クラッチ装置に関し、
特にクラッチカバーの外周部がフライホイールの外周面
に取り付けられるクラッチ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】クラッチ装置は、フライホイールと、こ
のフライホイールに固定されるクラッチカバー組立体
と、フライホイールとクラッチカバー組立体の間に配置
されたクラッチディスク組立体とから構成されている。
クラッチカバー組立体をフライホイールに取り付けると
き、クラッチカバーの外周部にフランジ部を設け、この
フランジ部をボルト等によりフライホイール側面に固定
している。この場合、クラッチディスク組立体の外径寸
法に比較して、クラッチカバーのフランジ部の分だけフ
ライホイール外径寸法が大きくなる。

【０００３】またフライホイールの小型化を目的とし
て、実開昭５０−１７６２号公報に示されるようなクラ
ッチカバー取り付け構造が示されている。この構造にお
いては、クラッチカバーの外周部がフライホイールの外
周面に固定されている。このため、従来構造におけるク
ラッチカバーのフランジ部が不要となり、フライホイー
ルの外径寸法をクラッチディスク組立体の外径寸法に近
づけることができる。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】前記従来公報に示され
た構造では、クラッチカバー外周部をボルトによりフラ
イホイール外周面に固定している。しかし、フライホイ
ール外周面は曲面であるために、ボルトとの接触面積が
不充分となってボルトの座面が確保しづらい。このため
充分な板間摩擦が得られず、ボルトの緩み及び各部材の
磨耗が生じやすい。また、クラッチカバーによるせん断
力が直接ボルトに作用してボルトが破断されてしまう場
合がある。

【０００５】本考案の目的は、フライホイール外周面に
クラッチカバーの外周端部を固定する方式のクラッチ装
置において、クラッチカバーを固定するためのボルトの
緩み及び部材の磨耗を防止することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案に係るクラッチ装
置は、入力側部材に連結可能であり、それぞれ平坦な座
面を有する複数の係合部を外周面に所定の間隔で有する
フライホイールと、クラッチカバーと、フライホイール
に対向するプレッシャプレートとを含むクラッチカバー
組立体と、プレッシャプレートとフライホイールとの間
に配置されたクラッチディスク組立体と、固定手段とを
備えている。そして、前記クラッチカバーは、外周端部
から軸方向に突出しかつフライホイールの係合部に係合
する爪部を有している。また前記固定手段は、クラッチ
カバーの爪部をフライホイールの係合部に固定するため
の手段である。

【０００７】

【作用】本考案のクラッチ装置では、フライホイールの
係合部に対し、軸方向からクラッチカバーの爪部を係合
させる。次に、ボルト等の固定手段によりクラッチカバ
ーの爪部をフライホイールの係合部に固定する。係合部
は、平坦な座面を有しているので、係合部と爪部、及
び、爪部と固定手段との間の接触面積が大きくなり、充
分な板間摩擦が得られる。このため、ボルト等の緩み及
び部材の磨耗が防止される。

【０００８】

【実施例】図１に本考案の一実施例が採用されたクラッ
チ装置を示す。図において、このクラッチ装置は、主と
して、フライホイール１と、クラッチカバー組立体２
と、クラッチディスク組立体３とから構成されている。
エンジン側には、クラッチ装置を取り付けるためのフレ
ックスプレート４が固定されており、クラッチ装置は、
フレックスプレート４とトランスミッションのフロント
ハウジング５との間に配置される。

【０００９】フライホイール１は、ほぼ円環状の部材で
あり、一側面はフレックスプレート４に固定されるよう
になっており、他側面はクラッチディスクが圧接される
摩擦面となっている。また図２に拡大して示すように、
外周面１ａには等角度間隔で複数の係合部１ｂ及が形成
されている。係合部１ｂは平坦な座面を有しており、そ
のほぼ中央部にはねじ孔１ｅが形成されている。フレッ
クスプレート４の外周端部には、円環状のリングギア９
が配置されている。

【００１０】クラッチカバー組立体２は、クラッチカバ
ー１０とそれぞれクラッチカバー１０内に配置されたダ
イヤフラムスプリング１１及び円環状のプレッシャプレ
ート１２とを有している。クラッチカバー１０は、皿状
に形成され、中央部に大径の孔を有している。クラッチ
カバー１０の外周壁は軸方向に延びて形成されており、
図２に示すように、その一部がさらに突出して爪部１０
ａとなっている。爪部１０ａは、全周に等角度間隔で複
数個設けられ、そのほぼ中心部には孔１０ｂが設けられ
ている。この爪部１０ａは、フライホイール１係合部１
ｂに係合し、ボルト６によって固定されている。

【００１１】ダイヤフラムスプリング１１は、クラッチ
カバー１０と同心に配置された円板状の部材であり、半
径方向のほぼ中間部がワイヤリング１３等を介してクラ
ッチカバー１０に支持されている。また、その外周端部
がプレッシャプレート１２の複数の突出部１２ｂに当接
し、プレッシャプレート１２をフライホイール内側に弾
性的に押圧している。ダイヤフラムスプリング１１の内
周端はレリーズ装置１４に当接可能であり、その内周端
をエンジン側（図示左方）に押すことにより、クラッチ
ディスク組立体３の連結が解除されるようになってい
る。クラッチディスク組立体３は摩擦材３ａを有してお
り、この摩擦材３ａをフライホイール１の摩擦面とプレ
ッシャプレート１２の摩擦面との間に挟んでクラッチの
連結を行う。

【００１２】次に、本クラッチ装置の組立順序を説明す
る。まず、クラッチカバー１０にダイヤフラムスプリン
グ１１及びプレッシャプレート１２を組み込み、クラッ
チカバー組立体２を組み立てる。そして、クラッチカバ
ー組立体２にクラッチディスク組立体３を配置し、さら
にフライホイール１の係合部１ｂにクラッチカバー１０
の爪部１０ａを挿入する。爪部１０ａを係合部１ｂに挿
入すると、爪部１０ａ以外の部分の端面がフライホイー
ル１の側面に当たり、両者の軸方向の位置決めが行われ
る。この状態でボルト６を係合部１ｂのねじ孔１ｃにね
じ込み、クラッチカバー１０をフライホイール１に対し
て固定する。このとき、係合部１ｂは平坦な座面を有し
ているので、クラッチカバー１０の爪部１０ａは係合部
１ｂの座面に倣い、平坦になる。このため、爪部１０ａ
と係合部１ｂの座面及び爪部１０ａとボルト６の座面に
おける接触面積が大きくなり充分な板間摩擦が得られる
ことになる。

【００１３】このようにしてクラッチ装置を組み立てた
後、フライホイール１をエンジン側のフレックスプレー
ト４に当て、ボルト２１によって両者を連結する。トラ
ンスミッションのハウジング５には、その一部に作業用
の窓孔が設けられており、この窓孔を利用して、ボルト
２１を締め付ける。なお、フレックスプレート４は、リ
ングギア９が溶接によって取り付けられた後、ボルト２
０によって予めエンジン側のクランクシャフトに固定さ
れている。

【００１４】このような実施例では、充分な板間摩擦が
得られるだけでなく、クラッチカバー１０の爪部１０ａ
をフライホイール１の係合部１ｂに挿入した後、ボルト
６により固定する構造としたので、クラッチカバー１０
によるせん断力が直接ボルトに作用することがなく、ボ
ルトが破断するおそれが解消する。また、クラッチカバ
ー１０の固定のために必要なボルトの本数を少なくする
ことができる。

【００１５】〔他の実施例〕 前記実施例では、プッシュタイプクラッチに本考案を適
用したが、プルタイプクラッチにも同様に本考案を適用
することができる。

【００１６】

【考案の効果】以上のように本考案では、フライホイー
ルの外周面に平坦な座面を有する係合部を設け、クラッ
チカバーの外周端部に設けた爪部を前記フライホイール
の係合部に係合させ、固定手段により両者を固定する構
成としたので、固定手段として用いられるボルト等の緩
み及び各部材の磨耗を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例によるクラッチ装置の縦断面
図。

【図２】図１の部分斜視図。

【符号の説明】

１ フライホイール １ａ 外周面 １ｂ 係合部 ２ クラッチカバー組立体 ３ クラッチディスク組立体 ６ ボルト １０ クラッチカバー １０ａ 爪部

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】入力側部材に連結可能であり、それぞれ平
   坦な座面を有する複数の係合部を外周面に所定の間隔で
   有するフライホイールと、 外周端部から軸方向に突出しかつ前記フライホイールの
   係合部に係合する爪部を有するクラッチカバー及び前記
   フライホイールに対向するプレッシャプレートを含むク
   ラッチカバー組立体と、 前記プレッシャプレートと前記フライホイールとの間に
   配置されたクラッチディスク組立体と、 前記クラッチカバーの爪部を前記フライホイールの係合
   部に固定するための固定手段と、 を備えたクラッチ装置。